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「数えきれないほど叩かれて」 日本のスポーツにおける子どもの虐待  ヒューマン・ライツ・ウオッチ報告・提言7/20

202007asia_japan_sports_cover_jpn ヒューマン・ライツ・ウオッチが7月20日「数えきれないほど叩かれて」と題した調査報告書を公表。

25歳未満のアンケート回答者381人のうち、19%がスポーツ活動中に殴打されるなどの暴力を受けている。性虐待を受けた人も5人いた。報告には、具体的な証言も多数紹介されており、部活動やトップレベルのスポーツでも依然として指導現場などで暴力・虐待が根強く残っていることが明らかになった。”

HLWは、各種団体まかせやガイドラインでは限界があり、国が、日本のスポーツにおける子どもの虐待への対処を任務とする独立した行政機関として「日本セーフスポーツ・センター」(仮称)を設置することを提言している。

【日本:メダル獲得努力の裏の子どもの虐待 ~ 2021年の夏季オリ・パラ大会開催国として、大胆な改革を直ちに行うべき ヒューマン・ライツ・ウオッチ 7/20

【「数えきれないほど叩かれて」  日本のスポーツにおける子どもの虐待 7/20 調査報告・提言】

【日本スポーツ界にはびこる「鉄拳制裁」 人権団体調査 2割が「暴力受けた」、性虐待も 8/2全国新聞ネット】

  成績をあげるた、暴力・恐怖で「ブレークスルー」を起こさせる「ダークペダゴジー」という問題、ジェンダー平等の低さとともに、「メダル獲得=正義」が作り出すゆがみがあるように、下記の記事から考えさせられた。

【「普通の人」がなぜ過激化するのか<歪んだ正義>(1) 毎日8/2()

【日本:メダル獲得努力の裏の子どもの虐待 ~ 2021年の夏季オリ・パラ大会開催国として、大胆な改革を直ちに行うべき ヒューマン・ライツ・ウオッチ 7/20

 (東京)―日本でスポーツをする子どもが、トレーニング中に暴力や性虐待、暴言の被害に遭っていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の調査報告書で指摘した。調査からは、虐待を原因とするうつ、自死、身体障害、生涯にわたる心的外傷などが明らかになった。日本では2021723日から、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される予定だ。

 今回の報告書「『数えきれないほど叩かれて』:日本のスポーツにおける子どもの虐待」(全57頁)は、日本のスポーツにおける体罰の歴史をたどるとともに、スポーツにおける子どもの虐待が、日本の学校スポーツ、競技団体傘下のスポーツ、トップレベルのスポーツで広く起きている実態を明らかにした。ヒューマン・ライツ・ウォッチが行ったインタビューと全国的なオンラインアンケートによる調査では、50競技以上にわたるスポーツ経験者から、顔面を殴られたり、蹴られたり、バットや竹刀で殴られたり、水分補給を禁じられたり、首を絞められたり、ホイッスルやラケットでぶたれたり、性虐待や性的嫌がらせを受けたなどの訴えがあった。

 「何十年間も、日本の子どもたちは、トロフィーやメダルの獲得のためだと、情け容赦なく殴られ、暴言を浴びせられ続けてきた」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのグローバル・イニシアチブ担当ディレクター ミンキー・ワーデンは述べる。「日本が20217月に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックに向けて準備を進めているいま、日本の現状に対する世界の関心は、スポーツをする何百万もの子どもたちを守るために日本国内の法制度そして世界の政策を変える、またとない機会となる。」

  ヒューマン・ライツ・ウォッチは、オリンピアンやパラリンピアンを含む、800人以上(50人以上のインタビュー調査と、オンラインアンケート調査での757人の回答)について、子どものときのスポーツの体験を調査してまとめた。オンラインアンケート調査では、少なくとも50競技、45都道府県での経験についての回答があった。ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、スポーツにおける子どもの虐待に関する日本のニュース記事をモニタリング、競技団体に問い合わせて通報相談窓口がどの程度利用可能か調査したほか、研究者、ジャーナリスト、保護者、指導者にインタビュー調査を行い、政府や競技団体の関係者との面会も実施した。

 2013年、日本が2020年夏季オリンピック・パラリンピック大会の招致に動くさなか、注目を集めていたトップアスリートへの虐待事件や一連の動画などが、スポーツをする子どもの自死と相まって、主要な競技団体がスポーツにおける子どもの保護の必要性の議論をはじめた。2018年には、愛知県の高校の野球部監督が、部員にビンタや殴打、蹴りを繰り返す動画が報道された。動画では、監督が少なくとも5人の選手を殴り蹴る姿が映っていた。それはかなり激しいもので、部員は何度もよろめいていた。

  世論の強い反発により、暴力等を通報する通報相談窓口の設置などの重要な改革が行われた。しかしこれまでの改革は、遵守必須のルールではなく任意の「ガイドライン」であり、進捗状況は競技団体によりまちまちでモニタリングもなく、また虐待の通報内容や統計データの報告は義務づけられていない。

 こうした虐待は、子どもの虐待を禁止する日本の国内法、国際人権基準、国際オリンピック委員会が定める選手保護の規定に反するものだ。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、スポーツにおける子どもの虐待は社会でいまだ広く許容され、当たり前のものとされたままであり、スポーツをする子どもが指導者や役員を相手に苦情を申し立てることは難しいことを明らかにしている。学校や競技団体が虐待を行った指導者に制裁を課すことはほとんどなく、多くは引き続き指導させていると、ヒューマンライツ・ウォッチは指摘する。

 「日本の競技団体は、虐待事案や虐待加害者を追跡する自前の体制を作る権限を与えられている。しかし、その構築を怠っている団体が多い」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗は述べた。「そのため、子どもたちは理不尽なリスクにさらされている。親や選手は、権力を持つ加害者に対して苦情を申し立てたり、救済を求める選択肢がほとんどない状態だ。」

 スポーツにおける子どもの虐待問題、そして、暴力や虐待に対処するための一貫した明確なシステムがない問題は、世界的な問題だ。多くの場合、虐待通報という負担を負わされるのは被害者である一方で、通報制度は不透明で、動きが鈍く、不十分である。

  世界的に見ても、指導者などの虐待加害者は、処罰を免れたり、被害を訴えた側を脅して黙らせることもできる立場に昇進したりしている。ハイチとアフガニスタンの国内競技団体の会長2人が、この16カ月で女性選手への性的暴行で責任追及された。米国体操連盟代表チームのスポーツ医ラリー・ナサールは、数十年にわたり女子体操選手数百人を虐待していた。子どもたちが被害を訴えても、選手の成功を人質にする指導者を告発しても、聞き入れられないことが多い。ニューヨーク・タイムズ紙は、トライアスロンの元韓国代表選手チェ・スクヒョンさん(22歳)が2020626日に自死したことを報じた。チェさんは、身体的・心理的虐待に遭っていることを、スポーツ当局と政府当局に繰り返し訴えていた。

 「スポーツは健康や奨学金、キャリアなどの利益をもたらすこともあるが、虐待被害者は苦しみと絶望を経験することがあまりに多すぎる」と、スポーツ法の専門家である山崎卓也弁護士は指摘する。山崎弁護士は、今回の報告書でヒューマン·ライツ·ウォッチに協力したスポーツ選手の国際的な労働組合「ワールドプレイヤーズ」(世界選手会)の理事を務める。「虐待事案の対処がこれほど難しい理由の一つは、選手が声を上げることが奨励されていないからだ。自分たちの権利のために声を大にする勇敢な選手がたくさん出てきている。こうした選手たちに続き、スポーツ団体は過去に向き合う勇気を出すことが求められている。それでこそ、スポーツは善をもたらす真の力となる。」

 ヒューマン・ライツ・ウォッチの主な提言は、国が、日本のスポーツにおける子どもの虐待への対処を任務とする独立した行政機関として「日本セーフスポーツ・センター」(仮称)を設置することである。そうした機関が、虐待の申立てを確実に報告・追跡すること、被害を訴えた子どもと親へのしっかりした救済を行うこと、さらに虐待を行った指導者を特定して指導者ライセンスを取り消し、子どもへの虐待を防ぐことが必要だ。

  東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が2021年夏に延期されたため、日本には、大会開始までに説得力のある行動をとる猶予が1年与えられたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘する。

 「子どもを守るために断固とした行動をとることは、日本の子どもたちに対して、子どもたちの健康やウェルビーイングのほうがメダルよりも大切だ、というメッセージを送ることになる。また同時に、虐待を行っている指導者に対し、そうした行動はもはや許容されないと告げることにもなる」と、前出のワーデンは述べた。「もし日本が今行動を起こせば、他国がスポーツにおける子どもの虐待を撤廃する上でのモデルとなるだろう。」

 ◆報告書に掲載した当事者の証言抜粋

・「数えきれないほど叩かれました。……集合の際に呼ばれて、みんなの目の前で顔を。血が出てたんですけれど、監督が殴るのは止まらなかったですね。ちょっと鼻血が、と言ったんですけれど止まらなかったです。」

九州地方で中学野球部だったときの経験を語る、プロ選手のダイキ・Aさん(23歳、仮名)

 ・「水球用の帽子を使うんですけど、そのひもを引っ張って水から揚げられて、窒息した。あと、コーチが入ってきて、沈められるとかはありましたね。……ある意味軍隊的なところがありましたね。僕らの一年下は弱くて。やっぱ委縮して辞めちゃう子とかもいましたね。」

トップレベルで水球をやっていたケイスケ・Wさん(20歳、仮名)

 ・指導者は、ほぼ毎日、練習後にチエコさんを教室に呼び、「治療」と称しながら、チエコさんに服を全部脱ぐよう言ったり、裸にした体を触ったりした。「(毎回)吐き気がしました。あの男の匂い、手、目、顔、……声、すべてが大嫌いでした。」

 東日本出身でトップアスリートであるチエコ・Tさん(20代、仮名)。指導者はチエコさんの脱臼した肩を治すと称して性虐待を繰り返した。

 ・「(監督に)あごを殴られて、口の中が血だらけになりました。シャツの襟をつかまれ、身体を持ち上げられました」。他の部員もこうした経験をしていたという。「部員の9割が暴力を振るわれていました……。よく冗談を言い合っていましたよ。『まだ殴られてないのか。いつになったらお前の番なんだ』と。 」

 埼玉県内の高校で野球部だったショウタ・Cさん(23歳、仮名)

 ・「監督はよく選手を蹴ったり、至近距離からボールを投げつけたりしていました。選手がヘルメットをかぶっていれば、バットでヘルメットを叩いていました。」

 神奈川県内の中高で野球部だったツクル・Uさん(20歳、仮名)

 ・「バレーボールも生きることも嫌になりました。」

20187月に自ら命を絶った、岩手県の高校男子バレーボール部員だった新谷翼さん(当時17歳)。両親は男性顧問による「言葉の暴力」があったと訴えている。

 ・「指導者から褒められたことは覚えていないです。とにかく毎日ぶたれないように過ごすことを考えていた。バレーボールが楽しいって思ったことはないです。……やっている当時も、引退してからしばらくもバレーボールは嫌いだと思っていました。」

 女子バレーボール元日本代表でスター選手として知られた益子直美氏。益子氏は2015年、指導者が選手に暴言・暴力をふるうことを禁止するバレーボール大会を設立するに至った。彼女は、選手に対する暴行・暴言等の虐待を、止めるべき連鎖と話した。「高校のコーチと大人になってから話をしたんですけど、俺の時代なんかもっとひどかったって言う。やっぱり連鎖しているなっていうのをすごく感じたので、これをどこかで食い止めないといけないなというのは、すごく感じています。」

【主な提言  報告書より】

◆国会への提言

次の点を明確にして、スポーツ基本法を改正または新法を制定すること。

・スポーツにおいて、指導者によるスポーツをする子どもへのあらゆる形態の暴力・暴言等を禁止すること。

・暴力・暴言等を受けずにスポーツに参加する権利等、スポーツをする人の権利を明確にすること。

・スポーツをする子どもの指導者全員に研修を義務づけること。

・スポーツをする子どもへの暴力・暴言等に気づいた大人に通報を義務づけること。

 

児童虐待防止法を改正し、次の点を明確にすること。

・児童虐待の定義を定める第2条の現行規定を拡大し、スポーツにおける暴行・暴言等の虐待を含めること。

・スポーツにおける子どもの虐待に対応する独立した行政機関として、「日本セーフスポーツ・センター」(仮称)を設置すること。諸スポーツ団体のなかでも、この独立機関は、日本で起きるスポーツをする子どもに対する暴力・暴言等の事案すべてを対処する権限を持つ。また「日本セーフスポーツ・センター」(仮称)は、以下の点に責任を負う。

・スポーツをする子どもへの暴力・暴言等を防止し、子どもを保護するための基準を整備し、日本のスポーツ団体がその基準を完全に遵守するよう確保すること。

・スポーツをする子どもへの暴力・暴言等についての申立てや報告を直接受け付けるとともに、現存するすべての通報相談窓口の事案をまとめる統一システムを通じてもこれを受け付けること。

・スポーツにおける子どもへの暴力・暴言等の事案の全件調査を行い、指導者に相応の処分(指導者資格の取消し、指導者資格の停止、指導の禁止等)を行い、また処分を受けた指導者に不服申立制度を提供すること。

・適切な場合には、暴行・暴言等の虐待事案について、犯罪捜査のために法執行機関に通報すること。

事案件数と調査結果に関するデータを詳しく追跡し、報告すること。

・処分を受けた指導者の公開登録簿を作成すること。

・暴行・暴言等の虐待を受けたスポーツをする子どもに対し、心理的支援のリソースを提供すること。そのリソースは、無料、継続的、専門家によるものであること。

・スポーツをする子どもの指導者全員に対する研修基準を設けること。

・この独立機関の存在と提供するリソースについて、教育・啓発活動を行うこと。

 

この「日本セーフスポーツ・センター」(仮称)に対し、人員とリソースを適切に配備するために必要な資金を配分すること。

 

◆スポーツ庁への提言

次の点を確保した新たな通知を出すこと。

・スポーツにおいて、指導者によるスポーツをする子どもに対するあらゆる形態の暴力・暴言等を禁止すること。

・暴力・暴言等を受けずにスポーツに参加する権利等、スポーツをする人の権利を明確にすること。

・スポーツをする子どもの指導者全員に研修を義務づけること。

・スポーツをする子どもへの暴力・暴言等に気づいた大人に通報を義務づけること。

2019年に策定された「スポーツ団体ガバナンスコード」を改正し、国内のすべての中央競技団体及び一般スポーツ団体にコードの遵守を義務づけること。改正後のコードには、暴力・暴言等を行った指導者について、競技や都道府県にかかわらず、全国どこでも同じ責任を問うようにするため、スポーツをする子どもへの暴力・暴言等の報告・調査・処分についての明確な基準を示すべきである。また、スポーツをする子どもへの暴力・暴言等に気づいた大人に対し、犯罪行為の場合には法執行機関に伝えることを含め、しかるべき当局への通報を義務づけること。

 

◆文部科学省への提言

・第3期スポーツ基本計画(2022年度から2026年度)では、スポーツをする子どもの暴行・暴言等の虐待からの保護をより重点的目標としてより強化して掲げ、これを実現するための具体的な施策を明記すること。

・文部科学省が毎年行っている「体罰の実態把握について」の調査を改訂し、スポーツにおける体罰のデータが把握できるようにすること。

・すべての運動部活動の指導者に対し、子どもの保護に関する研修と資格取得を義務づけること。

 

◆日本スポーツ協会、日本オリンピック委員会、日本障がい者スポーツ協会への提言

加盟・登録団体の下でスポーツの指導をする者全員について、子どもの保護に関する研修と資格取得を義務づけること。

 

 

 

【日本スポーツ界にはびこる「鉄拳制裁」 人権団体調査 2割が「暴力受けた」、性虐待も 8/2全国新聞ネット】

 来年夏に延期された東京五輪開幕1年を前に、国際人権団体、ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が「数えきれないほど叩かれて」と題した調査報告書を公表し、日本のスポーツ界に根深くはびこる暴力問題を改めて浮き彫りにした。7月20日、世界に発信された調査結果によると、25歳未満のアンケート回答者381人のうち、19%がスポーツ活動中に殴打されるなどの暴力を受けたと回答。暴言を受けた経験は回答者の18%で、性虐待を受けた人も5人いた。2013年に表面化した柔道女子日本代表での暴力、パワハラ指導問題から7年。暴力根絶の動きが国を挙げて広がり、各競技団体などで相談窓口を設置する対策を取っているが、日本の学校部活動やトップレベルのスポーツでも依然として指導現場などで虐待が根強く残る実態が明らかになった。(共同通信=田村崇仁)

  ▽「口の中が血だらけ」

  今回の調査は1月から6月にかけて、五輪・パラリンピック経験者を含めて50競技、800人以上にインタビューやオンラインアンケートで実施。報告書には、埼玉県の高校元野球部員の証言で「監督からあごを殴られ、口の中が血だらけになった」「部員の9割が暴力を振るわれていた」、プロバスケットボール選手の「暴力は千、2千、3千回とかいってるんじゃないか。歯が欠けたり、鼻血出たり」といった指導者の暴力のほか、上級生から常態化した圧力、罰としての短髪や丸刈りによる精神的苦痛、過剰なトレーニングや食事の強要、水や食事の制限などの実態が詳細に記されている。

  HRWの担当ディレクター、ミンキー・ウォーデン氏は「トロフィーやメダル獲得のために情け容赦なく殴られ、暴言を浴びせられ続けてきた証言は非常に衝撃的だった。拳で殴る、平手打ち、蹴り、物体を使っての殴打もある。こうした虐待を受けたアスリートの多くは、結果としてうつ病や生涯にわたるトラウマに苦しんでいる」と指摘。「日本では草の根とエリートスポーツの双方で旧態依然の虐待が行われている」と述べ、責任追及の在り方に統一基準がなく、追跡方法や対応を競技団体任せにしている問題点の改革を訴えた。

  ▽「治療」目的で性虐待

  米国では体操協会の元チームドクター、ラリー・ナサル受刑者が「治療」目的と偽って性的虐待したとして、五輪金メダリストら350人以上の女子選手が証言するスキャンダルが世界を震撼(しんかん)させた。同受刑者は子どもへの性虐待等複数の罪で逮捕、有罪となり、懲役40年から175年の実刑判決を宣告されたが、子どもへの性虐待は通報が少ない犯罪と言われ、問題の深刻さを正確に把握することは難しい。

  しかし今回の報告書によると、日本でもトップ選手が10代の頃、遠征先や合宿先で男性指導者から「治療」と称して体を触られるなどの被害を受けたと証言した。「(毎回)吐き気がした。あの男のにおい、手、目、顔、声、すべてが大嫌いだった」と述べている。女子プロサッカークラブのマネジャーは男性の監督が10代の選手に性虐待を行っていたことを証言しており、日本でも水面下で深い闇が存在している現状が分かった。

  ▽「バカ、アホ、カス」

  「言葉の暴力」と呼ばれる暴言では、中学バスケットボール部員の生徒が、顧問から練習中に何度も「バカ、アホ、カス」とののしられた実情を語ったという。

  18年7月に岩手県の高校男子バレーボール部員だった新谷翼さんが自ら命を絶った事件では、調査した県教育委員会の第三者委員会が今年7月、新谷さんが当時バレー部顧問だった男性教諭に厳しく叱責(しっせき)され、絶望感や自己否定の感情を強めたことが自殺の一因だったと発表した。

  顧問による「一番下手だな」「使えない」などの発言が精神的に追いつめたとみられる。こうした上意下達の行き過ぎた指導は今も後を絶たない。

  ▽日本版の独立機関設置を

  暴力や暴言を指摘された指導者は、日本のスポーツ界でこれまで責任を問われたケースが数えるほどしかない。7年前に日本オリンピック委員会(JOC)や全国高等学校体育連盟など5団体が連名で「暴力行為根絶」を宣言したが、実現ははるかに遠い現実がある。

  韓国でも6月、指導者らから暴行を受けたと告訴していた女子トライアスロンの有力選手が自殺する騒動があった。

  近年、最もよく知られたスポーツと暴力に対応する包括的な独立機関は、米国体操界での大規模な虐待事件を受けて17年に設立された「米国セーフスポーツ」だろう。初年度から相談が殺到し、既に4千件以上の申立てがあったという。

  HRWはこのほど児童虐待防止法を改正し、児童虐待の定義にスポーツでの暴行、暴言を含めるべきだと提言。日本政府にスポーツにおける虐待問題を認知して調査、処分する権限を持つ独立機関「日本セーフスポーツ・センター」(仮称)の設立を求めた。

  ▽東京五輪をレガシーに

  国際オリンピック委員会(IOC)は選手への虐待を重大事項として16年に「IOC倫理規程」を作成。18年にブエノスアイレスで開催された第3回夏季ユース五輪では「セーフスポーツ」の取り組みを本格的に導入し、ユース選手村へのセーフガード担当官を配置するなど新たな対策を進めている。

  HRWは1978年に設立され、ニューヨークに本部を置く。09年に東京オフィスが開設された。最近ではミャンマーのロヒンギャ難民、アフガニスタンにおけるタリバンによる人権侵害、LGBT問題など世界中の人権問題について調査し、厳しく指弾してきた。

  ミンキー・ウォーデン氏は「スポーツにおける子どもの虐待は日本だけでなく、世界的な問題。来年開催される予定の東京五輪では、子どものアスリートたちがしっかり守られ、それを東京大会のレガシーにしてほしい。スポーツをする何百万もの子どもたちを守るために日本国内の法制度を変える機会にするべきだ」と話している。

 

 

【「普通の人」がなぜ過激化するのか<歪んだ正義> ヤフーニュース・毎日新聞8/2

  ◇「自粛警察」はもともとある敵意や差別感情の現れ

  マスクをしていない人を激しく叱責する。政府の自粛要請下で地元以外のナンバーの車を傷つけたり時間を短縮して営業する店に嫌がらせをしたりする。中国人が経営する店やその関係者をSNS上で中傷する。

  新型コロナウイルス禍に現れたいわゆる「マスク警察」「自粛警察」現象は、人間の攻撃性を顕在化させた。

  「人を傷つける心―攻撃性の社会心理学」(サイエンス社)などの著書がある大渕憲一・東北大学名誉教授(社会心理学、現・放送大学宮城学習センター所長)によると、「災害や犯罪などによって社会不安が高まると、それに伴い人々の間で生じる不快感情が攻撃性に転化されやすくなる」という。

  もともと他の集団や民族に対して敵対的な、あるいはマイノリティーに対して差別的な態度を持っている人でも、冷静な時はそれを不合理なものとして自制することができる。ところが不安や恐怖が高まっている時には「認知資源の不足などからこうした抑制力が低下し、敵意や差別感情が噴き出しやすくなる」という。社会が不安定な時には敵意や差別感情を「正当化」する理由を見つけやすくなり、また周囲の人々からの支持が得られやすいと感じて抑制力はいっそう低下しやすくなるというのだ。

  ◇「自分は絶対に正しい」と思い込むと、人間の凶暴性が牙をむく

  人間の攻撃性といえば、最近はSNSを舞台とした言葉による暴力が過激化している。性被害を実名で告発したジャーナリストの伊藤詩織さんを中傷したSNS上の書き込みは70万件にも達し、人気番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さんもSNS上で激しい攻撃を受け、亡くなった。

  また近年日本では、 ローンウルフ(一匹オオカミ)による通り魔や襲撃事件が増加傾向にある。治安問題を研究する公益財団法人「公共政策調査会」(本部・東京都千代田区)が20193月に発表した東京五輪の治安対策に向けての提言書によると、国内におけるローンウルフ型のテロ類似犯罪は増加傾向にあり「未然に探知し防ぐのが難しい」という。さらにその脅威は「すぐそこに差し迫っていると認識しなければならない」としている。

  197月、「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市伏見区)にガソリンをまいて放火し70人を死傷させた青葉真司容疑者(42)による事件は記憶に新しい。青葉容疑者は「京アニに小説を盗まれた」とまるで自分が被害者であるかのように訴え、犠牲者への謝罪は今もって口にしていないという。

  167月に起きた相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」への襲撃事件でも元同園職員、植松聖死刑囚(30)は裁判で「意思疎通が取れない人は社会の迷惑」「殺した方が社会の役に立つ」と語った。障害者という「負担」を抱える社会を救済したとでも言わんばかりに殺害の正当性を訴えた。

  こうしたローンウルフによる事件は一見「自粛警察」やSNS上の過激な攻撃とは無関係のように見えるが、いずれの当事者にも通底する思考が垣間見える。自分や自分が帰属意識を抱く集団を「絶対的被害者=善」と見立て、「絶対的悪」である他者への攻撃を正当化するという「歪(ゆが)んだ正義」だ。「自分は絶対に正しい」と思い込んだ時、人間の凶暴性が牙をむく。

  ◇「あなたは、自分がテロリストになることもありうると思いますか」

  私が人間の攻撃性に関心を抱いたのはイスラエルの大学院で受けた授業がきっかけだった。13年春から4年余りエルサレム特派員を務めた私は日本への帰任を前に仕事を2年間休職してイスラエルの大学院や併設のシンクタンクを拠点に研究生活を送った。

  イスラエルといえばその占領地・パレスチナに住む人々への強硬な対応で知られる。私は留学1年目、イスラエルの中でも最も保守的で、「テロ対策」に関する研究で世界的に知られるヘルツェリア学際研究所(IDCヘルツェリア)の大学院に進学し「テロリズム対策・国土安全保障論(サイバーセキュリティー専攻)」を学んだ。特派員時代の取材でイスラエルの「テロ対策」には学ぶべき点とあしき手本とすべき点が混在しているように感じ、その最先端で知見を広げようと考えた。

  懐に深く入ってこそ取材対象の「素顔」は見えてくる。イスラエルの「素顔」を見たいとの思いからの決断だったが、パレスチナの人々すべてを「テロリスト」よばわりするような差別と偏見に満ちた授業ばかりではいたたまれなくなる、と内心危惧していた。だが授業ではむしろ私自身が無意識のまま抱えてきた偏見や思い込みを自覚することになった。

  進学した大学院のプログラムは1学年150人余りで約4割が米国系ユダヤ人、約3割が欧州系ユダヤ人、3割弱がイスラエルのユダヤ人で、それ以外はアフリカ系が男女ひとりずつ、アジア系は私ひとりだった。大半は2030代で米国からは米軍のエリート、陸軍士官学校(ウェストポイント)と米議会から女性2人が公費で派遣されていた。イスラエルからは国防総省や首相官邸の幹部候補のほか私と同じ50代の警察・爆弾処理班元トップと現職トップもやはり公費で来ていた。

  「あなたは、自分がテロリストになることもありうると思いますか」

  イスラエル軍兵士の心理的危機管理を担当してきたという元軍幹部の博士(心理学)が「テロリズムの心理」という授業の冒頭、私たちにそう尋ねた。受講生の約半数が「ありうる」と答え、残る半数が「ありえない」と答えた。「絶対ありえない」。私はそう直感したので、多くの生徒が肯定的に答えたのにはむしろ驚いた。

  博士の言葉を聞いて浮かんだのはワシントン特派員をしていた09年春に経験したある事件だった。アフガニスタンに駐留する米陸軍の部隊に1カ月ほど従軍取材した。米兵らと村から村へと移動していたある日、乗っていた軍用車がイスラム原理主義組織タリバンの爆弾攻撃を受けて大破した。同乗していた米兵4人と共に奇跡的に命を取り留めたがテロリズムの脅威を文字通り肌で実感した。そして地元の女性や子供すら手にかけるタリバンの「狂気」に強い憤りを感じた。だから博士の問いかけにも「あんなことを私がするわけがない」と感じたのだ。

  だがこの確信は、研究を進めるにつれ徐々に崩れていくことになる。

  博士はさらに衝撃的な言葉を口にした。

  「テロリストの頭の中を考えるには、まず普通の人々の頭の中を考える必要がある。そうしていくと、大半の人は状況さえ整えばテロリストにさえなりうるのだということが分かる」

  彼は自分たちユダヤ人も含め、誰もがテロリストになりうるのだと断言した。その根拠として見せたのが一本の動画だった。

  ◇監獄実験が顕在化させた人間の攻撃性

  米スタンフォード大学のフィリップ・ジンバルドー名誉教授(心理学)が行った、有名な「監獄実験」の撮影フィルムだ。1971年、ジンバルドー名誉教授は24人の中流階級の米国人学生を対象に12人を看守役、残りを囚人役にした。囚人役は囚人服を着せて足をつなぎ番号で呼ぶ。看守役はアイコンタクトをしなくてすむようにサングラスの着用が認められ、制服や笛、警棒、鍵を渡されて「囚人に何をしてもよい」という支配権も付与される。その結果、実験は想定よりかなり短い6日間で終了せざるをえなくなった。看守役が予想以上に残酷な行為を繰り返し始めたからだ。

  囚人にろくに食事を与えず頭巾をかぶせて鎖でつなぎ、トイレを手で掃除させた。36時間後にはひとりの囚人が急性のうつ状態になり、解放せざるをえなくなった。ジンバルドー名誉教授は「ごく普通の人が状況次第で悪魔にもなる」と分析し、人間が持つ攻撃性の普遍性を指摘した。倫理的観点からこのような実験はその後行われていない。それもあり、たまたまこの実験の参加者が異常な集団だったのではないかと感じる人もいるかもしれない。だが実験で起きたことをまさに再現したかのような事件が現実に起きている。04年に発覚したイラクの首都・バグダッド郊外のアブグレイブ刑務所におけるイスラム教徒への虐待事件だ。看守の米兵らはこの実験結果以上に残酷な虐待を行った。

  動画が終わると米陸軍士官学校から来ていた女性士官が手を挙げてこう語った。「私はイラクでアブグレイブ事件の調査に実際に関わっていました。具体的なことは言えませんが、刑務所にいた兵士すべてが残虐な行為をしたわけではありません。ごく一部がやったことなのです」

  ◇過激化する人としない人の違い

  先の大渕名誉教授はその論文「無差別テロの心理分析」の中で次のように述べている。「テロ事件を起こす人は特殊な思想信条の持ち主、あるいは偏った性格・異常な心的状態にある人であるとの特異心理仮説に基づく研究が中心だったが、近年は、先進諸国からIS(筆者注:過激派組織『イスラム国』)に参加する若者、ホームグロウン・テロリスト、ローンウルフ型の増加などを背景に、誰でもが状況によっては過激主義に陥り、テロ事件に関与するようになりうるのではないかという一般心理仮説に基づく分析が主流になりつつある」

  私たちは誰しも攻撃性を持っている。それを過激化させるとテロリストにさえなりうるのかもしれない。だが一方で、紛争地を長く取材して感じてきたことがある。同じような極めて重い社会経済的ストレスを受けてもその攻撃性を過激化させる人はほんの一部で、大半の人はそうはならない。紛争地に限らず日本社会においても日常のストレスなどから会社や学校、SNS上で陰湿ないじめやハラスメントをして他者を攻撃したり「正義」を振りかざしたりする人がいるが、大多数の人はそこまではしない。

 だとするとその攻撃性を過激化させてしまう人とそうならない人の違いはどこにあるのか。過激化する人には何があり、あるいは何がないのか。そこに通底するメカニズムはあるのか。

  私はこの疑問を出発点に研究生活を始めた。【編集委員(専門記者)・大治朋子】

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