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コロナ禍が暴き出す課題 ~ ジェンダー不平等社会の克服

 コロナ禍は社会の真の姿を映し出す・・・感染の恐怖と向き合いながら社会生活を支える医療介護保育の働く環境、非正規の首切り、一斉休校の負担やDV・・・その多くは女性の犠牲、ジェンダー不平等社会のゆがみを浮かびあがらせた。

以下は、今後の取り組みで参考・活用できる情報、インスパイアされた主張。

【コロナ禍から「新たな生活様式」へ一歩を  上野千鶴子 JA新聞6/2

【新型コロナウイルス感染症対策にジェンダーの視点を 日本共産党中央委員会・ジェンダー平等委員会  4/24

【新型コロナ対策にジェンダーの視点を   UN Womenの提言全訳  jcp with you 3/31】 

【障害のある女性の人権保障を~新型コロナ禍が暴き出す課題7/6 藤原 久美子さん(DPI女性障害者ネットワーク 代表)】

【コロナ禍で消えた非正規の女性雇用、アベノミクスの成果ご破算に .bloomberg  7/3

【コロナ禍から「新たな生活様式」へ一歩を  上野千鶴子 JA新聞6/2】NPO法人ウィメンズアクションネットワーク 上野千鶴子理事長【衝撃 コロナショック どうするのか この国のかたち】

 ■非常事態で社会的弱者に及ぶしわ寄せ

 新型コロナウイルス感染拡大で多くの課題が露呈する中、社会的弱者にしわ寄せが及んでいる。休校になった子どもの世話を担う母親、密着性のある介護を必要とする高齢者などには、行政からの救いの手も乏しい状況でケア軽視の日本社会を浮き彫りにした。上野千鶴子NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長(東京大学名誉教授)は、ジェンダー問題の観点から、コロナ禍から学び望ましい新たな生活様式を確立すべきだと説く。

 ◆コロナで潜在的問題が「見える化」

 上野千鶴子氏非常時には平時の矛盾が拡大・増幅して表れる。「もうコロナの前には戻れない」という声も聞かれるが、そんなに驚くべき事態が起きているわけではない。日本ではなぜPCR検査が極端に少ないのか? なぜならSARS(重症急性呼吸器症候群)、MARS(中東呼吸器症候群)で被害が少なかったために、諸外国が学んだようには日本は学ばなかったからである。

なぜ、医療現場がこんなに疲弊しているのか? もともと人口当たりのベッド数を削減し、医師の養成を抑制してきたツケが表れた。

なぜ、日本の行政機構はこんなに非効率なのか? 行革路線で公務員を徹底的に削減し、先進諸国の中でも人口当たり公務員数が少ないからである。

なぜ、遠隔授業がうまくいかないのか? それ以前から日本の教育のICT化が、圧倒的に後れをとっているからだ・・・と。

 コロナ禍はグローバリゼーションのもとで世界が否応なくつながっていることとともに、世界が国境によって分断されていることを明らかにした。国境内外における政治的リーダーシップの違いも、赤裸々に示した。思いつき、専門家軽視、中途半端で非一貫的な政策、どさくさ紛れの強権政治・・・を推し進める愚かなリーダーを持ったことで、わたしたちは心底情けない思いをした。

 国内でも地方自治体の首長のリーダーシップの違いが際立った。地域差があるのに地方の主体性を発揮せず、国に一律に決めてもらいたいという自治体首長の横並び意識にもがっかりした。

コロナ禍のもとで、元々あった問題が「見える化」したことと、元々起きていた変化が加速したことの両方がある。既にさまざまな論者が、政治、経済、農業などについて論じているから、私の目に映ったジェンダー関連の問題を指摘したい。

◆聞こえてくるのは母親の悲鳴だけ

229日専門家会議の諮問を待たずに、突然安倍首相が発した「全国一律休校要請」によって、働く親たちはパニックになった。子どもが学校へ行かなくなったら、いったい誰が世話をするというのか? 預け先の祖父母がいればよいが、そうはいかない。学童も保育園も閉鎖する。こういうときに浮上するのはいつも「母親」である。

休業補償も出されたが、働かなければ子どもを食べさせていけないシングルマザーはどうすればよいのか。しかも、この休業補償の対象からは当初風俗業の女性が排除されていた。風俗業にシングルマザーが多いことは周知の事実である。

休業補償金の対象は雇用者のみ。派遣やフリーランスは含まれない。だが、非正規労働者に女性が多いことも周知の事実。派遣切りはまっ先に女性に及んだ。20203月の非正規労働者は前年同月比で女性が29万人減、男性が2万人増。「景気の調整弁に使われている」と指摘されるが、元々労働者派遣を合法化した「雇用の規制緩和」は、それを政策設計の意図とし効果としていた。安倍首相は、自分の政権下で雇用を拡大したと胸を張るが、増えたのはもっぱら非正規雇用で正規雇用は横ばいのまま。男性の非正規雇用増は、正規雇用からの転換とみるべきだろう。

職を失い、家にいる夫や子どもの世話を一手に引きうける女性の間からは、直ちに悲鳴があがった。3食作る家事負担が増えた。食費がかさむ。夫婦がともにテレワークをする場合でさえ、夫のテレワークが優先され妻のテレワークは寸断された。そのうえ、夫のストレスは妻や子どもに向かう。DVの増加も懸念された。

シングルマザーの間からは、明日子どもに食べさせるものがない、自分は1食に減らして子どもに食べさせているという切迫した声もあった。

子どもは一人で勝手に育っているわけではない。食べさせ、着させ、世話をやく者がいて初めて育つ。非常時のもとで聞かれたのは「母親」の声ばかり。父親たちは何をしているのか。

◆ケアを軽視した政策決定者の本音

介護についても同じことが言える。介護施設のクラスター感染が起こり、介護施設は外部としゃ断された。高齢者が集まるデイサービスやショートステイは閉鎖され、そうなると在宅するしかない。家に介護をする家族がいるというのだろうか。介護保険20年間のうちに、一人暮らし高齢者の数は急速に増えた。独居の高齢者のもとをホームヘルパーが訪れなくなれば、食事も排泄もアウトになる。

だが、医療現場への注目や感謝に比べて介護現場からの声は小さく、関心も低い。介護職は情報も装備も乏しく、無防備なまま発熱した利用者のもとを訪れる。それ以前から訪問介護はもっとも条件の悪い職種だった。現場は慢性的な人手不足にあえぎ、今年1月時点で有効求人倍率は13倍。そのくらい不人気な職種だったのだ。

そこにコロナ禍が直撃し、一層深刻になった人手不足に対して政府のとった対応策は、私をあぜんとさせた。医療職へは退職者の再活用や手当の増額をうたったのに、介護職については無資格者を採用してよいとしたのだ。

保育現場でも同じ対応がとられた。この措置ほど、育児・介護というケア労働に対する為政者のホンネをあらわにしたものはない。つまり、政策決定者たちはケアとは「女なら誰でもできる非熟練労働」だと見なしているのだ。

◆災禍に学び新しい生活様式へ転換

社会がサスティナブルであるためには、生産システムと再生産システムとがともに駆動しなければならない。生産とはモノの生産。再生産とはイノチの生産。つまり人を産み育て看取る生き死に関わる活動である。再生産がタダではないことは、少子化でよく分かったはずだ。人は放っておいても子どもを産み育てるわけではない。イノチの再生産を支える労働がケア労働である。非常時にモノの生産が急ブレーキをかけられた時に、日々一日たりとも休むことのできないケアという労働がくっきりと「見える化」したのだ。そして、それをいったい誰が担っているかも。

コロナ禍が加速した変化にテレワークがある。ステイホームを余儀なくされた男性労働者は、家のなかで子どもたちがどんなふるまいをしているか初めてよく見たのではないか。

夫婦共働きがスタンダード化した今日では、テレワークをするのは夫ばかりではない。働く女性から、テレワークをしようにも家のなかで一人になれる場所がないという悲鳴を聞いた。これまで夫は外、妻は内。その妻のいる家はもっぱら「消費の場」だったが、いまや夫にとっても妻にとっても「おうちが職場」の一部になってきた。そして、それが可能だとわかれば通勤に伴うコストを支払う理由はもはやなくなるだろう。

もしかしたらコロナ禍がもたらす変化の一つには、新しい職住一致があるかもしれない。考えてみれば、職住分離は近代がもたらしたもの。前近代は家が生業の場で、家族は働ける者は全員働く一家総労働団だった。農家には、そもそも家事・育児専従の専業主婦などいない。

私たちは、男が100%の生産者、女が100%の再生産者であるといういびつな性分業の時代を過ぎて、男も女もいくぶんか生産者であり、いくぶんか再生産者であるという「新しい生活様式」のもとへ、一歩踏み出しているのかもしれない。

「もうコロナの前には戻れない」という標語が、望ましい変化をもたらすことを期待したい。だが、わたしたちは「3.11」の後にも、あの「敗戦」のあとにも、「あたかもそれがなかったかのように」ふるまう政治的リーダーをいただいてきた。今度の災禍からも、また私たちは何も学ばないのだろうか。

 

 

【新型コロナウイルス感染症対策にジェンダーの視点を 日本共産党中央委員会・ジェンダー平等委員会  4/24

 新型コロナウイルスの感染拡大がもたらしている日常生活の激変は、女性に、とりわけ深刻な影響を与えています。

 コロナ対策の最前線で働いている医療・福祉従事者の7割以上が女性です。また、働く女性の多くは低賃金・不安定な非正規雇用労働者で、今回のような経済危機のもとでは真っ先に切り捨ての対象となります。学校の休校に伴って仕事を休んで子どもたちの面倒をみたり、高齢家族の感染防止のケアや介護を担ったりしているのも、多くの場合女性です。さらには、外出自粛と生活不安のストレスが、家庭内でのDVや虐待の危険を高めています。

 国連女性機関(UNWomen)は各国政府に対し、「コロナ対策が女性を取りのこしていないか」と問いかけ、「ジェンダーの視点にたった対策は女性のみならず社会のすべての構成員に良い結果をもたらす」と強調しました。

 日本でも、さまざまな女性団体や当事者・支援運動が、現場の切実な要求を突きつけ、対策を前進させてきました。日本共産党は、コロナ対策のあらゆる場面でジェンダーの視点を取り入れることを、強く求めます。ご一緒に声をあげ、実現していきましょう。

 

1、「自粛と補償を一体に」―働く女性、シングルマザー、妊産婦への手立てを

・世論が政府に方針転換を求め、「一律一人10万円」の給付金が実現しました。給付を受けるのは一人ひとりの権利であり、とりわけすべてのDV被害者が迅速に給付を受けられるよう求めます。

 ・正規・非正規労働者、個人事業主、フリーランスを問わず、休業したすべての人に賃金・収入の8割を補償することを求めます。

 ・学校休業が続くもとで、「小学校等休業対策助成金」を活用して労働者が特別の有給休暇を取得できるよう制度の周知と手続きの迅速化を求めます。また、感染拡大防止のために保育園等への登園を自粛する労働者や、感染リスクを避ける目的で休業を希望する妊娠中の労働者にも対象を拡大するよう求めます。

 ・コロナ危機の下でも、「整理解雇の四要件」に欠ける解雇や退職強要、雇止めは違法です。女性が多いパート、派遣など非正規労働者の不当な解雇・雇止めをやめさせ、労働行政の監視と指導を強めるよう求めます。

 ・生活福祉資金貸付制度や住宅確保給付金、フリーランスも対象とされる持続化給付金など、くらしの維持に緊急に必要となる支援が迅速に受けられるよう、柔軟な対応を求めます。

 ・生活福祉資金貸付制度をシングルマザーが自治体の社会福祉協議会に申請した際、「新型コロナによる収入の減少」の要件が壁となり利用できないということが起こらないようにする必要があります。収入は減っていなくても子どもの休校による出費増などで困窮している家庭が除外されることのないよう、柔軟な対応を求めます。

 ・産院が閉鎖となった場合の転院・紹介のバックアップ体制を整え、分娩(ぶんべん)費用の増加が生じないようにするなど、すべての妊婦が安心して安全に出産できる体制を、国が支援し保障することを求めます。

・PCR検査で業務が逼迫(ひっぱく)する保健所の負担を軽減し、保健所が行う乳幼児健診や両親学級、新生児訪問(電話やオンライン等での実施も含む)などの機能を早急に回復するよう求めます。

 2、女性と子どもに対する暴力・虐待の防止を 

・配偶者暴力相談支援センターや児童相談所、児童養護施設等、DVや虐待の相談体制を強化し、電話相談回線の拡充、DV・虐待被害者シェルターの確保、人員体制の強化を求めます。

 外出自粛要請のもとでDVや虐待の被害が深刻になっており、従来の延長にとどまらない対策が必要です。訪れやすい場所に臨時の相談窓口を設置する、SNSによる相談を充実させるなど、アクセスが容易で、加害者に知られることなく相談できる仕組みを整え周知するよう求めます。

 3、コロナ対策の意思決定に女性の参加の保障を 

・国や自治体の新型コロナ対策本部のジェンダーバランスを改めて見直し、女性の割合を増やすことを求めます。

  コロナ危機のもとで、とりわけ女性や子どもに矛盾と困難が集中していることは、日本におけるジェンダー平等の遅れを改めて浮き彫りにしています。危機を乗り越えた先に、ジェンダー平等社会を実現するためにも、いま、足元から、ジェンダーの視点で一つ一つの課題を見直し、解決に力を尽くしていくことを、すべてのみなさんに呼びかけます。

 

 

【新型コロナ対策にジェンダーの視点を   UN Womenの提言全訳  jcp with you 3/31】 

 安倍政権の場当たり的なコロナ対策のしわよせが、弱者に向かっています。その中には、非公式経済の主な担い手である女性、家庭に居場所がない若年女性たちが含まれています。

 国や自治体のコロナ対策が女性を取り残したものになっていないか−−国連女性機関(UNWomen)は、各国政府へ向け、具体的な提言として『新型コロナ対策のためのチェックリスト』(3月20日)、『女性と新型コロナ:各国政府が今すぐできる5つのこと』(3月26日)を発表しました。

 以下、提言の全訳を掲載します。

 

■新型コロナ対策のためのチェックリスト 国連女性機関事務局次長 Asa Regner 2020.3.20.Fri.

 国連本部と世界中の国連女性機関事務所は閉鎖もしくは厳しい勤務制限下にあります。しかし、国連は100%機能しており、新型コロナウィルスという、我々が備えてきた事態には、それ以上の対応をしています。現状における国連女性機関の大切な任務は、ウィルスへの政治経済的対応をフォローすることです。

 私達は、女性達が各国の福利をその肩に背負っていることを認識しています。今、彼女らは昼夜、社会のまとまりを維持するために働いています。彼女らはそれを、ヘルスケア、老年介護、オンライン授業、保育、薬局、食料品店の現場、そして社会福祉士として働くことを通して行っています。いくつかの国々では、このリストにある仕事の全ては、伝統的に男性が担ってきた職業に比べて低賃金であるとはいえ、有償労働です。しかし、その他の国々では、女性のケアワークは無償です。

 国連女性機関の仕事は、各国政府が女性と女子の権利を擁護できるよう支援することです。このことは、危機においても変わらないどころか、より真実です。各国政府は、迅速に行動を起こすべきという巨大なプレッシャーのもと、対策を講じています。しかし私たちは、決定や政策はジェンダーの視点があることでより良いものになることも知っています。実際、ジェンダーの視点なき決定や政策は劣るだけでなく大抵失敗します。

それが、この状況への対応において私たちが決定権者と協力する理由であり、それは女性と女子にとってだけでなく、全ての人にとってより良い結果をもたらすためです。

 私たち全員が経験している日常生活の急速な変化は、女性と男性に対しては異なるインパクトを持ちます。家族全員が突然、狭い空間に常時集まり、経済的ストレスの下、子供達の教育はオンラインに移行してきています。このような状況が全員にもたらす制約の下においても、私たちが日々生きるジェンダーダイナミクスが、様々な人々にとって大きく異なる結果や経験をもたらす可能性があります。

 そこで私は、政府、自治体、議会のリーダー達やその他の決定権者に対し、以下の10の質問をします:

 第一に、私たちがエボラやジカやその他の状況で経験したように、なんらかの理由で行動が制限される状況のもとでは、女性に対する暴力が増加します。暴力的なパートナーを持つ女性にとって、四六時中家にいることは、潜在的に危険な状況です。資源、ホットライン、シェルターへの女性のアクセスを保障するために何をしていますか?

第二に、あなた方の経済対策は、何をターゲットに、誰の利益に対して行っていますか?男性の収入は女性の収入より高いのが一般的です。男性は終身もしくは長期雇用の仕事を過剰に代表し、不安定な仕事は過少に代表しています。結果として、健康保険、失業手当や他の社会的保護といった保障へのアクセスにおいて巨大な不平等があります。男性はまた、世界の政治的意思決定の過程も過剰に代表しています。女性の声や関心がどのように意思決定の過程やあなたの主導する結果に反映されているか考慮していますか?女性の政治家や意思決定権者の意見を取り入れていますか?女性の多い労働分野を代表する雇用主や労組が声をあげることができていますか?女性組織、女性シェルター、NGOなどの意見は聞かれていますか?非公式セクターで働く女性はどうですか?

 第三に、女性は男性より貧困で、経済的力が弱いです。現金給付を考えている場合、それは家計ではなく、女性の男性への依存をやわらげるために個人に対したものになっていますか?

 第四に、経済低迷もしくは停止が起きた場合の、その多くが女性であるシングルペアレンツに対する支援を準備していますか?

 第五に、私たちは、現況においては高齢の女性と男性の健康リスクが高いことを知っています。しかし、世界的にも高齢者の過半数が女性で、特に80歳以上はそうです。しかし、彼女らの年金はあっても低いことが多く、ケアや他のサービスを購入する可能性が低い。あなたの政府は高齢者の状況をつかんでいますか?彼ら彼女らが一人なのか、サポートがあるのか知っていますか?もし彼らが一人暮らしで、外出しないように言われているなら、供給者を確保するための計画は立てていますか?皆が今必要としている情報がそもそも彼らに届いているのかどうか、知っていますか?

 第六に、高齢者のケアがあるところ、供給者はしばしば女性です。これは有償の仕事であることもあれば、単に家族のメンバーがサポートしていることもあります。ケア提供者が感染から守られることを確保するために何をしていますか?彼らの労働が支払われることを保障していますか?それは十分ですか?

 第七に、多くの国で、男性よりも女性の方が健康保険を持っている人が少ない。彼女らの、検査やヘルスケアを受ける権利を保障するために何をしていますか?

 第八に、危機のもと、人々には食品への安定したアクセスが必要です。女性は、農業や食品店を含む、低賃金の食品生産労働を過剰に代表しています。彼女らの労働条件/環境、給与、土地へのアクセスなどを含む状況を保護するために何をしていますか?

 

第九に、学校が閉鎖になっている所があります。資源のある人はオンラインや遠距離授業に移行しているでしょう。男子が勉強を続ける一方、女子が兄弟や祖父母の世話をさせられることのないように、どんな手立てを講じましたか?

 第十に、妊産婦のケアの、ケアスタッフと妊産婦にとって安全な状況下での継続を保障するために何をしていますか?ヘルスシステムへの重圧は決壊寸前まできています。だからこそ、母体の健康を含めた女性の健康をどのように守りますか?

 国連女性機関は、女性と女子の権利を支持するため、各国政府、自治体、世界中の市民社会との日々の対話を続けます。この危機は私たちを試しますが、もし私たちが新型コロナその他への対応においてジェンダー平等を実現する対応に焦点を当て続けるなら、私たちはこれをより良く、より早く克服し、以前よりも良い状態に回復できるでしょう。□

 ■女性と新型コロナ:各国政府が今すぐできる5つのこと 国連女性機関事務局次長 Anita Bhatia 2020.3.26.Thu.

 世界の各国政府は新型コロナのパンデミックを収束させるために奮闘しています。いくつかの声が女性の受けるインパクトを強調しましたが、ジェンダーへの配慮はまだ、主に男性リーダーたちの意思決定を形作っていません。同時に、新型コロナによるインパクトの多くは女性を最も強く直撃しています。以下がその理由です:

 第一に、経済的社会的インパクトは全員にとって深刻である一方、女性にとってはより深刻です。隔離や閉鎖によって直接的な影響を受けている公式経済−−旅行、観光、レストラン、食品生産−−の多くは、女性の労働力参加の非常に高い産業分野です。女性はまた、世界中で、非公式市場の中の非公式経済と農業の労働力の多くを構成しています。先進国と途上国経済の両方において、多くの非公式セクターの仕事−−家庭内労働者、ケア労働者−−のほとんどは、健康保険を持たず、頼ることのできる社会的セーフティネットを持たない女性によって行われています。

 同時に、女性は概してより大きなケア負担を背負っています。新型コロナ以前でさえ、平均して女性は男性の3倍のケア労働を担っていました。現在、子どものいる公式セクターの女性労働者は、以下の一つかそれ以上のことのバランスを保っています:仕事(もしまだ持っていれば)、子どもの世話、ホーム・スクーリング(家庭学習)、高齢者介護、そして家事。女性が世帯主の世帯は特に脆弱です。

 第二に、この危機は女性の健康と安全にインパクトを与えています。この病気の直接的インパクト以外にも、すべてのサービスが基本的な医療需要に向けられる中、女性にとって不可欠な妊産婦向けヘルスサービスへのアクセスが難しくなっているでしょう。避妊や他のニーズに対するサービスが入手しにくくなっているでしょう。女性の私的安全も脅かされています。この病気の克服に必要な条件そのもの−−隔離、人混みを避ける(外出を控える)、行動の自由の制限−−が、倒錯したことに、虐待を爆発させるためにテーラー仕立てされた国家承認の状況として虐待者の手に入ってしまうのです。

 第三に、ヘルスワーカー−−特に看護師−−の最前線の過半数が女性であるために、彼女らの感染リスクが高いことです(世界のヘルスフォースの67%が女性という推定もあります)。そのため、すべてのケア提供者にとって安全な条件を確保することへの注意が払われなければならない一方で、女性の看護師とケア提供者へ特別な注意が必要です−−マスクなどの個人の防護用装備だけでなく、生理用衛生品その他のニーズ−−それらはうっかりと見過ごされやすいものですが、彼女らがしっかりと役割を果たすことができるために必要不可欠です。

 最後に、このパンデミックへの対応を計画し実行する過程において、鍵となる意思決定権者のほとんどが男性であることは衝撃的です。世界のどこでも、誰かがテレビをつければ、男性の海を目にします。女性が未だ重要な意思決定機関−−政府、議会、内閣や企業−−で男性と同程度の参加ができていないことを考えれば、これは驚くに値しないでしょう。女性は世界の議員のたった25%で、国家や政府の首脳の10%以下です。国家や政府の首脳である少数の輝かしい女性の例もある一方、このパンデミックでの意思決定の場における女性の不在は顕著です。

以下、これらの課題に対処するために、各国政府が今すぐにできる5つのアクションを挙げます:

 第一に、対応努力のすべての局面において、女性の看護師や医師が仲間入りできるよう保障すること。これは、最低でも、生理用ナプキンやタンポンなどの月経衛生用品を、個人防護用品の一部として、女性のケア提供者と最前線の対応者が手に入れられるようにすることを意味します。これにより、すでに困難な状況の中、彼女らが不必要な不快感にさらされずにすむことを保障できます。しかし、最も重要なのは、ケア提供者に話を聞き、彼女らのニーズを把握し、それに対応することです。彼女らは、私たちができる最大限の支援を受けるに値し、特に必要な重要な医療機器についての支援はその最たるものです。

 第二に、すべての家庭内暴力の被害者のためのホットラインとサービスが「基本的(必要不可欠)なサービス」と位置付けられ、開かれ続けることと、法律の実施が被害者からの連絡に対応するためのニーズに敏感であることを保障すること。女性のサバイバーのためのシェルターを基本的サービスのリストに含めたケベックとオンタリオの例に倣うこと。そうすることで、女性の暴力による死の高い割合を親密なパートナーの犯行が占めることに照らしても、パンデミックによる隔離・封鎖期間中、(ジェンダー視点の欠如という)不注意のために、さらなるトラウマ、怪我、死が引き起こされないように保障することができます。

 第三に、救済措置と刺激策は、女性特有の状況の理解とケア経済の認識を反映させた社会的保護措置を含むものでなければなりません。これは、健康保険の恩恵を最も必要とする人や、家にいる子どもや老人の世話のために仕事に来られない人のための有給休暇もしくは病気休暇を保障することを意味します。

 発展途上経済では女性の労働力のほとんどがそうであり続ける非公式経済の労働者にとって、補償給付を行う特別の努力がされるべきです。非公式セクターの労働者への対応は挑戦であり、各国の特殊な状況を考慮する必要は理解しつつも、やはり結果の公平を確保する努力をすることには価値があります。

 第四に、リーダーたちは、対策と回復へ向けた意思決定に女性を含める方法を見つけなければなりません。地域、市町村、国のレベルにかかわらず、意思決定に女性の声を取り入れることは、より良い結果につながります;私たちはさまざまな状況設定から、視点の多様性が最終決定を豊かにすることを知っています。これと同時に、政策策定者は、女性組織の可能性に投資するべきです。女性団体に協力を求めるべく手を差し出すことは、彼女らの注目に値するネットワークが(人混みを避けるという)ソーシャル・ディスタンシングのメッセージを広めるためのテコとなり、より強力な地域からの反応を確保する手助けとなります。エボラへの対応は女性団体の参加による利益を受けたのですから、今回もそうしない手はありませんよね?

 最後に、政策策定者は、人々の家庭で何が起きているかに注意を払い、女性と男性の間のケア負担の平等を支持しなければなりません。世界各地の世帯内で行われているジェンダー役割を「非ステレオタイプ」化する好機です。各国政府ができる、特に男性のリーダー向けの具体的なアクションの一つは、私たちのキャンペーンHeForSheに参加して、私たちが男性・男子が家事の公平負担をすることへの協力を確保して女性に過重にのしかかっているケア負担を軽減するために彼らの協力を呼びかけているHeforShe@homeについての情報に注目し続けることです。

 これらのアクションとそれ以上のことが急務です。女性のニーズを組み入れることは、私たちが「より良い状態への回復」を遂げる好機をもたらします。

 より平等な世界をつくるための政策アクションを実行すること以上の、私たちの共有する人間性に対する敬意の表明はあるでしょうか?□

 (訳/飯田洋子 日本共産党中央委員会・ジェンダー平等委員会)

 

 

 

【障害のある女性の人権保障を~新型コロナ禍が暴き出す課題7/6 藤原 久美子さん(DPI女性障害者ネットワーク 代表)】

 新型コロナウィルス(COVID-19)関連の当初の報道で、横浜港に停泊していたクルーズ船のニュースで食事もまともに運ばれず、洗濯もできないため、ずっと同じタオルを使っていると聞き、施設に収容して人びとの目が届かないところに置かれたハンセン病や障害者の隔離収容のことが頭に浮かんだ。その後、休校要請、緊急事態宣言が発令され全ての人が自由を制限されることになり、自分たちの生活にも影響が出てきた。
 外出や交流できないことは、障害者にとってより深刻さを増す。障害者にとって、学校や住む地域をはじめ様々な場面で活動が制限されがちな中で、外出や人との交流はその世界を広げるとても重要な意味を持つ。特に女性は、普段から「危険だから」と外に出ることを家族から止められることも多い。障害女性が「誰もが大変なのだから、自分さえ我慢すれば・・」と多くのことを諦めてしまうことは容易に想像できる。

 

  • コロナ禍に寄せられた障害女性の声

 私たちDPI女性障害者ネットワーク(以下、DPI女性ネット)は障害女性を中心としたゆるやかなネットワークで、優生保護法(19481996)の撤廃と障害女性の自立促進を目指し1986年に発足した。現在は障害女性の複合差別解消に向け、国内外への情報発信や政策提言等を行っている。
 私たちは、短期間であったが、自分たちや周囲の障害女性が感じている困難の事例を集めた。
 生活上の例としては、家事を担っている女性も多く、食料品や日用品など生活する上で不可欠な買い物ができないことは深刻な問題である。「ガイドヘルパーが感染を恐れて辞めてしまい、買い物に困っている」という視覚障害女性は、米を買うこともできなくなったという。
 感染リスクや医療への不安も寄せられた。身体介助を必要とする人では、マスクをしたままでは食事介助が受けられないなど、介助をする側も受ける側も感染リスクが高い。また基礎疾患のある人もいるため重症化するリスクも高い。もしも感染した場合に介護や医療がどうなるかへの不安も語られた。「家族でさえ立ち入りを制限される病院内に介助者が入ることが許されるのだろうか?病院では介助をする人手はないだろうし、そもそも慣れていない看護師の介助では怪我をしたり、言語障害者の言葉を聞き取れなかったりする。きちんと医療を受けられるのか?」という声もあった。
 他にもDVとも言えそうな「パートナーが感染予防に協力してくれない」という事例もあった。障害女性は家族の中でもより弱い立場にあり、感染予防を強く求めることも難しいことが伺える。
 また医療崩壊に伴うトリアージの可能性に危機感を感じている仲間も多い。自分の優先順位を低く置かされがちな女性、特に障害女性にとって、医療機器が足りないという報道には、不安をより煽られることになる。以前から、例えば進行性の難病などで人工呼吸器を装着すれば生き延びることができる場合にも、女性の方が男性より装着を躊躇する人が多いと聞く。また妻が夫からトイレや入浴の介助を受ける場合のほうが逆の場合よりも抵抗を感じるという。家庭内でケア役割を担ってきた多くの女性は自分がケアされる側になることに抵抗を感じたり、また家族の負担を考えて諦めてしまったりするのだろう。このように、同じ障害者であっても女性であることで、生きづらさがより複雑に絡み合い困難が増幅していく。

 

  • 新型コロナ禍に際し私たちが求めること

 私たちは、実際にDPI女性ネットに寄せられている声にもとづき、また、今後起こるかもしれない、あるいはすでに起きているが表面化していない障害女性の困難を想定し、今年430日、内閣総理大臣・男女共同参画特命大臣・男女共同参画局長に宛て、下記6項目から成る「新型コロナウイルス感染拡大下における障害女性の権利と生活の維持に関わる要望書」を提出した。

1.緊急事態状況下における、障害のある女性を含む脆弱な立場の人に向けられるジェンダーに基づく暴力への対応と、防止に関連する施策を必ず行うこと、また救済へのあら  ゆる段階において、障害のある人への対応を組み込むこと
2
.介助派遣サービスをはじめとする障害者の日常生活支援サービスの維持、ケアワーカーの感染予防対策及び処遇改善
3
.救命医療を含めた医療において人々の命に優先順位をつけないこと、検査と治療へのアクセスの確保
4
.セクシュアルおよびリプロダクティブヘルスに関わるサービスへのアクセスの確保
5
.新型コロナウイルスに関する行政発信情報の情報アクセシビリティの確保
6
.対応・復興等に関わる政策討議の場への複合差別の視点を持った当事者の参画

 これらの6項目がいずれも平常時から必要なことは言うまでもなく、障害女性が安心して介助や治療を受けられる状況は、誰にとっても安心な状況になると考える。
 また医療の現場に命の選別をさせるようなことはしないでもらいたいと願う。医療崩壊が起きたらどう優先順位をつけるか?ではなく、平時から医療崩壊が起こらないように、障害女性もアクセスできる医療体制を整えることが先決である。

 

  • 複合差別の可視化をめぐるDPI女性ネットの歩み

 私たちDPI女性ネットは、障害者に関する性別統計が乏しいことから、障害女性が直面する問題を可視化するため2011年に障害女性を対象にアンケート調査を行い、翌年『障害のある女性の生活の困難~複合差別実態調査報告書』を発行した。
 障害女性の声として一番多く寄せられたのが性被害で、35%の人が何らかの被害を受けていた。障害者は一般的にあたかも性のない存在であるかのように扱われ、病院や施設などで障害女性のトイレや入浴介助を男性が行うこと(異性介助)も多々ある。こうした中、生きる場である家庭や施設の中で深刻な性被害が起きていること、しかも経済的な立場の弱さや介助者に頼らざるを得ないために被害から逃げることもなかなかできないことが明らかになった。しかもDVシェルター等は障害のある人が利用することを想定しておらず、相談窓口にさえたどり着けないことも多い。ジェンダー施策(男女共同参画等)には障害者の視点が抜けており、また障害者施策にはジェンダー視点が乏しいことから、障害のある女性の課題が「制度の谷間」に落ちて救済されない状態にある。女性の課題と障害者の課題が複雑に絡み合い困難が増幅していくこと、これが障害女性の複合差別である。 

 

  • 性と生殖に関する健康・権利を求めた活動

 障害女性にとっては医療や保健を含め公的サービスへのアクセスも充分でなく、特に「性と生殖に関する健康と権利」 (SRHR:セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツ)については、これまでずっと否定されてきた過去がある。
 かつて日本では障害者の出生を否定する優生保護法が強制不妊手術や優生上の理由による中絶を認めていた。強制不妊手術の被害者はわかっているだけでも約16,500人にも上り、その7割が女性だった。また月経時の介助側の負担軽減を理由として、優生保護法が認めていない子宮摘出や放射線照射が障害女性に対し行われた。
 私の住む兵庫県では優生保護法を背景に「不幸な子どもの生まれない県民運動」(19661974)が展開され、当時行われ始めた羊水検査による出生前診断も推奨された。このキャンペーンは全国30もの自治体に波及した。未だに兵庫県は謝罪や調査、検証もしていない。
 私が妊娠した2004年には、すでに優生保護法は母体保護法に改正されており、優生的な文言は削除されていたが、私自身が優生保護法と県民運動のことを知ったのはDPI女性ネットと出会ってからで、周囲の反対を押し切って妊娠を継続・出産し、その子が5歳くらいになった頃のことである。その時初めて、医者や親族が私に中絶を勧めたのは、こういった土壌があったからなのだと理解した。後に親族には「そんな県民運動のことは知らない」と言われたが、「障害者は不幸」という認識は社会の中に植え付けられ、運動が終わった後にもずっと人々の心の中に芽吹いていたのだと感じる。
 さらに、こうして恋愛や結婚・出産、就労など困難だと思われてきた障害女性が縁あって結婚したり、就労できたりした場合、例えそこでDVやハラスメントを受けたとしても容易に手放すことはできないことは理解できる。「やっと○○できたのだから」と周囲から我慢を強いられたり、自らも声に出すことさえ躊躇してしまったりするのだろう。DV相談窓口に障害女性がなかなか繋がれないのは、アクセシビリティの問題だけでなく、そういった背景が強く作用しているため表面化してこないのだと思われる。
 そして平常時からの課題が緊急時にはより顕著な形で現れることは、これまでも東日本大震災などで経験してきたことである。
新型コロナ禍に関しても、緊急事態宣言が解除され徐々に経済活動が再開されていく中でまた新たな不安もでてきている。実際に声があがっていないから困難がない訳なのでなく、声をあげることすらできないほど深刻な場合もある。
 DPI女性ネットでは、どんな些細と思うことでもぜひ声を寄せてもらいたいとアンケートを継続している。入力フォームもホームページ上で公開しているので、協力をお願いしたい。
(DPI
女性障害者ネットワーク「新型コロナウイルス感染拡大の中で困ったこと、嫌だったこと、不安なこと、あなたの経験をお寄せください」)

DPI女性障害者ネットワーク

「新型コロナウイルス感染拡大下における障害女性の権利と生活の維持に関わる要望書」 PDF

『障害のある女性の生活の困難~複合差別実態調査報告書』

 

 

【コロナ禍で消えた非正規の女性雇用、アベノミクスの成果ご破算に .bloomberg  7/3

 片沼麻里加、竹生悠子

 ・女性就業者数は4月に8年ぶり減、非正規雇用者減少分の7割が女性

・指導的地位の女性「20年までに30%」、政府目標達成には程遠い状況

 安倍政権が成長戦略の柱の一つに掲げる「女性活躍の推進」に強い逆風が吹いている。コロナショックで急激に経済が悪化する中、女性就業者数は4月に前年比で約8年ぶりの減少に転じ、雇用の調整弁となりがちな非正規雇用者の過半を占める女性の立場の弱さが浮き彫りになった。

   安倍晋三首相が201212月の政権復帰以来、女性の社会進出を積極的に後押ししてきた結果、新たに330万人の女性が職に就いた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府が緊急事態宣言に踏み切った4月以降は、女性の非正規雇用者が真っ先に解雇や雇い止めに追い込まれている。

   緊急事態宣言下の5月、小久保泰子さん(49)は2年間パートとして勤めた土産卸売会社から解雇を言い渡された。都内で夫、小学3年生の息子と暮らす小久保さんは、子育てにも協力的だった職場は「お金で買えないものだった」と肩を落とす。自身の収入が途絶えて不安だが、第2波による休校の可能性が払拭(ふっしょく)できず、復職に踏み切れずにいる。

  大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、「アベノミクスの最大の功績はインバウンドで、2番目は女性の雇用」と指摘。しかし、こうした成果は新型コロナウイルスの世界的流行によって「一瞬にして吹き飛ばされた」とし、女性に対する影響は特に「象徴的だ」と語る。

 ◆コロナショック 女性就業者数は8年ぶりに減少、非正規雇用者減少分の7割が女性

   労働力調査によると、パートやアルバイトなど非正規雇用者は4月に同97万人、5月には同61万人それぞれ減少し、女性の割合がいずれも7割を超えた。一方、正規雇用者は4月に同63万人増、5月に同1万人減だった。雇用者全体に占める非正規雇用者の割合は、5月時点で女性が53%と男性の22%を大きく上回る。

  労働政策研究・研修機構(JILPT)が5月下旬に実施した「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査」によると、未成年の子供がいる女性会社員の3-4月の平均税込み月収は通常月に比べ8.8%減と、男性会社員の3.9%減を上回る減少率となった。

   山猫総合研究所代表の三浦瑠麗氏は、「家事や育児の約8割を女性が担っている結果、子供の休校で女性がまず働けなくなり、非正規労働者の女性が真っ先に雇い止めに遭っている」と指摘。「政府が意図せざる男女間の格差拡大を招いてしまった」とし、ジェンダー平等の観点に「壮大に逆行する事態が起きた」と危機感を示す。

 *働く女性の6割が非正規 8割弱の男性は正社員、パートやアルバイトが過半数を占める女性と大きな差

   「まず子供、次に仕事という女性が多い」。企業に対して産育休取得前から復帰前後までの一括サポートなどを実施しているNPO法人Arrow Arrow代表理事の海野千尋氏はそう語る。3月に政府が全国的な臨時休校を要請した段階で、多くの女性は自主的に就業を中断せざるを得ない状況に陥ったと指摘する。

   JILPTの調査結果は、母親が職場から家庭に回帰した傾向を裏付ける。自ら離職した人や求職活動をしていない人の割合が、未成年の子供がいる女性が2.2%と、男性の0.7%に比べて高い。休業者の割合は、男性の1.6%に対し、女性は4.7%で、未成年の子どもがいる女性では7.1%に達した。

   内閣府の男女共同参画局によると、6歳未満の幼い子供を持つ日本の夫婦のうち、妻は夫の6倍の時間を育児と家事に費やしている。米国、フランス、ドイツでは、この比率はほぼ2倍となっている。

   日本女性の約4割が小売りや観光、外食のサービス・事務業に従事していることも、コロナショックの影響が男性よりも大きい理由の一つだ。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、サービス業で働く非正規社員の現金給与総額は、4月に他の産業を上回る減少となった。

   IHSマークイットの田口はるみ主席エコノミストは、小売りは自粛解除に伴って雇用が回復に向かう傾向だが、観光業では影響が長期化する可能性が高いため、今後も失業者が増える可能性は大きいとみる。

 *パート女性、日本が伸び率トップ  女性雇用者のうち、非正規が占める割合

   日本女性の就業者数は昨年6月に初めて3000万人を突破した。ただ、非正規雇用者が一貫して増えているのに対して、正規雇用者の比率は20年前と比べて1割減っている。経済協力開発機構(OECD)加盟国の半数以上で、女性雇用者のうち非正規が占める割合が減少傾向にある中、日本では05年と18年を比較すると6.6%上昇しており、34カ国中で伸び率がトップだった。

 ■女性リーダー

 安倍政権は15年に男女間の実質的な機会の平等を保つため、指導的地位に女性が占める割合を「20年までに30%」まで引き上げる数値目標を設定した。しかし、現状は目標には程遠く、政府は達成年限を「30年までの可能な限り早期」に繰り延べる調整に入ったと毎日新聞が報じた。

   安倍政権発足から既に7年半が経過したが、世界経済フォーラムが公表した男女格差に関する最新の報告書で、日本は153カ国中121位に依然とどまっている。

   特に政治の分野における女性進出の遅れは著しい。日本は政治エンパワーメントの部門で153カ国中144位。現在19人いる閣僚のうち女性はわずか3人で、全国47都道府県の女性知事は小池百合子東京都知事と吉村美栄子山形県知事の2人だけだ。

   内閣府によると、日本の女性議員の比率は増加傾向にあるが、19年の時点で、衆議院9.9%、参議院22.9%にとどまっている。18年の時点で、女性議員が一人もいない町村議会は32.9%に上る。

  ゴールドマン・サックス証券の副会長で、女性の活躍推進によって経済を活性化する「ウーマノミクス」という造語の生みの親でもあるキャシー・松井氏は、候補者や議席で一定数の女性登用を義務付けるクオータ制の導入が有効だと指摘する。2000年に同制度を導入した韓国では、08年時点で女性候補の比率が2倍以上に上昇したという。

   山猫総研の三浦氏は、公務員や政治家が率先して女性のリーダーシップや男女平等のロールモデルを示す必要があると指摘。「地方公務員の枠を増やし、そこでジェンダーギャップ解消のためにも福祉に専門性のある女性を活用すべきだ」と提言する。

 

  TOPIX構成企業が開示した最新データを基に、ブルームバーグが行った試算では、取締役会に女性が占める割合は6%に上昇したが、政府が掲げる30%の目標に達した企業は全体の1%にとどまっている。

   政府は1日、「すべての女性が輝く社会づくり本部」の会合を開き、女性の活躍を加速させる新たな方針を決定した。安倍首相は、過去7年間で上場企業の女性役員が3倍以上に増えたとし、5月に改正した女性活躍推進法では、女性活躍に関する情報開示などの義務の対象企業が拡大されたと成果を訴えた。

 

  これに対してゴールドマンの松井氏は、これら情報開示の問題点として「強制力がない」点を指摘、さらに標準化されておらず、どのようなタイプのデータを公開するか企業が選べるようになっているため、「企業間の比較が困難」な点を挙げている。

   その上で、日本企業が非常に優秀な女性人材を引きつけたいのなら、「社内のジェンダーの状況について透明性を大きく向上させるところから始めなければならない」と提言。人口の半分でこうした「頭脳流出」が起きれば、日本社会と将来の世代にとって悲惨だと語る。

   一方、野村総合研究所の武田佳奈上級コンサルタントは、在宅勤務の普及に伴い環境変化の兆しも見られると指摘する。同社が5月末に実施した調査では、男性の在宅時間増加が家事育児に従事する時間の増加につながる可能性が示唆されたとし、「働き方を変えることで、家事や育児に携わる人が増えることがうかがえた」と言う。

   日本では家事代行サービスの普及が遅れているが、経済的な負担や家に第三者を入れることへの心理的な抵抗感が利用の障壁だと武田氏は説明。コロナの影響で多くの女性が家族以外のサポートの重要性に気付いたとし、「家事代行サービスを活用し、仕事を継続することが大事だという意識は今回をきっかけに広まった」と語る。

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