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東京都政 「債権発行で20兆円の財源つくる」を考える

 都知事選にあたって、都債を発行しコロナ対策等に充てるという主張をしている複数の陣営がある。

代表的な方は、「総務省に確認して、都があと20兆円ほど都債を発行できることを確認している」とのべ、都民全員に10万円給付、学費無料などに15兆円を充てると述べている。

 庶民の暮らしを温めること、福祉の増進こそ自治体の使命であり、その方向性は大いに共感できる。

 

が、地方自治体が、国のように赤字国債を発行して財源をえることが可能なのか。また、「総務省と確認したという「20兆円」とはどういうことか・・・を考えてみる。

あわせて背景にあるMMT「理論」についても。

 

 

 

◆地方債とは 

①自治体の債券発行は法律で限定されている。

地方債とは、地方公共団体が財政上必要とする資金を外部から調達することによって負担する債務で、その履行が一会計年度を超えて行われるものをいいます。地方債は原則として、公営企業(交通、ガス、水道など)の経費や建設事業費の財源を調達する場合等、地方財政法第5条各号に掲げる場合においてのみ発行できることとなっています。

ただし、その例外として、地方財政計画上の通常収支の不足を補填するために発行される地方債として臨時財政対策債が平成13年度以降発行されています。【地方債制度の概要 (財務省HPより  下段に引用】

 特例的な赤字地方債である臨時財政対策債(これは、交付税の原資の不足をカバーするために、交付税率を上げずに、目先をやり過ごそうと編み出されたもので、スキームとしては国があとで全額交付税措置をするとなっている)以外(他にも、地方財政計画の税収見込みが狂った場合の「減収補填債」とか)は、基本は、耐用年数の長いハード事業に充てるために発行されている(長く使うものは、その間の住民が公平に負担をする「世代間の負担の公平」の考えのもと、あえて借金をしてとりくむ。)

 その地方自治体が発行できる起債を定めた「地方財政法第5条」が以下の内容・・・

 

(地方債の制限)

第五条

1 地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。但し、左に掲げる場合においては、地方債をもつてその財源とすることができる。

一 交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共団体の行う企業(以下公営企業という。)に要する経費の財源とする場合

二 出資金及び貸付金の財源とする場合(出資又は貸付を目的として土地又は物件を買収するために要する経費の財源とする場合を含む。)

三 地方債の借換のために要する経費の財源とする場合

四 災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合

五 普通税(地方消費税、道府県たばこ税、市町村たばこ税、鉱区税、狩猟者登録税、特別土地保有税及び法定外普通税を除く。)の税率がいずれも標準税率以上である地方公共団体において、戦災復旧事業費及び学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設事業費並びに公共用若しくは公用に供する土地又はその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入費(当該土地に関する所有権以外の権利を取得するために要する経費を含む。)の財源とする場

2 特別区が地方債をもつて前項第五号に掲げる事業費及び購入費の財源とすることができる場合は、東京都が地方債をもつてその財源とすることができる場合でなければならない。

となっており、福祉サービス、教育などソフト面での一般施策の強化のために、地方債は発行できないというのが結論。

 もし、これを変えたいなら国政の場での活動が必要となる。

 

 2017年に、財務省が地方自治体の基金が増加していると、地方財源の削減を図ろうとした。それに対し地方は「地方は、国と異なり、金融・経済・税制等の広範な権限を有していないことから、国と地方の財政状況を単純に比較することは不適当である。」「地方は赤字地方債の発行権限が限定されていることから、税収が上振れた場合には、将来の財政需要に備え基金への積み立てを行うなどの対応を行ってきた。」と反論しているのも、その証左。

「国と地方の単純な財政比較、国による効果の判定に異議  地方財政審議会・意見 2017/01

 だからこそ、国の地方財政計画において、社会保障費(ほとんどは国の制度)、生活困窮者支援・虐待防止など行政重要の拡大にみあった一般財源の手当てを厚くすることが地方の要求として出てくる。

 非正規の多さ、マンパワー不足もここが原因なので、この改善は大事!

 

②「総務省に確認した20兆円」とは・・・

政府は、地方が財政運営で破綻しないよう、いくつかの指標を設けて、危険ラインを超えると「財政再建計画」をつくることを義務付けている(地方財政健全化法/ 夕張ショックをテコに導入)。

 

例えば実質公債費比率、将来負担比率とかは、自治体の財政規模に対して、毎年度の借金払いは、どこまでが限界か、自治体の将来負担(借金払い、退職金支出 から 貯金である基金残高などを引いたもの)が、財政規模の350%が限度ですよ、など。

 財政力の高い(交付税の不交付団体)東京では、これらの指標は低く、財政健全化法のレットラインまで、ハード建設などで、あと20兆円ほど借金残高を増やすことが可能だ、というだけの話。

 それの借金をした金で、どんなことにも使えるというとは意味が違う。

★私の推論   国のしくみと地方の仕組みをごっちゃにしているのではないか。

 

◆かげを落とすMMT「理論」

 ざっくり言えば、貨発行権をもつ国は、いくら国債を発行しても破綻しない、ハイパーインフレはおこらない(イタリアは通貨発行権がないので、債券を外資に買ってもらっていたために大きな傷をうけた。)

 政府と中央銀行を、広い意味の政府ととらえたら、政府の負債は、中央銀行の債権となり、プラスマイナスゼロとなる。だからどんどん赤字国債を発行して、需要を喚起することが今重要。その典型が「日本だ」という「論」がある。

 

が、

  • 日銀は、大量に国債引き受けているが、その多くは日銀の当座預金に積みあがっているだけで、市中には出回っていない(マネタリーベースは大きく増えているが、マネーストックはそんなに増えてない)。有効需要が発生していないから。
  • その本質は、巨大金融資本に利益をもたらす構造にある。・・・・当座預金のルール内分の利息(金融危機の時に、本来無利子なのに利息を導入)、金融機関が購入した国債がより高い値段で購入。果ては年6兆円の株式購入という世界中の中央銀行もしてない奇策での株価した支え
  • 現在の国債残高は、民間の貯蓄総額1500兆円の枠内であり、国内資金で担保がある。ことによる。

 

 などによって、危機をためこみながらも、なんとかバランスをとっている、と理解している。

 

 *ここで、赤字国債の大量発行(お札を刷るイメージ)による需要喚起をしたらどうなるか

 すべてが国内で完結している閉鎖市場であれば、消費拡大をきっかけに経済回復、税収増につながる可能性がないではないが、完全に閉鎖された国は、ほぼ存在しない。

 特に、日本はエネルギー、鉱物のほとんど、食料の6割を外国に依存している国である。赤字国債の大量発行で生み出した財源で、外国から前と同じ「価格」で輸入できるだろうか。それは無理である。

  100の力の国が、お札を刷って200の力に見せかけても、外国から見れば100に変わりがない。つまり外国相手には通貨の価値が1/2になるということ。バイパーインフレの引き金となる。

  そうした苦難から生まれた教訓として、中央銀行の政府からの独立という仕組み、赤字国債の引き受け(財政ファイナンス)の禁止というルールをつくってきた。政府と中央銀行を一体ととらえる考えは、大いに問題がある、と認識している。

 なお、日銀による国債の大量購入という「異次元の金融緩和」にも、その側面がある。一気に円安となり・・・輸出大企業は、外国で作った利益が同じでも、円建てでは大きく利益を拡大した。一方、庶民、中小業者は原料、食料の値上げに苦しんだ。だから不況が継続している。

【迫る財政金融破綻と資本の強蓄積 アベノミクスの到達点(メモ) 2019/12

【「MMT」 現代資本主義の行き詰まりから出た極論・謬論 2019/11

 

 利益第一主義の新自由主義のゆがみ、行き詰まりは、「一方における富の蓄積、他方における貧困の蓄積」をもたらす資本主義生産様式に対し、法によって社会が外部から強制し、社会と自然にとって理性的な姿に変えていく以外にはない。その力の源泉は、各国の国民の共同のひろがり、たたかい如何とおもっている。

【「資本論」を基礎に貧困・格差を考える(メモ) 2014/04

 

【地方債制度の概要 (財務省HP

地方債とは

地方債とは、地方公共団体が財政上必要とする資金を外部から調達することによって負担する債務で、その履行が一会計年度を超えて行われるものをいいます。地方債は原則として、公営企業(交通、ガス、水道など)の経費や建設事業費の財源を調達する場合等、地方財政法第5条各号に掲げる場合においてのみ発行できることとなっています。
ただし、その例外として、地方財政計画上の通常収支の不足を補填するために発行される地方債として臨時財政対策債が平成13年度以降発行されています。

翌年度の地方債の予定額の総額については、各年末に国から地方債計画が公表されます。 地方債について、地方債計画に則して、資金別、事業別、会計別に分類すると、それぞれ次のとおりとなります。

A 資金別の分類

地方債を引受先の資金面から分類すると、公的資金(財政融資資金、地方公共団体金融機構資金)及び民間等資金(市場公募資金、銀行等引受資金)に大別されます。

このうち、財政融資資金は、財政投融資計画に地方公共団体向けの財政融資として計上されます。

B 事業別の分類

地方債を対象となる事業別に分類すると、一般会計債においては公共事業等、教育・福祉施設等整備事業、辺地及び過疎対策事業等、公営企業債においては水道事業、交通事業、病院事業・介護サービス事業等に分類され、地方債計画にはそれぞれ事業ごとの予定額が計上されます。

(解説)

地方公共団体金融機構資金
地方債資金のうち、地方公共団体金融機構(以下「機構」という。)が貸し付ける資金をいいます。政策金融改革により、公営企業金融公庫が廃止され、機構は、全ての地方公共団体からの出資を受けて平成20年度に地方共同の金融機構として設立されました。地方公共団体に対して長期かつ低利の資金を融通するとともに、地方公共団体の資本市場からの資金調達に関して支援を行うことにより、地方公共団体の財政の健全な運営及び住民の福祉の増進に寄与することを目的としており、21年度以降は、公営企業金融公庫と異なり、公営企業債に加え、広く一般会計債、臨時財政対策債も貸付対象となっています。

市場公募資金
地方債資金のうち、広く投資家に購入を募る方法により調達した資金をいいます。全国型市場公募地方債においては、地方公共団体が単独で発行する個別発行に加え、発行ロットを大型化し、発行コストの低減、安定的な調達等を図るため、平成15年度から共同発行が実施されています。このほか、地方債の個人消化及び公募化を通じて資金調達手法の多様化を図るとともに、住民の行政への参加意識の高揚を図るため、全国型の市場公募地方債以外に、平成14年3月以降、「住民参加型市場公募地方債」の発行が実施されています。

銀行等引受資金
地方債資金のうち、金融機関等から、借入れ又は引受けの方法により調達した資金をいいます。

なお、財政融資資金が活用されている事業については貸付対象事業の概要をご覧ください。

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