新型コロナ対策で、生活保護の積極活用の通知 ~稼働能力・車保有など大幅緩和
2020年4月7日、厚生労働省の生活保護行政を担当している社会・援護局保護課の通知。、
① 申請にあたって調査すべき事項は最低限で足りる ② 「働けるかどうか」「働ける場があるか」(稼働能力活用)の判断は後回しでかまわない ③給食、保育への送迎、事態終息後、収入増が期待できる人の通勤用の車の所有は可とする、など、を示しており、
ブラック企業被害対策弁護団副代表などをつとめる戸舘圭之弁護士は、「現在、生活に困っている人が申請をしたら、つべこべ言わずにとにかく生活保護を開始しなさい!」ということと、通知の意義を説明している。
【生活保護 厚労省から新型コロナ対策で生活保護の積極利用をすすめる事務連絡が出されました。弁護士 戸舘圭之 !2020-4-9】
【生活保護 厚労省から新型コロナ対策で生活保護の積極利用をすすめる事務連絡が出されました。弁護士 戸舘圭之 !2020-4-9】
2020年4月7日、厚生労働省の生活保護行政を担当している社会・援護局保護課は、
新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における対応について
https://www.mhlw.go.jp/content/000619973.pdf?fbclid=IwAR3NcWWme2KnNubK4VH8JAXAeOj1PJ7T75BkRIzsm2f5F6OP5V1pfiY-qV0
という「事務連絡」を出しました。これによりますと、
生活保護の申請などにあたり、面談等を行う場合の新型コロナウイルス対策についていろいろ書かれておりますが、
特筆すべきは、
- 申請にあたって調査すべき事項は最低限で足りる
ことを明確に示し、さらには
- 「働けるかどうか」「働ける場があるか」(稼働能力活用)の判断は後回しでかまわない
ということを厚労省が明確に示した点です。
これは、ようするに、現在、生活に困っている人が申請をしたら、つべこべ言わずにとにかく生活保護を開始しなさい!
ということになります。
これらの対応は、憲法25条1項、生活保護法の基本的考え方からすれば当然のことではありますが、この当然の対応を厚労省が今回の新型コロナウイルス問題ではっきりと明言した意味は大きいです。
以下に今回の事務連絡で重要と思われるところを抜粋しておきます。
【参考引用】
「(1)申請相談について 生活保護の申請相談にあたっては、保護の申請意思を確認した上で、申請の意思がある方に対しては、生活保護の要否判定に直接必要な情報のみ聴取することとし、その他 の保護の決定実施及び援助方針の策定に必要な情報については、後日電話等により聴取 する等、面接時間が長時間にならないよう工夫されたい。また、対人距離を確保した上 でマスクを着用する等、感染のリスクを最小限とするようにされたい。
なお、 「新型コロナウイルス感染防止等に関連した生活保護業務及び生活困窮者自立支 援制度における留意点について」(令和2年3月 10 日厚生労働省社会・援護局保護課 地域福祉課生活困窮者自立支援室連名事務連絡。以下「事務連絡」という。)の「3 適切 な保護の実施」にあるとおり、面接時の適切な対応(保護の申請権が侵害されないこと はもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきこと等)、速やかな保護 決定等については、引き続き特に留意されたい。 」
「(1)稼働能力の活用について 局長通知第4において、稼働能力を活用しているか否かについては、実際に稼働能力 を活用する場を得ることができるか否かについても評価することとしているが、緊急事態措置の状況の中で新たに就労の場を探すこと自体が困難であるなどのやむを得ない 場合は、緊急事態措置期間中、こうした判断を留保することができることとする。 」
【資料】
事 務 連 絡
令 和 2 年 4 月 7 日 厚生労働省社会・援護局保護課
新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における対応について
生活保護行政の推進につきましては、平素から格段の御配慮を賜り厚く御礼申し上げます。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、令和2年3月 26 日、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成 24 年法律第 31 号)第 15 条第1項に基づく政府対策本部が設置され、同年4月7日に、新型コロナウイルス感染症対策本部長は同法第 32 条第1項に基づき、緊急事態宣言を行ったところです。
こうした状況を踏まえ、緊急事態措置区域における緊急事態措置期間の生活保護業務の取扱いについては、下記のとおり対応していただきますようお願いいたします。なお、その他の区域及び期間においても、組織的な判断の下、同様に取り扱っていただいても差し支えありません。併せて、都道府県におかれては管内実施機関に対し周知方お願いします。
記
1 保護の申請相談、訪問調査等における対応について
(1)申請相談について
生活保護の申請相談にあたっては、保護の申請意思を確認した上で、申請の意思がある方に対しては、生活保護の要否判定に直接必要な情報のみ聴取することとし、その他の保護の決定実施及び援助方針の策定に必要な情報については、後日電話等により聴取する等、面接時間が長時間にならないよう工夫されたい。また、対人距離を確保した上でマスクを着用する等、感染のリスクを最小限とするようにされたい。
なお、「新型コロナウイルス感染防止等に関連した生活保護業務及び生活困窮者自立支援制度における留意点について」(令和2年3月 10 日厚生労働省社会・援護局保護課 地域福祉課生活困窮者自立支援室連名事務連絡。以下「事務連絡」という。)の「3 適切な保護の実施」にあるとおり、面接時の適切な対応(保護の申請権が侵害されないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきこと等)、速やかな保護決定等については、引き続き特に留意されたい。
(2)訪問調査活動について
「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和 38 年4月1日社発第 246 号厚生省社会局長通知。以下、「局長通知」という)第 12 の1の(2)における訪問計画に基づく訪問については、当分の間、緊急対応等最低限度必要なもののみ実施することとされたい。なお、予定されていた訪問を延期する場合、電話連絡等により生活状況等を聴取するなど、できる限り生活状況の把握に努め、臨時訪問の要否についても確認されたい。
局長通知第 12 の1の(1)における申請時等の訪問及び局長通知第 12 の1の(3)における臨時訪問等やむを得ず訪問を実施する必要がある場合には、「新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における留意点について」(令和2年2月 27 日厚生労働省社会・援護局保護課事務連絡)を参考に、十分に注意を払った上で行われたい。なお、訪問の際の調査の内容は実地に確認等が必要な事項に限定し、その他の事項等については、後日電話等により聴取する等、訪問時間が長時間にならないように工夫されたい。
(3)面接について
生活保護受給者に福祉事務所への来所を求めて面接することは、緊急を要する場合のみに限定するとともに、やむを得ず面接を実施する場合には、対人距離を確保した上でマスクを着用する等、感染のリスクを最小限にするよう配慮した上で実施されたい。
(4)訪問・面接等における感染拡大防止のための取組について
訪問調査活動、面接等の機会において、地域における要請の状況等を踏まえ、被保護者に対して感染拡大の防止のための行動を促すよう努めていただきたい。
また、受給相談、面接等の待機場所についても、感染拡大の防止に配慮した対応を行っていただきたい。
2 保護の要否判定等における留意事項について
(1)稼働能力の活用について
局長通知第4において、稼働能力を活用しているか否かについては、実際に稼働能力を活用する場を得ることができるか否かについても評価することとしているが、緊急事態措置の状況の中で新たに就労の場を探すこと自体が困難であるなどのやむを得ない場合は、緊急事態措置期間中、こうした判断を留保することができることとする。
(2)一時的な収入の減により保護が必要となる場合の取扱いについて
今般、一時的な収入の減少により保護が必要となる者については、緊急事態措置期間経過後には、収入が元に戻る者も多いと考えられることから、保護の適用に当たっては下記の点等について留意すること。
・保護開始時において、就労が途絶えてしまっているが、緊急事態措置期間経過後に収入が増加すると考えられる場合で、通勤用自動車を保有しているときは、「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和 38 年4月1日社保第 34 号厚生省社会局長保護課長通知)第3の問9-2に準じて保有を認めるよう取扱うこと。なお、「公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住している者については、求職活動に必要な場合に限り、当該自動車の使用を認めて差し支えない」としているところ、「求職活動に必要な場合」には、例えば、ひとり親であること等の理由から求職活動を行うに
当たって保育所等に子どもを預ける必要があり、送迎を行う場合も含めて解して差し支えない。
・臨時又は不特定就労収入、自営収入等の減少により要保護状態となった場合であっても、2(1)の趣旨も踏まえ、緊急事態措置期間経過後に収入が増加すると考えられる場合には、増収に向けた転職指導等は行わなくて差し支えないこと。また、自営に必要な店舗、機械器具等の資産の取扱いについては、上記の通勤用自動車の取扱いと同様に考えていただいて差し支えない。
3 一時的な居所の確保が緊急的に必要な場合の支援について
失業等により居所のない者から保護の相談・申請があり、一時的な居所を緊急的に紹介する必要がある場合の支援については、事務連絡の3-(3)に基づき、引き続き適切に行われたい。
なお、一時的な宿泊料に係る住宅扶助基準について、これによりがたい場合は、厚生労働省社会・援護局保護課宛て協議すること。
4 医療扶助における医療券方式の取扱いについて
医療扶助の決定については、医療扶助運営要領により対応いただいているところであるが、当面の間、被保護者が福祉事務所を訪れることなく手続きできるよう配慮した形で実施することとして差し支えない。具体的な対応例としては、被保護者からの医療扶助申請は基本的に電話連絡等で受け付け、特段の事情がない限りこの申請をもって医療券の発行を待たずに医療機関の受診を認め、その旨医療機関に連絡し、要否意見書や医療券の交付は、後日、被保護者を介さずに医療機関と福祉事務所とが直接やり取りするといったような対応が考えられる。
この他、令和2年3月4日付けで発出した「新型コロナウイルス感染症に係る公費負担医療の取扱いについて」にて示した、医療券の提出ができない場合の対応についても引き続き同様の取扱いとする。
こうした医療扶助に係る取扱いについて、従来の取扱いからの変更となる場合には、管内医療機関に周知されたい。
また、医療券の発行に当たっては、令和2年2月17日付けで発出した「「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」を踏まえた対応について」別添の内容を踏まえ、必要に応じて帰国者・接触者相談センターへの相談を促すなどの対応をいただきたい。
5 自立相談支援機関と福祉事務所の連携について
自立相談支援機関と福祉事務所の連携については、事務連絡の2において依頼しているところであるが、自立相談支援機関において生活保護が必要と判断される者を福祉事務所につなぐ場合や、福祉事務所において生活困窮の端緒を把握して自立相談支援機関につなぐ場合については、本人の同意を得た上で、各担当において把握している情報等について事前に提供するなど、相談者に対し効果的かつ継続的な支援が提供されるよう、引き続き緊密な連携に留意されたい。
以上
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