年金改定、検察人事介入、スーパーシティ、種苗法、辺野古設計変更 … コロナ禍に乗じ悪法次々
政府の科学にもとづかない、政治プレーに偏重したコロナ「対策」が、後手悪手で、苦境がますなか、コロナ報道に隠れて、悪法が次々と・・・
首相自身の犯罪行為を伏せこむための検察人事に介入できる法案、コロナでてんてこ舞いの厚労省をまきこむ年金受け取り年齢を引き上げる法案、市場原理主義にもとづき巨大IT企業、アグリビジネスの利益を優先するスーパーシティ法案、種苗法改定法案。軟弱地盤で建設不可能になっている辺野古の設計変更・・・。厳しい監視が必要! コロナに便乗した改憲議論の推進も注意!
【主張 コロナ国会の審議 不急の法案持ち出す時でない 4/21】
【主張 コロナ国会の審議 不急の法案持ち出す時でない 4/21】
◆年金制度改定法案は、野党が審議見送りを求めていたにもかかわらず、14日の衆院本会議で審議入りしました。公的年金の受け取り開始時期を60~75歳(現行70歳まで)に拡大することなどが盛り込まれています。年金を実質削減するマクロ経済スライドはそのままです。問題ある仕組みを放置し、老後のお金を確保するのは国民一人一人の「自己責任」でという安倍晋三政権の考え方に基づく制度改変です。国民が願う「頼れる年金制度」にはつながりません。
国民の将来の人生設計に直結する年金制度の改変の議論を、この時期に急ぐ理由は見当たりません。いま政府が全力を注ぐべきは、新型コロナの感染爆発を抑え込み、医療の崩壊を止めるための緊急対策です。年金制度改定法案を担当する厚生労働省は、新型コロナ対策を中心となって担うべき官庁です。すでに同省の職員は多忙を極めています。新型コロナへの対応に専念してもらうためにも、同改定法案の審議を推し進めることはあまりに問題です。
◆与党は16日の衆院本会議で、検察庁法改定案を含む国家公務員法等改定案の審議入りを強行しました。検察官の定年年齢を引き上げるなどの検察庁法改定案は、内閣による検察人事への介入を恒常化させかねない極めて危険な法案です。安倍内閣は今年1月、従来の政府解釈を翻して、首相に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の定年を延長する閣議決定をしました。改定案は、この違法行為を追認し、正当化するものであり、検察の独立性の根幹を大本から揺るがすものです。撤回すべき法案です。新型コロナのどさくさにまぎれて、悪法を押し通すことなど絶対に許されません。
◆16日に衆院を通過した国家戦略特区法改定案(スーパーシティ法案)も、重大な問題をはらんでいます。人工知能(AI)やビッグデータなど先端的な技術を使った事業を官邸主導の「規制緩和」で導入するというものです。個人情報を収集・活用することは住民のプライバシー保護や権利がないがしろにされる恐れが濃厚です。特定の企業を優遇する仕組みを強化する同法案は不必要です。
【<社説>辺野古設計変更申請 建設断念しコロナ対策を 琉球新報4/23】
沖縄の民意に反する上、実現性すら明確ではない工事を強行するのは血税の無駄遣い以外の何物でもない。政府は現行計画を抜本的に見直し、県内移設を伴わない普天間飛行場の全面返還に大きくかじを切るべきだ。
米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、政府が軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更を県に申請した。改良工事が必要な地盤は大浦湾側の約66・2ヘクタールで、総経費は9300億円に達する。そのうち約1千億円が地盤改良の費用となる。
約4年1カ月をかけ、砂ぐいなど約7万1千本を打ち込む工法だ。県が承認した時点から埋め立て工事を経て米軍の使用開始までに12年かかると見込んでいる。
辺野古移設が普天間飛行場の早期返還につながらないことが一層鮮明になった。
防衛省の調査は、軟弱地盤が水面下90メートルに達するとされる地点で、別の3地点の調査から強度を推定し「非常に硬い」と結論付けた。有志の大学教授らでつくる調査団は調査手法を疑問視し、地盤崩落、護岸倒壊の可能性を指摘している。
工事を前に進めることを優先し、おざなりの調査で済ませた可能性がある。
前例のない難工事であることに加えて、新型コロナウイルス感染症対策で膨大な国費を投入しなければならない財政事情を踏まえると、完成は全く見通せない。
政府は2014年には埋め立て工事に要する総事業費を「少なくとも3500億円以上」と説明していた。国民の反発を回避するため過少に見積もったのだろう。現時点の総経費はその約2・7倍だ。
土砂の投入は18年12月から始まっているが、県の試算によると、数%程度しか進んでいない。完成を見ないまま、工期と工事費だけが膨らんでいく事態が予想される。
新型コロナのまん延で、日本経済はかつてない危機に直面している。その中で、最終的にいくらかかるかさえ判然としない米軍基地の建設に巨額の血税を投じるのは狂気の沙汰だ。到底、国民の理解は得られない。
この間、政府は沖縄県民に対して誠意のない態度を取り続けてきた。地質調査でマヨネーズ並みの軟弱地盤の存在を早くから把握していたにもかかわらず、ひた隠しにした。18年3月に市民の情報開示請求で明らかになった後もごまかし続けた。安倍晋三首相が国会で初めて認めたのは昨年1月のことだ。
全都道府県が緊急事態宣言の対象地域になり、県がコロナ対策に忙殺されるさなかに設計変更を申請したのは大きな問題だ。国民に不要不急の外出自粛を求めている政府の方針にも反する。
県は感染拡大を防止するため、職員の在宅勤務を推進している。わざわざこういう時期を狙ったのだとすれば悪質と言うほかない。
【種苗法改正 農業崩壊にならないか 東京・社説 4/25】
国の登録品種から農家が種取りや株分けをすることを禁ずる改正種苗法案が、大型連休明けにも国会の審議に入る。国民の命を育む食料の問題だ。コロナ禍のどさくさ紛れの通過は、許されない。
現行の種苗法により、農産物の新しい品種を生み出した人や企業は、国に品種登録をすれば、「育成者権」が認められ、著作権同様、保護される。
ただし、農家が種取りや株分けをしながら繰り返し作物を育てる自家増殖は、「農民の権利」として例外的に容認されてきた。
それを一律禁止にするのが「改正」の趣旨である。原則容認から百八十度の大転換だ。優良なブドウやイチゴの登録品種が、海外に持ち出されにくくするためだ、と農林水産省は主張する。果たして有効な手段だろうか。
もとより現政権は、農業に市場原理を持ち込むことに熱心だ。
米や麦などの優良品種の作出を都道府県に義務付けた主要農作物種子法は一昨年、「民間の開発意欲を阻害する」という理由で廃止。軌を一にして農業競争力強化支援法が施行され、国や都道府県の試験研究機関が保有する種苗に関する知見を、海外企業も含む民間企業へ提供するよう求めている。そこへ追い打ちをかけるのが、種苗法の改正だ。
対象となる登録品種は、今のところ国内で売られている種子の5%にすぎず、農家への影響は限定的だと農水省は言う。だが、そんなことはない。
すでに種子法廃止などにより、公共種子の開発が後退し、民間種子の台頭が進んでいる。その上、自家増殖が禁止になれば、農家は許諾料を支払うか、ゲノム編集品種を含む民間の高価な種を毎年、購入せざるを得なくなる。死活問題だ。小農の離農は進み、田畑は荒れる。自給率のさらなる低下に拍車をかけることになるだろう。
在来種だと思って育てていたものが実は登録品種だったというのも、よくあることだ。在来種を育てる農家は絶えて、農産物の多様性は失われ、消費者は選択肢を奪われる。そもそも、優良品種の流出防止なら、海外でも品種登録をした方が有効なのではないか。何のための「改正」なのか。
種子法は、衆参合わせてわずか十二時間の審議で廃止になった。種苗法改正も国民の命をつなぐ食料供給の根幹にかかわる問題だ。
今度こそ、十二分に議論を尽くしてもらいたい。
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