綱領一部改定 21世紀の世界をどうとらえ、たたかうか(メモ)
綱領一部改定について、幡多地区党会議で報告(45分間)した際のレジュメ
綱領一部改定 21世紀の世界をどうとらえ、たたかうか
◆断面でなく、長いスケールで大局的な流れをつかもう
・一部改定案の根本的立場・・・・、『20世紀に進行した人類史の巨大な変化の分析にたって、21世紀の世界の発展的な展望をとらえる』ということ。
・「世界の動きはたいへん複雑で、日々起こってくる出来事だけを見ると、暗いニュースが多く、世界は悪い方向に向かっているようにも見える。が、長いスケールで大局的な流れをつかむと、違った世界の姿が見える。
→ 一直線上ではないが、人類は着実に進歩の歩みを刻んでいる。/その原動力は、各国の草の根の人民のたたかい。
・綱領は、『人民のたたかいが歴史をつくる』という科学的社会主義、史的唯物論の立場で世界論を発展させた。今の日本のたたかいを、確信をもって前進させるうえでも、世界の大局的な流れをつかむことが大切
◆21世紀の世界をとらえる土台は「20世紀論」にある
・20世紀は「戦争の世紀」とも言わるが、「人類史の上でも画期をなす巨大な変化」――植民地体制の崩壊、国民主権の民主主義、平和の国際秩序が進行した世紀。
- 植民地体制の崩壊――20世紀初頭は、少数の帝国主義国が全世界を分割支配。1899年にオランダ・ハーグで開かれた「万国平和会議」は、参加は26カ国(欧州と北米で20、アジアは5〔日、清、シャム[現在のタイ]、ペルシャ[現在のイラン]、オスマン・トルコ〕、ラテンアメリカは1〔メキシコ〕、アフリカはゼロ)。
→ WWⅡ後、植民地体制が崩壊。現在、国連加盟国は193カ国。
- 国民主権の民主主義の発展――20世紀初頭、主権在君が世界の主流、現在、国連加盟193カ国のうち、君主制の国は30程度。それらの国ぐにでも多くの国では政治の実態は国民主権。
・女性の参政権・・・ロシア革命(1918年 世界で7番目 )、1945年以前27国、現在、ほぼすべての国
- 平和の国際秩序の発展――20世紀初頭、戦争は国家の合法的権利、「弱肉強食」の世界。第1次世界大戦をへてパリ不戦条約(1928年)で戦争が違法化。第2次世界大戦をへて制定された国連憲章(45年)では「武力による威嚇又は武力の行使」を厳しく禁止。2003年のイラク戦争では「国連憲章にもとづく平和秩序」が世界的スローガンに。
★新綱領~ 20世紀論をさらに進化させ、その上にたって、21世紀の世界の発展的な展望をとらえる立場を徹底。希望と確信のもてる改定
~ それは「中国論」の改定からはじまった。 それが、世界論、未来社会の展望まで、新たな地平をひらいた。
◆中国に対する認識を現状にあわせて見直した
以前の綱領・・・中国などを、「社会主義をめざす新しい探究が開始」され、「21世紀の世界史の重要な流れの一つになろうとしている」と規定。この部分を削除
(1)なぜ削除したか
・中国がGDP世界第二の「経済大国」になった2008~09年ごろから、外交面で様々な問題点が顕在化
14年の26回党大会決議で「覇権主義や大国主義が再現される危険もある」と「警告」し、17年の27回党大会決議で「新しい大国主義・覇権主義のあらわれ」について「踏み込んだ批判」を行い、是正を求めてきた。
・が、是正どころか事態を深刻にする行動・・・核兵器固執勢力への変質、東シナ海、南シナ海での軍事的覇権主義的行動、アジア政党会議での非民主的な行動(中国共産党中央に質問したが、返事がなかった)――ことを踏まえての判断
★外交面、人権問題であらわれた事実にもとづいての判断・・・経済体制の評価は ?
両党の関係正常化についての合意(1998年6月10日) 「三、中国側は、60年代の国際環境と中国の『文化大革命』などの影響を受け、両党関係において、党間関係の4原則、とくに内部問題相互不干渉の原則にあいいれないやり方をとったことについて真剣な総括と是正をおこなった。日本側は中国側の誠意ある態度を肯定的に評価した」。
→ 「内部問題不干渉の原則」で合意を、日本共産党が一方的に踏み越える行為は控えている
( 農村など貧困層大幅な解決、原発推進から自然エネルギーへの大規模な転換、徹底したスモッグ対策、脱プラ計画など大胆な改革も実施 )
(2) なぜこんなことが起こっているのか。 歴史的条件を2点
①自由と民主主義の制度、思想や文化が十分に存在しないもとで革命。革命後もソ連式「一党体制」が持ち込まれ、民主主義を発展させる措置がとられなかった問題
~ 「文化大革命(文革)」を総括した中国共産党の1981年の決定では、「中国は封建制の歴史の非常に長い国である。…長期にわたる封建的専制主義の、思想・政治面における害毒は、やはり簡単に一掃しうるものではなかった」と自戒。その総括をまとめた鄧小平自身が89年に天安門での市民弾圧を強行
②中国の大国主義の歴史・・・ 56年に人民日報に掲載された「重要論文」 「われわれ中国人は、わが国が漢、唐、明、清の4代とも大帝国だったことを特に心に留めておく必要がある。…大国主義の傾向は、もし極力これを防ぎ留めなかったなら、必ず重大な危機となるであろう」と自戒していたが、その後も覇権主義の誤りは繰り返されている。
(3) 今後、どう接していくか
①改定は、世界の平和と進歩にとって重要
日本共産党を中国共産党と同一視する誤解・偏見をとくという次元にとどまらない。・香港問題、覇権主義など、中国の横暴へ批判が世界的にも弱い。特に安倍政権。そのもとで実態を正面から告発・批判した
②接し方
1.「中国の『脅威』を利用して、軍事力増強をはかる動きには断固として反対する」
2.「中国指導部の誤った行動を批判するが、『反中国』の排外主義をあおりたてること、過去の侵略戦争を美化する歴史修正主義には厳しく反対をつらぬく」
3.「わが党の批判は、日中両国、両国民の本当の友好を願ってのもの」
◆中国論の展開が、世界論、未来論にあらたな力を
(1) 植民地体制の崩壊が文字通り「世界の構造変化」の中心にすえられた、21世紀の希望ある変化を押し出した
- 21世紀の新しい流れとして、綱領に第9節を新設
核兵器禁止条約、平和の地域協力、国際的人権保障などの動きを、植民地体制の崩壊という「世界の構造変化」がもたらした希望ある変化 ~ 一握りの大国から、世界のすべての国ぐにと市民社会に国際政治の主役が交代するプロセスが進行していることを明記
・ソ連崩壊の意義・・・「冷戦体制」に封じ込められていた運動、各国の動きが解放され、国連総会が、大国の横暴を断罪する場への大きく転換
・ロシア革命の意義 植民地体制の崩壊の促進として位置づけ直す
(「積極的努力」には、他に、8時間労働宣言、「勤労し搾取されている人民の権利宣言」、女性参政権など /ILO結成にむすびついた)
②「構造変化」の内容に、人権の擁護・発展を「国際的な課題」を加筆
「人権の問題では、自由権とともに、社会権の豊かな発展のもとで、国際的な人権保障の基準がつくられてきた。人権を擁護し発展させることは国際的な課題となっている」
*1945「国連憲章」、48年「世界人権宣言」、66年「国際人権規約(自由権、社会権)」、79年「女性差別撤廃条約」、89年「子どもの権利条約」、90年「移住労働者権利条約」、92年「少数者の権利宣言」、06年「障害者権利条約」、07年「先住民の権利宣言」など
・ドイツ・日本での人権蹂躙が二次大戦に結び付いた教訓から「国際的な人権保障」の考え方が登場(ILO、フィアデルフィア宣言も同様)
(2) 資本主義と社会主義の比較論から解放され、世界資本主義の矛盾そのものを正面からとらえ、この体制をのりこえる本当の社会主義の展望をよりすっきりとした形で示すことができるようになった
・貧困と格差の空前の拡大、気候変動・・・資本主義の世界的な矛盾の焦点として特記 / 社会主義への新たな期待
*アメリカの有力外交誌『フォーリン・アフェアーズ』(2020年1―2月号)
「資本主義の未来」を特集/ 「資本主義は危機にある。......気候変動は今や人類生存の将来を危機にさらしている。......人々の生活の質をぼろぼろにした経済崩壊と同様、環境の悪化は資本主義の危機に根がある。そのどちらの課題も、オルタナティブな経済モデル――社会主義の理想を現代に適合させることにより真の改革への渇望にこたえるようなモデル――を採用することで、対応できる」
(3) 「発達した資本主義国での社会変革は社会主義・共産主義への大道」と押し出し。未来社会の魅力を正面から掲げることが可能に
◆今のたたかいは、そのすべてが未来社会を根本的に準備する
・「発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道」/そこには、「特別の困難性」と「豊かで壮大な可能性」があると明記
- 特別の困難性 マスコミ、教育含む社会制度など、意識面での支配
- 豊かな可能性 として 5つの要素を列記
「資本主義の高度な発展そのものが、その胎内に、未来社会に進むさまざまな客観的条件、主体的条件をつくりだす」・・
(1)高度な生産力
(2)経済を社会的に規制・管理するしくみ
(3)国民の生活と権利を守るルール
(4)自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験
(5)人間の豊かな個性
- 人民のたたかいによって現実となる要素
・五つの要素・・・・ 「資本主義の高度な発展が必然的につくりだす要素」 と 「人民のたたかいによって初めて現実のものとなる要素」がある
・労働時間の短縮、社会保障の充実、学費の無償化、ジェンダー平等など「国民の生活と権利を守るルール」は、たたかってこそ現実のものとなる。
・「自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験」・・・自由と民主主義を守り、発展させる国民のたたかいの歴史的経験を積み重ねてこそ、未来社会に確実に引き継がれ、発展させることができるもの。
・「人間の豊かな個性」の発展・・・ 資本主義社会のもとで物質的基盤をつくるかが、/ すべての人が生まれながらにして平等だという民主主義の感覚、個人の尊厳が何よりも大切だとする人権の感覚、国民こそが国の主人公であるという主権者意識など・・・・ 人民のたたかいによって歴史的に形成されてきたもの
★ソ連・中国など遅れた到達点から出発した困難さ。その失敗を正面からとらえることで/今日のたたかいの意義がより深くつかむことが可能に。
「今のたたかいは、未来社会と地続きでつながっている。そのすべてが未来社会を根本的に準備している。」~ 未来社会という、大志とロマンのなかに現在のたたかいを位置づけ、たたかいの大きな前進をかちとろう。
◆綱領に明記した「ジェンダー平等社会」の内容と意義
①ジェンダー平等が世界的な目標に
2015年の国連総会で193カ国の全会一致で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)
2030年までに世界が達成をめざす17の目標・・・ 5番目に「ジェンダー平等の実現」。そして「ジェンダー平等はすべての目標達成のカギ」と位置づけられた・・・ 貧困解消、働き甲斐・経済成長にとっても不可欠
- ジェンダーとは何か
・ジェンダー 「社会的・文化的に形成された性別」と訳される
→が、この定義では、ジェンダーがとらえた権力性、政治性が見えてこない。
・ジェンダー規範・秩序
支配勢力(現在では、資本家階級 )が、自分たちに都合のよい市民を作り出すために・・・ 自ら選択してそう仕向けるように・・・「男らしさ」「女らしさ」など「こうあるべき」という規範、枠組みによる政治支配の仕組み / 労働、教育、社会保障制度なども権力性をもち、ジェンダー規範を内面化・日常化させるものと利用されている、ととらえる
*アメリカの専業主婦 子育て・家事で終わる人生への不安と問いかけ
「名前のない問題」/「個人的なことは政治的」のスローガン
*男性に企業戦士、女性に子育て・介護・家事 = 搾取の強化、税・社会保障負担の軽減
*稼ぎのいい夫を捕まえ、専業主婦として子どもの教育に熱中、「いい学校・いい企業に」 =「幸せな家庭」「勝組」という文化 / 国民分断
③ ジェンダー秩序=「支配の仕組み」への対抗軸が、「個人の尊厳」
・ジェンダー平等= 多様性を認め、「個人の尊厳」が、その軸 ・・・ LGBT+問題は、不可欠の構成要素
*性的マイノリティ差別
・国家に都合のよい国民の型、社会秩序の維持のために「異物」の排除 支配層の統治戦略
・苛烈な競争社会(自己責任論)のもとで発生する不満、うっぷんのはけ口として、より弱い立場の人への攻撃
→ パワハラ・セクハラ、ヘイトにも共通の土台
★LGBTなど多様性を求める運動は、「居場所のない状況」を、前向きに克服する動き /#MeToo運動は、自己を抑圧しているジェンダー規範から、自らを解放するとりくみ。
→ 居場所のない状況においこまれている国民、特に青年にとっては「自分のこと」として共感と連帯のひろがり
④ 変革者の自己変革・自己解放 第二決議との関連
・「共産党排除」の攻撃から党を守り・野党共同を切り開いた… その間に身についた文化・作法(組織防衛=正しさ先進性の強調、厳格な組織規律など)が、本格的な市民と野党の共闘時代に入り、国民との関係、党組織(党生活)のあり方など作法の自己変革が求められている/ ジェンダー規範・秩序の内面化の克服も、その一環
→ リスペクト、個人の尊厳、聞く・つながる等 /同時に、未来社会の担い手としての作法の獲得
・「多様性の尊重」⇒ その文脈を自分の中に内在化 = 自己認識・評価にとっても「鋳型」からの解放に通じる
◆終わり 綱領の新しい世界論を、日本のたたかいを前進させる力に
・核兵器のない世界、ジェンダー平等、貧富の格差の是正、気候変動の抑制、中国をどうみるかなどは、世界にとって大問題であるだけでなく、日本国民にとっても強い関心が寄せられている大問題・・・「グローバル化」のもとで、日本のたたかいは世界のたたかいと直接に結びついている。
・こうした諸問題を、世界の大局的な流れのなかでつかむことは、今日の日本のたたかいを確信をもって前進させる大きな力になる。ぜひ、改定された綱領を、今の日本のたたかいを前進させる生きた力に。
【参考】 その他の改定
◎アメリカ帝国主義論 「世界の警察官」などは削除し、軍事的覇権主義・地球規模での軍事網など、より汎用性のある規定に改定。また「世界の構造変化」をうけての弾力的な見方( 外交的解決する場合も) を補強
・「いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流」を補足・・・ 中国、ロシア
◎11節「国際連帯の諸課題」
・「民主主義と人権を擁護し発展させる闘争」、「気候変動を抑制し地球環境を守る闘争」を補足
・「二つの国際秩序の選択」では、アメリカに特化せず「国連憲章にもとづく平和の国際秩序か、独立と主権を侵害する覇権主義的な国際秩序か」と包括的な規定に。
◎第四章の改定部分 民主主義革命
「核兵器のない世界」をめざすたたかい
外交分野 「北東アジア平和協力構想」を踏まえたものに改定
農林水産政策とエネルギー政策の転換を、別々の項目に
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