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「保育士不足」の元凶  公定価格と配置基準の問題(メモ)

小山道雄・全国福祉保育労 経済2020.3のメモ

 法定価格、配置基準の問題の基本について簡潔に切り込んでいる。

定員を超えたら保育士が1人ふえるのではなく、定員越えの人数の割合、小数点でしか配置基準をふやさない、というデタラメさ、などなど・・・。

 それにしても保育、介護現場の処遇の低さの根っこにあるのが、ジェンダーバイアス。

【保育士不足  公定価格と配置基準の問題】

小山道雄・全国福祉保育労 経済2020.3

 

◆問題の背景

・保育士資格者 約120万人  うち実際に働いている保育士 約40万人

・「潜在保育士」80万人の原因

❶賃金 全産業平均33.7万円  保育士23.9万円  2018年賃金構造基本調査

❷労働時間 子どもと接する直接処遇の時間=就業時間である場合が少なくない。

→ 保育計画作成、記録、行事の準備、会議、研修など、休息時間の返上、持ち帰り残業など不払い労働が横行

❸貧困家庭の増加、家庭・地域の子育て力の低下など困難の増加のしわ寄せ

 

・背景に、保育の軽視、人件費削減攻撃

  「公立かに民間に」「正規から非正規に」を誘導してきた政府の責任

 

・「公定価格」の問題・・・保育は、民間であても、憲法、児童福祉法に基づき公的責任よる子どもの権利和商、保護者の就労保障として行われるもの。/よさて、保育料、施設面積、施設人員の基準がある。

 

◆「95%が女性だから」  低く見積もられる保育士

・「公定価格」・・・保育に「通常要する費用の額を勘案して内閣総理大臣が定める基準により算定した費用の額」

~ 保育の実施主体である市町村が民間保育所に支払う委託費もこれに基づいている。

・が、人件費の積算は

  • 保育労働の専門性を評価せず、世間相場としての男女の賃金格差をそのまま持ち込む差別的なもの
  • 労働基準法上の休息・休暇の取得を前提としない職員配置の問題

 

  • 賃金水準

・ 国家公務員福祉職俸給表1号29号俸(短大卒5年目) 月額191400

      児童養護施設指導員 25号 205800円、と比べても低い

・キャリア、家族生活に応じた賃金は想定外

  昇給財形  平均勤続年数による加算  11年目までで頭打ち、最大16%の加算

      児童養護施設指導員 20年目まで、最大25

 → 家族の生活を支えながら働き、キャリアを積んでいく労働者像は、そもそも想定されてない

 

・政府「一億総活躍プラン」 保育処遇改善「(全産業の女性労働者の平均賃金の差が)月額4万円程度であることを踏まえて」が方針

→ 民進党の「女性労働者との比較は不適切」の質問主意書に、「保育士は95%が女性であることを考えれば不適切と考えない」と回答/ 看護師、教師など専門職の処遇に関するILO勧告、男女平等待遇の課題も無視

 

◆法定労働条件を裏付けない人員体制

2)人員配置

4-5歳児30人に対して保育士1名の基準・・・が、実際は、45人であった場合1.5人分で計算/学級定数と異質

 → 小数点以下を切り上げずに、単に合算した数字に、報酬基準をかけて人件費を見積もり、年齢別のクラス編成を行うと、一人当たりの人件費はさらに低下する。

 

・子ども子育て支援制度 標準開所時間18時間から11時間となった。土曜開所も必要。

→が、「公定価格」に、開所時間延長に伴う費用の増額はない。

・労基法上は、18時間、週40時間、月160時間に対し、開所時間は、111時間、週66時間、月264時間

→ 1.65倍必要だが、/ 新制度では、保育所一か所につき、常勤1名分、非常勤3時間分のみ (保育士2名の保育園での増加分にしか対応できてない)

 

◆現基準で「休息、休暇」は可能か ―― 内閣府も回答不能

・児童福祉施設の最低基準における保育士の配置基準・・・どの時間帯であっても子どもの人数に対して、基準上の保育士を置くことを求めている

→  一定の人数の保育士が休息、年次有給休暇、生理休暇をとる際も、人数が基準を満たす必要

*福祉保育労の試算  実際の保育現場での時間ごとの子どもの数の変化 / 時間ごとに必要となる保育士数、を示す表を作成し、「公定価格」に見積もられた常勤保育士の人数で、どのように勤務シフトを組めば、休息・休暇に係る労働基準法の遵守と、職員配置基準の遵守の両立が可能なのか、を内閣府に質問。未だに回答なし。/実際は不可能

 

・問題点

  • 必要十分な保育士を配置しようとすれば、一人当たりの賃金はさらに低下する
  • 限られた人員で無理をすれば、休息・休暇がとりない
  • 短時間禁家の保育士をパッチワークのようにあてはめて勤務シフトを作らざるを得ない
  • 保育の専門性・経験の蓄積、継続が出来ず、子どもの権利を保障できない

 

*厚労省 「平成30年幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」

 私立保育園 保育士配置の平均 「公定価格基準」12.3人・・・ 実際の配置16.7

 

◆財務省の財政制度審議会が減額を要求

・「足りない」だらけの「公定価格」だが・・・

1910月 財政制度審議会財政制度分科会 保育所は中小企業の平均3.7%を上回る収支差6.7%を出しているとして「積み上げ方式」から「包括方式」への移行の検討を提起/ 積み上げ方式を維持する場も「適正化」が必要とし、土曜日は、平日に比べて利用者が少ないのに「満額が措置されている」と攻撃

→ 赤字を出すわけにはいかない、と収入額の範囲に支出を抑え、将来の建て替え費用などための備蓄を「黒字である」と「評価」して、報酬の減額が繰り返された。

 

◆「運営費弾力化」の経営論と問題点

・財源削減に道を開いた「措置費」「保育所運営費」の使途の弾力化、という問題点

  • そもそも現在の運営費は低賃金、低い経験年数、自治体の超過負担を生むなど低すぎる
  • 運営費が仮に適正であっても「最低基準の維持」であり、根拠にもとづき所要額を積み上げたもの
  • 運営費の弾力化は、子どもの処遇の後退、国の責任のあいまい化させ、保育の経営基盤の崩壊をもたらす
  • 子どもの人権を守る所要の額である「運営費」を「事業収益」のようにとらえ、際限なく内部留保を可能とする「弾力化」は、国の責任放棄、社会福祉法人の本来の事業基盤を縮小・解体するもの
  •  所要額しか見積もられていない委託費から不用意に「黒字」を出すことを繰り返せば、削減の口実を与えることになる/本来、施設整備費に対する公的責任を放棄させてしまうこと。

→「収支差」「包括方式」議論も、所要額を積み上げた「委託費」の性格を骨吹きにするもの

 

★メモ者 公定価格の引き上げ、配置基準の充実、保育士の処遇改善により、「子どもの最善の利益」、「ジェンダー平等社会」の実現が必要。

 

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