児童一時保護所・養護施設・相談所 ~ 人手不足が生み出すリスクの連鎖
児童相談所が虐待対応で手いっぱいで、施設を巡回し、保護した子どもと面会し、支援することが十分できてない。その施設も、満杯で職員も日々の対応におわれている。 一時保護所は、親が取り戻しにきたりするリスクや虐待をうけた子ども、暴力振るう子どもが一緒にいるために、過度な管理に、職員の研修は、自治体まかせ。
施設、一時保護所に空きがないと、「保護」の決断が鈍り、重大事件につながるリスクが増す。
施設は、18歳までなので、施設を出された後、社会とどう接続していくか、住まいや仕事はどうするのか。貧困や虐待の連鎖を断てるのか。あまりにも貧困な対策。
【私語禁止、壁に向かって反省文、職員のモラハラ…虐待から逃れた子どもが「一時保護所」で直面するリアル 弁護士ドットコム 1/20】
【私語禁止、壁に向かって反省文、職員のモラハラ…虐待から逃れた子どもが「一時保護所」で直面するリアル 弁護士ドットコム 1/20】
虐待を受けた子どもなどを、緊急の避難先として保護する「一時保護所」という施設がある。その名の通り、あくまで一時的に保護を行う施設であり、滞在できるのは原則2カ月まで。その間に、親元に帰す、児童養護施設へ預ける、などの判断が下される。
しかし、2019年に実態調査を行った東京都の第三者委員が、子どもを管理するルールが「過剰な規制で人権侵害にあたる」と指摘した。
一時保護所の課題とは何か。一時保護所に入所していた経験があるNPO法人「OAC(社会的養護で育つ子どもたちの地位向上ネットワーク)」の安田和喜さん(25歳)に話を聞いた。(ジャーナリスト・肥沼和之)
- 父からの暴力「チェーンソーで足を切られそうになった」
―― 安田さんはいつ頃、どういった経緯で一時保護所に入ったのですか。
父親の虐待が原因で、14歳の頃、都内の一時保護所に入りました。父は造園会社を経営していたのですが、僕が小学校3年のころに倒産し、そのあたりから日常的に虐待が始まりました。うちは父子家庭で、助けてくれる家族はいませんでした。
暴力は当たり前で、チェーンソーで足を切られそうになったこともあります。家にお金が全然なく、近所の畑の無人販売所から野菜を盗んで来いとか、叔母さんや友達のお母さんからお金を借りてこい、と言われたこともあります。
中学2年のとき警察に逃げ込み、「虐待されている、助けてください」と訴えたのですが、父を呼ばれて家に帰され、めちゃくちゃ殴られましたね。次の日も同じ警察署に行き、殴られた痕を見せて、ようやく一時保護所に連れていってもらいました。
- 「女子を見る」「女子と喋る」は禁止
――安田さんが入った一時保護所には、何人くらいの子どもたちがいましたか。
約50人です。小学生が約10人、残りは中学生です。僕は6人部屋に入れられました。男女比は男6割・女4割くらいだったのですが、施設内では女子と喋ることも、見ることさえも禁止なんです。
生活空間は一緒なのですが、床に男女を隔てる赤い線があって、そこを越えるとペナルティを与えられます。今思うと、性的な事故を未然に防ぐためだったのかもしれません。
――ものすごく徹底していますね。一日のスケジュールはどのような感じなのでしょう。
朝6時に起床して、まずトイレや床などの掃除をします。終わったら廊下に整列して、担当の職員にチェックしてもらい、7時から朝食。おしゃべりは禁止です。職員からの評価がいい子だけ、おかわりができました。
食後に歯を磨くのですが、「いいよ」と言われるまで磨き続けないといけません。止めてしまった子がいると、連帯責任でもう一回最初から。口をゆすぐときも、手を挙げて許可を取るんです。トイレも勝手に行けませんでした。
衣食住は確保されているのですが、基本的にすべての行動が制約されていましたね。私物も持ち込めないので、服も下着もすべて施設に用意され、番号が振られたものを着ていました。
――学校には行けるのですか。
いえ。学校には行けず、社会からは隔離された生活でした。
といっても、勉強はします。朝9時から教室に集まり、施設にある教科書で好きな科目を勉強しました。学校の元教員や、ボランティアの学生が教えに来てくれていました。終わったら体育の授業で、1週500メートルのグラウンドを8周、計4キロ走りました。靴紐がほどけると、さらに一周追加です。
昼食を食べて、午後はまた勉強。夕方にお風呂に入るのですが、入れるのは週に3回だけ。入浴時間は10分で、使えるシャンプーの量も決まっています。自由時間はありますが、騒いだらダメなので、テレビを見たり漫画を読んだり、ボードゲームをしたりするくらい。その後、読書と黙祷の時間があって、21時に消灯です。
―― 一時保護所に入られて、一番つらかったことは。
私語禁止です。職員にバレると「個別」といって、他の子と違うスケジュールで行動させられます。みんなが自由時間のとき、壁に向かって一人で反省文を書かされるとか。ハリー・ポッターの本の書き写しをさせられたことも。それが1~2週間くらい続きましたね。
一番つらい思い出は、土日に社会科見学があるのですが、少年院の前に連れていかれて、「お前たちもいずれはここに入るから、よく見てろ」と職員から言われたことです。
僕がいた施設は5人の職員(女性2人、男性3人)がいました。公務員なので、ジョブローテーションの一環で、たまたま担当になっただけなのかなと。少なくとも、虐待を受けた子をどう支えるべきか、など専門性は持っていないように感じました。
「何でここにいるのか分かるか? お前が悪いからだ!」と、胸ぐらをつかまれて怒鳴られた子もいます。
- 「虐待を受けた子」と「非行に走った子」が一緒になる弊害
――どのような課題があると思われますか?
僕が入っていたのは約10年前ですから、今は変わっている部分もあると思います。現在、一時保護所で働いている友人に聞くと、その施設は私語禁止もなく女子とも話せるそうです。
ただ、最近まで入所していた子どもに話を聞くと、怒りを持っていることが多い。「一時保護所、死ねばいい」と言っている子もいるので、まだ課題は多いのだと思います。
また、大きな問題として、一時保護所は「虐待を受けた子」と「非行に走った子」が一緒に入っているんです。厳しい統制は、非行の子どもを管理するために必要なのかもしれませんが、虐待を受けた子には逆効果になる可能性もあります。
「虐待を受けた子」といっても様々です。虐待を受け続けて「やっと救われる」と入ってきた子もいれば、よくわからないままソーシャルワーカーに連れていかれ「自分が悪い子だから親に捨てられたんだ」と思い込む子もいます。
そういう子が一時保護所で厳しくされると、児童養護施設に移っても荒れますし、自立にも影響が出ることが多い。虐待を受けてきた子どもは、一時保護所ではなく、最初から児童養護施設が保護すべきだと僕は思います。
できないなら、一時保護所で手厚くケアすべきですし、できないならせめて傷つけないよう、そっとしておいて欲しいです。一時保護所は、中学生など高齢児童が多い。すると、虐待された期間が10年近くになることもあります。
でも、養護施設にいられるのは数年だけなので、ケアの期間として全然足りないんです。一時保護の段階から施設に慣れ、職員との関係をつくっていく必要がある。今は子どもの数に対し、職員の数が少ないので、難しいのかもしれませんが。
――安田さんは「OAC」の職員として、施設に入った子どもたちのために活動していますが、その背景には、ご自身の経験があったのですね。
私は今、NPO法人「OAC(社会的養護で育つ子どもたちの地位向上ネットワーク)」の職員として、児童養護施設で暮らす子どもたちの就労・就学支援を行っています。児童養護施設は、さまざまな事情で親と暮らせない子どもが入る場所で、基本的に18歳になったら出なくてはなりません。
家族の支援を受けられない子がほとんどなので、出所後は就労も就学も難しいのが実情です。お金に困って、悪い道へ進んでしまう子や、風俗で働かざるを得ない子もいます。
そこで、僕らは専門学校と提携し、保育士や介護士など、子どもたちが安定して働ける資格の取得支援などを行い、社会に送り出しています。(以上、安田さん)
- 声を上げていくことが、子どもたちの未来につながる
安田さんの話を聞き、一時保護所には想像以上に多くの課題が残されていると感じた。
一時保護所は全国に139か所(H31年・厚労省)あり、年間2万3276人(虐待1万1607人、非行3536人など)の児童が保護された。一時保護所によって救われた児童や家族は多く、社会に必要な存在であることは間違いないだろう。
人権侵害とまで言われる厳しい統制も、理由がないわけではない。粗暴な子どもを管理するためや、保護に反発して連れ戻しに来る両親から守るため、などだ。安田さん自身も入所中、父親に居所を知られてしまい、乗り込まれそうになったとき、守ってくれたのは一時保護所だったという。
一方で、一時保護所での生活や職員の対応により、心の傷をより深めてしまう児童もいる。一人ひとりに合わせたきめ細かなケアが行わればベストなのだろうが、職員不足などの理由で実現できていないようだ。
一時保護所の本来の目的を見つめなおし、そのあり方について考え、声を上げていくことが、子どもたちの未来につながる。取材を終え、改めてそう感じた。
【著者プロフィール】 肥沼和之。1980年東京都生まれ。ジャーナリスト、ライター。ビジネス系やルポルタージュを主に手掛ける。東京・新宿ゴールデン街のプチ文壇バー「月に吠える」のマスターという顔ももつ。
【児童一時保護所、4割研修せず 行動観察・記録、国指針なく 70自治体調査 1/23 毎日新聞】
児童相談所(児相)を設置する全国70自治体のうち4割強が、虐待に遭うなどした子どもを保護する一時保護所の児童指導員や保育士に対して、子どもの行動観察とその記録方法についての研修を行っていないことが毎日新聞の調査で判明した。国は一時保護所職員の研修の内容や時間数について定めておらず、自治体間で対応にばらつきがあることが浮き彫りになった。
毎日新聞は2019年12月~今年1月、児相を設置する47都道府県、20政令市、3中核市に研修の内容や時間数などについてアンケート形式で尋ね、全ての自治体から回答を得た。
19年1月24日に千葉県野田市で小学4年、栗原心愛(みあ)さん(当時10歳)が親から虐待を受け死亡した事件では児相が一時保護を約1カ月半で解除し、親族の元に帰された。
一時保護所で生活する子どもについて児童指導員や保育士が行う行動観察とその記録は、一時保護を継続するかどうかなどの支援方針を決める重要な判断材料になる。しかし、県検証委員会の報告書によると、女児については行動観察の記載がなく、観察記録などをもとに支援方針を判定する会議も開かれていなかった。県内の児相関係者は取材に対して「職員への研修が十分ではなく、行動観察が形式的だったり職員の意見が軽視されたりした可能性がある」と指摘する。
調査では、自治体が行う研修に行動観察やその記録の方法が入っていないと答えた自治体が32(45・7%)に上った。このうち11自治体は行動観察以外も含め研修そのものを実施していないという。秋田県は「業務を通じて教えるので特段の研修はない」、宮崎県は「教員や保育士などの有資格者が多く、研修に参加する時間の確保も難しい」と理由を説明している。
一方、行動観察を盛り込む研修を実施している大阪府は「研修は配属から1年間に15時間以上。行動観察記録の研修は年度当初に実施」、愛知県は「研修は年8回計10時間程度。職員のニーズなどをもとに体系化を図っている」としており、自治体間の対応や意識の差は大きい。
厚生労働省によると、16年の児童福祉法改正により児相で相談・支援に当たる児童福祉司には研修が義務化され、内容や時間数も定められた。しかし、一時保護所職員である児童指導員や保育士は義務化されず、研修は各自治体に委ねられている。厚労省は取材に「専門性がより必要な職種の研修を義務化した」と説明している。【町野幸】
【虐待 “一時保護所”の苦悩 NHK 2019/3/22】
虐待を受けた子どもたちが入る「一時保護所」って知っていますか?保護された子どもが真っ先に行くことになる施設です。去年6月の時点で全国に137か所あり、年間延べ2万人の子どもが虐待を理由に預けられています。子どもを親から引き離し命を守るためのこの施設は、プライバシーが厳重に管理され内部はおろか場所すら非公開。しかし今回、特別に撮影が許可されました。知られざる「一時保護所」。その実態をお伝えします。(社会部記者 本多ひろみ 村堀等)
◆ひっそりたたずむその建物は…
私たちが向かったのは岡山市。
秘密の施設は、意外にも街中にありました。建物は大人の背丈以上ある塀に囲まれ入り口には監視カメラ。
表札もなく、中で子どもを保護しているとは誰も思わないような建物。それが今回の舞台、「一時保護所」です。
◆一時保護所って?
取材のきっかけは増え続ける子どもの虐待事件でした。
虐待の対応件数は毎年「過去最多」を更新。千葉県野田市で小学4年生の女の子が「お父さんにぼう力を受けています」とSOSを発しながら誰にも助けられずに死亡するなど深刻な事件が相次いでいます。
こうした事態に政府は「躊躇(ちゅうちょ)なき保護」を推し進めています。でも、無事に保護できたとして、その先、子どもたちはどうなるんでしょうか。
昨年度、虐待を理由に一時保護された子どもは延べ2万1000人余り。その6割は一時保護所に入っていました。
過ごす期間は原則2か月まで。児童相談所が親への指導や調査を行い、子どもを家庭に戻すか、里親や養護施設に預けるかを決めるまでのいわば仮住まいです。
今回、岡山市が子どもの匿名性を守り場所が特定されないという条件で撮影を許可してくれました。
◆鍵、鍵、鍵…
ここでは2歳から18歳までの最大25人を受け入れています。
職員の案内で施設に入ってまず驚いたのが徹底的な施錠です。建物の出入り口はもちろん、廊下も空間を仕切るように、ところどころ鍵付きのドアが設けられていました。
子どもたちには一人一人に六畳一間の個室が与えられます。ただ窓は10センチ程度しか開きません。
学校の教室のような部屋もありました。
施設にいる間は通学ができなくなるため、勉強する場所が必要です。午前中だけが学習の時間にあてられ、1つの教室に小学生から高校生が集まってドリルなどを使って自習をします。
教員のOBたちが勉強を教えに来ますが、学校と比べると、十分な学習環境とは思えませんでした。
なぜこれほどまでに行動が制限されるのか。
案内してくれた岡山市こども総合相談所の佐藤靖啓さんは、「子どもの安全を守るためにやむを得ない面がある」と言います。
虐待のケースでは、保護に反発する親が子どもを無理やり連れ戻そうとする危険があります。
また、一時保護所には、暴力などの問題行動を抱えた子どもも保護されています。子どもの安全を守りトラブルを避けるため、徹底した管理が行われているのです。
◆窮屈な生活
屋外にはフットサルができるくらいの小さなグラウンドがあります。塀に囲まれた中で子どもたちが、夢中になってサッカーボールを追いかけていました。
決められた日課に沿って過ごし、規則正しい生活によって落ち着きを取り戻す子もいるといいます。それでも子どもたちが窮屈な生活を送っていることも確かです。
岡山市の一時保護所が今回取材に応じたのは、こうした事実も広く知ってもらいたいという思いがあったからだということです。
佐藤さんは「子どもたちをこんな窮屈な空間で生活させて本当にいいのかいつも葛藤があります。子どもの中には“優しい刑務所”と表現した子もいました。必要なときは躊躇なく保護すべきですが、やみくもに保護して衣食住だけ保障しておけば良いというわけではないと思っています」と話していました。
◆心の回復が遅れた…
一時保護所で過ごした子どもは、どう感じているのか。
私たちは、中学生のころに都内の施設で3か月余り過ごしたという20代の女性に話を聞くことができました。
安全管理の方法は施設によって違います。女性が入っていた都内の施設では、子どもたちは岡山市よりも厳しく管理された生活を強いられていました。
「他の子どもとの会話だけでなく目を合わせることすら禁止でした。24時間見張られて寝るときも常に緊張していました。当時は考える余裕もなく従うしかありませんでしたが、虐待で受けた心の傷の回復がとても遅れたと感じています」
厚生労働省は去年7月、一時保護所での生活や行動の制限を必要最小限にすることとするガイドラインをまとめました。施設の改修や生活ルールの改善がようやく始まろうとしています。
◆里親家庭の活用を
実は一時保護所のほかにも保護された子どもたちを受け入れる場所があります。
その1つが「里親」です。里親は子どもにとっては、見知らぬ他人ですが、子どもたちの事情をよく理解し、家族と同じように温かく迎え入れてくれます。
また、地域に開かれた「児童養護施設」も受け入れが可能です。多くの場合、一時保護所よりは生活に制限が少なく、学校に通うこともできます。
ところが、実際にはあまり活用されているとは言えません。昨年度、虐待を理由に一時保護された延べ2万1000人余りのうち、里親に預けられたのはわずか約7%、児童養護施設は約13%にとどまっています。
里親や児童養護施設に預けられるのは、親が連れ戻しに来るリスクが無いなど子どもの安全に問題がない場合に限られるということも要因としてありますが、最大の理由は受け皿不足です。
◆深刻な受け皿不足
特に東京などの都市部では虐待の急増で、里親や児童養護施設のもとで暮らす子どもが慢性的に多く、一時保護の子どもを受け入れる余裕がないのです。
さらに、受け入れの余裕が無いのは「一時保護所」も同じです。保護される子どもが急増し都内を中心に定員を超えての受け入れを余儀なくされているところがあります。
東京都の担当者は、「受け皿の拡大には取り組んできたが、虐待で保護が必要になる子どもが予想以上に増え、対策が追いついていない」と話していました。
◆保護の遅れにつながりかねない
日本社会事業大学の宮島清教授は、受け入れ先が見つからずに保護の判断が遅れてしまうことにもつながりかねないと警鐘を鳴らしています。
「受け皿に余裕がない状況では、危険度がそれほど高くないケースの保護は、後回しにせざるを得なくなる。しかし、施設の空きを待っている間にシングルマザーの母親が暴力的な男と同居を始めるなど家庭環境が急激に悪化することもあり、その結果、保護が遅れて子どもを救えなかったケースが過去に何度も起きている」
すでに危機的な状況にあるという宮島教授。受け皿の拡大とともに虐待の芽を早期に摘む努力も不可欠だと指摘します。
「里親や児童養護施設などの受け皿の拡大に早急に取り組まなければならないが、どうしても時間がかかる。同時並行で児童相談所の職員などがトラブルの起きた家庭で親にも寄り添って子育てを支え、保護が必要になる子どもを減らすなど、やれることはすべてやるという覚悟を持って対応すべきだ」
岡山市の一時保護所を取材して最も心に残ったのは被害者である子どもたちが保護された先でも窮屈な生活を強いられている現実でした。もちろん必要な場合は積極的に保護すべきですが、何より大切なのは一時保護所で過ごす子どもをいかに減らしていくかを考えていくことだと思います。
【子ども入所後の児相支援 施設9割「不十分」 虐待対応に追われ手回らず 東京2019/7/14】
虐待を受けた子どもらが生活する関東一都六県の児童養護施設に本紙がアンケートしたところ、回答を寄せた施設の九割が、児童相談所による入所児童へのフォローを「十分ではない」「十分とは言えない場合がある」とみていることが分かった。児相が緊急的な虐待対応に追われ、施設で暮らす子どもたちへの支援に手が回っていない実態が浮かんだ。 (岡本太、石原真樹、森川清志)
アンケートは五~六月、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、群馬、栃木の一都六県が所管する計百六十九施設を対象に実施。49%の八十二施設が回答した。
児相による入所児童への支援が十分か質問したところ、「十分」はゼロで「だいたい十分」は九施設。これに対し「十分ではない」は二十一施設、「十分とは言えない場合がある」は四十九施設で、否定的な意見が89%を占めた。
厚生労働省は児相に対し、入所児童が施設での生活や将来設計などで最善の利益を得られるよう、担当の児童福祉司が施設を定期訪問するよう指針で定めている。施設への不満や進路などについて児童の訴えや考えを聞き、寄り添うことが期待されている。
だが、アンケートの自由記述では「(児相が)虐待対応に追われ、施設にまで手が回っていない」「(入所児童への)対応は後回しになっている」など、訪問回数の少なさに不満の声が多く寄せられた。
施設の職員数についても聞くと「全く足りない」「少し不足」が回答の65%に上った。厚労省の職員配置基準では足りず「子どもに十分なケアをすることは難しい」との訴えもあった。
児相の手が回らず入所児童の支援が「施設任せ」となり、施設も職員数が不足する中、一部で職員による暴力や暴言など虐待が起きている。その背景について、複数の施設が「職員に余裕がなく追い詰められているのでは」と推測。「第三者の目が入らないので、閉鎖的な環境になっている」との指摘もあった。
職員の専門性については「全く足りない」「あまりない」との回答が四割あり、「日々の仕事に手いっぱいで(専門性が)育つ前に疲れて辞めてしまう」との意見があった。運営資金では回答の四割以上が「厳しい」「あまりない」と答えた。
厚労省によると、児童養護施設は全国に約六百施設あり、原則十八歳までの計約二万七千人が生活している。
◆社会が目向ける必要
<大阪府立大の伊藤嘉余子教授(社会福祉学)の話> アンケート結果から、施設で暮らす子どもが児童福祉司と話もできず、家に帰れるのか、いつまで施設にいるのか見通しがたたない不安な日々を送っている状況がうかがえる。千葉県野田市の事件などを契機に虐待されている子をどう救うかに注目が集まったが、保護した子をその後、児相や施設、地域でどう支え育てるかにも、社会がもっと目を向ける必要がある
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