ジェンダー平等 ―― ジェンダー秩序の権力性・政治性とのたたかい
2月4日 28回党大会決定を学ぶ学習交流会(グループ討論)を開催。
綱領3~5章を読み合わせたうえで、特別報告として、綱領、大会決議にも取り入れられた「ジェンダー平等」について、30分間、ざっくりと報告したもの。
この概念がもたらした新たな視点・対決軸、科学的社会主義の古典との関連、市民と野党との共同が本格化したもとでの党組織の作法との関連など、大会全体を貫くテーマとなりえたのか・・・等。
ジェンダー平等 ―― ジェンダー秩序の権力性・政治性とのたたかい
・内閣府・男女共同参画の用語集—“「社会的・文化的に形成された性別」のことです。人間には生まれついての生物学的性別(セックス/sex)があります。一方、社会通念や慣習の中には、社会によって作り上げられた「男性像」、「女性像」があり、このような男性、女性の別を「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー/gender)といいます。「社会的・文化的に形成された性別」は、それ自体に良い、悪いの価値を含むものではなく、国際的にも使われています。”⇔ この定義は、ジェンダーに働く権力性、政治性がいっさい無視
★28回党大会 綱領一部改定についての志位報告 が重要 「ジェンダー規範・秩序」を解明
取り組む姿勢・・・運動に参加し学ぶ。自己点検と自己変革・解放
◆ジェンダーとフェミニズム運動
①第一波の運動(60年代、公民権運動とともに) ~ 女性の生き方の見直し
・戦後のアメリカ 専業主婦比率が急速に高まり,一時は80%前後。
・「主婦という生き方への不安」=「名前のない問題」~ “一方で男性が月にいく時代に、白人中流階級の女性たちは、主婦となることが当然視され、自分たちでも受け入れながら、他方で、家事と育児に追われる毎日に、わたしの人生はこのまま終わるのだろうかと、自分に問うことさえ怯えている。葛藤があった”
・その答え 「女たちよ、再び社会のなかに生きがいを見出そう」…ウーマン・リヴ運動
- 第二波の運動 「個人的なことは政治的」 ジェンダー秩序
・なぜ女性はいまだに、人々の思い込みにすぎないような「女らしさ」から解放されていないのか、を問いかけた。/女性の性をめぐる活動((生殖、家事、育児)や活動の場(家庭内)が、これまで個人的なこと、あるいはよきアメリカ文化といった名の下で、公的な議論の対象にすらなってこなかったことに、異議を申し立て
⇔ その答えが、 「個人的なことは政治的だ」というスローガン
・「個人的なことは政治的だ」の真髄…これまでの政治の捉え方を変革し、文化や社会、個人のアイデンティティや心理とみなされてきたことにも、権力が作用していることを暴いた点
・個人が自由に選択している、主体的に行動していると思いなしている、この主体のあり方こそが、実は政治的・権力的に構成されていることを暴いた = ジェンダー視点 (史的唯物論 土台と上部構造)
◆ジェンダー論の意義
①政治権力の市民社会の支配 = ジェェンダー規範・秩序
・法的平等が確立されたのに、女性は社会全体で見ると政治参加が遅れており、経済的にも圧倒的に弱者であり、させに暴力の、とりわけ性暴力の被害に遭う危険性が高いのか・・・
・ジェンダー規範・秩序の視点の提示
政治権力がいかに家族、そしてそこで多くは育まれる「男らしさ」「女らしさ」を利用しながら、国家(財界)に必要な市民を生み出そうとしているか、をより深く、私達の意識にまで目を配りながら捉える視点をもつ
→ 現状の政治システムを包括的に、かつより深く批判的に捉えることが可能に
- ジェンダー視点による政治・権力の捉えなおし
A 雇用や教育、社会保障など制度を通じた「政治」が、ジェンダー規範、すなわち、男女それぞれに相応しいとされる生き方・考え方・態度にも影響を与えている
B 物理的力や制裁力を伴った強制と理解されてきた「権力」も、見直した
→ 自ら法に従うことによって(強制する必要のない)主体を産出する装置全体を権力として捉え返された。
・個人の自由な選択と思われた恋愛結婚さえ実際には、ジェンダー規範に従うことによる従属化を含意する
C 新しい政治概念、権力論は・・・政治権力こそが、女性は家庭こそふさわしい、女性の活動の場は家庭であるという意識と、そのジェンダー規範にそった社会構造を作り上げてきたことを暴く。家庭内のことも
★私達が個人的、私的と観念している事象が政治的に構造化されている諸制度に他ならないことを見えなくしてしまっているものこそが、ジェンダー規範であり、その規範に従うことで保たれているものがジェンダー秩序
→ジェンダー平等…その秩序を取り除き「個人の尊厳」に組替える運動/「多様性の尊重」が不可欠の構成要素
*従来の「男女平等」論を超える、「人間」把握の根源的な問いかけ (「まったく新しい政党の誕生」の評)
◆「ジェンダー平等」「個人の尊厳」 2019参院選 5つの政策より、
- 第四に、LGBT/SOGI(性的指向・性自認)に関する差別のない社会をつくります。
・LGBT+ レスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、+ 性的少数者のこと
・SOGI 性的志向/セクシャル・オリエンテーション どの性を好きになるか
性自認/ジェンダー・アイデンティティ 自分の性をどう認識しているか
~ 弁証法の考え方 「固定された境界線はない」から見れば、多様性が存在するのは当然の話
・差別根底・・・国家に都合のよい国民の型、社会秩序の維持のために「異物」の排除 支配層の統治戦略
苛烈な競争社会(自己責任論)のもとで発生する不満、うっぷんのはけ口として、より弱い立場の人への攻撃
→ パワハラ・セクハラ、ヘイトにも共通の土台
★LGBTなど多様性を求める運動は、「居場所のない状況」を、前向きに克服する動き / 居場所のない状況においこまれている国民、特に青年にとっては「自分のこと」として共感と連帯のひろがり
◆ジェンダー問題 ~ 古典から学ぶ
(1) 労働力と労働者階級の再生産 … 労働過程の外部でも資本の付属物 「資本論」
「社会的観点からみれば,労働者階級は直接的な労働過程の外部でも,死んだ労働用具と同じように資本の付属品である」 「彼らの個人的消費でさえも,ある限界内では,ただ資本の再生産過程の一契機でしかない」
→ 家に帰っても、その家庭内の生活も、資本の付属品だということ/ ジェンダー視点
・資本家階級・・・労働者が自分の労働力の回復と、労働者階級を再生産する子育てを担当する仕組みが必要
・エンゲルス 『家族、私有財産及び国家の起源』 女性解放の展望
・未来社会における女性解放の展望が、世界の大変化を理解する指針となる。3つの段階で大きな流れをしめした。
❶ 人類社会は女性差別などが存在しない時代が数万年も続いていた。そこでは、親子関係は母系が中心で、女性が担当した家政も、男性が受け持つ生産活動にならぶ社会の公的活動だった。
❷.やがて男性が従事する生産活動の比重が大きくなり、私有財産の発生――その都合から、社会の全体が男性支配の社会に変貌。これが「女性の世界史的敗北」(エンゲルス)で、この「革命」はヨーロッパでは、2千~数千年前に起こった。日本はずっとあと(詳しくは不破「社会進歩と女性」)
❸女性参政権など女性の法律上の権利の平等が問題になっているが、それだけでは本当の意味での男女平等の社会は生まれない。/平等社会を回復するためには、「公的産業への女性の復帰」――女性が生産活動をはじめ社会の公的活動に平等の権利をもって参加することが、カギになる。/それには、女性が育児をはじめ家事の全体を担っている状態を解消することが必要。 私たちがめざす社会主義社会は、家事の大部分を社会がになうシステムをつくりあげ、女性の公的活動を保障する社会となるだろう。
*現実社会のくらしの中で男女の平等を実現できるようにする必要がある― 世紀を超えた卓見。
→ 家事を社会が担うシステム 今日では・・・ 公的制度・商業サービス、科学技術の進歩など「家事の外部化」の、著しい進歩。物質的な条件の獲得/ ただし、「利潤第一」のもとでは、搾取の強化に道具に
→ 家事労働のもつ両性・家族のコミュニケーション行為という真の姿の再生の可能性
- 内なる障壁…「奴隷制のかせ」からの解放 /ジェンダー秩序の克服につうじる
・「労働者階級は、社会のより高度な形態をつくりだすためには、長期の闘争を経過し、環境と人間をつくりかえる一連の歴史的過程を経過しなければならない」『フランスにおける内乱』
・『フランスにおける内乱』第1草稿(1871年)/「現在の組織された労働という形での生産の諸形態を、奴隷制のかせから、その現在の階級的性格から救いだす (解放する) ことが必要」
◆終わりに 変革者の自己変革・自己解放
「共産党排除」の攻撃から党を守り・野党共同を切り開いた… その間に身についた文化・作法(組織防衛=正しさ先進性の強調、厳格な組織規律など)が、本格的な市民と野党の共闘時代に入り、国民との関係、党組織(党生活)のあり方など作法の自己変革が求められている
→リスペクト、個人の尊厳、聞く・つながる等 /同時に、未来社会の担い手としての作法の獲得
★「多様性の尊重」⇒ その文化の内在化 = 自己認識・評価にとっても「鋳型」からの解放に通じる
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