「韓国輸出規制」の現状 日本のフッ化水素輸出95%減を中国、台湾がカバー、国内調達も加速
「徴用工」判決に対する韓国政府の対応がおもしろくないので「韓国向けフッ化水素を禁輸して韓国の基幹産業である半導体産業に打撃をあたえよう」とはじまった輸出規制(あとで「理由」を改ざんしたが・・)。
現在どうなっているか? 韓国の日本製フッ化水素輸入は95%もみごとに減少。日本からの輸入シェアが43%から4%へと激減。一方中国、台湾からの輸入が急増し、中国と韓国に新たなサプライチェーンが構築されつつある。その結果、日本のフッ化水素サプライヤ最大手であるステラケミファの営業利益は前年同期比88%減と大打撃をうけた。(ビールなど不買、九州を中心とした訪日韓国人の激減だけではない)
韓国は国内調達… 外国系(当然、日本も含めて)企業の韓国工場の設立(材料メーカーは、半導体メーカーからの情報がないと製品開発・調整が出来ない)もふくめて、日本をあてにしない体制づくりに邁進している。
日本は、半導体メモリやディスプレイに次いで半導体装置・材料までも凋落しつつある。安倍政治の愚策のために・・・
【米中貿易戦争と日韓輸出規制で進む半導体製造装置・材料の国内調達 – SEMI マイナビニュース12/26】
【米中貿易戦争と日韓輸出規制で進む半導体製造装置・材料の国内調達 – SEMI マイナビニュース12/26】
【1】日本の素材メーカーなどにも影響が出てきた日韓貿易紛争
国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の市場調査ディレクターであるClark Tseng氏は、2019年12月中旬に東京ビッグサイトで開催されたエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2019」の併催イベントである「SEMIマーケットフォーラム」において半導体市場予測に関する講演を行ったが、その中で「米中貿易戦争と日韓貿易緊張にともなうアジアの新たなサプライチェーン」についてかなりの時間を割いて言及した。
自由貿易を阻害するこれらの輸出規制が半導体製造装置や材料の販売に悪影響を及ぼすことを恐れるSEMIは、これらの規制に反対の立場を表明し、米国政府や日本政府にもその旨の主張を行ってきたが、今回の講演ではこれらの規制により、アジア、とりわけ中国と韓国に新たなサプライチェーンが構築されつつあり、急速に「Local Sourcing(国内調達)」に向かっているとの指摘を行った。
・SEMI、日本の対韓輸出管理強化に関して日本・韓国両政府に懸念を表明
・JSRが韓国で半導体製造用フォトレジスト製造を検討 - 韓国メディア報道
・対韓輸出規制強化開始から2か月、日本の半導体関連企業への影響は?
・SEMI、2019年の半導体製造装置市場予測を前年比18.4%減の527億ドルに修正
◆対韓フッ化水素の輸出激減で被害を被った日本企業
日本政府による半導体素材の韓国への輸出規制に関してだが、Tseng氏は、2019年7月1日付けで経済産業省が半導体・FPD素材3品目の貿易管理を強化することを発表して以降、日韓の緊張関係の経過の克明な記録を示した(図1)。この内容について、聴講者からも、SEMIがここまで詳細に日韓貿易摩擦をフォローしていることに驚いたという声が聞かれた。
経済産業省はすでに3品目すべて(フッ化ポリイミド、EUV用レジスト、フッ化水素)に輸出許可を出し始めており、レジストに関しては手続きをやや緩和し、それを受ける形で韓国政府もGSOMIA(General Security of Military Information Agreement:軍事情報包括保護協定)破棄を延期した。
経済産業省は12月20日、韓国向けの輸出規制を強化していた半導体/ディスプレイ材料3品目のうち、レジストについて、規制の一部を緩和したと発表した。条件を満たした企業に限り、輸出許可の有効期間をこれまでの半年から3年に延ばすというもので、12月24日に開催された日韓首脳会議に向けた政治的配慮ととらえられている。なお、Samsungは、規制対象のEUVレジストをベルギーのEUV Resist Manufacturing & Qualification Center(日本のJSRとベルギーimecが2015年に設立した合弁企業)から輸入するため、規制の影響を受けないとしていた。
しかし、この間、韓国が日本から輸入するフッ化水素(金額ベース)は2271万ドル(2018年7~10月期)から107万ドル(2019年7~10月期)へと95%も減少してしまい、結果として韓国のフッ化水素輸入量(数量ベース)に関しては、日本からの輸入シェアが43%から4%へと激減(図2)。この結果、フッ化水素酸サプライヤ最大手であるステラケミファは事実上の禁輸状態となり、2019年7~9月期(第2四半期)の営業利益は前年同期比88%減となり経営状態が悪化した。
その一方、中国からの輸入は51%から62%へ、台湾からは6%から30%へ伸びている。ちなみに、台湾には日台合弁のフッ化水素酸(フッ酸)メーカーが存在する。
・SEMI2018年および2019年(ともに7~10月4か月間)の韓国の国別フッ化水素輸入量(左)(金額ベース、単位:万ドル)と韓国のフッ化水素輸入量の国別シェア(右)(重量ベース、%)。日本からの輸入量が激減していることが見てとれる (出所:韓国税関統計を基にSEMIが作成した資料)
◆「素材・部品・装備」の国産化を急ぐ韓国
韓国にも、日韓合弁のフッ酸メーカ―が存在するほか、Soulbrainはじめ韓国資本の高純度フッ酸メーカーがいくつも存在し、これらの韓国企業が今秋に突貫工事でフッ酸プラントを拡張したので、日本に依存しないサプライチェーンが構築されようとしている。
・SEMI日本政府による韓国のホワイト国除外により、韓国政府および韓国産業界がローカルソーシング(国内調達)を促進している製品群と関連する日韓の企業リスト (出所:韓国NH Investment & SECURITIESの資料を基にSEMIが作成した資料)
傘下に日本企業(昭和電工)との合弁ガスサプライヤである「SK Showa Denko」を抱えるとともに、半導体製造向け高純度三フッ化窒素ガス(NF3)で世界トップシェアを誇るSK財閥の特殊ガスメーカー「SK Materials」は、半導体用高純度フッ化水素ガスへの新規参入を今夏に決め、来年早々から出荷を始めるという。
自民党外交部会・外交調査会が今年1月の緊急合同会議にて、韓国政府の徴用工訴訟に対する不満足な対応への対抗措置として「韓国向けフッ化水素を禁輸して韓国の基幹産業である半導体産業に打撃をあたえよう」ということを議論して以降、韓国側も警戒を強め、準備を進めていたようだ。韓国政府は、日本政府に際して、素材3品目の規制解除だけではなく、「ホワイト国(現グループA国)」除外をやめるように要求し続けてきた。すでに韓国の半導体・FPD関連企業などは、日韓関係の未来は不透明であるとして、韓国政府と日本勢が圧倒的なシェアを握るCVD材料、ブランクマスク、シリコンウェハ、SiCウェハ、化合物半導体ウェハなどの材料を対象に、今後、あらたな輸出管理強化が実施されることを想定して対策を協議しているという。そして、「素材・部品・装備(製造装置および設備)」の国産化を促進する文大統領直轄の委員会を設置し、予算をつけて施策を実行に移しつつある。
SEMI韓国勢が予測している日本政府による輸出規制追加品目 (出所:韓国NH Investment & SECURITIESの資料を基にSEMIが作成した資料)
韓国唯一のシリコンウェハメーカーであるSK Siltronは、先手を打って米DupontからSiCウェハ事業買収を9月に決めている。結局のところ、現時点では7月から始まった韓国に向けた輸出規制強化は、韓国の半導体・FPD業界にたいした影響を与えられなかったどころか、一部の日本のフッ化水素メーカーの業績を激減させることとなった、さらに大手顧客である韓国企業の要請で日本の装置・材料メーカー各社の韓国への進出や既存韓国工場の増築・増産も促されており、日本のものづくりの空洞化も懸念される事態になりつつある。
SEMIによれば、韓国政府および産業界は、半導体やディスプレイ素材だけではなく、バッテリー素材、食料品や飲料(すでに日本からの輸出がほぼゼロになってしまったビールなど)、自動車素材(カーボンファイバーなど)化粧品、衣料品などのローカルソーシングも促進しているという。
◆12月24日の日韓首脳会議で議論は平行線
SEMIのTseng氏の講演から半月ほど経った12月24日、日本の安倍首相と韓国の文大統領は、中国成都で1年3か月ぶりの会談に臨んだ。結果としては、本稿執筆時点(12月25日)では、文大統領が輸出規制措置の即時撤回を求める一方、安倍首相は元徴用工の問題解決を求めたことで、議論は平行線のまま越年することとなった。
日本では、「韓国では素材開発に30年かかる」などと的外れの指摘をする向きがあるが、素材開発といっても日本や海外の技術にたよらずに独自にゼロから開発するわけではないし、韓国の国産化には、海外企業(もちろん日本企業を含む)の誘致による国内生産も含まれる。先般、台湾GlobalWafers傘下のMEMC韓国第2工場の竣工式に文大統領が出席するなど、大統領自ら、国内への呼び込みに余念がない姿も見受けられる。
「韓国に素材開発などできるはずがない」などとみくびっていると、半導体メモリやディスプレイメーカーに次いで、日本の半導体装置・材料までもが競争力を失い、「いつか来た道」を歩むことになりかねないと著者は危惧している。日本勢も「超格差戦略」(Samsungが好んで使う言葉)で、ライバルにすぐにはまねできない先進技術開発に注力すべきだろう。
【2】半導体の製造装置・素材の自給自足も目指す中国
米中貿易戦争が長引いていることを背景に、米国政府によるHuaweiへの輸出規制も続いており、同社は米国企業以外の部材調達先を探す動きを加速させている。Huawei以外の中国企業も同様にサプライチェーンの拡大に努めている。このため、短期的とはいえ、韓国、日本、台湾企業は事業拡大のチャンスを得ることとなっている。そうした動きの中において、日本勢は特にRF製品、韓国勢は半導体メモリ、台湾勢はファウンドリ・OSATビジネスでチャンスをつかんでいるとSEMIは分析しており、こうした動きが続けば、2020年以降、中国勢の米国離れは加速することになるだろうとしている。
しかし、長期的には、中国政府は中国内に半導体設計から製造、実装・検査に至る自給自足のエコシステムを構築する目標を立てて、その実現に向けてまい進している。すでに中国では中国の国家IC産業投資基金(National IC Industry Investment Fund、通称:国家基金National Big Fund。第2期分、2000億元規模)が始動しており、設計、製造、実装だけではなく、製造装置や素材開発にも補助金を出しており、先端プロセス向けにエッチング装置や素材を提供できる企業も登場してきたという。また、中国のファブレス企業は、急速に先進製品や先端技術への移行を進めており、CPU、GPU、ASIC、RF製品で特にその傾向が強いという。
◆米中貿易戦争下でも5Gで成長する中国勢
Tseng氏は、5Gが中国にもたらす影響について以下のような見解を示している。
・5Gは、米中貿易戦争およびハイテク覇権争いの対象となっている。
・中国は、計画よりも2か月はやく、2019年11月1日に5Gサービスを始めた。
・中国は、2019年末までに国内50都市で5Gサービスを始めて、世界最大の5G市場になろうとしている。
・中国での5G商用化は、Huaweiのビジネスをさらに発展させる。
・台湾TSMCは、中国での5Gスマートフォンの普及率を2020年に15%とみており、これは2億個に相当する。
・中国は、世界中で発売される5G端末の5割以上のシェア確保を狙っている。
・短期的には、5Gサービス開始で、アプリケーションプロセッサ、モデム、RF、PA(パワーアンプ)、PMIC(電源管理IC)などの半導体製品の需要を喚起するだけではなく、半導体メモリの過剰在庫 の平準化にも貢献するだろう。
・中期的には、5GはIoTの発展を促すだろう。
またTseng氏は、「5Gが今後の半導体産業やIoTの発展を促す。そのため中国は、米中貿易戦争下でも5Gを国家発展の起爆剤として利用し先導しようとしている」と述べており、5Gの主導権争いが今後、さらに激しくなってくる可能性を指摘している。
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