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「ダム最優先・堤防強化二の次」が招いた人災、安価な決壊防止策の再開を

 県知事選のさなか、豪雨・南海地震対策でも、国言いなりか、国にきちんとものが言えるか、どちらを向いて仕事するのか(県民か、ゼネコンか)が重要。

  「堤防決壊で大きな被害が出た西日本豪雨の教訓を活かさず、安倍政権が再発防止(危険地区の緊急堤防強化)を怠ってきたことは間違いない。今回の台風19号襲来で、堤防決壊続出を招いた主原因といえる」とし、ダム最優先が招いた人災との指摘は重い。

安倍政権の5年間(決算ベースだと思う)。ダム事業の予算は424億円(22%)増。一方で、河川事業は292億円(7%)削減。巨大な被害という現実を前に、この姿勢がとわれている。国民的な検証が必要だ。

  旧建設省研究所元次長・石崎さん「ダム建設の妨げになると思った建設省河川局OBの横やり」で中止となった「ダム建設より安価な堤防強化。決壊防ぐ工法、再開を」/ 河川政策の専門家、嘉田由紀子・前滋賀県知事は「『矢板やコンクリートで周りを囲む、アーマーレビー工法で鎧型堤防にして補強すべき』と国に提案してきたのですが、歴代の自民党政権は『鎧型堤防は当てにならない。堤防補強よりもダム建設だ』と言ってきた」

 【ダム建設より安価な堤防強化 旧建設省研究所元次長・石崎さん「決壊防ぐ工法、再開を」東京2019116日】

【千曲川の台風被害は、「ダム最優先・堤防強化二の次」の治水政策が招いた”人災” 横田一  2019.10.23

【ダム建設より安価な堤防強化 旧建設省研究所元次長・石崎さん「決壊防ぐ工法、再開を」東京2019116日】

  台風19号で注目されている水害対策について、旧建設省(現・国土交通省)土木研究所元次長で長崎大教授も務めた石崎勝義さん(81)=つくばみらい市=は、かつて国交省が取りやめた比較的安価な堤防強化の再開を訴えている。話を聞いた。 (宮本隆康)

  -各地で堤防決壊が起きたのは想定外か。

 ・驚きはない。台風が大型化していることと、強化されていない堤防が残っているためだ。

  -強化された堤防と、されてない堤防があるのか。

 ・堤防が決壊すれば、氾濫する水は格段に増える。決壊の原因の七、八割は、川の水が堤防を越える「越水」のため、越水対策を強化した堤防がある。

  -巨額の整備費で批判されるスーパー堤防とは違うのか。

 ・違う。堤防の裏のり(住宅地側のり面)は越水で容易に浸食され、決壊に直結する。三十年ほど前、裏のりをシートなどで保護することなどで、越水に耐えられるようにする工法「アーマー・レビー」が開発された。シートなどを使うだけなので、費用は高くない。

  -整備の進み具合は。

 ・全国で十カ所ほど実施例がある。二〇〇〇年に旧建設省から、設計指針が全国の出先機関に通知された。想定以上の雨で堤防が決壊する壊滅的な水害を防ぐ方法として「フロンティア堤防」の名称で本格的に整備され始めた。

 全国の河川で計二百五十キロの整備が計画され、実際に信濃川や那珂川など四河川の計十三キロで工事をした。しかし、二年後に突然中止された。

  -なぜか。

 ・ダム建設の妨げになると思った建設省河川局OBの横やりがあった。

  -それまで建設省は建設白書に五年連続で、想定以上の雨や越水への対策の必要性を明記していた。中止の理由は、白書にどう書いているのか。

 ・急に記述がなくなり、理由は書いてない。

  -四年前の鬼怒川決壊は越水が原因で、かつて想定した通りの事態だが、国交省は堤防強化を復活させなかったのか。

 ・国交省は、天端(てんば)(堤防の上の部分)や、のり尻(裏のりの下の部分)の補強を始めた。しかし、裏のりを保護しなければ効果はほとんどない。バケツに穴が三カ所開いていて、二カ所ふさいでも水が漏れてしまうようなもの。実際に昨年の西日本豪雨で、天端とのり尻を補強した小田川の堤防が決壊した。

  -西日本豪雨の後の国会では、堤防の裏のり強化について質問された。

 ・シートをつなぐ接ぎ目に問題があるとの答弁だったが、それなら接ぎ目の問題を解消すればいい。

  -国交省側は「あくまで試験的な事例」とも答弁した。

 ・全国に設計指針を回し、五カ年計画で二百五十キロの整備を予定した堤防が「試験的」なのか。

  -もし整備する場合、費用が問題では。

 ・ 既存の堤防の強化は一メートル三十万~五十万円で足りると思う。治水予算は年間九千億円ぐらいで、近年はさらに三千億円ほど上積みしている。ダムやスーパー堤防を後回しにすれば、数年程度で全国の堤防を耐越水化できると思う。沈下で低くなった堤防や川幅が狭くなる場所、合流地点など、特に危険な部分の強化だけでも、大規模水害をなくせると思う。

  -これほど決壊が相次いでも、大半の専門家は堤防の構造を問題視していないようだが。

 ・他にも同じ意見の人たちはいる。ただ、OBの多くは仲間の批判をしたくないのだろう。現役官僚は、堤防強化を中止した施策に縛られているのではないか。

  -「ハード対策に限界」との報道もよく見る。

 ・これまでの堤防は越水に無力だったが、少しの手直しで耐えられるようになる。水が堤防を越えることを前提とした技術は、温暖化で豪雨や台風の大型化が普通になった今こそ、生きる。市街地をひかえる堤防区間では、すぐに堤防強化をするべきだ。

 <いしざき・かつよし> 一九六二年に建設省入省。木曽川下流工事事務所長や土木研究所次長を歴任し、九一年退官。九九年から二〇〇六年まで長崎大環境科学部教授も務めた。

 

 

【千曲川の台風被害は、「ダム最優先・堤防強化二の次」の治水政策が招いた”人災” 横田一  2019.10.23

 ◆ダム建設を最優先し、堤防強化を軽視してきた

 台風19号が本州に上陸した1015日、千曲川の堤防が70メートルにわたって決壊した。その現場である長野市穂保地区を訪れると、そこには東日本大震災の被災地と同じような光景が広がっていた。

 一階部分の壁が抜け去った二階建て家屋が立ち並び、一気に押し寄せたであろう濁流の激しさを物語っていた。庭には車や農機具がガレキに埋もれ、周辺は一面泥でまみれていた。

  堤防脇の住宅は半壊状態。ようやく晴れ間が見えるようになったためか、長靴をはいた女性が家の周囲を見て回っていた。「ご自宅ですか?」と声をかけると、無言のまま小さく頷いただけで、その場から離れていった。しばらくすると、再び自宅前に戻って損壊状態を確かめていた。

  目の前に広がっていたのは、去年7月の西日本豪雨災害で堤防が決壊した岡山県倉敷市真備町と瓜二つの光景でもあった。死者50人以上の被害を出した真備町の堤防決壊について「歴代自民党政権による人災」と指摘したのは、河川政策の専門家で日本初の流域治水条例をつくった前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員だ。

  筆者が以前リポートした記事「『西日本の豪雨災害は、代々の自民党政権による人災』河川政策の専門家、嘉田由紀子・前滋賀県知事が指摘」で、嘉田議員は次のように語っていた。

「滋賀県知事になる頃から『矢板やコンクリートで周りを囲む、アーマーレビー工法で鎧型堤防にして補強すべき』と国に提案してきたのですが、歴代の自民党政権は『鎧型堤防は当てにならない。堤防補強よりもダム建設だ』と言ってきた」

  今回の台風19号被害は「ダム最優先・堤防強化二の次」を続けてきた、歴代政権による“人災”が再び繰返されたといえる。西日本豪雨災害の教訓を活かさなかった現政権の職務怠慢の産物と言っても過言ではない。

 ◆強化できたはずの堤防をなぜ放置していたのか

  千曲川の堤防決壊現場では、15日昼過ぎから「堤防調査委員会」委員長の大塚悟・長岡技術科学大学工学部教授が現地視察を行い、会見に応じた。地元記者との質疑応答が一回りしたところで、筆者は次のように聞いてみた。

――越水で浸食して破堤したということであれば、そもそも堤防の強度が不足しているのではないか。「もっと(堤防を)強化しておくべきだった」という見方はされないのでしょうか。

 ・大塚委員長:一般論ですが、堤防はもともと土堤ですから、それほど強度は強いものではない。

 ――鉄板(矢板)を入れるなどして堤防を強化できるはずです。越水をしても決壊しない工法をやろうとすればできるはずだったのに、なぜ採用されなかったのですか。

 ・大塚委員長:それはたぶんプラスの面とマイナスの面があるのだろうというふうに思います。確かにシートパイル(鋼矢板)が入っていれば、水に強いということは言えます。ただ、それが土堤とよく馴染んでいなければ、効果を発揮しないのかなと思います。それと、堤防は延長が長いですから。全部にシートパイルを入れるのかと。それは非現実的ですし、現状ではいろいろな判断で入れられていないことになると思います。

 ◆大塚委員長「今後、(堤防強化を)検討していく」

  とても納得できる発言ではない。堤防が決壊した穂保(ほやす)地区は千曲川の川幅がすぐ先で狭くなっていて、大雨時には水位が上がって堤防が決壊しやすい“危険地域”だったからだ。堤防が決壊した西日本豪雨災害を教訓にして、緊急に堤防強化をすべき高リスク地区であるのは一目瞭然だった。それを怠っていたのだ。筆者は質問を続けた。

 ――(穂保地区の)この部分は、この先が(川幅が)狭くなって特に危険な区域だと指摘されていますが、そういうリスクが高いところの堤防強化を緊急にするべきだったのではないですか。

 ・大塚委員長:もしそういうご批判があれば、今後、検討していく必要があると思います。

 ――去年の西日本豪雨災害の教訓を全然活かしていないのではないか。あの時も破堤して「堤防強化をするべきだ」という専門家の意見が出たにもかかわらず、なぜ、ここは強化されなかったのですか。

 ・大塚委員長:例えば、堤防強化をするのも一つですし、河道断面を大きく増やすとか、粘り強い堤防を作る。それ以外に拡幅工事、堤防を厚くするとか、いろいろな方法があります。堤防の上を舗装するとか、いろいろな浸食対策が行われていて、全国的に実施されています。

 ――堤防強化を最優先にせずに、ダムを最優先してきた治水政策が今回の災害を招いたという指摘もありますが、その点はいかがですか。

 ・大塚委員長:その点については、私にはちょっとまだ分かりません。この場所についてはこういうことが起きてしまいましたので、今後の対策をもっと考える必要があると思います。しかし、そういった施策全般についてここだけを見て言うことはできないと思います。

 ――堤防は「決壊してはいけないもの」ではないですか。それが起きたことへの専門家としての意見はどうなのでしょうか。

 ・大塚委員長:堤防は決壊してはいけないと思っています。誰もがそう思いますが、堤防は非常に延長が長い。全部工事をしていくと、それは莫大な予算と時間がかかってしまう。だから国としてはずっと努力はしていますが、非常に長い時間がかかる中で、どうしても整備率が上がらないという現実もあると思います。

 ――特に、ここは緊急にやるべきところだったのではないでしょうか。

 ・大塚委員長:そこはいろいろなご判断があるのだと思います。

 ◆まず最優先するべきは、危険地域の堤防強化だ

 『ダムが国を滅ぼす』などの著者がある今本博健・京大名誉教授(河川工学・防災工学)は大塚委員長の発言について、こう指摘する。

 「鋼矢板補強についての質問に対し、委員長は『周辺地盤と馴染んでいないと効果を発揮しない』と答えていますが、国交省の言い訳をなぞっただけです。地震などによって、鋼矢板と既設堤防との間に空隙ができることを指しているようですが、たとえ空隙ができても鋼矢板は破堤を防ぎます。

  委員長の発言は、河川工学者ではなく地盤工学者のような発言です。今回の調査委員会も、現地を見るだけで自らは調査をせず、国交省の調査をもとに国交省の見解を結論とすると思われます」

  千曲川の破堤個所を訪れたことがある今本氏は、堤防決壊の原因についても次のように推定した。

「下流の河道が狭まっていますので、せき上げにより水位が上昇して越水し、破堤に至った可能性が大です。堤防補強が完了していたようですが、補強のやり方がまずかったのでしょう。堤防の高さについての検討にも問題があったのではないでしょうか」

  千曲川の堤防決壊の原因が浮き彫りになっていく。それは「下流の河道(川幅)が狭まる危険個所であったのに、堤防強化が不十分で決壊に至った」というものだ。

  今本氏は現役時代の災害調査で、被害者から「原因究明もいいが、二度と同じことが起こらないようにする研究もすべきだ」と言われたことがあるという。「それ以後はこのことを心がけています」(今本氏)。

 

 堤防決壊で大きな被害が出た西日本豪雨の教訓を活かさず、安倍政権が再発防止(危険地区の緊急堤防強化)を怠ってきたことは間違いない。今回の台風19号襲来で、堤防決壊続出を招いた主原因といえるのだ。「ダム最優先・堤防強化二の次」の河川政策が今後、どう問いただされるのかが注目される。 <文・写真/横田一>

 

 

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