安倍「官民ファンド」 323億円の赤字、「農水」は遂に新規投資停止
第2次安倍政権発足後に設立された10ファンドに絞ると、赤字6、黒字3(非公表1)で、9法人の赤字・黒字を差し引きして計323億円の赤字。筆頭は、日本文化を海外に発信する「クールジャパン機構」179億円の赤字、今回、新規投資を停止した一次産業を支援する「A-FIVE 」92億円。
全体は黒字というが、黒字の3/4は、2009年に設立された旧産業革新機構(現JIC)。が、完全子会社の官民ファンドINCJが筆頭株主で支援を続けるジャパンディスプレイ(JDI)の再建の見通し不明。これまで4620億円の金融支援をしてきたが、2800億円が未回収。これが焦げつけば・・・
ファンド幹部に高級を与え、ずさんな計画に巨費 … 目的はお友達への利益提供?! 「桜を見る会」の経済版
【農水官民ファンド、新規投資を停止へ 累損100億円 累損解消メド立たず、早期解散も 日経11/21】
【農水官民ファンド、新規投資を停止へ 累損100億円 累損解消メド立たず、早期解散も 日経11/21】
財務省と農林水産省は官民ファンド、農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)による新規投資業務を2020年度末にも停止する方向で調整に入った。投資先の不振で機構の累積損失が100億円規模に膨らんでいるためで、その後は投資資金の回収に専念させる。累損解消は難しいと判断し、32年度としていた解散時期を大幅に前倒しする方向だ。財務省などは同様に累損が膨らむ他の官民ファンドの業務見直しも急ぐ。
【<論戦ファクトチェック>安倍政権推進の官民ファンド 323億円赤字でも 首相「全体で黒字」東京2019/10/30】
政府と民間がお金を出し合い、成長を期待する企業に投資する「官民ファンド」のうち、二〇一二年の第二次安倍政権発足後にできた十ファンドの損益を積み上げると、一八年度末で計三百二十三億円の赤字であることが分かった。安倍晋三首相は国会で「全体で五千八百億円の利益」と強調したが、この金額は政権発足前から続くファンドの業績も含めたものだ。 (大野暢子)
首相は十五日の参院予算委員会で、立憲民主党の蓮舫氏から、一部のファンドで損失が積み上がっていると指摘された。首相は「指摘を受け止めなければいけない」としつつ「五千八百億円の利益を上げ、全体としてはプラス」と反論し、官民ファンドは「成長戦略に資する」と強調した。
関係者によると、首相が予算委で示した「五千八百億円」は、一八年度末時点で投資をしている十三のファンドが、設立以来積み上げた利益と損失をまとめた金額だ。
答弁は誤りではないが、官民ファンドは第二次安倍政権が成長戦略の目玉に掲げたことで、新設が急増した経緯があり、アベノミクスの方針に沿って設立されたファンドも業績が好調だと誤解を招きかねない。
第二次安倍政権発足前からあるファンドや、旧組織の利益を引き継いだファンドのうち、中小企業基盤整備機構の設立は〇四年。INCJの前身は旧産業革新機構、地域経済活性化支援機構の前身は旧企業再生支援機構で、いずれも〇九年の設立。この三ファンドを除くと、十ファンドで三百二十三億円の赤字となる。
中でも、日本文化を海外に発信する海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は一八年度末現在の累積赤字が百七十九億円、一次産業を支援する農林漁業成長産業化支援機構は九十二億円に上る。
内閣官房の担当者は「結果が出るのが遅い案件も多く、現在は赤字が目立つが黒字化を目指す」と話す。
慶応大大学院の小幡績(おばたせき)准教授(企業金融)は「都合のいい数字を取り出し、官民ファンド全体が好調であるかのように見せ掛けるのは不適切だ」と指摘した。
【苦戦目立つ「官民ファンド」の行方 全体では大幅黒字だが...迷走・赤字組も j-cast2019/11/10】
安倍晋三政権が「成長戦略の目玉」に掲げてきた官民ファンドの苦戦が目立っている。
「『日本の魅力』を事業化し、海外需要の獲得につなげる」とうたう海外需要開拓支援機構(通称・クールジャパン機構)をはじめ、不振の4ファンドの累積赤字は、2018年度末で360億円超に達した。安倍首相は国会で「官民ファンド全体では黒字」と強調するが、これらのファンド以外にも火種はくすぶっている。
◆「よく知らないファンドからわざわざ資金調達しようとする生産者は...」
「累積損失について厳しいご指摘も受け止めなければいけないが、官民ファンド全体としてみれば、損失を大幅に上回る利益、5800億円の利益を上げている」。10月15日の参院予算委員会で、蓮舫氏(立憲民主党)から「(官民ファンドは)出口に向かうべきではないか」とただされた安倍首相は、胸を張ってこう答えた。
政府と民間が共同出資する官民ファンドは、民間だけではリスクが大きい新たな産業などに投資することで、民間投資の呼び水とし、日本経済の成長を後押ししようとつくられてきた。緊急経済対策の一環として設立されるケースも多く、第2次安倍政権の発足後に急速に増加。関係閣僚による会議で経営状況を確認している主な官民ファンドは現在、13あり、2018年度末時点で政府が約9180億円、民間が約3486億円の出資などを行っている。
ところがここ数年、鳴り物入りのファンドの迷走が次々と明らかになってきている。筆頭がクールジャパン機構だ。マレーシア・クアラルンプールに三越伊勢丹ホールディングスと開業した「ジャパン・ストア」など、投資案件が相次いでつまずき、2018年度末の累積赤字は179億円に膨らんだ。昨年、経営陣を刷新して新規投資に注力しているが、巻き返せるかは見通せない。
農林水産物の生産や加工、流通を手がける「6次産業化」を支援する農林漁業成長産業化支援機構(通称・A-FIVE)も、投資実績が伸び悩み、2018年度末の累積赤字が92億円に上る。関係者は「農協や金融機関から融資を受けられるのに、よく知らないファンドからわざわざ資金調達しようとする生産者は少ない」と明かす。
◆「寄り合い所帯」の難しさ露呈
業績不振に加え、不透明な経営実態や企業統治(コーポレート・ガバナンス)の不全も批判を招いている。A-FIVEでは、約6億円の損失を出した案件の事実上の責任者だった元専務が約1400万円の退職慰労金を満額受け取り、70万円だけ自主返納した。A-FIVEは弁護士事務所による調査で満額支給が妥当と結論づけた、と説明しているが、誰も責任を問われないままの幕引きとなった。
2018年末、先端技術や事業再編に投資する産業革新投資機構(JIC)で、役員報酬や運営方法をめぐって経営陣と監督官庁の経済産業省が対立し、役員が大量辞任する騒ぎが起きたことは、メディアでも大きく報じられた通りだ。成果を上げるため、民間の投資ファンド並みの経営スピードと高額報酬を求める民間出身の経営陣と、前例踏襲といったお役所的な運営を重んじる経産省がぶつかった結果だった。
新規の投資先を開拓しても、安全運転を目指す役所サイドからストップをかけられる」とこぼすスタッフの声は、他の官民ファンドからも聞こえてくる。生き馬の目を抜くような投資の世界で、「官」の判断の遅さは致命傷になりかねず、官民ファンドという「寄り合い所帯」の運営の難しさを感じさせる。
クールジャパン機構とA-FIVEのほか、交通インフラ開発を支援する海外交通・都市開発事業支援機構など2ファンドがそれぞれ30億円以上の累積赤字を抱え、これら4ファンドで累積赤字の総額は360億円超に上る。安倍首相が誇るように、官民ファンド全体では5800億円の黒字だが、その4分の3に当たる4364億円は第2次安倍政権発足(2012年末)より前の2009年に設立された旧産業革新機構(現JIC)が稼ぎ出したものだ。
◆ジャパンディスプレイ再建問題も火種
東京新聞が「論戦ファクトチェック」(10月30日朝刊)としてまとめたところでは、第2次安倍政権発足後に設立された10ファンドに絞ると、赤字6、黒字3(非公表1)で、9法人の赤字・黒字を差し引きして計323億円の赤字になる。
ほとんど唯一の稼ぎ手であるJICも安泰ではない。役員の大量辞任騒動が尾を引く中、完全子会社の官民ファンド、INCJが筆頭株主として支援を続ける中小型液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)の再建が、相次ぐスポンサーの撤退で瀬戸際に立たされている。「日の丸液晶」の再興を掲げる経産省の下、これまでに4620億円の金融支援をしてきたが、2800億円が未回収という。万が一、多額の公的資金が焦げ付く事態となれば、官民ファンドの存在意義が問われるのは必至だ。
問題が噴出する官民ファンドに対し、政府は経営状況のチェックを強化するなど対策に乗り出しているものの、改善には時間がかかりそうだ。アベノミクスの旗頭だった官民ファンドの行方は。
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