性暴力被害者支援センター 国の運営費 予算内に収めるため3割強削減~「桜見る会」とは大違い
予算枠の3倍も使っている「桜を見る会」と大違い。そこであらためてひどさを示す意味で、性暴力被害者ワンストップ支援センター運営費への対応をとりあげる。 状況と課題の整理にもなるので。
国は運営費の1/2を交付することになっているのに、センターが予想外に立ち上がったので、予算内に留めるために様々な仕掛けで削減。その額8千万円。これは必要額の3分の1にもなる。ただでさえ少なすぎるのに・・
【性暴力被害者ワンストップ支援センター運営費 安倍政権8千万円削減 赤旗10/27】
【性被害支援 渋る国 47都道府県 本紙調査で判明 赤旗2018/7/30】
【少なすぎる! 内閣府「性犯罪・性暴力被害者支援交付金」もとむら伸子 2018/3/8】
日弁連のシンポの内容を詳細にまとめくださっているブログ。勉強になる。
【医療の現場からみた「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの現状と課題」】
【性暴力被害者ワンストップ支援センター運営費 安倍政権8千万円削減 赤旗10/27】
◆「半額補助」守らず
性暴力被害の相談を受け支援するワンストップセンターの運営費(機能強化を含む。2018年度)をめぐって、安倍内閣は、国の財政支援が総計で2億5000万円(44カ所)必要だったのに予算の範囲に収めようとして、24カ所で計8000万円削減していたことが分かりました。予算不足への対応が急務となっています。
性暴力被害者ワンストップ支援センターの運営は、各都道府県の事業です。国は「性犯罪・性暴力被害者支援交付金」(17年度新設)で、運営費の2分の1を補助するとしています。
本紙が情報公開請求した資料によると、交付金を申請した44都道府県の運営費は5億477万円。2分の1の2億5238万円が交付金所要額とされました。しかし、交付金の予算額は1億7280万円です。実際の補助は3分の1にとどまります。
首都圏のある県の交付金申請文書に添付された県予算見積調書には、「補助率1/2だが、他県の内示状況を参考に1/3で積算」と書かれています。
少ない予算に合わせるために、安倍内閣は二つの方法を使いました。
一つは、支援センターの運営費基準額(1カ所)の設定です。これにより交付決定額を1億7531万円に減らしました。それでも予算額を251万円上回るとして、二つ目の方法を使います。基準額を超える24都府県が、超過分の一律4・86%削減される羽目に遭いました。
運営費の大半は被害者の相談・支援にあたるスタッフの人件費です。
政府は、相談員の人件費について、国の積算基準は、「平日8時間、2人分、単価は1時間当たり、申し訳ないながら1000円」としています(3月12日、参院内閣委員会。日本共産党・田村智子参院議員の質問に渡邉清・内閣府大臣官房審議官が答弁)。
しかし、「2人体制、時給1000円」という人件費をもとに設定された国の基準額では、支援センターの運営は困難です。
◆各地の性暴力被害者ワンストップ支援 国の基準 実態とかい離
各都道府県の事業である性暴力被害者ワンストップ支援センターに対して、国は、交付金で運営費の2分の1を補助するとされています。しかし、情報公開請求資料から2018年度の交付金(44都道府県が申請)を見ると、24都府県で補助が削られています。
関東地方のA支援センターは平日午前9時から午後5時まで、年1708時間の運営です。被害者支援にあたるスタッフは常勤2人(月給)、非常勤(1日6時間)1人。他に被害者の希望を聞き、必要な支援を提示するコーディネーター(非常勤)が配置されています。国の基準とする「2人分」では運営が困難であることがわかります。
被害者に付き添う同行支援ボランティアの賃金と交通費。これに事務所管理費などを合わせると運営費は1099万円です。交付金は359万円(運営費の32%)です。東北地方のB支援センターは平日10時~午後8時と、土曜午前10時~午後4時の年2728時間運営とされています。
運営を委託している団体との契約では、スタッフは相談員・支援員をセンターに最低でも2人配置し、病院や司法関係者などへの付き添い支援も必要です。同センターの特徴は、男性の相談員の配置です。毎週土曜には、男性による対応を希望する相談者のために、相談員・支援員のうち1人は男性を配置することが委託契約に入っています。
運営費は853万円。本来の2分の1補助なら交付金は426万円ほど。しかし、国の基準額(410万円)に抑えられた上、超過分に一律4・86%の削減(3万円)が加わり、407万円の補助となっています。削られたのは19万円ほどですが、男性相談員の賃金(年47万円)と比べると、その重さが実感できます。
24時間365日運営(年8760時間)の場合、運営費に対する実際の補助率は最も低い県で14%です。運営費5301万円に対し交付金は740万円です(基準額は760万円)。夜間、休日の相談員・支援員の体制を平日の日中と同様の体制で支えています。
一方、夜間・休日をコールセンター企業のダイヤル・サービス社に委託している県も少なくありません(図)。北陸地方のある県は、約288万円で同社に委託しています。また、同じ北陸地方の別の県は約340万円で同社に委託しています。2県の委託料を合わせてやっと夜間・休日の1人分の人件費が出てくる勘定です。こうした体制が、性暴力被害の相談を受け心身のケアにあたる支援センターとして適切なのか検討が必要です。
【性被害支援 渋る国 47都道府県 本紙調査で判明 赤旗2018/7/30】
◆「財源不足」自治体は悲鳴 国の交付金比率4割以下が過半数
性暴力被害者の心身のケアを一カ所で行う「ワンストップ支援センター」への国の財政支援の拡充を地方自治体が強く求めていることが、本紙の47都道府県への調査で分かりました。支援センター運営安定化の国の交付金が昨年度に比べ今年度少なくとも8都県で減額されており、24時間365日開設の自治体からは「財源不足」との声があがっています。(武田恵子)
本紙は、47都道府県の支援センター担当部署に、開設電話や今年度の事業経費(うち国の交付金)について聞きました。
支援センターは7月までに45都道府県につくられ、残る2県も10月までの設置が決まっています。電話相談を年間通じて24時間行っているのは15都府県の支援センター。うち6県は夜間や休日を別のコールセンター(ダイヤルサービス)で対応していると答えています。
支援センターの設置を促し運営の安定化を図る「性犯罪・性暴力被害者支援交付金」は昨年度と今年度、国の予算に盛り込まれました。昨年度は1億6300万円で37都道府県に交付されています(内閣府ホームページ)。
今年度の国の交付金の予算は1億8700万円。今年度に支援センター設置の5県を含む44都道府県に交付されています。
今年度の国の交付額について33都道県が回答しました。
「性犯罪・性暴力被害者支援交付金」要綱によると、運営費など対象経費の2分の1(医療費は3分の1)を交付するとしています。しかし、都道県の事業経費予算に占める国の交付金比率が40%を切ったのが半数以上にのぼりました。交付に必要な条件が整わず「ゼロ」と答えた県もありました。地方の負担が重くなっていることがわかりました。
◆「市も対象に」■支援員育成・確保も 性暴力被害者支援センターへの援助
性暴力被害者の心身のケアを一カ所で行う「ワンストップ支援センター」への国の財政支援が「性犯罪・性暴力被害者支援交付金」です。
今年度の国の交付金が昨年度より減ると見込まれるのが少なくとも8都県あることが本紙の調査でわかりました。
そのうちの一つ、東京都は、昨年度と事業経費予算が変わらないのに国の交付金が400万円近く減り、「財源不足」と回答しています。
都は、民間支援団体「性暴力救援センター・東京(SARC東京)」と連携して、24時間365日相談を受けつけています。約50人の相談員(非常勤)が交代で常時2人の支援体制をとっています。
国の交付金の対象が都道府県に限られ、市の相談支援事業が交付金の対象になっていない点を指摘する声もありました。
北海道の「性暴力被害者支援センター北海道SACRACH(さくらこ)」は道と札幌市が共同して設置しています。交付金の対象は道だけで「札幌市の負担は対象となっていない」(道の担当部署)としています。また、函館市が設置している、性暴力被害対応チーム「函館・道南SART(サート)」の相談支援事業も「交付金の対象になっていない」(同)としています。
国の財政支援について、「全都道府県に支援センターが設置された後、国の交付金は継続されるのか」との不安の声が聞かれました。昨年度、設置を促す国の交付金がつくられるまで、民間支援団体の独自のとりくみと自治体の支援にまかされてきました。こうした事情を踏まえ、各県の回答には、「事業の継続には予算の確保が課題」として国の交付金の継続を求める声や「国の交付金の拡充」など増額を求める声がつづられています。
相談を受け、関係機関へ付き添いもする支援員・相談員の体制についても聞きました。常勤2人(賃金は月給。所長36万円、支援員28万円)と7人の非常勤(時給1100円)で支えている支援センターがある一方で、非常勤やボランティアが支えている支援センターも少なくありません。支援員・相談員の体制についてある県は「15人の非常勤。時給840円」と答えています。別の県は「20人のボランティア。手当は1時間当たり400円」と回答しています。
支援員の育成や確保も課題となっています。ある県は、「専門的な知識を要する支援員の育成に長期の時間を要する」と答え、別の県は、「相談業務経験や性被害に関する知識等を有する相談員の計画的な確保に苦慮している」と回答しています。支援員の育成と確保、待遇改善に国の財政支援が求められています。
◆予算大幅増額と支援法案成立を
本村伸子・日本共産党衆院議員の話 レイプ被害者は、未成年者も多く、交通費などお金もないなかで、夜中であっても被害にあったときに被害者に寄り添った適切な相談、医療的、心理的支援などをワンストップで受けられる身近な場所が必要です。72時間以内の緊急避妊剤経口投与や、シャワーなどを浴びる前に一刻も早い本人の意思にそった証拠採取も行わなければなりません。
私の国会での質問に野田聖子総務相は、「都道府県のさまざまな実態やニーズに応えられるよう、(性犯罪・性暴力被害者支援)交付金の使い勝手の改善には引き続きしっかり取り組んでいきたい」と答弁しました。支援内容、体制を充実し、箇所数を増やすためにも予算の大幅増額とともに「性暴力被害者支援法案」の成立が急がれます。
【少なすぎる! 内閣府「性犯罪・性暴力被害者支援交付金」もとむら伸子 2018/3/8】
【内閣府「性犯罪・性暴力被害者支援交付金」について】
2017年度予算額 1億6300万円
2018年度予算案 1億8700万円
この交付金について内閣府は、「性犯罪・性暴力被害者支援のためのワンストップ支援センター」の「早期設置及び運営の安定化を図るため、都道府県による支援センターの整備等に係る取組を支援し、被害者支援に係る取組の充実を図ることを目的とする」と述べています。
全国のワンストップ支援センターの予算額としては、本当に少なすぎます。
この予算額で足りているのかと問うと、内閣府は、東京都の要求額には応えられていないと答えていました。
被害者の人権は同じなのに、各都道府県で支援の内容が違う、格差があるのはおかしいと問うと、それはそうです、と答えていました。
抜本的な拡充が必要です。
さらに言えば、野党が提案している性暴力被害者支援法案
http://www.shugiin.go.jp/…/…/gian/honbun/houan/g19001038.htm
の早期成立が必要です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
交付先は、各都道府県です。
どういうものにたいして交付するのか
◆都道府県が負担した①~③の経費
①相談センターの運営費等
○関係機関との連携強化に要する経費、警察などとの連携、相談員の研修、会議などの費用
○被害者の法律相談(訴訟費用は含まない)など法的支援に要する経費
○ホームページやリーフレットなど広報啓発等に要する経費など
→交付金を受けている都道府県では、2人くらいの職員体制について要求されているそうです。
②被害者の医療費等
○感染症は初診料
○カウンセリングは回数制限なし
○中絶費用
○緊急避妊の薬代
○診断書など
③拠点病院化の経費
○部屋のレイアウトをつくるソファー、ついたてなどの経費
○証拠採取した時の冷凍庫
※部屋の改修などには使えない
交付率は、対象経費の2分の1。
ただし、②の被害者の医療費等については3分の1。
②は何故3分の1なのかについて、内閣府からは、警察の予算でやる方向だから、とのこと。
【医療の現場からみた「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの現状と課題」】
Tamaka Ogawa 2019/01/27
シンポジウム:医療の現場からみた「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの現状と課題」
2019年1月26日@弁護士会館 主催:日本弁護士連合会
■第1部 基調講演
◆「病院拠点型ワンストップ支援センター設立に向けた課題とは」
講師:加藤治子氏(産婦人科医師・性暴力救援センター大阪SACHICO代表)・性暴力被害者の診療とケアは産婦人科医師の任務であると考える。
→けれど産婦人科の医師は研修などで性暴力被害者の診療について学んでいない。医師になったあと、自分で勉強会や研修に参加するしかない現状がある。・性暴力に関する調査では内閣府の「男女間の暴力に関する調査」が一番信頼が置けるのではないかと考える。「異性から無理やり性交をされたことがある」女性の割合…7.8%、13人に1人(男性は1.5%)、3年おきに調査しているが、この数値はほぼ一定している。
→警察庁の強姦(現・強制性交等罪)の認知件数は年間約1000件ほど。実際起きていると考えられる数(年間6~7万件/加藤さんによる推計)と、大きく違う。
→相談先 「警察」…女性2.8%(男女3.7%) 「医療機関」…女性2.1%(男女1.8%) 警察や医療機関に相談している割合は非常に少ない。
→警察に相談した被害者は、「犯罪被害者等基本法」に基づいた支援が可能。しかし警察に相談していない人の相談機関がなく、支援のための根拠法がない。
→SACHICOへの相談者は比較的警察へ行っている(警察に相談した後で警察からSACHICOを紹介されることもある)が、それでも警察へ通報した人はSACHICO開設から8年間で43.5%。それ以外は通報していない。・被害時にできる膣の傷は小さくて、すぐ消えてしまうことが多いので72時間以内の診療が必要。一方で、性感染症や妊娠の有無については少し時間が経たないとわからない。
・実感としては、被害者にとって頼りになるのは警察より弁護士。時間をかけて警察に話しても逮捕に至ったり、起訴されることは少ない(強姦の起訴率は40・1%、強制わいせつは36.1%/H28/性犯罪の起訴率は年々低下傾向)。警察に相談したときに被害者が二次被害を受けたり、無力感を味わうことも多く、同時に弁護士さんに動いてもらうことが必要と感じている。
・検察からSACHICOが意見を聞かれることがある。たとえば、「性器がどれほど挿入された際に強制性交(強姦)と考えるか」。被害者が子どもの場合など、挿入しようとして挿入できないことがある。どの程度で強制性交となるか強制わいせつとなるかの判断が、現場の検事の間でも曖昧なままなのではないか。
・DVの中でも性的なDV(コンドームをつけないなど)は警察が取り合わない場合が多い。「二人で話し合って」などと言われてしまう。DVによる妊娠は妻側の意思だけで中絶手術を可能にしてほしいという意見書を出しているが認められていない。
・性行為のリスクについての知識がない状態で「性的な同意」ができるとは言えないのではないか。
・性被害に遭った子どもの診察は、その後の裁判のためにも非常に重要。小児科医が診ることがあったが、性器の診療は産婦人科がやるべき。ただ、産婦人科医の全員ができるわけではない。
・病院拠点型のワンストップセンターの需要が多いが、少ない(第2部に詳細)。
・性犯罪・性暴力被害者支援交付金の予算案、平成31年度概算要求は3億4600万円だったが、「財務省にばっさり切られて」2億1000万円に。平成30年度は1億8700万円だったので増額ではあるが…
・子ども同士の性暴力も深刻。男児が自分の性器を女児の口に入れさせる被害が保育園児でもある。小中学生でもある。中学生はオーラルセックスなら妊娠しないと思っている。性感染症が口腔性交でも伝染ると知らない。
■第2部 全国のワンストップ支援センターへのアンケート結果報告
報告者 横山佳純氏(埼玉弁護士会) 木村倫太郎氏(兵庫県弁護士会)・第4次男女共同参画基本計画(2015年12月閣議決定)で2020年までに、全都道府県に最低1か所のワンストップ支援センターが成果目標として掲げられる。
※ワンストップ支援センター…性暴力被害者に対して、医療的ケアやカウンセリング、法的支援などを可能な限り1か所で行う機関。
※2018年10月、奈良県性暴力被害者サポートセンター「NARAハート」が開設され、これで全都道府県全てに1か所以上のワンストップセンターが設置されることに。・現在、全国に54か所。そのうち、「行政が関与する(性犯罪・性暴力被害者支援交付金が出ている)ワンストップ支援センター」は、47都道府県に49か所。49か所の一覧はこちら。
・弁護士会が54か所にアンケートを行った結果が以下。
・病院拠点型…12か所、相談センター拠点型…1か所、相談センターを中心とした連携型…39か所、その他…2か所・病院拠点型のセンターは、拠点病院が、ほかの協力病院と連携して支援にあたっている。連携している協力病院の数は1~56か所。拠点病院から遠方に住む被害者が来院しやすいように配慮。
・病院拠点型センターが病院拠点型を選択した理由は、医療機関とのスムーズな連携のほか、24時間緊急事例に対応できること、夜間の運営を行う上で支援員にとっても安全な環境であることなど。
・一方で、拠点病院となる医療機関の確保や資金面などに苦労があり、「性暴力被害者支援を医療が担うという認識が低い」という指摘も。資金面や運営で補償や制度、研修、専門医師、看護職の確保や養成が必要。・病院拠点型以外のセンターで病院拠点型創設を検討しなかった理由の中で「県土が広いため、単独病院を拠点にした場合、被害者の利便性が損なわれるおそれがある」というものが見られたが、現在の病院拠点型は全て協力医院と連携しており、運営の認識に誤解があるかもしれない。
・病院拠点型と比べると、その他のセンターでは急性期対応が不利と思われるが、支援員の夜間のタクシー代の予算を確保するなど体制を工夫しているところもある。・病院拠点型センターを増やしていくために、拠点病院となる病院の確保や、人員不足の解消が必要。1都道府県に1か所以上、病院拠点型センターが必要。
→国からの財政的支援、国費による病院への補償、診療報酬制度の改善、国がワンストップ支援センターのある病院について医療機関として高く評価する施策が必要。■第3部 パネルディスカッション「医療の現場からみた 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの現状と課題」
<パネリスト>加藤治子氏(SACHICO代表)、宮地尚子氏(精神科医)、山本潤氏(性暴力被害者支援看護師SANE、一般社団法人Spring代表理事)、望月晶子氏(東京弁護士会/レイプクライシスセンターTSUBOMI代表)
<コーディネーター>長谷川桂子氏(愛知県弁護士会)・(山本)看護師の勉強の中で性暴力被害対応を教えられたことはなかった。被害者は自分を強く責めるため、「あなたは悪くない」というメッセージを浴びることは必要。
・(望月)TSUBOMIはセンター連携型の支援センター。私達は被害者がしたくないことはしないという前提があるが、その中で唯一、さりげなくでも伝えるのは、「一刻も早く病院へ行きたいね」ということ。妊娠や性病のことを考えたら。急性期の相談は、連携してくださっている病院や、東京のワンストップに案内したりしている。どこの病院でも性暴力被害対応ができるようになったら一番いいが、そうでないのが現状。
・(宮地)被害者にとって被害自体ももちろん恐怖だが、その恐怖を話したときにわかってもらえるかわかってもらえないかで、その後が大きく違う。急性期(被害後すぐ)に誰もわかってくれない気持ちを経験すると、その後にPTSD、うつ、引きこもりなどの症状が出やすい。被害時の写真がネットに載せられパソコンに触れなくなる人も。
・(宮地)急性期対応、中長期対応、どちらがより必要ということではなく、どちらも必要。被害者支援はないないづくしのところから始まってここまで来ている。少ないパイを奪い合うのではなく、1つの県に病院拠点型と相談支援型両方あるのが普通にしたい。ただ、急性期対応ででしかできないことがある(診療、証拠採取)ため、急性期に対応しやすい病院拠点型を増やすことは急務。
・(望月)各都道府県に1つのワンストップ支援センターという目標が達成されたので、次は病院拠点型を各都道府県に1か所以上。ただし、それでも絶対に足りない。
※国連は女性の人口20万人につき1か所のワンストップ支援センターが必要と提唱している。その基準では日本には300か所必要。
・(宮地)通報されるレイプ被害は2~3%。もし窃盗被害の2~3%しか警察が対応できないのだとしたら大変恥ずかしいこととなるはず。社会全体の認識が必要。
・(加藤)適切な性教育が行われず、性は怖い、危険、汚いという認識で留まっている。性は素晴らしいということを子どもに伝えないといけない。
・(加藤)現状、ワンストップに協力する医師の負担は大きい。女性医師を希望する被害者が多いこともあり、一晩で3回呼び出された女性医師もいる。しかし支払われる診療報酬は少ない。思いを持ってやってくれている医師に負担が大きい現状。
・(加藤)最近は(性暴力被害者の診療についての)研修に来てくれる男性医師が増えた。協力してくれる医師はまだ足りないが、医師の意識は変わってきていると思う。
・(望月)TSUBOMIに寄せられる相談のうち1割は男性から。未成年だけではなく成人男性からも。男性、LGBTへの支援の拡充を。
・(山本)全国のワンストップの約半数ほどの方とお会いした経験があり現場の方が一生懸命やってくださるのは知っている。この30年間で前進したと思う。一方で、どうしてこんなに進まないのだろうという気持ちもある。(性暴力被害当事者として)議員さんのところで実情を伝えても、話が平行線、伝わらない。社会の問題ではなく、被害者の問題と思われているのかと思うとしんどくなる。道のりは長いから、道筋が見えればいいのだが……。■シンポジウムを聞いての個人的な感想
弁護士会の方がまとめてくれたワンストップ支援センター一覧によれば、全国で初めてワンストップセンターができたのは沖縄(強姦救援センター・沖縄REICO)。1995年10月25日開設(沖縄米兵少女暴行事件の翌月)。2か所目のワンストップセンターができたのはそれから15年後の2010年、性暴力救援センター・大阪SACHICO。それからの8年間で、全都道府県に1箇所以上のワンストップセンターが開設されたので、2010年までの何十年間に比べたら、ここ数年の動きはめざましいのかもしれない。けれども、未だにそれ?っていう感もある。
性暴力の被害を受けた人が、どこに相談したらいいかわからず、自分で医者や支援先を探して、断られて戸惑われてそれでも探してっていう状況がこれまであり、今でも続いている。交通事故に遭ったら救急車を呼べばいいし、強盗に遭ったら警察を呼べばいいし、火事なら消防車。でも性暴力被害に遭ったときにどうしたらいいか知っている人は少ないし、まだ本当に支援先が少ない。
ワンストップ支援センターの存在や、警察が開設した性暴力被害専門ダイヤル#8103のことを、もっと伝えていかなければいけないと思う。支援を受けることで警察に行く気になれる人もいる。通報しなければ認知件数にカウントされないので、支援先の少なさは暗数の多さにつながる。たぶん、議員さんの中にも「日本は海外に比べて性被害が少ないのだからワンストップも少なくていい」と思っている人がいるのだろうが、ワンストップがなければ見つからない被害はある(よくネット上で引用されている国ごとの10万人あたりの強姦発生件数は、カウント方法やレイプの定義が国によって異なるので一概に比べられない)。
性犯罪・性暴力被害者支援交付金は2億1000万円……。前澤社長のお年玉の約2倍。1年に支払う税金の半分ぐらいは、自分が寄付したい支援機関に寄付させてくれる制度がほしいよ~。
パネリストとして登壇していた望月弁護士が代表理事のレイプクライシスセンターTSUBOMIも寄付を募っています。
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