高浜1/2 なぜ、採算性無視しての老朽原発への投資に固執?
高浜1/2号は、延長する審査の結果、2034年、35年までの運転が可能となったが・・・ 同原発は、旧式で、上部遮蔽トップドームの新設、側面外壁の補強、総延長約1300キロメートルに及ぶ電気ケーブルの難燃化など多大な投資を必要とする。さらに、土地を新たに造成して特定重大事故等対処施設の建設が必要となる(3.4号にも対応)
すでに再稼働は来年7月以降となる。「特重」は2021年6月までに完成すればよいが、現時点で2年6カ月遅延。その間は原発が止まる。
順調にいっても、14-5年-2.5年と、延長期間の半分の11-12年しか運転できない。「特重」の遅れは、稼働中の3.4号機に影響するのに、1.2号基の工事を優先。7基の原発の規制基準をクリアするための投資は1兆円を超えた。
巨額の工事をすることが目的ではないか … 廃炉ドミノも避けられる。地元も関電幹部らも儲けることができる。原資は、税金(原発交付金)と電気料、なんとでもなる。送電網は握っているので、ライバルの新電力はいつでも排除できる・・・今回の関電、行政・警察を巻き込んだ「汚職」事件の闇は、もっと深い気がする。金品受領は、14年以降に急増している、との報道(時事10/7)
【老朽原発の運転延長審査が最優先された理由 関西電力・高浜1、2号機が40年超の稼働へ 東洋経済2016/6/21】
岡田 広行 : 東洋経済 記者
原子力規制委員会は6月20日、関西電力に高浜原子力発電所1、2号機の40年を超す運転延長を認可した。これにより、関電は同1号機で約18年4カ月、2号機で約19年4カ月先まで稼働させ続けることができる。40年を超す老朽原発の運転延長は福島原発事故後に導入された現行制度の下では初めて。関電は耐震補強などの工事に3年あまりを費やしたうえで、2019年10月以降に再稼働させる考えだ。
老朽原発の運転延長については、原子炉等規制法の改正を進めた当時の民主党政権下で"40年ルール"が設けられ、その際に「例外中の例外」(細野豪志原発担当相=当時)とされた。だが、厳格だと見られていたルールは早くも形骸化しかけている。関電・美浜原発3号機でも40年超の運転に向けての審査が進むほか、今後は関電以外からも40年を迎える原発について、運転延長のための申請が行われる可能性が高い。
◆他社の申請を差し置き、関電の審査を最優先
高浜原発1、2号機の審査プロセスは異例中の異例だった。
新規制基準が施行された直後の2013年7月に再稼働のための原子炉設置許可変更を申請した各社の原発では、審査手続きがいまだに終わっていない。その一方で関電が高浜1、2号機の設置許可変更申請書を提出したのは2015年3月17日と、まだ日が浅い。40年超の運転を認めてもらうための運転延長認可申請書の提出に至っては同4月30日だった。その後、規制委ははるか前に申請した各原発の審査を後回しにする形で、老朽原発の審査を最優先にした。
「昨年の審査会合では、案件数では7割方が関電の案件」「独占とは言わないが、(関電のために審査のマンパワーの)かなりの部分を使っている」
規制委の更田(ふけた)豊志委員長代理は、関電の八木誠社長が出席した今年6月1日の臨時会合で、関電から持ち込まれた審査の大変さに苦言を呈した。
現在、関電の原発については美浜原発3号機のほかに、大飯原発3、4号機でも審査が進められている。「大飯についてもぜひバランスよく審査を」と求める八木氏に対して、規制委側からは「(関電ばかり優先できないという)われわれの状況もぜひご理解いただきたい」(田中俊一委員長)、「(審査を独占したことの)責任というべきか、その重みを感じていただきたい」(更田氏)という声が挙がった。
それにしても、なぜかくも関電の原発を優先したのか。
現行ルールのうえでは高浜の2基については今年7月7日までに運転延長の認可を出せなければ、時間切れアウトになり、廃炉に追い込まれるためだ。
そうした事態を避けたかったのは、関電のみならず規制委も同じだった。万が一、時間切れになった場合、政府与党や電力業界からの規制委への風当たりは激烈なものになるうえ、関電から損害賠償請求訴訟を起こされるリスクも取り沙汰されていた。
◆急ごしらえの対応、合格後に試験も
そうした中で、審査は紆余曲折を繰り返した。プラント部分の審査を指揮した更田委員長代理自身が八木社長との面談で「耐震設計の部分についてはなかなかすんなりいかなかったように思う」「急ごしらえで(関電が)いろんな手法(を編み出してきた)というところもあったのだろうと思う」と語ったように、蒸気発生器など重要機器の耐震評価の前提となる「減衰定数」(揺れが収まるスピード)が関電の都合で、緩和されるいきさつもあった。
審査に際して、「規制委は関電に配慮しているのではないか」と疑われる一幕もあった。
減衰定数を関電が従来の1%から3%に緩和したことに伴い、蒸気発生器を実際に揺らす試験(加振試験)が必要になったが、審査の終盤になって「工事計画認可を出した後の、使用前検査段階で確認できればいい」という進め方が決まったためだ。
当初のやりとりでは、加振試験については工事計画認可を出す前のタイミングで行うという考えを規制委は示していた。しかし、工事計画認可は遅くとも7月7日までに出さなければ時間切れアウトになる。最終的に、再稼働直前の使用前検査で確認すればよいということになったことで、関電は耐震工事終了後の3年後まで時間的猶予を得た。要は40年超え運転の合格証をもらった後に、試験をやって通ればいいということになったのである。
こうしたいきさつがあったことから、設置変更許可に際してのパブリックコメント(意見募集)では「これでは後出しじゃんけんで何でも通ってしまう」との批判も出た。
原発の安全審査に詳しい専門家からも、審査の甘さを指摘する意見が出ている。旧原子力安全委員会事務局で技術参与を務めた滝谷紘一氏は「高浜1、2号機は過酷事故対策でも不十分な点がある」と指摘する。
◆川内原発と同じ方法で評価すれば水素爆発のおそれ
滝谷氏が問題にしているのは、関電が提示した炉心溶融が起きた際の水素爆発防止対策だ。九州電力・川内原発の対策と見比べて検証した滝谷氏によれば、「川内原発と同じ方法で評価し直した場合、高浜1、2号機では新規制基準で水素爆轟(ばくごう)が生じるおそれがあるとされる水素濃度13%を超えるとの試算結果が出た」という。
高浜1、2号機については、総延長約1300キロメートルに及ぶ電気ケーブルの耐火性能が新規制基準を満たしていないことから、関電はその6割について難燃性ケーブルに張り替える方針だ。その一方で、張り替えが困難な部分については、防火シートでくるむという手法を採用した。これについては、「モックアップ試験(実証試験)で耐火性が確認されている」(原子力規制庁)というが、実際に工事を終えた後の使用前検査できちんと施工されているかを確認しなければならない。
関電によれば、高浜1、2号機の安全対策工事費用は約2000億円。再稼働までのタイムラグを勘案して約16年の運転が可能だとして、年間のコストは約125億円にのぼる。関電の試算ではこれだけのコストを費やしても経済的に成り立つという。だが、高浜1、2号機の運転延長認可をめぐっては、4月14日に住民が規制委などを相手取った認可取り消し訴訟を名古屋地裁に起こしている。関電は被告ではないものの、安全対策の巨額投資のみならず、訴訟リスクも背負い込んだ形だ。老朽原発再稼働の道のりは依然として不透明だ。
【巨額金品授受問題の関西電力、「高浜発電所」に見る関電経営陣の病理 牧田寛10/4】
(グラフも含め、全文は、オリジナルをぜひ読んでください) ・・・・・・・・・・
今回の大規模資金還流事件について著者は報道で知り愕然としたわけで、自前での情報は持ち得ません。但し、今年7月の全国原子力・核施設キャラバンで高浜発電所については徹底して撮影をしており、関西電力美浜、高浜発電所の異様な工事、到底採算性などあり得ない企業経営を揺るがしかねない大赤字必至の再稼働・延命に向けた工事を見て、関西電力の経営陣に深刻な病理があるのではと強く感じました。 今回は、その当時の映像、写真をご紹介して関西電力の美浜、高浜の高経年炉(旧式炉)への異様な執着について執筆します。
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高浜発電所1号炉2号炉は、それぞれ1974年、1975運転開始(運開)の3ループPWR(蒸気発生器が三系統の加圧水型原子炉)で、定格電気出力がそれぞれ825MWeです。商用PWRとしては中型炉に相当します。 二基ともすでに40年の運転寿命を終えており、追加の20年(延長期間は一回のみ、40年に連続した20年間)の運転期間に入っています*。 <*運転期間の60年への延長は、2017年の実用炉規則第113条第1項改正によって現在は、認可期間満了日から起算して1年前までならいつでも申請できるが、それまでは1年3ヶ月前から1年前までと言うものであった。結果として、認可後に工事が大きくずれ込み、延長運転期間を数年間の工事期間で費やすことになっている。合衆国では運転期間終了の何年前であっても申請できる。当初の申請期間の開始日は、制度設計ミスとしか考えられない。但し、高浜発電所や美浜発電所などは、経過措置で40年を超えて申請、審査期限が2年ほど加算されている。
/改正 平成29年9月20日 原規規発第 1709202 号 原子力規制委員会決定2017/09/20原子力規制委員会>
関西電力高浜発電所 1,2号炉格納容器改造内容
高浜発電所一号機および二号機の60年までの運転に向けた安全性向上対策工事の計画についてpp.3 2016/09/08関西電力より高浜発電所1,2号炉は、設計が古く鋼製セミダブル格納容器(SCV)と言って鋼製格納容器側面には茶筒のような鉄筋コンクリート製生体遮蔽板がありますが、頂部は鋼製格納容器が剥き出しです。この構造ですと、過酷事故=冷却喪失(LOCA)やメルトダウンなどを起こしたときに強い放射線が原子炉建屋上部から抜けるために大気中で散乱した放射線が地表の職員を被曝させます。これをスカイシャインγ線と呼称します。また、ヘリコプターなどによる支援も放射線によって困難となり、福島核災害でも大きな支障となりました。
(高浜1,2と同時期建設の美浜3では、鋼製ダブル格納容器が採用されているため、トップドーム生体遮蔽板を当初から備える。美浜発電所3号機 工事計画変更認可申請書 補足説明資料2019/05 関西電力より)
結果、鋼製セミダブル格納容器を備えたPWRでは、上部遮蔽トップドームの新設と、側面外壁の補強という大きな工事を要することになりました。
これはたいへんな工事量、期間、費用を要する為、2ループ600MWe級の旧式炉(玄海1,2伊方1,2美浜1,2)では再稼働と運転期間延長を諦める強い動機となっています。
なお、このトップドーム生体遮蔽板により、航空機突入やミサイル攻撃への対策になるという誤った発言をする人が居ますが、この改造は、航空機突入やミサイル攻撃への対策を考慮していません。とくに弾道ミサイルにはボール紙のように打ち抜かれ、全く耐えられません。航空機突入は、確率的に無視しうるほど低いという用地選定時の評価で対策としています。しかし、日本の空には米軍機という名実ともに無法航空機が飛び交い、伊方発電所に突入し幸運にも外れた前例がありますし、意図的な航空機突入=Kamikaze Attackも考慮に入れることとなった結果、特重施設のバックフィットが行われています。
◆採算度外視の異常な高浜1号炉、2号炉への執着
高浜3,4号炉は、1985年運開の第二次改良標準化PWRで、鋼製ダブル格納容器を持っています。また、40年の運転寿命はあと6年弱残っていますので、60年への延長の申請と工事を今後の定検とあわせて早めに行うことが出来ます。
このことから3,4号炉は、1,2号炉と比して、遙かに今後の投資額が少なく、運転期間を失う事も最小限に抑えられます。1,2号炉は、現時点で20年の延長運転期間を5年失っており、工事の遅れから少なくとも更に1年失います。また、特重工事も遅れており、加えて1年以上失う可能性があり、合計すると20年のうち7〜8年を運転できずに失うこととなります。
残り12年のうち定検で3年前後運転できませんから、兆円規模の投資をして実質10年しか運転できない計算となります。 あくまで見て判断しただけですが、四国電力伊方発電所と比しても工事の遅れが顕著 で、1,2号炉延命工事に足を引っ張られる形で3,4号炉の特重工事が更に遅延するのではないかと憂慮します。 これでは採算をとれるとはとても考えられません。合衆国の原子力電力事業体ならば、こんな無茶な投資はしないでしょう。
◆さらなる大規模投資特重施設(特定重大事故等対処施設)
日本の原子力発電所は、福島核災害までは、多重防護*の第四層と第五層が存在しないために原子力安全という視点では世界の趨勢に比して著しく見劣りがする代物でした。そのため福島核災害では、過酷事故に足して全くなすすべが無く、様々な偶然が無ければ更に深刻な事態に陥り、原子力委員会最悪予測(福島第一原子力発電所の不測事態 シナリオの素描)によれば、首都圏の三千万人が核災害難民となることが予測されました。 <*多重防護5つの段階については、「北海道胆振東部地震『泊原発が動いていれば停電はなかった』論はなぜ『完全に間違い』なのか」P2を参照>
この報告書は、余りにも恐ろしい内容なので「無かった」ことにされ、隠蔽されましたが、菅直人元首相がその存在を明かし、情報公開請求によって日の目を見て、多くの人が知ることになりました*。 <*「福島第一原子力発電所の不測事態 シナリオの素描」のGoogle検索結果>
これを教訓に多重防護の第四層を法整備したのですが、それが「特定重大事故等対処施設」(特重)です。なお、多重防護の第五層=住民保護・原子力防災は事実上存在しません(形骸的には存在する)。
特重施設は、多岐にわたりますが外からよく見えるのは第二制御室や非常用電源の追加、水源の追加、第二動線の整備などがあります。これらは航空機突入やテロール対策として原子炉から100m前後離されていますので、敷地が狭く地形の悪いPWR原子力発電所では土地造成から行わねばならず、たいへんな大工事になります。
高浜発電所の場合、1,2号炉を廃炉にしないために敷地の余裕が全くなく、結局山の裏側に新たに敷地造成していますが、導線二つの啓開を含めて莫大な工事量となっています。この特重工事の遅れは操業中の全原子力発電所できわめて深刻な状況となっており、最低1年の期限超過は確実ですが、現状では2年3年と超過する可能性が濃厚です。
(メモ者 下記表によると高浜1/2号の「特重」設置期限は、2021年6月に対し、超過期間2.5年。23年末完成)
勿論、期限を越えた場合は、その原子力発電所には原子力規制委員会(NRA)から停止命令が出され、操業中止となります。
このことでは、今年四月から五月にかけて電力各社がNRAに泣きつき、財界もお目こぼしを要求しましたが、NRAは断固として拒絶、この点でのなれ合いの可能性は無くなっています。
特重施設配置図
特重施設等の設置に向けた 更なる安全向上の取組状況について2019年4月17 主要原子力施設設置者 (北海道電力等9社、日本原電及び電源開発)特重施設進捗状況/すべての発電所で深刻な遅れが出ており、ボロボロである
特重施設等の設置に向けた 更なる安全向上の取組状況について2019年4月17 主要原子力施設設置者 (北海道電力等9社、日本原電及び電源開発)◆関電で目立つ無謀な投資
関電は、大飯3,4、高浜3,4という優れた原子炉を保有していますが、美浜1,2,3 、高浜1,2というかなり旧式の高経年炉と大飯1,2という受動安全性の低い商業的には失敗した炉(合衆国を含め採用例は少ない)を抱えています。このうち小型の美浜1,2と、運転コスト高に悩まされた大飯1,2を廃炉にしたことは優れた判断ですが、美浜3、高浜1,2を諦めなかったことは重大な判断ミスと言うほかありません。
結果として当初の関電の見込みでは数千億円であった投資は、すでに一兆円を超えており、さらに一兆円追加となる可能性も十分にあり得ます。まさに「原子力3倍ドン、更に3倍ドン」*という最悪の事業費増加になる可能性があり得るのです。 <*原子力、費用三倍則と言い、経験的に原子力、核事業は、当初見積もりの三倍の費用がかかることが多い。とくに原子力船むつ、もんじゅ、核燃料サイクルなど、3倍の3倍で10倍近くに費用が膨らみ、事業失敗することが多々ある。著者は、これを“巨泉のクイズダービー”にたとえて、「原子力3倍ドン、更に3倍ドン」と命名している。福島核災害では、「原子力10倍ドン、更に10倍ドン」と言うレコード達成は確実であろう> このような無謀な投資を関西電力が行っている理由が私には、まったく分からず、不思議で仕方ありません。意地でやっているにしても、責任逃れでやっているにしても規模が大きすぎます。
そういった中、まさに深刻な問題案件の高浜発電所の立地自治体である高浜町を舞台とした長年にわたる関電幹部社員、役員への大規模な資金還流が発覚しました。
これは特別背任の可能性もあるきわめて重大な企業犯罪案件となり得るわけですが、仮にそうであれば原子力安全の根幹を揺るがす事態です。 今後の捜査の進展を注視するほかありません。
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