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数千億円かけた防空システム 安価な無人機の攻撃に無防備 サウジ石油基地

14日のサウジの石油施設攻撃について、アンサール・アッラー(俗称:フーシー派)が掌握するイエメン軍が、18日の記者会見で、改めて自ら攻撃したことと、複数の種類の無人機を使用したことを語った(中東調査会のウェブサイト参照)。

 この攻撃は、軍事面でサウジに衝撃を与えているとのロイターの報道。

 サウジの安全保障専門家の1人は「われわれが国防のために数十億ドルを投じた防空システムと米国製兵器は、どこにあるのか。これほど精密な攻撃ができるなら、海水淡水化工場などもっと多くの施設が標的になりかねない」と語っている。ミサイル防衛システムに莫大に金をかけている日本にも共通すること。軍事力の対策では限界がある。

 アンサール・アッラーは、この種の攻撃をイエメン紛争に介入し、社会資本などを破壊してきたサウジ・UAEに対する抑止・報復と位置づけている。つまり、「今世紀最大級の人道危機」というイエメンの惨劇が背景にある。この解決がすすめば、中東の平和と安定はすすむ。そこに力をつくすことだ。(イエメン軍の発表を無視、イラン犯人説にやっきになるのは、この「惨劇」に焦点をあたらせたくない思惑を、感じてる)

【イエメン:サウジの石油施設攻撃に関する動き #2 中東調査会2019/9/20

【数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備 ロイター2019/9/20

【中東政策をめぐってサウジと距離を置くUAE WEDGE Infinity 2019/9/16

【数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備 2019/9/20

  サウジアラビアは、高高度からの攻撃を抑止するため、数十億ドルを費やして西側から最新鋭の防空システムを購入してきた。だが、同国の巨大な石油産業の施設が大打撃を受け、安価な小型無人機ドローンや巡航ミサイルによる攻撃からの防御には、全く役立たないことが、図らずも証明されてしまった。

 14日の攻撃で、サウジの原油生産量は約半分に落ち込んだ。隣国・イエメンとの4年半に及ぶ戦争で何度も重要資産が攻撃を受けながら、同国が適切な防衛態勢を整えていない実態を露呈した。

  サウジと米国は、恐らく今回の攻撃の背後には、イランがいるとの見方をしている。ある米政府高官は17日、攻撃の起点はイラン南西部だったというのが米政府の考えだと説明した。3人の米政府高官は、攻撃にはドローンと巡航ミサイルの両方が使われたと語った。

 イラン側は関与を否定し、サウジが主導する有志連合に敵対しているイエメンの集団が攻撃を実行したと主張。

 イエメンの親イラン武装勢力フーシ派は、自分たちが単独で攻撃したとする声明を発表している。

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によると、イランの弾道ミサイルと巡航ミサイルの発射能力は、中東で最強であり、イランや同国が支援する近隣の武装勢力とサウジの距離の近さを踏まえれば、サウジのいかなるミサイル防衛システムも事実上圧倒する可能性がある。

 ただ、より限定的な攻撃でも、サウジにとって手に余ることが分かっている。例えば最近フーシ派は、サウジの民間空港や石油ポンプ設備、同国東部のシェイバー油田などの攻撃に成功した。

 サウジのある安全保障関係者は「われわれは無防備だ。どの施設にも実質的な防空態勢が存在しない」と話した。

14日に攻撃されたのは、国営石油会社サウジアラムコの2つの石油精製施設。石油関連施設の被害としては、199091年の湾岸危機時にサダム・フセインのイラク軍がクウェートの油田を炎上させて以来の規模となった。

 サウジ政府は暫定的な調査結果として、イラン製の兵器が使用されたと分かったが、発射地点はなお不明だと説明している。

 当初、専門家はドローンによる攻撃と特定していたが、3人の米政府高官は、ドローンと巡航ミサイルを組み合わせた攻撃方法であり、初めに考えられたよりも複雑で高度な作戦だったことがうかがえると述べた。

 サウジの安全保障専門家の1人は「サウジにとってこの攻撃は(米中枢同時攻撃の)911のようなものだ。今回の攻撃は、これまでの状況を一変させるゲームチェンジャーだ」と指摘。さらに「われわれが国防のために数十億ドルを投じた防空システムと米国製兵器は、どこにあるのか。これほど精密な攻撃ができるなら、海水淡水化工場などもっと多くの施設が標的になりかねない」と懸念する。

 主要な都市や施設にサウジが配備している防空システムでは、長らく米国製の長距離地対空ミサイル「パトリオット」が、主要な役割を果たしてきた。実際、フーシ派がサウジの都市に向けて発射した高高度飛行の弾道ミサイルは、首都・リヤドを含む主要都市で見事に迎撃されてきた。

 ところが、ドローンや巡航ミサイルは、より低速かつ飛行高度も低く、パトリオットにとって検知・迎撃が難しい。

 ペルシャ湾岸諸国のある高官は「ドローンは、サウジにとって非常に大きな試練だ。なぜなら、しばしばレーダーをかいくぐって飛んでくる上に、イエメンやイラクとの国境線が長いためで、大変脆弱な状況に置かれている」と指摘した。

 ◆安価な攻撃手段

 アラムコの操業に詳しい関係者は、今回攻撃を受けたアブカイクの施設は、ドローンに対する防衛態勢が不完全だったと証言した。当局は、レーダーが適切にドローンを捉えたかどうか調査を進めている。

サウジと取引がある西側の防衛企業幹部は、1年前までアブカイクの防衛用にパトリオットが配備されていたと話す。

14日に適切な迎撃ができなかった理由について、記者団から聞かれた有志連合の報道官は「230発を超える弾道ミサイルが有志連合によって迎撃された。われわれはあらゆる脅威に対応しており、サウジの安全保障を確保する防衛能力がある」とだけ答えた。

 サウジ政府の報道担当部門は、コメント要請に回答しなかった。

 先のサウジ安全保障関係者と2人の業界関係者によると、同国政府は数年前からドローンの脅威を認識し、コンサルタントや関連業者と解決策を話し合っていたものの、新たな具体的措置を講じてこなかった。

 米国防総合大学のデーブ・デロッシュ氏は「従来のほとんどの防空レーダーは、高高度からの脅威に向けて設計されている。巡航ミサイルとドローンは地表すれすれを飛んで来るが、地平線が丸い関係でレーダーに映らない。また、ドローンは小さ過ぎて、大半のレーダーに熱源として探知されない」と解説する。

 たかだか数百ドル程度のドローンに対し、1発約300万ドルの高額なパトリオットミサイルで撃ち落とすのは、あまりにも割に合わない面がある。

 米国の防空専門企業・ディドローンのヨルク・ランプレヒト最高経営責任者(CEO)兼共同創業者は、より有効なドローン迎撃策として、こちらからもドローンのスウォーム(群れ)を向かわせることを提案する。

また、ジャミング(電波妨害)などの技術によって、ドローンを制御不能にできるとしている。

ただ、頻繁にジャミングを行えば、産業活動が損なわれたり、周辺住民に健康被害を与えることにつながる恐れもある。

 いずれにしても武装されたドローンは入手しやすくなる一方で、重要なインフラへの脅威は過剰なほどに高まりつつある、と専門家はみている。

 サウジの政策担当者がずっと前から恐れているのは、中部と東部に淡水を供給している同国東部・ジュバイルの淡水化施設が攻撃される事態だ。

 この施設が破壊されれば、数百万人が水を利用できなくなり、修理に長い期間を要する可能性があるとみられている。

 [リヤド/ドバイ ロイター]

 

【中東政策をめぐってサウジと距離を置くUAE WEDGE Infinity 2019/9/16

 岡崎研究所

  2015年に始まったイエメン内戦は、クーデターを起こしたホーシー派をイランが支持し、クーデターを起こされた側のハディ暫定大統領(こちらが国際的に承認されている)をサウジアラビア主導の連合軍が支援する、というのが大まかな構図である。サウジとアラブ首長国連邦(UAE)は、反ホーシー派ということで協力関係にあるということになっている。

  しかし、イエメンにおける両国の目的には相違がくすぶってきた。87日にイエメンの事実上の首都アデンでUAEの支援する「南部暫定評議会」と国際的に承認されたハディ大統領の政府の間で戦闘が起きたこれは、UAEのサウジ離れを象徴する事件であった。UAEは、イエメン南部の地域の民兵を訓練、支持し、「アラビア半島のアルカイダ」に対する反テロ作戦を進め、南部の経済開発を支援してきたが、「南部暫定評議会」はこれらの作戦のパートナーであった。

  今や、UAEがサウジの中東政策から距離を置こうと努力しているのは明らかである。

  イエメンにおけるサウジの最優先事項はホーシー派に対し南部国境を護ることであったが、UAEは紛争での役割を通じ、世界貿易にとって重要なアフリカの角とバブ・エル・マンデブ海峡への軍事的、経済的アクセスを拡大しようとしてきた。サウジもUAEもイランを深刻な脅威と考えているが、UAEのほうが地理的にイランに近いし、イランとの通商関係が深いのでイランとの対立の影響を受けやすいため、イランとの外交関係を続けるなど、現実的な政策を取っている。それに加え、UAEは、イエメンにおける人道上の危機について非難されることに辟易し、イエメン内戦から手を引こうとしている。

  これに対し、サウジにとってはイエメンは同国の裏庭であり、サウジとしては、そこでイランの影響下にあるホーシー派が優位に立つことは何としても避けたいと考えている。サウジにとってイランは中東での覇権を争う宿敵である。つまり、UAEのサウジ離れは、単にイエメン内戦だけではなく、対イラン政策における相違というもっと大きな文脈で見る必要がある。

  サウジから距離を置こうとするUAEの動きは、湾岸におけるサウジの影響力の低下を反映している面がある。かつてサウジは「湾岸協力評議会」を通じ、湾岸の覇権国であった。それが最近は、カタールの離反、UAEの動き、イエメン情勢の泥沼化、イランの影響力の増大などで、サウジの影響力は弱まっている

  サウジとUAEの地域戦略の分裂は、米国と両国との関係がトランプ政権の中東政策の要であるから、米国にも重要な影響を与える。イランとの高くつく戦争を回避しようとするUAEの決定は、トランプ政権のイラン戦略を複雑なものにするだろう。トランプ政権はサウジ、特にムハンマド皇太子との関係を、無条件と言っていいほど重視しているが、このあたりでサウジの置かれた状況をよく吟味し、サウジ政策をバランスのとれたものにシフトする必要に迫られていると思われる。

  イエメン自体については、関係国はそろそろ内戦の終息を考えるべき時期に来ている。サウジには、軍事力によりホーシー派を屈服できないという厳然たる認めるべき事実がある。そうすると、政治的解決を求める他はないということになる。政治的解決には2つの前提がある。一つは、サウジ政府にとっては「清水の舞台から飛び降りる」決断かもしれないが、来るイエメン中央政府にホーシー派の参加を認めることである。第二は、イエメン南部にある程度の自治を認めることである。イエメンでは南北に分かれていた時代のほうが統一の時代よりはるかに長く、南部では今日でも分離独立を望む世論が強いという。このような南部の意向を反映して初めて、新しい中央政府は安定するであろう。

 

 

 

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