国際人権法(76年発効)が、個人の請求権を担保…日韓問題への視点
外務省条約局国際協定課長という立場で、国際人権規約の国会承認を事務方で支えた浅井基文氏のコラム。
「日韓関係悪化の全責任は安倍政権にある」(http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2019/1155.html)
76年発効した国際人権規約により、個人の請求権について流れはおおきく変わり、世界各国で、過去に国が行った行為についての謝罪や補償が行われるようになった。日本軍「性奴隷」、徴用工の問題は、この到達点から見るべきである、と国際的な人権規定の到達点から解説している。重要な視点。
※外務省HP「国際人権規約は、世界人権宣言の内容を基礎として、これを条約化したものであり、人権諸条約の中で最も基本的かつ包括的なものです。社会権規約と自由権規約は、1966年の第21回国連総会において採択され、1976年に発効しました。日本は1979年に批准しました。なお、社会権規約を国際人権A規約、自由権規約を国際人権B規約と呼ぶこともあります。」
・1965年日韓請求権協定で解決済みとしてきた日本政府の主張は理解できる…当時は個人の請求権は国が肩代わりして解決することができるというのが国際的な理解であり、日本が独立を回復したサンフランシスコ平和条約における請求権問題に関する規定もそういう考えに立っている。世界的に認められた主張。
①国際人権法が確立することで、この主張・理解は崩れた。
具体的には、国際人権規約B規約(日本が加盟したのは1978年)
・国際人権規約B規約第2条3項
「この規約において認められる権利又は自由を侵害された者が、公的資格で行動する者によりその侵害が行われた場合にも、効果的な救済措置を受けることを確保すること」
この規約において認められる「権利」や「自由」を「侵害された者」とは、従軍慰安婦問題や徴用工問題との関わりでいえば・・・
第7条は「何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない」
第8条3項(a)「何人も、強制労働に服することを要求されない」
・国際人権法が確立した後、世界各国では過去にそれぞれの国が行った国際人権規約に違反する行為についての救済措置が講じれた。
→オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、アメリカでは先住民族に対する謝罪や補償/アメリカは第二次大戦中に日系アメリカ人に対して行った隔離政策を謝罪し、補償/第二次大戦中の強制労働問題に関し、ドイツは「記憶・責任・未来」基金をつくった。
・国際人権法が確立されてから、各国で過去に国が行った行為についての謝罪や補償が行われるようになったことを考えると、日本も従軍慰安婦や徴用工の人たちに対して、謝罪し、補償しなければいけないことは当然。
→「文在寅大統領も『国際的な人権、人道の考え方が確立した今日では日本の主張はおかしい』」と述べているとのこと。
日韓請求権協定や日ソ共同宣言に関して、国が放棄したのは個人の権利を保護する外交保護権であると、日本政府自身が明確にしていることです。個人の請求権自体は協定によっても消滅することはないのです。この点については、1991年8月27日に国会で外務省の条約局長がはっきり答弁
②日韓請求権協定や日ソ共同宣言に関して、国が放棄したのは個人の権利を保護する外交保護権であり、個人の請求権自体は協定によっても消滅していない、と1991年8月27日に国会で外務省の条約局長がはっきり答弁(メモ者 この点については当ブログでも再々とりあげてきた)
→ これは、国際人権規約批准による「軌道修正」と指摘。
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