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地球温暖化とステーキ問題 ~ 畜産、土台としての穀物生産と水 

 小泉環境大臣が、日本ではない記者の「どう脱化石燃料にとりくむのか」「原発の汚染水処理の見通しは」など単刀直入な質問に、まったく答えることができなかった。それに加えて、温暖化問題での国際会議にあたって、あえてステーキを食べ、SNSで発信。

 無知なのか、トランプ様につき従うというメッセージなのか・・・どちらにしても、今の日本政府は「この程度」と、真実を暴露した功績は買いたい。

【小泉環境相がステーキを食べたことの何が問題か 橋本淳司  9/24

【日本は意外な「水輸入大国」――仮想水貿易でわかる水問題のグローバル化  三菱商事 2018.07.13

【小泉環境相がステーキを食べたことの何が問題か 橋本淳司  9/24

橋本淳司  | 水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表 9/24() 14:33

 ◆牛肉生産は温室効果ガスを排出する

 小泉進次郎環境相が国連気候行動サミットに出席したが、米国ニューヨークでステーキ店に入店したことが話題になっている。気候変動対策を議論する会議に出席する環境大臣が「ステーキを食べる」ことが非難を浴びたが、その理由は主に3つある。

 *ハンバーガー一個に水2400リットル

*牛革1キログラムに、水17000リットル

 1つ目は、牛の温室効果ガス排出量だ。

 気候変動というと化石燃料による温室効果ガスの排出が注目されるが、畜産も温室効果ガスを排出している。

なかでも牛の排出量は多い。

地球上には約15億頭の牛がいる。そのほとんど畜産牛だ。

牛は4つの胃をもつ。最も大きい胃(第1胃)の容量は約150~200リットル。

 第1胃の中には、さまざまな微生物がいて、エサとして摂取した飼料(植物繊維)を発酵・分解する。

第1胃の中には、メタンをつくる菌(メタン産生菌)もいて、発酵・分解の時に発生した水素をメタンに変える。

つくられたメタンは、ゲップ、オナラとして環境中に放出される。

その量は1頭につき1日160~320リットル。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によると、メタンは世界の温室効果ガス排出量の16パーセントを占めている。

 ◆牛肉生産は穀物を大量に消費する

  気候変動は食料生産にも影響を与える。

 現代の食生活は小麦、トウモロコシ、大豆などの穀物を中心に成り立っている。穀物の消費は、大きく2つに分けられる。

1つは主食として「直接消費」する場合であり、もう1つは、家畜の飼料として使用し、畜肉や酪農品として「間接消費」する場合だ。

 たとえば、鶏卵1キロを生産する場合に必要なトウモロコシは3キロ、豚肉1キロで7キロ、牛肉1キロでは11キロだ。牛肉は飼育期間が長いので飼料の量も多くなる。

 直接消費、間接消費があるものの、現代の食生活は間違いなく穀物中心だ。

 しかし、世界的な人口爆発によって穀物の供給量が不足するようになった。

 1960年に30億人だった世界人口は、現在は76億人だ。2100年には112億人になると予測されている。

 人口増にともない穀物生産量も増えれば問題ないかもしれない。

 実際1965~96年までの30年間では、世界人口は2倍になり、それを追いかけるように穀物生産量も2倍となった。

 だが、今後も人口増に見合う穀物を生産できるかどうかは疑問視されている。世界各地で欧米型の食生活に代わり、牛肉をはじめとする肉の需要が増えると、これまでよりはるかに多くの穀物が必要になる。

 イギリスの経済学者トマス・マルサスは、18世紀末、食料の増産は人口の幾何級数的な増加に追い付けないという仮説を立てた。これまで人類は工業化という手段でマルサスの仮説を覆してきた。品質改良や生産管理、栽培・飼育法の改善、無駄の削減、貯蔵技術など、総合的な進歩によって食料生産を増やした。

 しかし、それも限界の時をむかえている。

  アメリカ農務省の推定によれば、2011年の世界の穀物生産量は22億9500万トンにおよんだ。一方、同期間に消費量は9000万トン増加して、22億8000万トンになった。一方で、現在約8億2100万人が食料不足に直面している。ここには穀物の遍在、持てるものが過剰ににもち、持たざるものが飢える、がある。

 穀物生産を妨げる理由には3つある。1つ目が水不足、2つ目が土壌浸食、3つ目が温暖化(気候変動)だ。

 1つ目が水不足だが、全世界で使われる淡水のうち3分の1は農業用水だ。水の需要は年々増加傾向にあり、過剰なくみ上げによる地下水の枯渇や灌漑用水の不足によって、穀物生産にも深刻な影響が出ている。穀物の大生産地であるアメリカ、中国、インドでは地下水を際限なくくみ上げて生産を行ってきた。そのために地下水位の低下、枯渇という問題が起きている。

  インドの地下水については、日本経済新聞(2019年8月17日)に「政府の試算ではデリー首都圏、ベンガルール、チェンナイなど主要21都市で来年にも地下水が枯渇する見込み。日本企業を含む外資の製造拠点が集まる場所が多く、このままでは生産に大きい影響が出る」との記事もあった。

 2番目が、森林破壊にともなう土壌侵食。焼き畑農業、農地への転用、木材伐採などで、森林なかでも熱帯林は、毎年相当な面積が消えている。こうして森林の保水力が弱まると洪水が発生しやすくなり、土壌が流出するので、作物生産ができなくなる。

  3番目の理由は、気候変動だ。気温が上がり作物の生産に適さなくなる。

 気候変動は水の循環も変える。気温が上がれば循環のスピードが早くなり、水の偏在(多いところと少ないところに偏りがあること)に拍車をかける。すなわち穀物不足の1番目の理由である水不足、2番目の理由である洪水による土壌流出が起きやすくなる。

 ◆牛肉生産は水を大量に消費する

  肉の育てるには水が必要だ。なぜなら水をつかって育てた飼料(植物)をエサにしているからだ。

 家畜が育つまでにつかった水をすべて計算すると、鶏肉1キログラムには450リットル、豚肉1キログラムには5900リットル、牛肉1キログラムには2万600リットルの水が必要だ。こうした水使用が生産地の水環境を悪化させる。

 小泉環境相が何グラムのステーキを食べたかはわからないが、仮に一般的なサイズとされる300グラムを食べたら、6180リットルの水を消費したことになる。東京に住む人が1日に使う水の量が約250リットルなので、25日分の量だ。

 牛肉だけでなく牛製品も批判の対象に(拙著『いちばんわかる企業の水リスク』/イラスト:加藤マカロン)

 その一方で、日米両政府は、米国産牛肉の日本輸入に関し、緊急輸入制限の発動基準数量を年間約24万トンとすることで合意する見通しだ。米産牛肉の関税は現在の38.%から段階的に9%まで引き下げられる見通しで、安価な海外産牛肉の輸入枠が事実上拡大する恰好だ。

 牛肉の大量生産が地球温暖化や環境破壊を引き起こしていることから、欧米では「ミートレス」の動きが活発になっているが、安価な海外産牛肉が大量に出回る日本では、こうした事情に気付きにくい。

 だが、ここで述べたように、牛肉の大量生産が、気候変動を促進し、食料危機をもたらし、水不足を引き起こすというのも事実だ。いつまでも「知らずに買ってました」、「知らずに食べていました」でいいのか。小泉環境相だけでなく私たちも、何を食べるか、何を選ぶかを考えなくてはならない。

 

 

【日本は意外な「水輸入大国」――仮想水貿易でわかる水問題のグローバル化  三菱商事 2018.07.13

 これまで「ローカルな資源」と考えられてきた水。しかし、実は食料や工業製品の輸出入を通じて、水資源も国際的に取引されている。そうした概念を考えるときに使われるのが「仮想水(バーチャルウォーター)」という考え方だ。日本の仮想水貿易の収支を調べてみると、意外にも多くの水を他国に頼っている姿が浮かび上がってきた。81日は国が定める「水の日」。世界の水資源問題と、私たちの暮らしとの意外なつながりを考える。

  仮想水とは、ロンドン大学のアンソニー・アラン名誉教授が1990年代に提唱した考え方。食料などを輸入する際に、その生産に必要な水も輸入したことになると考えて、輸入した水の量を計算したものだ。食料を他国から輸入すると、その生産に必要となるはずだった水を国内で使わないですんだことになる。

  水資源というと飲み水や、炊事や洗濯に使う生活用水が思い浮かぶ人も多いかもしれないが、実は世界の水資源取水量の約7割は農業用水として利用されており、工業用水は2割、生活用水は1割程度に過ぎない。

  日本のカロリーベースの食料自給率は38%2016年度)。雨が多く水資源が豊富な日本だが、多くの食料を輸入に頼っていることもあり、仮想水の輸入量も大きい。東京大学サステイナビリティ学連携研究機構の沖大幹教授らの試算では、日本の主要穀物(大麦、小麦、大豆、トウモロコシ、コメ)と畜産物(牛肉、豚肉、鶏肉)についての仮想水総輸入量は年間約60兆リットル以上にのぼり、国内での灌漑に使う水の量を上回る。日本人1人あたりで計算するとおよそ50万リットルで、仮想水輸入量は世界一と考えられるという。

  一般的に、穀物と畜産物では、仮想水の量は畜産物のほうが多くなる。家畜の場合、エサの穀物が育つのに必要な水の量も加算されるためだ。沖大幹教授らの研究では、1キログラムを生産するのに必要な水は、小麦では2000リットル、コメでは3600リットル。一方、鶏肉では4500リットル、牛肉では2700リットルにもなると推計されている。

  日本への仮想水の輸入量の内訳(下の図)では、一見すると、とうもろこしや大豆、小麦などの農作物の割合が半分以上を占める。ただ、輸入されるとうもろこしの7割は飼料用であり、大豆も油の搾りかすが飼料として利用されるため、畜産物にかかわる仮想水の輸入は見た目よりも多くなる。国産の鶏肉や牛肉であっても、飼料が外国産だと、仮想水貿易という点では海外依存度が高いことになる。

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沖教授提供の資料より作成

  沖教授はこう語る。「日本は農畜産物を生産するために必要な平地が少ない。コメだけだったら何とか自給できるかもしれませんが、食肉を生産するのに必要な飼料用作物を育てるだけの土地は足りません。日本人が現在の食生活を続けていくためには、ある程度、仮想水の輸入量が多くなるのはやむを得ないと考えられます」

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沖教授提供の資料より作成

  日本の仮想水の輸入先を表したのが、上の図である。アメリカが最も多く、次いでオーストラリア、カナダ、ブラジルなどからの輸入が多いことがわかる。こうした現状を、どうとらえればいいのか。

 「基本的には、1人あたりの水資源量が多い国から少ない国に、仮想水は貿易されていると考えることができます。水が豊富で食料生産に余裕がある国の水資源を有効に使っているとも考えられるわけで、仮想水の輸入量が多いことが必ずしも悪いというわけではありません。数十年使ったら枯渇してしまうような水資源を使ってつくられた食品を輸入し続けることは持続可能性を考えると問題がありますが、現状でそうしたケースの割合は数%程度と考えられ、決して多くない。全体としてみれば、仮想水貿易による恩恵の方が大きいと考えられます」

 「水資源問題は、これまで地域ごとのローカルな問題と捉えられてきましたが、食や工業製品の輸出入を通じてグローバルなイシューになってきたと考えられます。まずは、どの国にどれくらい私たちの食生活が支えられているのかを知ることが第一歩です」

  私たちが日々、口にしている食品は、遠い他国の水資源を使うことで生産されているものも多い。目に見える世界の裏にある地球規模の水の循環を知ることは、持続可能な社会を考えるための土台になりそうだ。

 PROFILE

東京大学サステイナビリティ学連携研究機構教授沖 大幹さん

おき・たいかん/1964年生まれ。地球上の水の循環を総合的に研究する「水文学(すいもんがく)」が専門。気象予報士の資格も持つ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書の統括執筆責任者。著書に『水の未来 グローバルリスクと日本』(岩波新書)など。国連大学上級副学長も務める。

 

 

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