アメリカ 新農業法で価格保障を強化 /安倍農政と対照的
昨年12月にアメリカの新しい農業法(2018年農業法)がスタート。価格保障制度をを維持・強化したとのこと。アメリカは一貫して、食料を武器として使う戦略のもと、輸出促進のための「攻撃型保護主義」で農業を守っている。
さらに、日本に、余剰トウモロコシを押し付けたり、残留農薬基準を大幅緩和させたり、とある意味、農業保護に真剣である。
【昨年12月に新しい農業法スタート 価格保障を強化するアメリカ 日本は価格保障を突き崩し 2019/7/22】
昨年12月にアメリカの新しい農業法(2018年農業法)がスタートしました。
法律を改訂するたびに制度を改悪する安倍農政とは対照的に、アメリカは新農業法で価格保障を維持・強化しました。アメリカの価格保障制度は図のように、2階建て構造になっています。1階部分は価格暴落に対する「価格支持融資」であり、2階部分は価格がやや下落している場合に対応する「不足払い」・「ナラシ」(収入補償)です。
「価格支持融資」は市場価格が大暴落した時に、農家が国営の「質屋」(商品金融公社)に農産物を「質入れ」して融資単価相当分を借り、価格が回復すれば借金を払って「質草」を回収して市場に売り、価格が回復しなければ「質流れ」にするアメリカ独特の制度です。
これは、経営逼迫(ひっぱく)に対する緊急融資であり、農家は当座の運転資金を確保することができ、収穫時の投げ売りを避けることができます。
「不足払い」(価格損失補償)は、販売価格が生産コストをもとに決められる基準価格を下回った際に、市場価格とコストの差額(不足分)を農家に支払う制度です。
「ナラシ」(収入補償)は、収入が基準収入を下回った際に、基準収入の86%まで補償する制度で、日本の収入減少影響緩和対策(ナラシ)に似ています。
農家は、「不足払い」・「ナラシ」のどちらかを選択します。
◆農家負担ゼロ
このほかに「収入保険」がありますが、ナラシ対策の補完の位置を占めます。
日本との違いは、日本の経営安定対策は農家が4分の1負担であるのに対し、アメリカでは収入保険以外は農家負担ゼロで、政府が全額負担することです。
◆ 生産費を保障
もう一つ、日本との決定的違いは、アメリカの制度が生産費を基準としているのに対し、日本の制度は生産費をつぐなうことを真っ向から否定し、市場価格を基準にしていることです。
「不足払い」が発動されるのは、市場価格が生産費のほぼ90%に当たる基準価格を下回った場合です。「ナラシ」も販売価格が基準価格を下回る場合は、販売価格の代わりに基準価格を用いて収入を計算することになっており、日本のように市場価格一辺倒ではありません。
前の農業法(2014年農業法)では、不足払いの基準価格が30~40%引き上げられましたが、新農業法では、現在底値にある農産物の価格上昇に備えて、基準価格をさらに15%引き上げることを可能にしています。また、価格支持融資の融資単価を13~24%引き上げています。
いずれも、基準価格などの据え置き・固定化によって、せっかくの制度が発動されないことに対する農家の不満にこたえるためです。こういう対策によって、新農業法のもとでトウモロコシ・大豆の基準価格は生産費と同じ水準(100~104%)に引き上げられました。
また、「不足払い」・「ナラシ」の選択は、これまでは一度選択すると5年間変更できませんでしたが、今後は毎年変更が可能になります。
戸別所得補償の復活を求める野党共闘の要求を拒否し、生産費をつぐなう気はさらさらない安倍政権と、生産費をつぐなう価格保障制度を維持・強化するアメリカ新農業法を進めるトランプ政権。日米FTA(自由貿易協定)や兵器の爆買いでトランプ言いなりになるのをやめ、いいところは見習ったらどうですか!
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