サウジ攻撃~考えるべきはイエメン飢餓 米英仏も間接的に加担 国連独立調査委
サウジ石油施設の攻撃をめぐって、イランの関与に焦点をあてる言動が続いているが、この問題は、イエメンの刻な飢餓を作り出しているサウジ空爆、軍事介入に要である。
そのサウジを米英仏が武器供与などで間接的に加担していると国連独立調査委が非難している
サウジへの攻撃声明をだしたイエメン軍(フーシー派)は、サウジに相互の停戦をよびかけている。
そのイエメンの声、イエメンの惨劇を無視しての議論は、この惨劇に直接・間接に関与している事実から世界の視点ずらす動きに見える。
【米英仏はイエメン飢餓に間接的に加担 国連独立調査委が批判 ロイター2019/9/4】
【安倍首相はイエメンに言及せよ 篠田 英朗 東京外国語大学教授 平和構築学 2019/9/21】
【サウジ攻撃:考えるべきイランの「関与・支援」の意味、フーシ派の動機 Al-Arabiya via AP, File Sep 24 2019 】
【米英仏はイエメン飢餓に間接的に加担 国連独立調査委が批判 ロイター2019/9/4】
[ジュネーブ 3日 ロイター]
イエメン内戦に関する犯罪を調査している国連の独立調査委員会は3日、米国と英国、フランスが武器供給などを通じてイエメンを飢餓状態に陥れている犯罪行為に間接的に加担していると批判し、全加盟国に紛争当事者への武器供給を禁止することを提案した。
サウジアラビアが主導するアラブ諸国の有志連合が、イエメンの反政府武装勢力でイランが支援するフーシ派に打撃を与える目的で、イエメンの海路や空路を封鎖しており、深刻な食糧難を招いている。同委員会によると、この有志連合に米英仏3カ国は武器や情報を提供したり、補給面の支援を行っているという。
委員会メンバーのメリッサ・パーク氏は記者会見で「紛争当事者へ武器供給を続けていることが内戦を継続させ、イエメン国民の苦境を長引かせているのは明白だ。だからこそ加盟国に紛争当事者へこれ以上武器を提供しないようわれわれは訴えている」と語った。
委員会は非公開の形で個人についての戦争犯罪の疑いがある行為もリストにした。Kamel Jendoubi委員長は詳しい内容を明らかにしなかったものの「われわれが今後容疑者に法の裁きを受けさせることができるだけの証拠や証言を集めたことは確かだ」と述べた。
【安倍首相はイエメンに言及せよ 篠田 英朗 東京外国語大学教授 平和構築学 2019/9/21】
先日、「安倍・ロウハニ会談こそが、日韓対立克服の試金石」という題名の記事を書いた。日本にとっても意義があるということを書いた。http://agora-web.jp/archives/2041587.html
だが、それでは、ロウハニ大統領との会談それ自体に何らかの突破口があると言えるのか?本当はそこが問題だ。
「イランさん、もう少しアメリカの言うことを聞いてくれませんか?」と誘っても、のってくるはずはない。イランは制裁対象となって経済的には苦しいとされているが、そんなことは通常の選挙民主主義国とは違って、政治指導者層には大した問題ではない。制裁解除がレバレッジになると考えるのは無理だろう。
おそらく重要なのは、イエメンである。安倍首相は、どうやって効果的に「イエメン」という単語を口にするか、よく考えるべきだ。
イエメンの「フーシー派」の名前は現在、サウジアラビア東部州石油施設攻撃の主体であったかどうかだけで日本のニュースで言及されている。極めて視野が狭い。
イランを糾弾するアメリカのポンペオ国務長官の糾弾に対して、ザリフ・イラン外相は、イエメンの窮状の写真を掲載して対抗した。https://twitter.com/JZarif/status/1174002704483520514
イエメン情勢に関心を払わないアメリカが、サウジアラビア石油施設への攻撃でオロオロしてイランを批判しているのは茶番だ、という指摘である。イエメンではアメリカを後ろ盾とするサウジアラビア主導の連合軍が軍事介入し、イランを後ろ盾とするフーシー派がそれに対抗して、サウジアラビアに攻撃をし続けている。
実はアメリカでも民主党主導の議会は、イエメン情勢を憂い、サウジアラビアに対する武器供与をトランプ政権にやめさせる決議を出している。トランプ大統領が拒否権を発動しているだけだ。イランの立場には説得力がある。
もちろんイランは人道的な理由だけでイエメンを見ているわけではないだろう。だがそれも含めて、イエメンの重要性を、ロウハニ大統領との会談にあたっては、まず強調すべきだろう。
フーシー派が、事実上の停戦提案を、サウジアラビア側に対して出した。極めて注目すべき動きだ。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190921-00000027-reut-asia
・・・・・「イエメンのフーシ派、攻撃の相互停止をサウジに要請
9/21(土) 6:36配信 ロイター
[カイロ 20日 ロイター] - イエメンの親イラン武装組織フーシ派は20日、サウジアラビアへのミサイルや無人機(ドローン)攻撃を停止する意向を表明した。サウジ主導の連合軍が同様の措置を取ることが条件という。
フーシ派は14日に起きたサウジ石油施設攻撃を巡り犯行声明を出しているが、米・サウジ当局はイランが関与していると主張。イランはこれを否定している。
フーシ派の政治部門指導者は、すべての当該者が攻撃を停止し、交渉に臨むべきと強調した。」・・・・・
湾岸諸国がフーシー派の駆逐を、もはや非現実的な目標だとして断念するかどうかが問われている。フーシー派の存在の認知こそがサウジアラビアを含めた湾岸諸国の安全を保障する措置である、イランに圧力をかけても何も進まないぞ、という示唆は、強力だ。
サウジアラビアとイランの関係に関して言えば、シリアよりも、イエメンのほうが、重要である。イエメンにおけるフーシー派の存在を認める国際社会の流れは、イランに対する大きなレバレッジになる。
もちろんムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)が主導する形で引き起こされたサウジアラビア主導のイエメンへの軍事介入は、簡単には終わらないだろう。日本がMBSを説得できるはずもない。しかし、MBSがイエメンでフーシー派を完全駆逐できると今でも信じているとも思えない。日本がイランと対話できるのは、イエメンに関して中立的であるからだ、とも言える点を、よく認識するべきだ。
アメリカとイランを直接対話させるなら、イエメン和平の国際会議を開き、両者が参加する形をつくるしかない。もともとイエメン情勢を度外視して、アメリカがサウジアラビアと対立するイランと交渉して成果を出す状況など、想像できないのである。
【サウジ攻撃:考えるべきイランの「関与・支援」の意味、フーシ派の動機 Al-Arabiya via AP, File Sep 24 2019 】
サウジアラビア東部にある国有企業「サウジアラムコ」の石油施設2ヶ所が14日、複数のドローンやミサイルによる攻撃を受けた。今回の攻撃によって石油の生産や価格に一時大きな影響が出たことから、日本でも広く報道された。
今回の事件について、米国やサウジアラビアは、イランが実行したと一貫して主張しているが、イランは証拠がないとして関与を否定し続けている。そのようななか、イランが支援するイエメンのイスラム教シーア派組織「フーシ派(Houthis)」が犯行を認める声明を出しているが、この攻撃で使われた巡航ミサイルやドローンが、イエメンとは反対のイラン南東部から発射されたとの情報があり、依然として確証的な背景はわかっていない。
◆いつもと変わらない構図
今回の事件は世界中のメディアの注目を集めたが、近年の構図となんら変わるものではない。その構図は簡単に言うと、「サウジアラビア領内にミサイルなどが打ち込まれ、フーシ派が犯行声明を出し、サウジアラビアや米国がイランの関与を指摘し、イランがそれを否定する」というものだ。
近年、フーシ派は、イエメンからサウジ南東部にある石油施設や国際空港だけでなく、首都リヤドに向けてもミサイルやドローンを発射している。上空で撃墜されるものの一部で死傷者が出ている。
しかし、毎回の事件後に残るのは、「イランがいつ、どのように、どこまで関与したのか」という疑問だ。これがはっきりしないことから、イラン情勢は良くも悪くも動かない。
◆イランの関与、支援の具体的意味
イランは、イエメンのフーシ派だけでなく、レバノンのヒズボラ(Hizballah)、バーレーンのアル・アシュタール旅団(Al Ashtar brigades)、イラクのハラカット・アル・ヌジャバ(Harakat al nujaba)やバドル旅団(Badr Organization)、シリアのLiwa Fatemiyoun(アフガニスタン発祥)などのシーア派組織を財政的・軍事的に支援し、シーア派民兵を現地へ送り込むなどしている。その財政規模は各組織によって違うものの、数百万ドルから数十億ドルとも言われ、フーシ派には約10万人、ヒズボラには2万5000人~3万人、イラク・シリアのシーア派民兵には10万人〜20万人がそれぞれ参加しているとされる。
イランがフーシ派を支援していると言われるが、それが事実であることは間違いないだろう。しかし、イランの支援の程度は、各組織によって違い、フーシ派は、ヒズボラやシリア・イラクのシーア派民兵(シーア派組織)ほどイランから強い影響を受けていない。フーシ派はもともとイエメン土着の組織で、旧イエメン軍の兵士も加わっており、おそらく昔のイエメン内戦で使用された一部のミサイルもフーシ派に流れていると考えられる。イランがオマーン沖を通って大量の巡航ミサイルなどを大々的に運搬できるものだろうか。
繰り返されるサウジ領内への攻撃でも、それを決断したのはあくまでもフーシ派指導部であって、テヘラン指導部が毎回の攻撃でフーシ派と連絡を取り合い、命令を下しているとは考えにくい。イランの関与は側面的なものに限られるだろう。サウジアラビア主導の有志連合によるフーシ派への攻撃が止まないなか、イランが支援を強化し、近年イランとフーシ派の関係が深まったともいわれる。
◆重要なのはフーシ派の動機
現在のイラン情勢の核心は、「イランの関与、支援の具体的意味」だ。しかし、この全貌が解明される可能性はきわめて低く、まずイランがそれに協力する可能性はないに等しい。よって、不透明なままイラン情勢は良くも悪くも進む。しかし、フーシ派の動機にサウジアラビアと米国はもっと耳を傾けるべきだろう。フーシ派はイエメン土着の組織であり、サウジアラビアがイエメンへの空爆を停止すれば、これまでの報復は止めるとも宣言している。フーシ派を対イランの最前線だけで捉えるべきではない。彼らにとって、地域大国の覇権争いより重要なのは、自らの存続とイエメンの安定のはずだ。
【サウジへ武器輸出、欧米で歯止め模索 イエメン内戦で人道批判 東京7/19】
【ロンドン=藤沢有哉、カイロ=奥田哲平】サウジアラビアへの武器輸出に歯止めをかけようとする動きが欧米で広がっている。「世界で最悪の人道危機」と言われるイエメン内戦で、サウジが欧米の武器を使っているとの批判が強いためだ。米下院は十七日、サウジなどへ武器供与する政府決定に反対する決議案を可決。先月には、英政府が違法判決を受けて輸出許可を一時停止している。
「われわれの価値観が外交政策を導くという強いメッセージになる」
ロイター通信によると、米下院外交委員会のエンゲル委員長(民主党)は、サウジを含む三カ国に約八十一億ドル(八千八百億円)相当の武器を供与する政府決定を認めない決議案への支持を、こう呼びかけた。
米国では五月、イランの脅威で緊急を要するとしてトランプ政権が議会の承認なしに武器売却を決定したが、上院が六月下旬に反対する決議案を可決。下院も続いたが、トランプ氏は拒否権を行使する構えだ。
一方、英国では六月下旬「国際的な人道法違反をしているか検討していない」とし、英政府がサウジへの武器輸出を企業に許可するのは違法との判決が出た。政府は新規の輸出許可の一時停止を決めたが、原告の「反武器輸出運動」(CAAT)広報担当アンドルー・スミスさんは「西側諸国は武器供給で、イエメンでのサウジの残虐行為に加担している」と訴える。
サウジが推すハディ暫定政権と親イランの反政府組織フーシ派が対立するイエメン内戦は二〇一五年春、サウジ主導のアラブ連合軍が介入して泥沼化した。国連によると、一万七千人超の民間人が死傷し、国民の約三人に一人にあたる約一千万人が飢えに苦しむ。
イランから軍事支援を受けているとされるフーシ派に対抗し、サウジは戦闘機やミサイルを欧米などから調達。スウェーデンの「ストックホルム国際平和研究所」の推計によると、二〇一八年までの五年間で約百六十八億ドル(約一兆八千億円)相当の武器を輸入したが、ほとんどが欧米製で、全体の68%は米国製、16%が英国製だった。
各国は貿易促進などを背景に輸出を続けてきたが、昨年十月のサウジ人ジャーナリスト殺害事件でサウジへの批判が強まると、見直す動きが加速。国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」や英メディアによると、昨年秋にデンマークやフィンランド、ノルウェーなどが新規の輸出許可を停止。ドイツは同様の対応の半年間の期間延長を今年三月に決めた。
一連の動きにCAATのスミスさんは「大きな変化には米英の行動が必要だ」と主張した。
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