中国「盗伐木材を送りつけるな!」~放置してきた日本政府の責任は重大
大規模な皆伐をすすめる宮崎県では、一方で大規模な盗伐が日常化(盗伐の被害は、全国に拡大してきている)。しかも、犯人が捕まらないどころか、警察は被害届を受理しない、検察は不起訴にするケースが続出していた。政府が事実上放置してきたのだ。が、やっと、7月に宮崎県で起きた盗伐事例の犯人が逮捕された。
盗伐の背景には、度重なる違法伐採で環境破壊を経験した中国は、2017年から天然林の伐採を禁止したことで、日本からの輸出高は急増。それを支えたのが宮崎県林業とのこと。
が、盗伐の事実をしった中国のNPO陽光高齢者福祉産業発展研究センターが、被害者の会と連携をとり、弁護士を派遣して調査を開始。中国は、輸入木材を加工し海外に再輸出しているが、違法木材でないとの証明が求められるよう国際環境が変化してきたからである(そのうち国内の入札でも要件になるだろう)。
折しも、安倍政権は、民間業者が山林を大規模皆伐できる法改正を強行したが、盗伐の放置や再生可能でない皆伐での木材生産には・・・「成長産業」として海外で通用しないことを知るべきである。
盗伐関係者の多くが、「合法木材供給事業者」などに認定され、国の助成金を受けて、高価な林業機械等を購入しているとのこと・・政府の責任は大きい
【中国が悲鳴「日本よ、『盗伐木材』を送りつけるな!」FLASH8/31】
【宮崎盗伐事件の潮目が変わった! 海外からも向けられる厳しい目 森林ジャーナリスト田中淳夫 2019/7/27】
【中国が悲鳴「日本よ、『盗伐木材』を送りつけるな!」FLASH8/31】
「『日本から輸入している木材は、盗伐された違法品ではないか』と、中国の環境NGOが日本に弁護士を派遣し、調査しています。ここまで事態を放置した日本政府の責任は、非常に重いですよ」
2017年から衆議院・農林水産委員会で、森林の盗伐問題を追及している、共産党の田村貴昭代議士(58)は、こう憤る。
7月11日、宮崎県国富町における「森林法違反容疑」、いわゆる “盗伐” の疑いで、同県の伐採業者、黒木林産社長の黒木達也容疑者(61)が逮捕された。同社は、県から認定を得た伐採業者でありながら、地主から許可を得ないまま、伐採をおこなっていたのだ。
「たまたま自分の山の前を通りかかったところ、盗伐の現場に出くわしました」
実際に、盗伐被害に遭ったA氏が語る。
「その場で注意すると、黒木林産の社員は伐採する場所を間違えただけだ、と主張しました。しかし、山林には標識杭が打ってあり、境界が明確にわかるようになっていて、間違えるはずがないのです」(A氏)
「宮崎県盗伐被害者の会」会長で、自身も何度も盗伐被害に遭った海老原裕美氏(61)は、「被害総額は県内だけで10数億円になる」と言う。
「2017年9月に14世帯で結成した被害者の会は、現在88世帯まで増えています。山林の所有者は県外の方が多く、実態が掴みづらいんです。 また、業者が『間違えて切った』と主張した場合は、警察は『民事不介入』を盾に何もしてくれない。多くの被害者がわずかな補償金で泣き寝入りしてきました。メディアで取り上げられ、やっと警察が動きましたが、立件されていない被害は膨大です。黒木林産の逮捕は遅すぎるぐらいです」
なぜ、宮崎県で盗伐がはびこるのか。背景に、中国の環境意識への高まりがあると指摘するのは、ジャーナリストの横田一氏(62)だ。
「宮崎県は、中国への輸出材として需要の高いスギの生産量が、28年連続で日本一です。
一方、度重なる違法伐採で環境破壊を経験した中国は、2017年から中国国内での天然林の伐採を禁止しました。これにより、日本からの輸出高は、前年比で36%も増加。その恩恵を一手に受けたのが宮崎県でした。
加えて、安倍政権は林業を成長産業にすると掲げており、私有地、国有地を問わず伐採しやすくする法改正をしたのです」
規制緩和の先に待ち受けていたのは、悪徳業者による盗伐の横行だった。
「業界内では、『宮崎県産の木材の8割は違法品』といわれてい る。中国から『盗品はやめてくれ』と、悲鳴に近い訴えが増えています。国辱もいいところです」(林業組合関係者)
田村議員が警鐘を鳴らす。
「このありさまでは、対中国だけでなく、日本の国際的な信用力の低下に繋がります」
日本の没落、ここに極まれり。
【宮崎盗伐事件の潮目が変わった! 海外からも向けられる厳しい目 森林ジャーナリスト田中淳夫 2019/7/27】
宮崎県で大規模な盗伐が日常化していることを、これまで幾度も伝えてきた。そして犯人が捕まらないどころか、警察は被害届を受理しない、検察は不起訴にするケースが続出していることも。
だが、ついに動き出した。7月3日に宮崎県国富町で起きた盗伐事例の犯人が逮捕されたのだ。
これは実際に無断で複数の所有者の山を伐採したケース。逮捕されたのは、日向市の素材生産業者「黒木林産」社長、黒木達也容疑者である。私は、この業者の名を以前から悪評判とともに聞いていた。各地に100ヘクタールを超える皆伐を行い、破壊的な作業を行う業者として地元でも有名だったのである。
さらに19日に宮崎地方検察庁は、偽造されたスギの伐採届出書を宮崎市に提出し行使したとして、宮崎市の仲介業者を逮捕、偽造有印私文書行使の罪で起訴していた。県警は6月5日に同容疑で富永悟容疑者を逮捕していたそうだが、なぜか公表していなかった。
宮崎県の盗伐で目立つのは、ブローカーの暗躍である。山林の所有者と交渉し伐採届をとりまとめる役割だが、往々にして不適切な手段で届に捺印させたり偽造したりする。そして伐採業者等に転売する。幾度も転売して責任の所在をわかりにくくする事例も少なくない。その仲介業者が逮捕されたことは大きい。
そして23日、今度は宮崎検察審査会が、一度は不起訴になっていた盗伐事案を「不起訴不当」と議決した。これは、上記の「討伐しても不起訴」のケースで紹介したもっとも初期に明らかになった盗伐事件だ。
被害者自らが、偽装された伐採届が出されていることを突き止めて3人の容疑者を告発したのに、検察は不起訴にしていたのである。これを機に、被害者の海老原裕美さんは、「宮崎県盗伐被害者の会」を結成して声を上げ始めるのだが、ようやく報われたわけである。
◆検察審査会の「不起訴不当」の議決
明らかに潮目は変わった。これまでかたくなに事件化させないようにしていた警察・検察が重い腰を上げ始めたといえるだろう。
ただ、不満もある。国富町の盗伐では一目で何千本もの木が伐られていることがわかっているのに、立件されたのは7本にすぎない。同じく海老原さんのケースにしても、数百本伐られているのに、立件されたのは39本だけ。
ほかにもいくつか立件されたケースが出てきたが、容疑を森林窃盗に限定したものが多い。より悪質な有印私文書偽造や詐欺については取り上げていないものが目立つ。事件を矮小化して、幕引きしようとしているのではないことを願う。
なお重要なのは、彼ら盗伐関係者の多くが、宮崎県の「合法木材供給事業者」などに認定されていることだ。そして国と県から助成金を受けて、高価な林業機械等を購入しているのである。それが犯罪行為に使われていたことは極めて悪質である。補助金の返還はもちろん、今後の支出も厳しくすべきだろう。
一方で、まったく新たな動きも起きている。それも海外からだ。中国のNPO法人陽光高齢者福祉産業発展研究センターの代表理事から、盗伐被害者の会に連絡があったという。代表者は日本語が堪能だ。この組織は中国環境保護連合会のメンバーで、北京の環境保護活動に取り組んでいるそうだ。NPOと言っても中国政府とつながりの深い大きな組織である。
少し抜粋して紹介すると
「先日日本のマスコミより宮崎県盗伐の報道を見て驚きました。」
「調べてみたら最近特に中国向けの角材木は多くて、ひょっとしたら中に違法木材が混同するかもしれない。」
「とにかく異国の北京から宮崎県盗伐被害者の会の活動を応援いたします。日本での森林盗伐事件を聞いたらみんなが心が痛みます。」
そして日本を訪れた先方の弁護士が、被害者の聞き取りを行ったという。
この団体が中国国内でどれほどの影響力を持っているのかはわからないが、海外の団体にも日本の盗伐問題が知られ、日本から輸入している木材に混じっているのではないかと疑念を持ち出したのは間違いない。ほかにも国際的な森林環境問題のNGOにも情報は伝わっているから、今後は世界へ日本の盗伐の実態が発信されるようになるだろう。
近年日本からの木材輸出が急伸している。それを「林業の成長産業化」につなげるという論調も強い。そして中国への木材輸出は宮崎県が非常に多い。日本の木材輸出の先頭を走っているのである。一方で中国は、輸入した木材を加工(製材など)して海外に再輸出しているが、そこで違法木材でないことを証明することが求められるようになった。
もし中国側が、日本の木材の合法性に疑念を持つようになれば、今後の木材輸出にも響くのではないか。
これまで違法木材と言えば、発展途上国の行っているもの、国産材は合法であることを自明としてきた。しかし盗伐が相次ぎ、日本の合法証明がいい加減であることが知られるようになったら、日本の輸出政策にもよい影響は出ないだろう。
盗伐問題を国内の一部の地域で起きていることにすぎないと、甘く見ない方がよい。世界の目は、違法木材に非常に厳しくなっている。国内で抑え込んで知らぬ存ぜぬで通せる時代ではないのである。
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