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「輸出規制」~「ナショナリズム」の政治利用は未来をつぶす

グローバル化した経済・サプライチェーンのもとで、輸出規制は、単に内政上の目的=自国民に強い姿勢を見せ、ナショナリズムを煽り、目先の支持をえるため、未来を潰す愚策。

 アメリカの中国対応、日本の韓国、中国対応・・・ いずれも世界の覇権国の揺らぎ、アジアの一等国の地位からの脱落…力関係の劇的な変化に対し、国民のなんとなくの不安。一方、中国では自由・民主主義、格差問題、韓国でも若者の失業・非正規、女性差別と国民の不満要因を抱えている。

 その問題を、ナショナリズムに絡めて権力維持につかうことは、未来を破壊する行為。以下は、徴用工問題など、意見の違う部分はあるが、冷静な指摘。

【輸出規制への「期待」に垣間見る日韓関係の「現住所」  木村幹・ニューズウイーク7/8

【「徴用工判決」韓国への“経済的報復”が日本へのブーメランになる日 輸出規制の「上から目線」に危惧  文春オンライン  2019/7/9

 韓国との関係では、個人の請求権は消滅していない。植民地支配への慰謝料の請求権交渉の範囲外・・・安陪政権も国会で答弁している。偏狭なナショナリズムをあおるプチ「大本営発表」ではない、まともな報道が不可欠である。

【輸出規制への「期待」に垣間見る日韓関係の「現住所」  木村幹・ニューズウイーク7/8

 <日本では韓国への輸出規制が与える効果に対する「期待」が広がっている。しかし、その「期待」の裏にあるのは20年以上前の韓国のイメージであり、現実はこの間に大きく変化してしまっている。そのいい加減さが意味するのは、韓国のみならず、日本もまた日韓関係の改善を放棄しつつある、と言う不都合な現実だ>

 71日、経済産業省は韓国に対する新たな「輸出規制」について発表した。この措置を受けて日韓両国ではこの措置の影響と妥当性について激しい議論が進められている。

 今回の措置をどう考えるべきか、については既に幾つかの別稿で議論しており、同じことを繰り返すのは止めておこう。取り上げたいのは、この措置とそれに対する日本国内の反応から垣間見える日韓関係の「現住所」だ。

 注目すべきは、この措置を後押しする日本世論の強硬姿勢である。例えば毎日新聞は、今回の措置の背景には「韓国に厳しく臨むことで参院選の追い風になる」とする政府の計算がある、と報じている。多くの日本メディアも同様の内容を報じており、事実、一部の批判にも拘らず、政府・与党幹部はこの措置について積極的に発信する事となっている。

 言うまでもなく背景にあるのは、近年日本国内において高まる韓国への反感だ。ナショナリスティックな感情を政治家が利用すること自体は、ありふれた現象であり、良し悪しはさておき、さほど珍しい現象ではない。とはいえ、ここで一つの疑問が生じる事になる。何故に韓国への反感の高まりは、人々によるこの措置への支持へと繋がるのだろうか。

 ◆経済制裁は反感を強めるだけ

 最初に考えなければならないのは、そもそも経済的な圧力だけで、人々が抱く不満の原因である、歴史認識等を巡る韓国側の姿勢を変える事ができるのか、と言う事である。そもそも経済制裁だけで他国の何らかの政策を変えることは難しいことは、大学の授業でも教えられる、国際政治学の常識に属する知識である。

 ナポレオン戦争時のフランスのイギリスに対する大陸封鎖をはじめとして、国際社会ではこれまで無数の経済制裁が行われている。しかし、ナポレオンのそれを含めて、歴史上の殆どの経済制裁は目的を実現し得ていない。理由は簡単だ。制裁はこれを向けられた国家の世論感情を硬化させ、より強硬な方向へと一致させる効果をもっているからである。

 その典型的な例の一つとしては、他ならぬ日本自身の太平洋戦争直前の経験を上げることができるだろう。日本軍のフランス領インドシナ進駐により開始された、アメリカをはじめとする日本への経済封鎖は、戦略物資である石油の禁輸を伴うものであり、疑いなく日本経済に大きな打撃を与えるものであった。いわゆるABCD包囲網がそれである。しかし、日本は屈服するどころか反発を強め、結果的に太平洋戦争に至る事になっている。

 事実、今回の日本政府の措置を受けて、韓国では同様の世論の強硬化が起こっている。74日にリアルメーターが発表した世論調査によれば、日本側の措置に対して「外交的交渉により解決すべき」と答えた人は僅か22%。言うまでもなく、外交的交渉イコール日本への譲歩、ではないから、今回の措置を契機に日本へと譲歩すべきだと考える人々は少数であることになる。他方、46%WTOへの提訴を含む国際法的対応を、24%は経済的報復措置による対処を選択しているから、70%の韓国人が日本への明瞭な対決姿勢を選択している事になる。さらにいえば、文在寅政権の与党である「共に民主党」支持者のうち「外交的交渉による解決すべき」と答えた人は僅か5.7%。この状況で文在寅政権が、自らの支持者の圧倒的な意志に反して、徴用工問題等で日本への譲歩を選択できる筈がない。

 わかりやすくいえば、少なくとも現段階では、今回の措置は韓国政府をして、むしろ譲歩から遠ざからせる効果すら有していない。世論が硬化した結果、文在寅政権の取りうる外交的選択の幅はむしろ限られてしまうからである。そもそも韓国の人々にとって、徴用工問題や慰安婦問題といった日本との歴史認識問題は、自らのナショナルアイデンティティに関わる問題であるから、経済的利益との間で簡単に取引できる様なものではない。

 ◆韓国は再び金融危機に陥る?

 では、にも拘らず、日本の世論はこの措置を歓迎するのだろうか。可能性は大きく二つある。一つは何らかの理由により、人々がこの措置により韓国が屈服すると「信じている」可能性である。ここにおいて大きな影を落としているのは、日本人の持つ韓国との関係にまつわる過去の経験である。例えば、今回の措置に伴い日本国内で頻繁に出てくる議論の一つに、この措置により、韓国が金融危機に陥り、日本をはじめとする国際社会に助けを求めてくるのではないか、というものである。そこには韓国は経済的に不安定な国であり、日本による措置がこの国の脆弱な経済に決定的な影響を与えるに違いない、と言う「期待」がある。

 過去の経験の表れは、経済関係のみならず、国際関係についても見ることができる。その表れの一つは一部の人々の間で繰り返される、今回の措置は国際社会、とりわけ日韓両国に大きな影響力を持つ、アメリカに支持されるに違いない、と言う「期待」である。だからこそ、日本単独の経済制裁としては効果が小さくとも、アメリカをはじめとする主要国がこれに続く事になれば、結果として韓国経済へのダメージは大きくなり、韓国はやがて日本に屈服するに違いない、とするのである。

 同様の過去の経験に由来する「期待」は、韓国の国内政治においても見ることできる。この点で興味深いのは、今回の措置を支持する人々の一部が、これを契機に文在寅政権に反対する韓国の保守勢力が反旗を翻し、日本側の意図を後押ししてくれるであろう、と言う「期待」を繰り返し表明していることである。当然の事ながら、そこには日韓間の紛争が起こる度に、保守的な政治家や韓国財界がその修復に努めてきた、と言う過去の経験が存在する。

 問題はこれらの「期待」が、例外なく「90年代以前のイメージ」から構成されている事である。第一の韓国の経済的脆弱性のイメージが、97年末のアジア通貨危機を中心とする過去の金融危機の経験から来ている事は明らかである。しかし、アジア通貨危機から既に20年以上を経た現在、韓国の経済状況は全く異なるものとなっている。例えば、アジア通貨危機以前には赤字に苦しんできた韓国の貿易収支は直後の98年以来、一貫して黒字基調に転じている。この様な状況の変化は、2008年におけるリーマンショックで、韓国経済が一時的に減速した時点でも、アジア通貨危機時の様な通貨危機に至らず、他の先進国に先立って経済のV字回復を遂げた理由の一つになっている。韓国の貿易黒字はその後更に拡大し、今日ではそのGDPに対する黒字幅の割合は、日本のそれをすら上回る規模になっている。

 同じ事はマクロ経済についても言う事ができる。今回の措置が韓国のマクロ経済に与える影響については、既に幾つかの予測が出ている。その中で影響を最も大きくとる推計では、事態が長期化した場合、半導体の生産の10%程度が失われ、結果としてGDP0.6%押し下げられるものとされている。しかしながら、それが韓国経済に決定的な影響を与えるかといえばそうではない。例えば今年の韓国の成長率予測は各種機関により差はあるものの、2%以上。だから仮に今回の措置によりGDP0.6%押し下げられても、韓国の経済成長率は依然マイナスにはならない。他方、同じ日本の成長率予測は1%以下。皮肉なことに、計算上は、韓国の経済成長率はまだ日本を大きく上回ることになる。

 ◆韓国の保守派も変わった

 90年代以前のイメージによる「期待」が、今日の状況と乖離している事は、韓国の国際社会における位置付けも同様である。90年代以前における韓国の国際的影響力は極めて小さく、他方「アジア唯一の経済大国」であった日本は、アメリカにとって他から突出する重要性を有していた。しかし、日本が長期の経済的停滞に苦しむ中、韓国をはじめとするアジア太平洋諸国が経済発展を遂げた結果、アメリカの国際戦略における日本の位置付けは大きく変化する事になっている。先般の板門店における米朝会談実現の過程からも明らかな様に、アメリカは時に日本を飛び越えて朝鮮半島にアクセスする様になっている。

 そしてこの様なこの地域の経済、政治双方のパワーバランスの変化は、韓国の国内政治にも影響を与えている。

 政権発足直後から慰安婦問題で強硬姿勢に終始した朴槿恵政権時の経験から明らかな様に、現在の韓国においては、保守的な人々がすなわち、日本に対して好意的な人々である訳ではない。先に紹介した世論調査においても、今回の日本の措置に対して「外交的交渉により解決すべき」と答えた人は、文在寅政権に否定的な保守的な志向を持つ人々の間でも三分の一を少し超える程度しかない。過半数を超える人々は国際法的対処か対抗措置による、日本への強硬な措置を求めている。

 忘れてはならないのは、多くの日本人が韓国をイメージする時の基準になっている90年代から今日までの間に、20年以上の時間が経過している事であり、20年以上の時間が国際関係を一変させるのに十分な時間の長さである事だ。そのことは例えば、日本自身の戦後の経験に置き換えればすぐわかる。1945年の太平洋戦争での敗戦から1964年の東京五輪までは僅か19年。20年と言う期間は一国が焼け跡から復興し、世界第二の経済大国の地位にまで上り詰める事ができるだけの十分な時間なのである。だからこそ、遠い過去の韓国のイメージから現在の状況を考えても、それは現実の姿から大きく隔たるのは当然だ。

 だとすると、少なくとも現在の状況が続く限り、日本の一部で「期待」されるような形で、今回の措置により韓国側が日本に対する譲歩へと追い込まれる展開を予想することは難しい。もちろん、これらの韓国と国際社会の変化は日本側においても全く理解されていない訳ではなく、とりわけ豊富な情報を持つ日本政府がこれらを全く無視して、自らの政策を考えているとは考えにくい。世論も同様であり、ここで挙げた内容は繰り返し指摘されていることであり、全く周知されていないとも思えない。

 ◆「韓国を痛めつける」という決意表明

 ではにも拘らず、日本政府は一見、目指す目的を実現することが困難な政策を掲げ、その政策は人々によって支持されているのだろうか。この点については、韓国のある論者は、「日本は韓国が苦痛を感じるのを見たいだけだ」と述べている。人々が何らかの政策を行い、また、それを支持する場合には、時にその政策の実践性を超えたところに理由があることがある。何故なら、その政策を行い、また提案すること自体が何らかのメッセージを持っており、そのメッセージ故に政策が支持される場合もあるからである。

 だとすると、今回の一連の措置が政府・与党によって行われ、人々によって支持されている理由は、政策の効力にではなく、これにより「韓国を痛めつけ」あるいは「痛めつけようとする」のだ、と言うメッセージそのものにある事になる。つまり、この政策は韓国に対して向けられたものではなく、日本国内に対する「決意表明」であり、その「決意表明」が支持されている、と言う訳である。

 そしてそのことは、実は我々が既に「日韓関係の改善」、更にはその重要内容である「歴史認識問題の解決」そのものを、とうの昔に放棄しているのではないか、と言うことを示唆している。以前の本コラムでも述べて来た様に、今日の日韓関係の悪化の背景には韓国における日本の重要性が低下し、結果として韓国政府が政治的負担となる日韓間の歴史認識問題の「管理」を放棄したことがある。そして、実際、今回の日本側の措置に直面しても、韓国政府はこれを解決する方向へと動いていない。そして、このまま韓国政府が関係改善への動きを見せなかった場合、その事が再び確認される事になる。

 そして今回の措置と日本国内の世論の状況が示すのは、その様な韓国の状態と似た状態に、日本側もまた陥りつつあると言う事だ。日韓両国の政府も世論も、歴史認識問題の解決と「管理」を真剣に考えることなく、ただ自らの正しさを声高に叫び、相手を痛めつけることに喝采をあげる。そして、その陰で企業は自らのビジネスチャンスを失い、経済は更に縮小する。「管理」する者を失い、日韓関係はさらなる悪化へと向かう事になりそうだ。

 

 

【「徴用工判決」韓国への“経済的報復”が日本へのブーメランになる日 輸出規制の「上から目線」に危惧   

文春オンライン  2019/7/9

  安倍政権は74日から「フッ化ポリイミド」など、半導体材料3種類の韓国への輸出規制を発動した。スマートフォンなどエレクトロニクス製品で国際競争力を持つ韓国にとっては大打撃だ。昨年10月以降、韓国大法院(最高裁)が日本企業に対し戦時中のいわゆる元徴用工へ賠償判決を下しているが、韓国政府はこれを放置。今回の輸出規制は、こうした対応への事実上の報復措置である。

  日本による“経済的報復”は、今後、日韓経済にどのような影響を与えるのか――。知韓派経営者として知られる韓国富士ゼロックス元会長の高杉暢也氏に話を聞いた。

 ◆ ◆ ◆

  今回の韓国への輸出制限について、日本政府は「(徴用工判決への)対抗措置ではない」という説明をしていますが、その内容を見る限り、事実上の報復・対抗措置であることは間違いありません。

  昨年10月以降、「徴用工判決」に何も手を打ってこない、協力して解決しようという姿勢を示してこなかった文在寅政権のやり方に日本政府が不満を抱くことについては、私も当然、理解はできます。また、日本側の意思表示として、戦略的に何らかの“韓国を懲らしめるための施策”を打つべきではないか、という考え方にも同調できます。

 ◆輸出規制は日本側のメリットになるのか?

  しかし、「戦略的」という観点から考えた時、「半導体材料の輸出規制」という手段は、日本側のメリットになるのか。私はその点に非常に懐疑的です。

  韓国に対する半導体材料規制について、私は以下の4つの懸念を抱いています。

  ①今まで一貫して「自由貿易」を推進する立場をとってきた日本が、韓国だけに対してこのような規制をかけることで、国際的な信用度が下がってしまうのではないか。日本は先日、G20の議長国として「自由貿易の重要性」を確認したばかり。その直後に発動する措置としては国際社会に与えるインパクトが大きすぎた。

  ②韓国の半導体産業は国際的にもリードしている産業。彼らの半導体の生産力が下がることで、国際社会全体で半導体の普及が滞ってしまうのではないか。

  ③半導体材料を取り扱う日本企業にとって韓国は大口顧客。輸出を制限されてしまうということは、当然、日本企業にも損失がある。あらゆる報道などを含め、現在は「日本企業の視点」が欠けているのではないか。

  ④韓国が代替品の調達を始めること。自国での調達、別の国からの調達がメインになってしまうと、それは日本企業の競争力を下げてしまうことに他ならない

 

◆日本は“上から目線”になっていないか?

  今回の制裁措置を見て、私はこう思わざるを得ませんでした。

「日本には未だに『韓国は遅れている』という先入観がある。今回の措置も、『どうだ、困るだろう?』という“上から目線”の行動になっていないか」

  韓国は今や国際競争力を持つ先進国です。当然、「日本には頼りたくない」というプライドも抱いています。今回の半導体材料規制は、そんな韓国のプライドを後押しし、日本が今後の商機を逃すキッカケになってしまわないか――そんな懸念を抱いています。今後の事態の推移を慎重に見る必要があるでしょう。

  韓国紙「中央日報」は、今年3月、このような論説を掲載していた。

 〈日本が韓国の半導体事業などをターゲットに報復措置を取れば韓国企業も当然打撃を受けるが、ここに部品を供給する日本企業にもブーメランのように2次被害が生じる構造ということだ〉

 報復がブーメランにならないよう、日本政府には慎重な対応が求められている。日韓両国はこの先、どのような道を辿るのか――。高杉氏が参加する「文藝春秋」4月号の座談会「『日韓断交』完全シミュレーション」は、「経済」「外交」「軍事」など、あらゆる側面から日韓関係を分析している。是非ご一読いただきたい。

 

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 20194月号)

 

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