「米中貿易戦争」を読み解くために ~ 試論・私論
若い党専従、地方議員を対象に、月2回「若者講座」を続けて3年? 科学的社会主義、党綱領、古典とともに、ときどきの時事問題や政策についてなど・・・
来週は、「米中貿易戦争」というテーマが出されたので・・・
そもそも的な見方と、現在の世界の姿、真の対決点など・・・ 試論・私論である。
【米中貿易戦争を読み解くために ~ 試論・私論】
・2016年GDP 米国約19兆ドル、中国約11兆ドル。全世界の推計値80兆ドル弱
・米国のモノの貿易赤字(2017年)7962億ドル。うち中国3752億ドル(中国の貿易黒字4215億ドル)。
国別2位メキシコ711億ドル、3位日本688億ドル
・18年 対中制裁として
第1弾 7月 340億ドル分の中国製品(800品目)に25%の追加関税
第2弾、8月 160億ドル分を追加
第3弾 9月 2000億ドル分の5700品目に10%の上乗せ関税。19年5月にその2000億ドル分を25%に引上げ
第4弾 5月13日、携帯電話など約3000億ドル分に25%の関税を課す計画を正式表明/実施は6月下旬以降
・中国も報復関税を実施。が、米の対中輸出1200億ドル。中国の対米輸出5400億ドル。
・トランプ氏は1987年9月に「米国の人々へ」と題した広告で「日本やその他の国々は(何年にもわたって)米国を利用してきた」「米国ではなく、これらの豊かな国々に『課税せよ』。私たちの巨額の赤字を止め、私たちの税金を減らすのだ」「私たちの偉大な国が笑いものにされるのを止めよう」と訴え= 歪んだ貿易観がある。
【そもそも「貿易と為替レートの関係」】
日本からアメリカに対する輸出で、日本の貿易黒字(アメリカの貿易赤字)がたまると、通過の交換比率がかわり、円が高くなり、ドルが安くなる(日本への支払いのための円の需要が高まるため)
1ドル120円だったものが、100円に
→日本からの輸出では、240万円のクルマは、2万ドルだったが、円高の結果2.4万ドルとなり、販売量が落ちる。逆に、米国からの輸出では、2万ドル分小麦は、240万円かかったが、ドル安の結果、200万円に下がり、輸出が伸びる。
→ この結果、貿易黒字と赤字は是正される
◆貿易黒字とは…
・輸出でえた利益が、国民に還元されず、購買力不足、設備投資不足のために、輸入が伸びないために、国内で消化できてない状況 / 黒字が多ければよい、というものではない。
[ 国民所得勘定での恒等式 (輸入額-輸出額)=(投資額-貯蓄額)+(歳出-税収) ]
→ ただし赤字が続くと、手持ちの外貨(主にドル)がなくなり、輸入を制限せざるをえなくなる。
・基軸通貨 世界中に流通し、国際間の貿易や資本取引に使用される決済通貨、各国通貨の価値基準となり、通貨価値が安定していることなどが求められている。現在では米ドル
・国際決済通過 米ドル、ユーロ、円、英ポンド、スイス・フラン、人民元
【投資・金融サービスが主流となった現代】
・「金」と切り離された変動相場制では、その国の通貨価値は、貿易収支だけでなく、経済・財政の安定度、軍事力を含む国力・影響力など、その国の「信用度」に対する機関投資家の活動の結果として決まっている。
・そもそも貨幣=金[貨幣機能をになわされた特異な商品] → 金と交換できる銀行券 → 投資規模が金保有に左右され、将来の利益をみこした積極投資に制限 → 不換紙幣に[国債発行、戦費調達]/ 戦後、ドルと各国の通貨の固定レート制のもと、ドイツ、日本に代表される経済復興 [各国通貨は、不換紙幣だが、ドルは金と交換できる兌換紙幣] → 多国籍企業化、戦費調達により、米国からドルの大量流失=金の流出 / 73年ドル・金の交換停止・変動相場制へ
◆グローバル経済のもとでの変容
・金融派生商品取引も加えた為替取引高 貿易額(30数兆ドル) 約59倍
・世界の貿易の2/3が、多国籍企業の企業内取引
世銀エコノミストの研究レポート・2015年発表「通貨安の輸出促進効果がこの20年で半減」 /1996年から2012年までの46ヵ国の実質為替レートの変化が製造業製品輸出に与えた影響を分析したこの研究。通貨切り下げの輸出促進効果は、以前考えられていたよりずっと小さい。 その理由は、サプライチェーンのグローバル化の進展により、輸入部品のコストが上がるからだ」
・生産拠点、活動拠点が世界中に展開しているもとでは、企業の利益と各国の貿易収支には乖離が生じている。
~「2015年 中国にある米国企業が中国の消費者向けに販売した総額は、2,219億ドル。/中国企業の米国での生産、販売活動は無視できるほど小さい。この数字を輸出と見なした場合には、米中間の貿易収支は概ね均衡していることになる」
・モノの貿易より、直接投資による子会社からの配当金、金融売買の手数料、特許などの使用料が、主流に
→ 経常収支は、そうしたものの出入りも含めた収支。
A 多国籍企業として展開している日本 貿易収支はトントンか赤字。経常収支は黒字
B 発展途上国、大国でないところは、支払いのための外貨準備の基本となる貿易収支が大きな比重
そのたの法人税の引下げ、各種の支援で、外国の投資を呼び込み輸出力の増加、経済発展をめざす。/逆に先進の企業は生産費がより安い外国での生産への置き換え(空洞化)、直接投資し、その配当での利益確保
C アメリカ 巨額の貿易収支、経常収支(サービス貿易、黒字)で赤字
→がドルの暴落はおこらない
◆基軸通貨国としての特別の位置… 各国の国際的な決済は基軸通貨としてのドルを使用
・黒字国・企業も、その黒字分をいつでも使えるようドル債権や米銀行の預金として保有。また、高い収益率を誇る米企業への投資などでドルが米国に還流している。
→ 常にドルが求められる構造[ 見捨てられると暴落する ]となっている
・また、自国追加が、国際的に決済に使われるのでドル不足にはならない[いつでも刷れる]
→ ただし、それは、「ドル還流」のサイクルがうまく働らいていることが前提
・世界経済にとっては、アメリカの旺盛な国内消費(輸入超過)が経済成長を支えた/「金は天下のまわり物」
* 家計や企業の赤字とは別レベルの話
◆多国籍企業のあらたな特徴 ICT,AI、IoT、ビックデータ…飛躍的な情報化の進展による
・国内での生産設備への投資ではなく、世界的規模での金融活動、知的財産権で利益をあげる構造
・GAFAの台頭 独占的経営資源による支配、データ独占、有形固定資産をもたない
世界的規模での、新技術など新たな価値の創造へ研究開発(知的財産権、特許使用料)の熾烈な競争
製造業は、バリューチェーンに組み込まれたコマでしかなくなってきている。
→巨額の利益が一部多国籍企業に集中/格差拡大の原因
【トランプが仕掛けた貿易戦争 2つの側面】
・巨額の対中貿易赤字と、産業振興策である“中国製造2025”を推進。先端技術の開発などで大規模な補助金支給
→ 「市場をゆがめる不公平な補助金」として削除を要求/中国「国内問題」として拒否
・米国 中国からのほぼすべて輸入品に25%関税、中国企業の対米投資(会社買収)制限、ファーウェイの排除(グーグルの取引停止など)
◆国内支持者むけのパフォーマンスたが・・・
「貿易赤字」だけを取り上げて、国際ルールを踏みにじり、他国に脅しをかけて、利益を確保する「ならずもの国家」のやり方
・世界経済への影響 / 以前と比較にならない複合相互依存の世界となっている
2017年 中国 輸出入 1位アメリカ /アメリカ 対中国 輸入1位、輸出3位/日本、1位2位は米中
輸出 輸入
中国 2兆4870億ドル 対米19% 米国 2兆6143億ドル 対中19.0%
米国 1兆6640億ドル 対中 8% 中国 2兆1359億ドル 対米8.5%
ドイツ1兆5608億ドル ドイツ1兆2856億ドル
日本 7384億ドル 日本 7487億ドル
・米国内への影響
関税は輸入企業が税として国に治めるもの。企業負担増は、消費者物価に転嫁され、1世帯年9万円の負担増
中国の報復関税で、大豆価格の暴落 つくるほど赤字に/農家に対し1兆7000億円余りの支援策発表
・日本 最大輸出先 電子部品の供給減少
★理不尽な要求に、諸外国は抵抗。是正させている!
古賀茂明氏のツイート 「知ってますか? 米の鉄アルミ追加関税に対してカナダ、メキシコは米国産豚肉などに報復関税トランプ氏は追い詰められて鉄アルミ関税を撤回。EUはバーボンやバイクなどに報復関税、米とのFTA交渉では農産品は対象外。 安倍さんは米農産品に報復関税かけず、逆に関税引き下げを約束。ポチと呼ばれるわけだ」
【貿易交渉でアメリカと対等に戦う先進諸国。それに比べて日本の"ポチぶり"ときたら... 古賀茂明 「週プレ」5/31】
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190531-01089730-playboyz-pol
◆本質は、今後の経済の基盤となるネットワークの支配をめぐるたたかい
・購買力平価で見たGDP(2017年度) CIAサイト「ワールド・ファクト・ブック」/各国比較のガイド」
1位中国、2位EU、3位米国、4位インド、5位日本、6位ドイツ、7位ロシア、8位インドネシア、9位ブラジル、10位イギリス、11位フランス、12位メキシコ、13位イタリア、14位トルコ
・トップ10企業/売上 米国3社、中国3社/利益 米国4社、中国3社/従業員数 中国4社、米国3社
・ファーウェイ 売上925億ドル。マイクロソフト、グーグルと同規模。18万人の従業員、スマホ販売、アップル抜いて2位( 1位サムスン)、/5G (現在の100倍の通信速度を持つ次世代のプラットホーム)の心臓部分の技術・特許をもち、すでに多数の基地局を世界に設置
5G 全標準必須特許のうち中国勢は36%、韓国25%、米、フィンランド13%、日本4%/そのトップ10企業…1位のファーウェイ含め中国3社、韓国2社、米国2社、フィンランド(2位)、スウェーデン、日本は10位にシャープ(筆頭株主・ホンハイ・台湾)
… 中国の他のIT企業 アリババ(ネット販売)、バイドゥ(検索エンジン)、テンセント(アプリ開発)とともに、米国のGASAの牙城を揺るがしている。新興国EUでのシェア拡大=「一帯一路」構想
・トランプ ファーウェイ排除…単純でない世界の反応/追随したのは日本、豪州など数カ国だけ。EU圏はゼロ/ 「性能がよくて、やすい」(米イースタン・オレゴン・テレコムCEO)から。
→ →ファーウェイの技術なしではなりたたない。製品を排除してのその技術をつかったノキアなどの商品を通じ、莫大な使用料が入る仕組み。
◆今後、どうなるか・・・
・複合相互依存が世界、グローバル化したサプライチェーン… 一国が支配することが不可能な世界となっている・・・ 思いつくままあげると・・
・米国内の企業、消費者から反発 ナイキなど靴メーカー170社、1ドルショップなどなど
・米国の世界的ファンドの投資先 アジア(日本除く)、特に中国に集中/米国内での利害の対立
・米債権の最大保有国 中国、日本 /売却?
・レアアース生産 125千トン 中国105、豪州14、ロシア3、米国ゼロ(だから報復関税の対象外)/輸出制限?
・中国 エネルギーシフト/脱化石燃料・脱プラへの急展開
原発から方向転換、世界一の再エネ投資/ 特許 1位、中国29%、2位米18% 3位EU,日14%
17年末から廃プラ輸入禁止(輸出 1位米国16.5%、2位日本15.3%、3位ドイツ12.6%、4位英国9.4%)
・環境問題、新たな市場開発ともに、資源を他国依存するリスクを減らす国家戦略
●国際再生可能エネルギー機関 第9回総会(2019年1月)で発表したレポートの解説より
「新しい世界:エネルギー転換の地政学(A New World: The Geopolitics of the Energy Transformation)」
「技術イノベーションをリードする国は、世界的なエネルギー転換の恩恵をもっとも享受すると見られています。これについて、いまや自然エネルギー技術のイノベーションにおける超大国となった中国に敵う国はいません。中国は太陽光パネル、風力発電、電気自動車などを世界でもっとも製造し、輸出し、導入しており、世界のエネルギー転換の最前線となっています。風力発電の部品、結晶シリコン太陽光発電モジュール、LEDパッケージ、リチウムイオン電池の製造付加価値を示す図5は、中国の圧倒的な競争力を表しています。
中国による研究開発および投資は、これまで自動車やエネルギー機械の分野を独占していた米国や欧州の企業を追い越し、貿易における比較優位性をもたらし、国の経済成長に貢献すると見られています。また、自然エネルギーを増やすことで、燃料輸入を減らすことができるため、中国の経済成長のボトルネックとして指摘されるエネルギーリスクを避けることもできます。」
図5 自然エネルギー設備製造による付加価値(2014年、US十億ドル)
★真の問題点は・・多国籍企業の強欲・横暴
ジェフリー・サックス氏の指摘は本質をついている、と思う。そしてマルクスの「万国の労働者、団結せよ」は不滅のスローガンだ、と改めて思う。
【ジェフリー・サックス CNN寄稿 「米国大衆にとっての敵は中国でなく、企業の強欲」】
トランプ対中強硬路線。その中、米国著名経済学者、ジェフリー・サックスは「米国大衆にとっての敵は中国でなく、企業の強欲。企業は税逃れ画策。本来は巨大利益を上げている企業の利益を福祉、教育、インフラ等に回すのが米国の利益。貿易で人々は利益。」
ジェフリー・サックス(Jeffrey David Sachs)は、アメリカ合衆国の経済学者. コロンビア大学地球研究所長を務め、国連ミレニアムプロジェクトのディレクター, タイムマガジンのタイム100(世界で最も影響力のある100人)に連続してノミネート.CNNに「中国が我々の経済問題の源ではない。企業の貪欲が源である」を寄稿。
「中国は、教育、国際貿易、インフラ投資、技術改革を通じて生活水準を上げようとしている国である。簡単に言えば、貧困で強国から遅れを取っているという歴史的現実に直面した国が行わなければならないことをしている。しかし、トランプ政権は中国の発展をとめようとしている。それは米国、および世界に災難をもたらす。」「中国との貿易は米国に低価格の消費財とますます高品質の製品を提供しています。たくさんのアメリカの会社が中国での製造やそこでの商品の輸出の恩恵を受けています。そして、米国の消費者は中国の低価格商品の結果としてより高い生活水準を享受しています」。「中国との貿易戦争は私達の経済問題を解決しないでしょう。代わりに、手ごろな価格の医療、より良い学校、近代化されたインフラ、より高い最低賃金、そして企業の欲張りに対する取り締まりといった、自国で生まれた解決策が必要です。その過程で、我々は、無謀で不公平な挑発よりも、中国との協力を通して得るべきことがはるかにたくさんあることを学ぶでしょう。」
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