G20の焦点だが…世界の後塵を拝する日本の「プラごみ対策」
G20。プラゴミ規制が焦点の1つが、議長国である日本のとりくみは極めておくれており、議論をリードでるのか。レジ袋規制…EUでは伊、仏禁止、18ヵ国が課税・有料化。アジアでは中国、インドなど7ヵ国が禁止、台湾、ベトナムなど4ヵ国・1地域で課税・有料化。アフリカは55ヵ国のうち実に34ヵ国が使用禁止(漁業従事者が多く、海洋プラごみが早くから問題になっていたとのこと)。
さらに、ボスのアメリカは、世界最大のプラゴミ輸出国であるうえ、有害物質ふくむゴミの輸出入を規制するバーゼル条約も不参加という傲慢さ。
残念ながら、玉虫色のなんら実効性のない「やってる観」の宣言におわりそう。日本は、拡大製造者責任の導入に踏み切るべき。
【中国やアフリカ諸国の後塵を拝する日本「プラごみ対策」の無残 姫田小夏 ダイヤモンド6/28】
○バーゼル条約(元文は朝日小学生新聞より)
有害物質をふくむゴミの輸出入を規制する条約。先進国からのごみが途上国で環境汚染を引き起こしたことから、1992年に発効。日本ふくむ180以上の国・機関が参加。アメリカは不参加。
2019年5月、スイスで開かれたバーゼル条約の締約国会議で10日、リサイクル資源としてあつかわれる汚れたプラスチックごみの輸出入も規制対象とすることが決定。2021年1月に発効。世界規模でプラスチックごみの輸出入を規制する制度は初はじめて。
【中国やアフリカ諸国の後塵を拝する日本「プラごみ対策」の無残 姫田小夏 ダイヤモンド6/28】
◆奈良公園でシカの怪死が続出 原因はプラごみの誤飲
6月、民放のニュース番組で、白いレジ袋をモグモグと呑み込む奈良公園のシカが映し出された。奈良公園のシカは食欲旺盛で、数枚のシカせんべいをあっという間に平らげてしまう。「もっとちょうだい」と迫ってくるシカに、手持ちのレジ袋までも奪われそうになる――そんな経験を、筆者も含む多くのツーリストがしているだろう。
2018年度における奈良公園のシカの生息頭数は1360頭(毎年7月時点調査)で、1年間の死亡数は347頭(奈良県奈良公園室)を数えたというが、誤飲と無関係ではない。テレビのニュースはそのシカの怪死について、「お腹から出てきたのは、レジ袋などの大量のプラスチックごみだった」と伝えた。
シカの誤飲問題は以前から顕在化しており、奈良市はホームページに「レジ袋の削減に関する取り組みについて」というページを設け、2018年5月23日付で以下のように伝えている。
「国の天然記念物である奈良の鹿についても、散乱したレジ袋を誤飲し病死するという被害が見受けられます。レジ袋無料配布中止による消費量の減少を通して、レジ袋散乱の更なる減少、ひいては鹿の誤飲被害の減少に繋がると考えています」(下線は筆者)
足元の奈良公園内に立地する小売店でのレジ袋無料配布の中止はどれだけ進んでいるのか、その取り組みの進捗を取材するため、同市の環境部環境政策課に電話をした。しかし、その回答は耳を疑うようなものだった。
「(奈良公園内の)商業施設でレジ袋を配布しているかどうかわかりません。市として実態調査を行っておりません。レジ袋の有料化は以前から取り組みはありましたが、奈良公園ではまだ手を付けていません」
一方で、同課は怪死の原因となるレジ袋について「ツーリストによる持ち込み」と認識しており、「観光ガイド掲載やPRなど、広報活動に力を入れる」という。
近年、奈良公園には日本人以上に外国人が多く訪れており、「外国人ツーリストが故意にレジ袋を食べさせているのではないか」という指摘すら上がっていた。しかし、「ポイ捨て対策」や「外国人客への呼びかけ」も大切だが、それだけでは十分ではないはずだ。
なぜツーリストがレジ袋を公園に持ち込むのか。それは、奈良駅から春日大社、東大寺にアプローチする途中の商業施設や周辺の小売店で物を買ってしまうからだ。だとすると、せめてこうした小売店で「レジ袋ストップ」を徹底しない限り、この問題はなかなか解決しないだろう。シカを保護しようと思うのなら、本気になって原因を断ち切るしかない。
◆市も公園事務所も レジ袋削減には無関心!?
心ある店主たちは、すでにレジ袋削減に取り組んでいるのかもしれない。その事情についてもっと知りたいと思い、奈良市に取材をしたわけなのだが、上述のように市は実態を把握すらしていなかった。
しかも、誤飲問題は今に始まった問題ではないにもかかわらず、「市としては対策を打ってこなかった」(同課)と明かす。挙句には「あそこは、奈良県の奈良公園事務所が管轄していますから」という。互いに責任転嫁しあって現在に至る、ということなのだろうか。
今度は奈良公園事務所のホームページを開いてみた。「シカについて」というタブをクリックすると、『財団法人 奈良の鹿愛護会』の紹介があった。そこに連絡をして、「周辺の商業施設でレジ袋配布中止の取り組みはあるのか」と尋ねると、やはりここでも「実態は把握していない、調査していない」という回答だった。
ちなみに、奈良県と隣接する京都府亀岡市では、今夏からほぼ全ての店舗でレジ袋を有料化する予定だ。全国初のプラスチック製レジ袋禁止条例制定に向けて積極的な活動を展開する同市環境市民部は、「ポイ捨て対策以上に、ゴミの絶対量を減らす取り組みが肝要」だと語っている。
6月3日、原田義昭環境相は記者会見で、小売店などで配られるレジ袋の有料義務化(無料配布の廃止)について「東京五輪に遅れないように、今年か来年ぐらいにはやらなければ」と環境省の方針を示した。すると6月15日には、世耕弘成経済産業相が「2020年4月1日の実施を目指す」と、政府として初めて、その時期を明言した。
内部事情に詳しい環境専門家によれば、「これまでレジ袋有料化に反対だったコンビニ業界や経団連も、G20でプラスチック問題が議題になることから、有料化受け入れに踏み切ったいきさつがある」という。
6月28、29日は、G20大阪サミットが開催され、海洋プラスチックゴミも議題となるが、G20のメンバー国をはじめ海外の多くの国は、すでにレジ袋を規制している。欧州はイタリア、フランス(議会承認)が禁止、18ヵ国が課税・有料化とし、アジアでは中国、インド、バングラデシュ、ブータンなど7ヵ国が禁止、台湾、ベトナムを含む4ヵ国・1地域で課税・有料化している。奈良公園を訪れる多くのツーリストたちの母国では、すでにレジ袋対策は進んでいるのだ。
◆もはや環境意識が高いとは 言えない日本のお粗末な現状
ちなみに、アフリカでは55ヵ国のうち、すでに34ヵ国がレジ袋の使用を禁止している。タンザニアでは今年6月に、レジ袋の輸出入、製造、販売、使用ができなくなるという“レジ袋禁止令”が出された。また、ルワンダはすでに2008年から使用を禁止しており、現在では世界的な“レジ袋汚染防止国家”として模範的な地位を築いている。漁業従事者が多いアフリカでは、海洋プラスチックごみが早くから問題になっていた。
翻って、日本はようやく重い腰を上げたばかりだ。国際的な注目が高まる東京五輪までに、せめて「有料義務化」だけでも法令が整えば、「日本の環境意識の高さを訴えることになる」(日本経済新聞)という打算がある。しかし、今の日本を「環境意識が高い」とはとてもいえない。十数年前によく耳にした「環境立国」という言葉も、今ではほとんど聞かれなくなった。
日本で、レジ袋有料義務化の導入が遅れた背景の1つは、構造問題だ。端的に、“環境省と経済産業省のせめぎあい”だともいえる。環境問題は両省が共管で当たっているにもかかわらず、「予算やマンパワーで大差がある上に、産業界とその献金に浴する政治家を後ろ楯にした経産省に潰されてばかり」(環境省管理職)という一面が存在した。
一方、中国といえば「汚染大国」という認識がいまだ存在する。だが、そこへの取り組みがまったくなかったわけではない。
急激な経済成長と大量消費時代に突入した中国では、2000年以降、捨てられたレジ袋が街に散乱する「白色汚染」が社会問題化していた。そこで、中国政府はレジ袋(厚さ0.025ミリ以下を対象)の生産、販売、使用を制限し、有料化することを中国全土に義務付けた。今から11年も前の2008年6月のことである。
これを境に、上海市民も小売店での買い物にエコバッグが必携となった。2010年には上海万博が開催され、住みよい社会をテーマに、上海市民はエコロジーへの認識をいっそう高めた。「環境のために」は市民共通の合言葉にもなった。環境配慮型社会に向けて、若い世代を中心に着実なステップを刻む一面もあった。
けれども、「一歩進んで二歩下がる」とはこのことで、ここにきてアプリを使った新興ビジネスが流れを変えてしまう。フードデリバリーの普及で家庭ゴミが大量に増えてしまったのである。1回オーダーすれば、食品容器や割り箸、ストロー、レジ袋でテーブルの上はたちまちゴミの山となる。2019年には利用者は4億人を超えるという。4億人が注文すれば、「4億本の割り箸」と「4億個の容器」と「4億枚のレジ袋」が同時に消費されることになる。
だが、これを座視してはいない。上海市政府は、『上海市生活ゴミ管理条例』を7月1日から施行するが、この条例は、ゴミの分別を規定すると同時に「使い捨ての減少」にも言及している。党や政府機関に対しても、環境に配慮した設備や商品を使うよう促し、使い捨ての事務用品の使用を減らし、公共の場所での使い捨て容器は「使用してはならない」と規定した。飲食業、ホテル業に対しても、「使い捨ての箸や食器をすすんで提供してはならない」と要求している。
◆中国流の“強制執行” 上海で超厳格なゴミ分別がスタート
また同条例により、市民は生活ゴミを「リサイクル可能なゴミ」「有害ゴミ」「濡れたゴミ(残飯、青果物の種や皮など)」「乾いたゴミ」に4分別することが義務化された。違反者には50元以上200元以下の罰金(約770~3100円)が課される。
しかし、条例が定める「分別の基準」には不可解さがあり、市民は混乱している。一例を挙げれば、「なぜ、マンゴーの種は『濡れたゴミ』で、ドリアンの皮は『乾いたゴミ』に分別しなければならないのか」など、市民にとっては大きな謎であり、ネット上でも議論が白熱している。
こうした混乱を回避しようと、上海市は事前にイラスト入りの「分別指南」を配布し、マンションの共用部分に通知を張り出し、ボランティアを現場に立たせ、各世帯が持ち込むゴミを厳しくチェックする体制を整えた。監視カメラが張り巡らされている上海だが、カメラはゴミの中身までをも監視する。
市民の戸惑いや不満も生まれており、「こんな分別は続かないだろう」という冷めた意見もある。過去20年の歴史を振り返れば、分別ゴミには挫折もあった。だがひょっとしたら、厳しい監視と罰金、そして最新のテクノロジーを駆使して、上海市民はこの困難を乗り越えてしまうかもしれない。
上海市宝山区では、QRコードのスキャンとともに“ゴミ捨てマイレージ”が導入され、嬉々としてゴミ捨てに行く市民の姿もある。ゆくゆくは自分の「信用スコア」とリンクするともいわれ、分別を無視して生活をすることが難しくなる。中国流の“強制執行”は賛否両論あるが、結果として市民の意識を大きく変え、成功モデルさえ生むかもしれない。
前出の環境省管理職は、「規制により対策が生まれ、それが新たな市場を生む」と語ったが、これを機に上海でも、さまざまなイノベーションが起こるはずだ。消費者の環境意識が高まる中国では、すでにフードデリバリーのプラットフォーマーが「食べられる箸」を開発している。
逆に、レジ袋の有料化でゴタつく日本が恥ずかしい。日本は、チャレンジする中国をもはや笑えない。世界で吹き荒れるプラスチックごみ削減ムーブメントだが、日本の及び腰が続けば、アジアやアフリカの国々からも白い眼で見られることにもなりかねない。
【G20大阪サミットの焦点・プラごみ規制――「日本主導の議論」の落とし穴 六辻彰二 ニューズウイーク6/28】
日本政府はG20大阪サミットでプラスチックごみ規制の議論を主導すると言ってきた
しかし、軽井沢での関係閣僚会合での合意は、事前に日本政府が打ち出していた方針はほとんど反映されていない
そのうえ、日本政府はリサイクルを重視しながらも、国内のリサイクル問題には手をつけようとしていない
海洋汚染の原因とされるプラスチックごみの規制はG20大阪サミットの一つの焦点で、日本政府は「議長国として議論を主導する」と力説してきた。しかし、事前の閣僚会合で合意された内容は、当初の野心的な目標からかけ離れたものだった。
◆G20大阪サミットに向けて
日本政府にとってプラごみ規制は因縁のあるテーマだ。日本は昨年6月のG7サミットで、英、仏、独、伊、加の5カ国が提出した「海洋プラスチック憲章」をアメリカとともに拒絶した経緯がある。
当時アメリカを含む欧米諸国ではスターバックスがプラ製ストローの廃止を進めるなど、すでにプラごみ規制の気運が高まりつつあったが、日本はそれに出遅れていた。
ところが、昨年から日本でも関心が急速に高まり、内外から「環境保護に熱心でない」とみられることへの警戒感が政府で強まった。さらに、国内でリサイクルしきれないプラごみの主な「輸出先」だった中国が受け入れをやめたことは、これに拍車をかけた。
そのため、日本政府はすでにプラごみ排出国になっている新興国が多く参加するG20でプラごみ規制の議論を主導する方針に転換。昨年末に環境省は、G20サミットに向けての提案として「プラスチック循環資源戦略」を取りまとめている。
◆G20関係閣僚会合で合意されたこと
それでは、日本はどのように「議論を主導」するのか。その内容をG20大阪サミットに先立って6月15~16日に開催された関係閣僚会合での合意からみていこう。
この会議は環境省と経済産業省の共催により軽井沢で開かれ、G20参加国・地域のエネルギーと環境の担当者が顔を揃えた。
ここではプラごみ削減の取り組みを報告・共有する枠組み(G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組)の創設が合意された。進捗状況などの情報を共有し、透明性を高めることで、G20メンバーはお互いに監視し合うことになり、そこに緩やかな拘束力が期待されるのである。
◆プラスチック資源循環戦略からの後退
ただし、この合意は大きな一歩とまではいえない。「いつまでにどのくらい削減する」といった期限や数値目標が盛り込まれていないため、「各国ができることを、できる範囲でやればいい」となりやすいからだ。
おまけに、環境省は「我が国が主導して」と強調しているが、この合意には日本政府が事前に打ち出していた方針がほとんど反映されていない。
例えば、昨年末、環境省が取りまとめたプラスチック循環資源戦略では以下のような目標が設定されていた。
・2025年までにプラ製容器包装などのデザインを...技術的に分別容易かつリユース、リサイクル可能にすること
・2030年までにワンウェイ(使い捨て)のプラ製品を累積25%排出抑制すること
・2035年までにすへての使用済みプラ製品を熱回収も含め100% 有効利用すること
これらは野心的ともいえるもので、昨年のG7サミットで提出された海洋プラスチック憲章にも劣らない水準だった。ところが、こうした期限や目標の設定はG20関係閣僚会合の合意では跡形もない。
◆選択肢なき緩やかな合意
こうした合意に至った背景としては、G20各国の間の取り組みや関心の差がしばしば指摘される。
例えば、中国やインドネシアでは、いまだに河川にプラごみが捨てられることが珍しくない。一方、フランスやアメリカのカリフォルニア州などではレジ袋の使用が禁じられており、インドではレジ袋の使用に最大4万円相当の罰金が科される州さえある。
状況の異なる各国の賛成を得ようと思えば、参加のハードルを下げるしかなく、そのために各国の自主的な取り組みが重視され、数値目標の導入は見送られた。それはよく言えば立場の違いを超えた協力を促すものだが、悪く言えばどこに向かうか分からないものともいえる。
◆プラ製品の製造に関する温度差
もっとも、どこに向かうか分からない合意の成立は、「議論を主導した」日本政府にとっても実は悪いことではない。なぜなら、それによって日本政府は欧米諸国のトレンドと距離を置けるからだ。
なぜ、日本政府は欧米と距離を置きたいのか。ここで、日本と欧米諸国の違いを確認しよう。
日本と欧米諸国(そしてほとんどのG20メンバー)はリサイクルやリユースの拡大、再生利用な新素材の開発、ワンウェイの削減、海洋プラごみの科学的調査の促進などで原則的に一致しているが、プラ製品の製造そのものの削減で立場が分かれる。
単純化すれば、欧米諸国ではプラ製品の製造そのものを削減する議論が勢いを増しているが、日本政府はそこに踏み込んでいない(この立場は多くの新興国・開発途上国に近い)。
例えば、欧米諸国ではファスト・ファッションの見直しを求める声が強まっている。短期間で廃棄される衣類が多ければ、それだけ資源消費が多くなるだけでなく、化学繊維の破片が洗濯で押し流されることで、海洋汚染の原因といわれるマイクロプラスチック(微細なプラスチック粒子)を増やすからだ。
そのため、海洋プラスチック憲章では「マイクロプラスチックのもとになる産業とともに取り組むこと」が謳われている他、プラスチックの代替品の使用を奨励することが掲げられている。
これに対して、環境省のプラスチック資源循環戦略では「2020年までにマイクロプラスチックの海洋への流出を抑制する」とあるものの、製造の削減には触れられていない。この違いは、日本で環境団体の発言力が欧米諸国ほど強くなく、政府が産業界の意向に傾きやすいことが大きい。環境省より経済産業省の方が発言力が強いこともあるだろう。
ともあれ、各国の自主性が重視されたG20関係閣僚会合では、数値目標だけでなく「何に優先的に取り組むか」の共通目標も設定されなかった。それは結果的に、各国がゴール設定をすることを意味する。
つまり、国際的な立場として「先進国の一国であること」を何より優先させたい日本政府にとって、共通のゴール設定が曖昧なG20の合意は、「仲間うち」のトレンドに合わせないことを正当化できるのである。
◆リサイクル問題の先送り
ただし、プラ製品の削減に消極的で、その裏返しでリサイクルを重視しながらも、日本政府は国内のリサイクルが抱える問題に手をつけようとしていない。
日本のリサイクル技術は優れたものだが、これまでにも回収済みプラごみのうちリサイクルしきれないものが開発途上国に輸出されており、その量は年間150万トンにも及ぶ。
その最大の要因はコストにある。
現行の容器包装プラスチックのリサイクル制度は企業の負担が軽く、自治体の負担が重い。例えば、シャンプーやリンスのボトルでいうと、内容物の製造元と容器の製造元の負担は一本あたり2~4円だが、収集、分別、保管、廃棄などの自治体の負担はこの約5倍といわれる。
そのため、環境省のアンケートでは、容器包装プラスチックのリサイクル制度への不満として、64.7%の自治体が「市町村の収集・選別・廃棄にかかる費用負担を軽減すること」をあげている。
このコストの問題は自治体が中国などにプラごみを輸出する一因になってきたが、その最大の輸出先だった中国が門戸を閉ざした以上、少なくとも現行制度でのリサイクル重視には限界がある。
繰り返しになるが、G20で「日本が主導した」議論の着地点は、各国の自主的な取り組みを尊重するものだ。
しかし、それは結果的に日本国内のリサイクル行政の問題を先送りさせかねない。日本政府は外向けに成果を誇る前に、足元を見直す必要があるだろう。
【プラスチックごみ 世界最大の輸出国 アメリカは今 NHK2019/】
プラスチックごみの処理をめぐって、日本を始めとする先進国では今、早急な対策が求められています。
大量のプラスチックゴミを受け入れてきた中国が、去年(2018年)1月、環境汚染を理由に突如、受け入れを停止したからです。」和久田
「中でも、プラスチックごみの世界最大の輸出国のアメリカでは処分をめぐって、深刻な影響が広がっています。」
◆中国 プラごみ受け入れ停止 家庭への影響は
リポート:飯田香織支局長(ロサンゼルス支局)
南部バージニア州に住むマヤ・カルツェバさん、41歳です。プラスチックごみをできるだけ出さないよう、心がけています。子どもたちに持たせる昼食を入れているこの袋。
マヤ・カルツェバさん「毎日洗ってるのよ。」
これまでは使い捨ててきましたが、今は洗って再利用しています。
週に1度の、ごみ回収日。これまで自治体は、リサイクル可能なプラスチックごみと一般ごみは分けて回収していました。しかし、先月(4月)からは市民に対しプラスチックごみも一般ごみとして出すよう指示。
中国が受け入れを停止したことで、リサイクル資源としてプラスチックを回収できなくなったからです。プラスチックごみを一般ごみとして出すことに強い抵抗を感じているマヤさん。家の中には、ごみが増えていく一方です。
マヤ・カルツェバさん 「プラスチックに入ったものを買わないというのは無理です。これまでは、私たちのごみを受け入れてくれる外国のおかげで、いかに多くのプラスチックごみを出しているのか、全く気づかずに過ごしてきました。」
◆埋め立て処分に踏み切る自治体も
バージニア州のごみ処理場です。
先月からプラスチックごみを一般ごみとして埋め立て処分しています。焼却施設が整備されている日本と異なり、アメリカではごみは埋め立て処分されるのが一般的です。
分解されるまで400年以上かかるものもあるプラスチックは、埋め立てには適さないとされリサイクル資源として多くを中国に輸出してきました。その中国が受け入れを停止した今、プラスチックの埋め立て処分に踏み切る自治体が増えています。
埋め立て処分する ハリソンバーグ市 幹部
「市民にはプラスチックごみを一般ごみとして捨てるようお願いしています。環境に優しくないことは分かっていますが、しかたないのです。」こうした中、リサイクル資源としてプラスチックごみの受け入れを続けている環境保護団体にも影響が広がっています。
中西部イリノイ州で活動するこの団体にはプラスチックごみの持ち込みが急増しています。
回収をとりやめた自治体が増えたことで100キロ以上離れた地域からゴミを運んでくる人までいると言います。利用者「これを埋め立て地には捨てたくないわ。プラスチックって環境に悪いでしょ。」
この団体のごみは、業者を通じて中国に輸出されてきました。
しかし、今では急増するプラスチックごみを持っていく場所がなく、ごみはたまっていく一方です。環境保護団体 広報担当者 「今のところ打つ手もないし、この先に展望は全くありません。」
◆サンフランシスコ プラごみ対策のカギは?
各地で影響が広がる中、注目されているのが西海岸のサンフランシスコです。
リサイクル率を高め、原則として、プラスチックごみの埋め立てを行っていない環境先進都市です。この処理業者は最先端の装置を導入しプラスチックごみを8種類にまで細かく分別。資源としての価値を高め、アメリカ国内での引き取り手を確保しています。手間がかかるため、一日に処理できる量はおよそ700トン。
そこで、この業者は自治体と連携し、プラスチックごみを減らすためのPR活動にも力を入れています。
「あなたにもできる事があります。使い捨てプラスチックの使用の“拒否”です。例えば、プラスチックのストローや袋、カップなどがあります。」
ごみ処理事業者 広報官 「プラスチックを減らす最善の方法は、市民の行動を促すことです。」
市民の意識も高まっています。最近、人気を集めている市内のスーパーです。店では、プラスチック容器に小分けされた商品を極力扱わないようにしています。
基本は量り売りです。客は自ら持ち込んだ容器に必要なだけ商品を入れます。はちみつ、シャンプーやハンドソープ。さらには小麦粉やゴマまで。
利用者 「ここはユニークで、とても満足できます。負担はありますが、その価値はあります。」
こうした官民をあげた取り組みで、サンフランシスコのプラスチックごみの量は年々減り続けています。
サンフランシスコ市 担当者「プラスチックごみをほかに売ればいいという問題ではない。大事なのは、プラスチック製品が本当に必要か、市民に考えてもらうことです。」
◆対策求められる先進国
高瀬 「ロサンゼルスにいる飯田支局長と中継がつながっています。」
和久田 「飯田さん、中国の受け入れ停止の余波がここまで広がっているんですね。」
飯田香織支局長(ロサンゼルス支局)
「アメリカでは、いろんな不便に直面して、そこで初めて問題の深刻さに気づく市民が多いんです。そんな中、VTRにも出てきた、先進的なサンフランシスコ市をモデルに、プラスチックごみの削減に努める自治体が全米で増えています。」和久田「日本も、ひと事ではありませんね。」
飯田支局長「日本国内でも今、処理しきれないプラスチックごみがたまり続けていて、この点はアメリカと同じなんです。ただ、日本が海外に輸出しているプラスチックごみは、事業者が出すごみが中心なので、現時点では、一般家庭への直接の影響は少ないとみられています。
一方で、地域によっては、ごみ処分場に、ごみがうずたかく積まれるようになって、近隣住民が不安を感じるようになるなど、切実な問題が起きつつあります。」
高瀬「この問題の解決のカギは何だと考えますか?」
飯田支局長「これまでは3つの『R』として、ごみを減らす『Reduce』、使い続ける『Reuse』、そして再利用する『Recycle』が大事だとされてきました。
これに加えて、こちらでは、VTRにもありましたけれども、これからは『Refuse』、拒否することがカギだと言われています。使い捨てのプラスチック容器を市民の側が『拒否』することで、企業に重い腰を上げさせて、ものの売り方、買い方から変えていこう、というわけなんです。
日本でも、この4つ目の『R』が注目を集める日がそう遠くはないかもしれません。」
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