生活保護 異なる計算方式で比較 “物価偽装”で大幅削減
すべての社会保障制度の基準となっている岩盤が、生活扶助基準である。安倍政権は、2013年にその基準を、2008年〜2011年に物価指数が4.78%下がっているとして、過去最大の引下げをおこなった。
が、08-10年だけ特異な計算方法を用い、10-11年の通常の計算方法と、比較のできない別ものを接続したこと、生活保護世帯の支出ウエイトでなく、一般世帯の支出ウエイトで計算‥2010年の地デジ移行で増加したデレビの買い替えの影響で増加(性能があがれば、その分は価格低下として評価される/保護世帯は、買い替えでできないので無料でチューナーを配布)したことによるものであり、「物価偽装である」
勤労統計偽装、GDP偽装=ソノタミクスもひどいが、支給額が減る、就学援助制度など多くの制度から排除される人を生み出すなど、実害の規模は、比較にならない。
【生活保護削減 根拠ない “物価偽装”を追及 衆院厚労委 赤旗4/27】
以下の詳しい解説をしているサイト
【浮かび上がる「物価偽装」 高橋ちず子 2019/4】
2013年、過去最大の生活保護費削減がありました。いま全国で違憲訴訟が取り組まれていますが、そこで浮かび上がったのが「物価偽装」です。25日、厚生労働委員会で徹底追及しました。
憲法25条を保障する生活保護制度のはずですが、最近は一番所得の低い層の消費支出と比べて、生活基準が高いか低いかを議論しています。低い層と比べると最低限度を国が引き下げることになります。13年はそれだけでなく唐突に、審議会抜きで、デフレだからと580億円もの引き下げを決定。その根拠となったのが生活扶助相当CPI(消費者物価指数)です。
問題は二つ。10年の消費水準に合わせて変化をみるパーシェ式と10年から11年は総務省と同じラスパイレス式。併用したことを厚労省は認めました。直近の指標を使っただけですと開き直る厚労省に、「式が悪いと言っているのではない!違う算式で比べたらダメでしょ?」と迫ると、また同じ答弁。では一般論でどうか、と総務省に聞くと「適切ではない」と!
さらに10年は地デジ化への駆け込み需要で、テレビの割合がぐっと高まり、物価指数も大きく引き下げることに。「物価下落幅が大きいからといって恣意(しい)的に調整するのは適切ではないから」と厚労省。私のトドメの一言は、「生保世帯は買い替え困難と、チューナーを補助したんですよ。分かっていながら恣意的に数字が使われた!」。
【生活保護削減 根拠ない “物価偽装”を追及 衆院厚労委 赤旗4/27】
日本共産党の高橋千鶴子議員は24日の衆院厚労委員会で、生活保護の生活扶助額を2013年8月から15年4月までに総額670億円も削減されたのは、算式の違ったものを比較することによって消費者物価指数(生活扶助相当CPI)の大きな下落という「物価偽装」をつくりだしたためだと追及しました。総務省の佐伯修司統計調査部長は「一般論で算式が違うものを比較するのは適切でない」と認めました。
高橋氏は、10年以前と以後では物価の算定方式が違っていたと指摘。08年から10年まで使われていた計算式(パーシェ方式)と、10年以後に使われた計算式(ラスパイレス方式)では物価指数が相違することは「統計上よく知られている」と強調しました。
高橋氏は「厚労省は2008年の物価指数を104・5とし、2011年を99・5として、物価がマイナス4・78%と急降下の数字が出てきた」と述べ、「違う計算式を比較しては駄目だ。低く出ることが分かっていながらやったとしか思えない」と批判しました。
【Q3 厚労省は魔法を使ったのでしょうか? 】
◆生活扶助相当CPIのカラクリ
意外に単純なカラクリです。総務省統計局が算出している消費者物価指数(CPI)と生活扶助相当CPIの関係をまず整理しましょう。
物価指数を計算するときに必要なのは、対象の各品目の支出額割合(ウエイト)と価格の変化率。こうしたデータは総務省統計局のCPI統計のサイト( http://www.stat.go.jp/data/cpi/ )に掲載されており、厚労省は生活扶助相当CPIの計算をするとき、このサイト内のデータを使いました。
生活扶助相当CPIは、外形的にも統計局が担当する消費者物価指数(CPI)の仲間に見えます。CPIの仲間には、一部の品目を除いて計算するCPIがいくつもあります。よく知られているのは、値動きの激しい生鮮食品の品目を除いた「生鮮食品を除く総合指数」です。
生活扶助相当CPIは、CPI統計のすべての品目の中から生活扶助費では買わない品目を除いて計算しています。家賃や医療費、自動車購入費などが除外品目です。生活扶助相当CPIも「生活扶助費で買わない品目を除く総合指数」という内容です。
◆厚労省と三菱総研による、特異な独自計算
それならなぜ、生活扶助相当CPIの計算では下落率が異様に大きくなったのか。
ポイントは、厚労省が通常の計算方式ではない特異な計算方式をこっそり使ったことです。厚労省社会援護局保護課とコンサルタントの三菱総研のチームが、CPI統計の本家である総務省統計局やCPIに詳しい学者・エコノミストらの意見も聞かず、独自方式で計算したのです。
2010年〜2011年は通常のラスパイレス方式で計算しましたが、2008年〜2010年は、普段はまったく使われないパーシェ方式を実質的に使った形になっています。
厚労省の計算には、もうひとつ重大な問題があります。計算で使う各品目の支出額割合(ウエイト)を、CPI統計のサイトに記載されている数字にしたことです。
CPI統計の支出額割合は、統計局が実施している家計調査に基づいて設定されています。そして家計調査は、一般世帯の平均の数字が出てくるように作られています。
このため、厚労省が計算した生活扶助相当CPIは「生活扶助費で買う品目群についての平均的一般世帯の物価」ということになるのです。生活保護世帯の現実の貧しい暮らしぶりを反映していません。
◆電気製品の影響が異様に膨らむ
ふたつの問題点によって、生活保護利用者に残酷な結果が出ました。
2008年〜2011年の生活扶助相当CPIの下落率4.78%の大半は、テレビやパソコンなどの電気製品の影響によるものです。2008年〜2010年の計算が実質的にパーシェ方式になっていることで、電気製品の影響が異様に膨らみました。
生活保護世帯は貧しいので電気製品への支出額割合は低いのですが、厚労省は一般世帯並みの暮らしという前提で生活扶助相当CPIを計算してしまいました。
「電気製品の影響が大きく出た厚労省の計算はあまりに理不尽」。こういった怒りの声が生活保護利用者の間で噴出し始めているのは当然です。
【Q4 「恣意的な計算方式」がカラクリの中心?】
◆真実の下落率とは?
単純明解にそういうことです。だから、生活扶助相当CPIの計算がおかしいとアピールするためには、物価指数の計算の基本や厚労省の計算方法の問題点をしっかり学んで、分かりやすく説明していかねばなりません。
計算方式の違いで計算結果が大違いになったことを示したのが次のグラフです。
(2)の線は、2008年~2010年について厚労省が実質的なパーシェ方式で計算した結果です。生活扶助相当CPIは104.5→100なので、約4.3%の下落率です。
その2年間について、通常のラスパイレス方式で計算してみた結果が(1)の線です。101.8→100なので、下落率は約1.8%です。
2010年~2011年については、厚労省も通常のラスパイレス方式で計算しました。その計算を示したのが(3)の線。100→99.5なので0.5%の下落です。
厚労省の計算は、(2)の線と(3)の線の組み合わせ。3年間を通してみると生活扶助相当CPIは104.5→99.5なので4.78%の下落。
一方、この3年間を通常の方式で計算すると、(1)の線と(3)の線の組み合わせ。生活扶助相当CPIは、101.8→99.5なので2.26%の下落です。
この3年間のCPI総合指数の下落率は2.35%でした。似た水準になるのは自然です。
(1)、(2)、(3)の線の計算は、いずれもCPI統計に出ている各品目の支出額割合(ウエイト)を使っています。家計調査にもとづいているので、一般世帯平均の数字です。
生活保護世帯の平均的な支出額割合を示す数字は、厚労省が実施している社会保障生計調査で把握できます。
(4)の線は、2008年の社会保障生計調査をもとに通常のラスパイレス方式で計算してみた数字です。3年間の下落率は0.64%。
情報開示されている数字が不十分なので、おおまかな試算ですが、これが「真実の下落率」に一番近いでしょう。
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