除染土の再利用…全国へ、従来基準の80倍もの汚染物質を拡散
安倍政権は、福島県内の除染土を公共事業等で「再利用」、福島県外の汚染状況重点地域の除染土については、濃度の上限を 設けずに「埋立処分」できるようにしようとしている。
放射性物質は集中管理が原則である。原発施設などから発生する低レベル放射性廃棄物は、ドラム缶につめて厳重に管理・処分されることとなっており、原発の解体などによって発生したコンクリートや金属などの再生利用の基準は、セシウム 134・137の場合、100Bq/kgで、「再利用」しようとする除染土の8,000Bq/kgはこの80倍もの値である。福島県外の除染土の埋立処分では、放射能濃度の上限を設けず、雨水流入や地下水対策は不要となっている。
放射性廃棄物の対する従来の基準を、乱暴に無視し、従来基準を遥かに超える汚染物質を全国に撒き散らす暴挙である。 以下は、FoE Japanによる反対声明。
【除染土の再利用や処分に関する方針に対する声明 環境中への拡散は許されない FoE Japan4/22】
【除染土の再利用や処分に関する方針に対する声明 環境中への拡散は許されない FoE Japan4/22】
環境省は、福島県内の除染土を公共事業等で「再利用」できる方針を打ち出しています。また、福島県外の汚染状況重点地域の除染土については、濃度の上限を 設けずに「埋立処分」できる省令を策定しようとしています。
FoE Japanは、現在まで各地の実証事業に関して訪問・聴き取り調査や環境省と の会合をおこなってきましたが、本日、あらためて以下の反対声明を発出しまし たので、ご一読いただければ幸いです。
環境省は、福島県内の除染で生じた最大 2,200万m3とされる土壌および廃棄物のうち、 8,000Bq/kg以下のものを「遮蔽および飛散・流出の防止」を行った上で、全国の公共事業や農地造成で利用できる方針を策定しました。現在、福島県飯舘村長泥地区で除染土壌を農地造成に再利用するための実証事業が行われているほか、南相馬市小高地区での常磐自動車道の拡幅工事に利用する実証事業が予定されています。福島県二本松市で農道の路床材に使うという実証事業を行おうとしたが、住民の反対などにより事実上撤回されました。南相馬市小高地区でも、地元区長や住民が反対の強い意思を表明しています。
福島県外の除染土については、環境省は栃木県那須町、茨城県東海村での実証事業を行い、各地の自治体が埋立処分を行うことができる省令案を策定しようとしています。放射能濃度の上限を設けず、雨水流入や地下水対策は不要としています。
FoE Japan は以下の理由から、これらの再利用・埋立処分方針に反対します。
1)放射性物質の環境中への拡散を許す
2)放射性物質は集中管理が原則
3)基準のダブルスタンダードは許されない
4)実証事業には問題が多い
1) 放射性物質の環境中への拡散を許す
放射性物質は集中管理するべきであり、公共事業や農地造成に利用すべきではありません。環境省は、公共事業は「管理されている」としていますが、道路、防潮堤、土地造成にいったん除染土を使ってしまえば、放射性物質を環境中に拡散することになります。豪雨や河川の氾濫、地震などの自然災害が多発・激甚化していることも忘れてはなりません。また、建造物の寿命が終わった後、その資材がどうなるかについてはまったく不明です。
2)放射性物質は集中管理が原則
放射性物質は集中管理が原則です。公共事業への再利用は事実上の「最終処分」となります。これは分散させて埋め立てることにほかなりません。県外の埋立処分についても同様です。
3)基準のダブルスタンダードは許されない
原発施設などから発生する低レベル放射性廃棄物は、ドラム缶につめて厳重に管理・処分されることとなっています。原子炉等規制法に基づく規則においては、原発の解体などによって発生したコンクリートや金属などの再生利用の基準は、セシウム 134・137の場合、100Bq/kgです。8,000Bq/kgはこの80倍もの値です。
除染土を道路の盛り土として使った場合、セシウム 134 ・ 137 が100Bq/kgまで減衰するのに170年かかります。一方、盛り土の耐用年数は70年とされており、「その後はどうするのか?」という問いに環境省は答えていません
4)実証事業には問題が多い
現在までに実施されている実証事業は、以下のように問題があります。実証事業の結果をもって、「安全」が立証されたとすることはできません。
・近隣住民への十分な説明を踏まえ、協議、同意を得たものとはなっていない。
例)福島県二本松市では、原セ才木地区の 21戸の中で9戸しか参加していない中で、説明会が開催され、「地元了解」ということにされてしまった。飯舘村長泥地区では、実証事業が、居住地域の除染を含む特定復興拠点計画と「セット」で提案された。住民にとっては、実証事業自体のメリット・デメリットについて説明され、意見を言う状況にあったかどうかは疑問。
・使われる除染土壌に関して、放射能濃度が袋ごとにはかられていない。
例)栃木県那須町では、埋め戻す土壌の 350袋のうち 35 袋について土壌のサンプリング調査が行われたのみ。サンプリングにあたっては、1袋から 10サンプルを採取して混合し、1検体とした。
・実証事業の期間が半年~1~2年程度であり、空間線量率、ダスト、浸透水の測定が行われるものの、長期にわたる放射性物質の挙動を把握するには不十分である。
例)茨城県東海村での実証事業における測定は 2019年10月末~2020年2月末、栃木県那須町では2019年12月末~2020年2月末と、数か月にすぎない。
・実証事業終了後の管理期間、管理体制、モニタリング体制が不明確である。事実上の最終処分になってしまう。
福島県内の除染土再利用に関して、環境省は中間貯蔵施設への運び込み量を最小限にするためにこの方針を策定したといいます。背景には、中間貯蔵施設建設後、30年後には廃棄物を運び出し、県外で最終処分することが約束されていることがあります。しかし、これは同意を取り付けるためだけの空約束ではないでしょうか。
確かに、大量の除染土をどうするかは大きな問題です。しかしその方針策定には、福島県内外の幅広い市民の参加を得た上での国民的議論が必要でしょう。
福島原発事故前には、放射性物質は原発の敷地内に閉じ込められ、外には出ないことになっていました。このため、環境中での放射性物質の濃度を規制するための法律は現在存在しません。また、排出についても濃度規制のみであり、総量規制の考え方がありません。
FoE Japanは、環境基本法に基づき、他の公害要因物質と同様に放射性物質の放出・拡散を規制し、人々を被ばくから防護するため、環境基準や総量管理なども盛り込んだ放射能汚染防止法の策定を求めていきます。
以 上
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