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教員志願者 6年連続減…国家による「定額働かせ放題」が元凶

 公立学校の先生の志望者数が6年連続で減少。学校現場の長時間労働、荷重労働が社会問題となってきた影響だろう。その根源には、8時間分の上乗せで、残業時間という概念を無くして、「働かせ放題」のもと、教員に数多の課題を押し付けてきた結果である。

 先進国で最低の教育予算(GDP比)、異常な多人数学級、詰め込み教育という「人を大切にしない」政治の結果である。

神奈川新聞の特集と、弁護士ドットコムのニュースより。

【先生の明日 /志望者が6年連続で減少、他人事ではない教員の長時間労働 「教育問題ではなく社会問題」 神奈川4/18

【先生の明日】(上)熱血教師は40歳で死んだ 4/16

【先生の明日】(中)教員は「定額働かせ放題」?

【ただ働きを「献身的」と美化する学校現場 諸悪の根源「給特法」に内田良さんが迫る 2018/6/17

【教員の長時間労働をうむ「給特法」改正を 現役教員ら32500人分の署名提出 2018/12/4

 

【先生の明日】志望者が6年連続で減少、他人事ではない教員の長時間労働 「教育問題ではなく社会問題」

 

 公立学校の先生の志望者数が6年連続で減少している。識者は、学校現場の長時間労働が敬遠されている影響を指摘する。新潟県では小学校の教員採用試験の倍率がわずか12倍になり、教員不足によって授業が行えないという事態は全国で現実に起こっている。教員の労働問題に詳しい内田良・名古屋大准教授(43)は「なり手の減少が続けば、当然教育の質は下がっていく。一番影響を受けるのは子供であり、その親。つまり教員の長時間労働は、教育問題ではなく社会問題だ」と警鐘を鳴らす。(神奈川新聞・佐藤将人)

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◆先生が死んでも「他人ごと」

 

 横浜市立中学の教員だった夫の過労死が認められるまで、5年半もの月日がかかった。その数ヶ月後、工藤祥子さん(52)は横浜市の教育長から各校長宛に送られた通知を、知り合いの先生から手渡された。

 

 「まるで、夫の3度目の死亡宣告を受けたような瞬間でした」。1度目は夫が亡くなった時、2度目は過労死の申請が当初は「校務外(不認定)」の決定を受けた時、そしてこの通知だ。

 

 「過重労働による健康障害防止のための取組みについて(依頼)」と題された通知にはこう記してある。

 

 <市立中学校教諭がくも膜下出血により死亡した件について、地方公務員災害補償基金(地公災)神奈川支部長から、改めて公務災害として認定する通知がありました。その理由として、「長時間に及ぶ時間外勤務や通常の範囲を超えた職務内容」と当該疾病の因果関係を認めたことが考えられます。>(一部略)

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 「地公災は完全に過労死と認めたのになぜ、『考えられます』なのか。そもそも夫はこの組織の一員だったはず。校長宛の通知とは言え、追悼やお悔やみの言葉も一切なく、どこからどこまでも他人ごと。まるで当事者意識がない。夫はこんな組織のために頑張って、死んでいったのか。夫の死は、こんなにも軽く扱われてしまうのか」

 

 一人の教師が仕事に人生を懸けて命を落としたという事実を、当該組織のトップすら「自分ごと」として捉えられない。「結局は誰も責任を取らないし、過労死してもおとがめなし。そういう無責任な姿勢が究極の形で表れたのが、この通知だと思う」

 

 実際、これまで教員の過労問題で、校長など管理職を含めた学校や教育委員会が、法的責任を問われた例はなかった。

 

 しかし今年2月、大阪府立高校の男性教諭が精神障害の一種である適応障害を発症したのは長時間労働が原因だとして、国家賠償法に基づいて府に対して損害賠償請求を起こした。公立の教員が過労による傷病で損害賠償を請求するのは日本で初という。過労問題を専門に扱い、同訴訟の代理人も務める松丸正弁護士(72)はこう話す。

 

 「民間で起きたら企業責任を問われるのに、学校の問題は(どれだけ残業実態があっても違法とならない)給特法を根拠にあくまでも管理監督者の指揮命令下にない自主的自発的勤務と言われて、先生よくやったね、と美談で終わってしまっている。過労で心身を壊す先生の数は10年前とほとんど変わっていない。教員の過労問題も、管理者の責任を問えるようにならないといけない」

 

◆「先生はきつい」を隠すから

 

 長時間労働が野放しにされ、教師が疲弊する。教職に希望が持てないから、なり手が減っていく。その傾向はデータからも明らかだ。教員採用をめぐる文部科学省の調査によると、近年の採用人数はほぼ横ばい近くとなる一方で、受験者数は6年連続で減少。新潟県では2019年度の小学校の採用試験の倍率が1.2倍と過去最低を記録し、受験者の大半が受かるという異常事態となった。

 

 名古屋大教育発達研究科の内田准教授は、「背景には学生にとって売り手市場が続く民間企業への就職状況などもあり、一概には言えない」と前置きした上でこう語る。

 

 「学校の外では『教員はきつい』という情報があふれているのに、大学の授業では触れたとしても少しだけ。ふたをしておいて『それでもこんなにやりがいがあるんです』と、マイナスをプラスで無理やり消そうとする。それが結果的に学生の不安をあおる悪循環になっている」

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 現実をオープンにし、問題を整理する。国がどういう対策を練ろうとしているのかを知る。声を上げている教師たちの改善策に耳を傾ける。その上で自分はどうしていくべきなのか、何をすべきなのかを一緒に考えていく。このプロセスが重要だと説く。

 

 「教師になって最初はしんどいかもしれないけど、自分が30歳になる頃には良くなるかもしれないという希望が持てたり、それなら自分たちが変えようというふうに思えた方が、学生にとっても安心だし、よほど生産的だと思います」

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◆足元が崩れる教育現場

 

 教育の質を担保するのは人材だ。その担い手が減少し続ければ、教育現場は瓦解(がかい)していく。内田准教授は危機感を隠さない。

 

 「1年前に出会った小学校の先生で『12月のすべての授業で準備時間0分でした』という人がいた。過去の蓄積で、その場しのぎで教壇に立つ。これでいいのでしょうか。教員が不足し、必要な授業を行えないという中学校は現実に存在する。結果的にそれは子供の学習意欲を低下させることにつながるし、授業の質を低下させることに間違いなくなってくる」

 

 それで一番困るのは誰か。子供であり、親だ。だからこそ内田准教授は「教員の長時間労働は教育問題ではなく、社会問題なのです」と強調する。

 

 社会という言葉が大きすぎるならば、「地域」に置き換えて考えればいい。

 

 文部科学省は長時間労働の主因とされる部活で外部の指導員を制度化した上で、週に2度の休養日を設けるガイドラインを示した。現状は教師が行う登下校指導、夜間の見回り、各種徴収金の徴収などを「基本的には学校以外が担うべき業務」、校内清掃などを「学校の業務だが、必ずしも教師が行うべきではない業務」に仕分けした。ポイントとなるのはいずれも、地域との関わり方だ。

 

 内田准教授はこう語る。

 

 「膨れ上がった先生の業務は基本的にすべてただ働き。外部化しようとしてもコストがかかっていないので、予算がつかない。原資があれば誰かに任せられるのに、それがすぐにできないのが教師の働き方改革の難しさ。ただ地域に担い手がいない、保護者も共働きが増えて多忙だといって、先生に一極集中させてきたつけが回ってきた。社会の構成員全員が考え直さないといけない問題です」

 

 一方でこれまで9件の教員の過労死裁判に関わり、8件で認めさせた松丸弁護士はこう言う。

 

「結局そうやって地域に仕事を落としていくと、必ず保護者や地域住民が『学校は地域のことを考えていない』となる。そういうひずみが出てくるのは、お互いにとってよくない。問題は単純で、教員の人員を増やせばいい。これが最も効果的です」

 

 外部化にせよ、教員の人員増にせよ、必要となるのは「予算」だ。それを後押しするのは地域を起点とする社会全体の理解であり、世論という声になる。

 

 そのキーとして、「自分ごと」という言葉が浮かびあがる。自分の住む街にある学校、自分や親戚や友人の子が通う学校に根付く長時間労働は、決して他人ごとではなく、有形無形、それぞれに関わってくる問題だ。子供に生き生きとした先生の下で学んでほしいと願うのは、万人共通の思いだろう。

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工藤さんの元に届いた、夫の教え子や保護者からの手紙。100通ではきかない。

 

◆過労死に近い、教師の平均像

 

 松丸弁護士によると過労で命を落とす人には、明確な共通項があるという。

 

 「まず、まじめできちょうめん。でも、これだけでは倒れません。あと一つは『他者配慮』です。周囲の人に対する気配りや、頼まれたら断れず、背負ってしまう人。これは民間も同じです。特に過労自殺の場合は遺書で必ず、周囲に謝りながら死んでいく。迷惑をおかけしてすみませんと。特に教育現場ではそういう人が特殊ではなく、むしろ平均に近いですから」

 

 小学校教員の約3割、中学校教員の約6割で過労死ラインと呼ばれる月80時間以上の時間外労働が常態化している現状はもとより、その中の少なからぬ先生たちが、過労死に陥りやすい傾向を持っているのが危うい。

 

 過労死した工藤さんの夫・義男さんは、卒業式の時にいつも生徒に送る言葉があったという。

 

 「お前ら、絶対に俺より先に死ぬなよ」

 

 言葉の真意は、どんなにつらいことがあっても生きてさえいれば必ずまた笑えるし、幸せになれる、いや、なってほしいという思いにあったはずだ。

 

 工藤さんはこう言う。

 

 「夫が亡くなり、その教え子からたくさんの手紙をもらった。うれしい半面、夫は子供たちにこんな思いをさせたくはなかったはずだと思うと、本当にいたたまれなかった。過労だけの問題ではないと思いますが、子供たちが親に平気で『また先生辞めちゃった』と言ってしまう現状は、やはりおかしい。先生たちが自分のプライベートや健康を犠牲にする働き方を見せてしまっているのは、子供の未来のためにもならない」

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 自らも小学校の教員だった工藤さんは現在、「全国過労死を考える家族の会」の公務災害担当として、厚労省が進める過労死等防止対策協議会の委員を務めるほか、求めに応じて講演などを行っている。その活動は決して、教育行政や教職現場を批判するためではない。自分と夫が愛した先生という仕事で、もう誰も不幸にならないよう、そして若者が希望を持って目指せる仕事であるよう、前へと進めていきたいからだ。

 

 

【先生の明日】(上)熱血教師は40歳で死んだ 4/16

 

過労死ライン」という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。月80時間の時間外労働が、その境界線に当たる。日本では中学校教員の約6割、小学校教員の約3割がそれ以上に働いている。やや乱暴だが、義務教育に携わる先生の2人に1人は、いつ倒れてもおかしくないのだ。教員はなぜこんなにも働き過ぎ、その末に命を落とす人が後を絶たないのか。誰もが通う学校という現場に横たわったままの「労働問題」を、考えてみたい。

(神奈川新聞・佐藤将人)

 

◆40歳で迎えた過労死

 

 元はアメリカンフットボールの選手で、教科はもちろん体育だった。好きな言葉は「闘魂」。指導は厳しいが、生徒のためなら何でもする、熱い先生だった。

 

 大学時代から交際していた妻の祥子さん(52)は、笑って振り返る。

 

 「学生時代は本当にアメフトばかりで。教職課程を受講しているのに、教員免許は取れないし、就職活動だって部活の片手間にやってダメ。4年生の12月に社会人チームを立ち上げる企業に誘われて、どうにか就職先が決まったんです。楽天家で、でもなぜか、どうにかしてしまう人だった」

 

 周りを笑わせずにはいられない「人たらし」。いつの間にか周囲を巻き込んでしまう。祥子さんはだからこそ、少しいいかげんだけれど、彼が好きだった。

 

 結局アメフト選手としては1年で見切りをつけた。一生の仕事をと考え、会社を辞めた。

 

 横浜市の中学校教員となった。「部活指導は最初からやりたかったみたいですが、すぐに生徒指導にも目覚めたみたいなんです」と祥子さん。道からそれてしまう生徒、周囲とうまくいかない生徒ほど、気に掛けるタイプだった。

 

 そんな工藤義男先生は、40歳で亡くなった。

 

 過労死だった。

 

◆まるで2度目の死亡宣告

 

 今から12年前の2007年6月25日。横浜市立あざみ野中学校の教員だった工藤さんは、くも膜下出血でこの世を去った。

 

 誰もが過労が原因だと言った。前任の同市立霧が丘中では学年主任に加え、「生徒指導専任」を任せられていた。激務のため市教育委員会が兼務は避けるよう指示していた役職だ。さらにサッカー部の顧問、進路指導なども重任。異動したばかりのあざみ野中でも、異例となる転任直後の生徒指導専任への就任が待っていた。

 

 朝7時前から学校に行き夜10時近くまで残業をし、家でも持ち帰り仕事でパソコンに向かい、そのまま突っ伏す日も珍しくなかった。生徒が校外で問題を起こせば駆け付け、保護者にも対応し、週末は部活指導で家を空けた。

 

 最終的に、3年生の修学旅行の引率で2泊3日をほぼ不眠のまま働いたことが、引き金となった。

 

 妻の祥子さんは、夫の同僚らに背中を押される形で、公務災害の申請を行うことに決めた。過労死認定の鍵は、時間外労働の長さの証明に尽きる。タイムカードなどによる出退勤管理が徹底されていない学校現場ではこれが非常に難しい。

 

 「夫が何時から何時まで働いていたのか、1日1日をさかのぼっていく。まるで死に至るまでの日々をなぞっていく作業でした」

 

 少しずつ埋まっていく夫の「勤務表」。全ての行間に自責の念が募った。やつれていく夫を私はどうして止められなかったのか…。心労と、残された2人の娘のケア、そして仕事。自身も過労で倒れ、両親に同居を頼み、そして職を辞した。

 

 そうまでしてこぎ着けた申請は、2年も待たされた揚げ句「公務外(不認定)」という結果に終わった。「自分で勝手に働き過ぎて、勝手に死んだんでしょうと。まるで夫の、2度目の死亡宣告を受けたようでした」。決定を不服とし、裁判の二審に当たる「審査請求」をすることに決めた。

 

 民間企業の労災申請が労働基準監督署に対して出されるのと違い、教員の場合は「地方公務員災害補償基金(地公災)」によって判断される。不認定を経て、初めてつながった過労死弁護団から聞かされたのは、本来は救済機関であるはずの地公災が、現実には高いハードルとなって立ちはだかる現実だった。

 

5年半かかった「よかったね」

 

 弁護団の協力を得ながら、改めて夫の労働時間の算出に取りかかった。立証が難しい持ち帰り仕事は、パソコンのログイン記録などから地道に積み上げていった。本当は、2度と向き合いたくない作業だった。

 

 「でもこの申請のために本当にたくさんの先生方が、それこそ忙しい中で、休日を返上して協力してくださった。その思いを無駄にはできないと思った。何より、夫が教師として生きた証しを残したかった」

 

 準備のさなか、地公災による過労死認定率は民間の半分程度しかないというデータが明らかになった。

 

 悲壮な覚悟の中、さらに2年が経過した。審査請求では、激務や長時間労働と死の因果関係が認められた。12年12月27日。夫の死から実に5年半がたっていた。家に帰り、遺影に語りかけた。

 

「よかったね。よく頑張ったね。そう、やっと言ってあげられる」

 

 笑みはすぐ、涙で崩れた。支援者からの電話が鳴りやまなかった。そして祥子さんは、ある決意を固めた。「この経験を生かし、今度は私が同じように苦しむ遺族や、家族の方を支える側になりたい」

 

 17年には自ら、「神奈川過労死等を考える家族の会」を立ち上げた。「全国過労死を考える家族の会」でも「公務災害担当」を請け負うことになった。現在は、厚労省が進める過労死等防止対策協議会の委員も務めている。

 

◆逆説的な「幸運なケース」

 

審査請求を進めるうちに分かったことがあった。「これでもうちは、幸運な方だということです」

 

 逆説的な言葉の理由は、教員の過労死認定を巡る申請制度にある。公務災害は、所属長(校長)による勤務実態調査書が申請書類となるためだ

 

 「でも校長は教員を働かせすぎた監督者であり、張本人なので、現場が協力に後ろ向きになってしまうケースが一般的。この壁に行き当たって、泣き寝入りする遺族はものすごく多い」

 

 過去には遺族から申請の依頼を受けた校長が、書類を数年間にわたって隠していたケースまであった。

 

 過労問題を扱って40年の大ベテラン、松丸正弁護士(72)は「だから教員の過労死の相談を受けたら、僕はまず校長のところへ飛んでいく」と語る。

 

 「少なくとも制度的には、個々の校長の責任が問われることはない。この手続きは校長の責任を追及するものではなく、遺族の救済のためだということを分かってもらう必要がある」

 

 文科省の調査によると、公立中学の先生は全体の4割が、月に100時間以上の時間外労働を記録している。月80時間の過労死ラインを超え、産業医への報告義務が課されている危険水域だ。統計上は約9万人の中学校教員がこのゾーンにいることになる。

 

 ただ実際に過労死申請をするのは例年1ケタで、しかも認定されるのはその半分程度だ。松丸弁護士は、潜在的な過労死者数をこう予想する。

 

 「在職中の公立の教員は、年間で約500人が亡くなります。各種統計や自分の経験則を踏まえると、少なくともその10分の1、つまり50人近くは過労死と考えられる。現在、実際に認定されるのはさらにその10分の1です」

 

 夫がその氷山の一角となった工藤祥子さんは、この過小な数の背景にも構造的な要因があると指摘する。

 

 「過労で苦しむ先生が相談するとしたら、学校内なら教頭や校長、校外なら教育委員会や人事委員会になる。つまりその環境をつくっている側なんです。責任を負うべき側が積極的に動いてくれるわけがない。民間の労働基準監督署に当たる指導権限のある第三者機関がないと、本当に困っている先生たちは救えない」

 

 現状では、過労死弁護団全国連絡会議が運営する「過労死110番=☎03(3813)6999」へ連絡するのが最善だ。

 

◆理由のある、悲劇

 

 工藤義男先生の葬儀には、延べ2千人が参列した。当日は、最寄り駅の改札から徒歩5分程度の葬儀場まで、会葬者の列がつながった。午後6時に始まったお通夜が終わったのは、午後10時半ごろだった。

 

 「後日、夫が顧問をしていたサッカー部の生徒が尋ねてきてくれた。彼らが、僕らのせいだって泣くんですよ。夫は部活が大好きで、『いくら疲れていてもあいつらの顔見ると元気が出る』って。でも最後となった練習では、夫は木陰から立ち上がれなかったらしい。生徒たちは、そんな姿を心配していたらしくて」

 

 妻の祥子さんは、泣きながら「あなたたちのせいじゃないよ」「あなたたちが夫の生きがいだったんだよ」と言い聞かせた。

 

 祥子さんの元に届いた教え子や保護者からの手紙も、100通ではきかない。中には工藤さんに憧れ、同じく教員を目指した生徒や、実際に教職に就いた教え子も複数いた。

 

 〈将来は日体大を目指して、先生と同じ体育指導者になりたいです〉

 

 〈いつかはサッカー部の顧問として工藤先生と対戦する日を夢見ていました〉

 

 〈私は今高校の教員をしています。先生の熱心な姿、厳しさ、どの生徒とも親しく接する心の大きさ…。先生のような教師、いや、男を目指して全力で進んで行きたいです〉

 

 教師という仕事を愛し、誇りにしていた夫の思いは、少なからぬ人に届いていた。「たぶん夫が子供たちに一番伝えたかったのは、人生は楽しいんだよというメッセージだったはず」。だからこそ、なおさら思う。

 

 なぜ、こんな人が死ななければならなかったのか。

 

 こんな人が死んでしまう学校現場とは何なのだろうか。

 

 慕ってくれた同僚や夫に憧れて教員になった教え子に、二度と同じことを繰り返させたくない。彼らの人生や夢が守られる、学校にしたい。祥子さんが活動を続ける理由、そして原動力がここにある。

 

 現在、民間を含めて全国で60件もの過労裁判を抱える松丸弁護士も言う。

 

 「これを、熱血先生の美談で終わらせてはならない」

 

 教員の過労死はどれも、明確な理由のある悲劇だ。

 

 働き方改革、ワークライフバランスが世の中でこれほど訴えられているにもかかわらず、先生たちは、なぜこれほど働き過ぎるのか。それには「定額働かせ放題」とも指摘される、先生のみに適用される「給特法」という法律の存在があった。

 

 

【先生の明日】(中)教員は「定額働かせ放題」?

 

2016年に文部科学省が発表した日本の公立中学校における勤務実態調査によると、中学校の約6割、小学校の約3割の先生が、「過労死ライン」と言われる月80時間以上の時間外労働を日常的にこなしている。なぜ、先生はこんなにも働き過ぎるのか。その法的根拠となっているのが、労働基準法の中で先生のみに適用される「給特法」と呼ばれる条項だ。多すぎる業務量も、出退勤管理に対する意識の低さも、いくら残業しようと違法にならない「定額働かせ放題」の法が、下支えしている。

(神奈川新聞・佐藤将人)

 

◆朝7時に来て、夜9時に帰る日常

 

仮にあなたが毎日、朝7時に会社に着いて、夜9時までいるとしよう。休日出勤も当たり前で、完全オフは月に3日あればいい方だ。残業は月80時間超はざらで、100時間を超えることもままある。

 

 本当は、どれだけ働いているかすら知らない。だってタイムカードはないし、いくら残業しても、上司から注意されることもないからだ。そもそもそんなことを意識して仕事をしない。こんな生活が10年、20年と続いている。

 

 これは、会社にいる「めちゃくちゃ働く人」の例ではない。公立の小中学校に「うじゃうじゃいる」、先生たちの姿だ。

 

 神奈川県内の公立中学で教える若手男性教員も、そんな一人だ。大学までサッカーを続け、卒業後、臨時的任用教員として数年間勤務し、採用にこぎつけた。先生の働き方が「ブラック」と言われることは、分かった上でのことだった。

 

 希望通りサッカー部の顧問を務めている。「朝練があるので朝6時半には学校に来て、放課後の部活が終わってから授業準備など自分の仕事をやる。夜9時から10時ごろに学校を出ることが多いですかね」。1人暮らし。帰って洗濯だけはして、後は寝る。

 

 労働基準法では、8時間の勤務で1時間の休憩が義務づけられている。昼食を生徒ととる先生にそんな時間はない。別に自分が特別なわけではない。尊敬する先輩や意欲のある先生は、みんなそうだ。

 

 「もちろん早く帰る先生もいる。若い子が『働き方改革』と言って、すぐに切り上げたりもする。でもそれで、生徒の人生に『お前』という爪痕を残せるのかと思う。そういう先生には任せられないから、結局仕事が回ってくるのは同じ先生たちになる。でも特に若い頃は苦労してでも経験をした方が良いから、頑張っています」

 

◆定額働かせ放題という現実

 

 だが、この教員の給与に振り込まれる「残業代」は基本給の4%、時間にして8時間相当しかない。後は全てがサービス残業となり、法的には「自発的、自主的な勤務」とされる。

 

 根拠となっているのが、給特法と呼ばれる公立の教員のみに適用される労基法だ。正式名称は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」。1971年に制定され72年から施行された。教師は「聖職」であるため、一般の労働者とは性質が違うという考えが成立の論拠となった。4%という「固定残業代」の算出は、先生の平均の時間外労働が月8時間程度だった、66年の調査が元になっている。半世紀以上前の働き方が基準となっているのだ。

 

 現在、中学ではその10倍以上の時間外を記録する先生が6割もいるという時代錯誤はもとより、深刻なのは民間では違法となる長時間労働が、先生には全く適用されないという点だ。

 

 教員の労働問題に詳しい、名古屋大学の内田良准教授(43)は給特法を「定額働かせ放題だ」とした上で、こう指摘する。

 

 「給特法の罪は、職場の時間管理を不要にし、使用者や管理職から残業抑止(労務管理の徹底)の動機付けを奪ったこと」

 

 いくら残業しようと数値化の義務はなく、残業代も増えない。違法ではないから、校長や教育委員会も法的責任を問われない。職務や無駄を「減らす」という発想が抜け落ち、業務は肥大化していく一方だった。

 

 そもそも、公立の学校現場でタイムカードなどにより出退勤管理がされているのは、全体の2割にしか満たない。それも出勤時は記録するのに退勤時は押さない、土日は使わない、という意味不明な形であったり、そもそも教頭から「時間外が80時間を超えないように付けてね」と言われる現実がある。

 

 子供に教育を施す場である学校が、こと労務管理に関しては、ほとんど無法状態なのだ。

 

◆変わらない、変えられない意識

 

 横浜市立中学校のある男性教員は、自分がぎりぎりの状態だということが分かっている。ある朝、学校に向かう途中のコンビニで、体が動かなくなった。長時間労働や少ない休日数だけではない。保護者への対応や研修、市教委への提出物…。常に何かに追われている状況が何年も続き、心も体も休まらない。

 

 「それでも行くしかない。だって、現場に『代わりの先生』はいないから。保護者に気を遣い、教育委員会の目を気にし、休む暇もない。つらくても大変でも我慢して、子供のためと頑張って、それで倒れても、タイムカードもないので過労と認めてもらうのも大変。僕らはまるで、丸腰で戦っているようなもの」

 

 イチ抜けた、とできたらどれだけいいか。ただそうすれば今度は誰かにその負担がいく。教員同士がそんな風に警戒し合っている。現状を変えようと言える空気はない。

 

 内田准教授はその背景をこう指摘する。

 

 「先生たちはブラック企業の社員のように、会社の奴隷ではないんですよね。むしろ誇りを持ち、自らの意志で過酷な仕事をやっている。そうして頑張れてこそ、教師だと。そういう人にいくら働き方を変えた方がいい、意識を変えた方がいい、と言ったところで、その渦の中心にいる人ほど聞く耳を持たない。僕が教員の働き方改革の本丸は職員室だと言っているのは、そのためです」

 

◆法改正で半強制的な改革を

 

 現状に危機感を抱く有志の現職教員が立ち上がり、2017年に「現職審議会(現職審)」を組織した。先生たちの働き方を主導する中央教育審議会(中教審)に対抗する行動だ。記者会見では、以下の五つを問題提起した。①授業準備の時間がない②休憩時間がない③額にして1兆円の不払い残業④部活の顧問の強制⑤労務管理の欠如、だ。

 

 こうしたうねりにも応える形で、同年12月には文科省が「学校における働き方改革に関する緊急対策」を発表。今年1月に同省が示したガイドラインでは、「時間外労働の限度」を月45時間、年間360時間に設定した。

 

 どだい、無理な話だ。

 

 「時間外を減らせというなら、明確にこの業務とこの業務はやめますということをセットにして現場に下ろさないと意味がない。それをせずに、時間外が80時間超の人に今より40時間早く帰れと言うのは、無責任。現場から反発が来るのが当然です」(内田准教授)

 

 単なるお題目になってしまえば、反発どころか関心さえ呼ばないだろう。事実、一連の動きを知らない教員も山ほどいる。

 

 半世紀かけて固定化されてきた長時間労働の習慣を変えるには、法改正を伴わせた半強制的な改革しかないと、内田准教授は訴える。

 

 「民間の労働基準監督署のように、強制力を持って現場介入できる第三者組織が必要。そのためには、まずは教員の働き過ぎが違法とされる法的根拠が必要になる。給特法を廃止して、教員も一般の労働者と同じく長時間労働から守られるようにならないといけない。タイムカードはもちろん、持ち帰り残業を含めた労働時間を正確に可視化することがその前提になる

 

◆先生としての幸せと、大人としての幸せ

 

 現在の学校現場が、そうした「残業なんて関係なく働く」先生によって支えられているのは、厳然たる事実だ。中には教員が天職で早く帰れと言われる方がストレスになる人もいるだろうし、長時間労働の主因とされる部活にしても、それが生きがいだという先生も多い。だが、これだけワークライフバランスが叫ばれる現代において、「良い教師」や「頼れる教師」の必要条件として長時間労働があり続けるとしたら、次代の担い手は確保できるだろうか。

 

 冒頭のサッカー部顧問の教員は、こんなふうに言う。

 

 「どんなに忙しくて自分の時間がなくても、卒業や進級の際には必ず生徒が『先生ありがとう』と言ってくれる。最後のありがとうにだまされて、また大変な1年を頑張ろうと思う。その繰り返しです」

 

 教員という仕事の達成感とやりがいは、やはりやった者にしか分からないと。

 

 教職を目指す人の大半がそうであるように、この教員も子供が大好きだ。現在は独身だが、いつかは結婚し、子供を持ちたい。でも日々の中で、出会いはない。仮にあったとしても、平日はほぼプライベートな時間がなく、土日も取れて半休という自分の仕事を理解してくれるかどうかが不安だ。

 

 「今は自分はそういう状況にないので、子供ができた先輩の仕事を引き受けたりしています。もし自分も結婚して家庭を持ったら、今のような働き方を続けるつもりはない。メリハリを付けてやりたいですね」

 

 男性教員はきっと、友人や仲間に信頼される「良い奴」で、仕事に誇りと使命感を持ち、いつも誰かのためにと頑張れる「良い先生」だ。彼のような教員が、先生としての充実した姿だけではなく、一人の大人としての幸福や人生の楽しさを当たり前に伝えていける教職現場であってこそ、本当の意味で「生徒のため」になるのではないだろうか。

 

 教員の志望者数は、6年連続で減少している。要因は複数あるとしても、先生という仕事に人としての幸せを見いだせない若者が増えているのは、事実だろう。そしてそれは、確実に教育の質の低下につながっていく。

 

 

 

【ただ働きを「献身的」と美化する学校現場 諸悪の根源「給特法」に内田良さんが迫る 2018/6/17

 

教育現場で問題となっている、教員の長時間労働。この問題に早くから取り組んできた名古屋大学大学院准教授(教育社会学)の内田良さんが、新刊「教師のブラック残業~『定額働かせ放題』を強いる給特法とは?!」(学陽書房)を上梓した。公立高の現役教員の斉藤ひでみさん(仮名)との共著だ。

 

今回の著書は、教員の給与を定めた「給特法」をメインテーマに据えた。

 

「過熱した部活動の問題だけを訴えても、思うように教員の働き方改革は進んでいかないという挫折感がありました。給特法の問題は、まだまだ知られていない。世の中に知ってもらうための、手助けになればと思いました」(斉藤さん)

 

これまで教員の働き方についてネット上を中心に啓発活動を続けて来た二人。「改革の輪を職員室、そして学校の外側にいる人たちにも広げていきたい」と訴える。

 

  • 給特法のために教員は「定額働かせ放題」

 

組体操事故など学校のリスクについて研究してきた内田さんは昨年、「ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う」(東洋館出版社)を出版。過熱する部活動の現状から教職員の働き方について考えるうちに、「給特法」の問題にたどり着いた。

 

「部活動の問題を調べた結果、元凶に給特法があると気づきました。給特法は部活動が盛んに行われている中学や高校だけでなく、全ての小中高教員の長時間労働を支えている大きな要因です。教員の働き方は定額働かせ放題となっています」(内田さん)

 

1972年に施行された「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)は、教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないと定めている(第3条第2項)。

 

残業代が支払われない代わりに、教員には毎月、基本給の4%に相当する「教職調整額」が支給されている。

 

しかし、この4%という数字は、1966年に文部省(当時)が行った教員残業時間調査が根拠となっている。その当時の小中学校の教員の平均残業時間は1カ月で約8時間だった。

 

しかし、2016年度の文科省の「勤務実態調査」では、1週間当たりの学内総勤務時間が60時間以上の教諭は、小学校で33.5%、中学校で57.7%に上った。これは過労死の危険ラインとされる月平均80時間以上の残業にあたる。

 

  • 持ち帰り仕事は「自主的」なもの

 

教員の働き方が、いかに「ブラック」か。長時間労働の実態は、最近の調査でも明らかになったわけだが、ここには大きな落とし穴がある。この数字には、持ち帰り仕事の時間は含まれていない。どれだけ働いても、自主的、自発的なものとされている。

 

斉藤さんは、勤務時間を意識し、できるだけ1718時には帰るように心がけているというが、自宅に帰れば授業準備が待っている。教科書だけの授業ではわかりにくいため、独自にプリントを用意。スクリーンに投影する資料も作ると、1時間の授業の準備に2時間〜3時間はかかる。

 

「授業準備は教員のプライドとして、時間をかけたいところです。授業準備は自発的にやってくださいというのではなく、勤務時間の中に一日2時間は授業準備の時間を設けて欲しい」と訴える。

 

内田さんも「教員は自分のプライベートな時間を使ってでも、子どものために一生懸命尽くすことが立派だとされている。ただ働きが献身的と美化される職員室文化がある」と話す。

 

  • 給特法がもたらした問題

 

内田さんは、この給特法が2つの大きな問題をもたらしたと指摘する。1つは、職場の時間管理を不要にしたこと、2つめは使用者や管理職から残業抑止の動機付けを奪ったことだ。

 

「残業時間がたとえ増えても、チェックしていないために分からない。使用者側は、残業代を支払わなくてよいので、『残業代を抑制しなければ』という動機が生まれません。だからこそ、仕事を次々と入れられてしまうんです」(内田さん)

 

給特法では、時間外労働は生徒の実習や学校行事、職員会議、災害の「超勤4項目」に限られると定めている。現実には授業準備や部活動などで長時間労働が生じているが、これらは「教員が自主的に行っている」という扱いになってしまっている。

 

「どんなに残業しても定時以降の時間は、そもそも法律上労働と見なされていない。散々働く教員を横目に、『彼らは好きで残っている』というのは絶対におかしい。これは残業しているのを隠すようなブラック企業よりもひどい状況です。残業そのものがないものとしてみなされているのですから」(内田さん)

 

職員室にも、どこか諦めムードが漂う。斉藤さんの勤務校では、「出退勤時間をしっかり記録するよう」ばかり言われるが、肝心の仕事量削減はない。これまで毎年のように、同僚が倒れる姿を見てきたという。

「教員の仕事は個人によるところが多い。だから実際に倒れるまで、その人がそんなに切羽詰まってたなんて気づかないんです。さらに管理職は時間外については自主的活動という認識でいるから、管理責任も曖昧になりがちです」(斉藤さん)

 

  • 嶋崎量弁護士「教員はもっとわがままになっていい」

 

また、本書には労働問題に詳しい嶋崎量弁護士と松丸正弁護士、それぞれとの対談も盛り込まれた。内田さんは「教育畑ではない専門家の方々から、客観的に教育界の問題点を指摘して欲しかった」と説明する。

内田さんは中でも「教育者である前に労働者。教員はもっとわがままになっていい」という嶋崎弁護士の言葉が印象的だったと話す。

 

「これまで『子どものことを考えてるの?』という殺し文句が、教員の苦しみの声を封殺してきた。そんな教員が、『子どものため』という言葉を取っ払い自分たちの働き方の問題を語り始めたのが、この2年間でした。教育者である前に、権利を主張できるようにするという言葉はその通りだと感じました」(内田さん)

 

また、教員の公務災害申請も多く担当してきた松丸弁護士は「教育が壊れるか、教師の心身の健康が壊れるか。ギリギリのところまで来てしまっている」と指摘した。

 

対談に同席した斉藤さんは「給特法は50年前の実態と変わらない形で残っているが、今は社会状況が違っている」と法改正の必要性を訴える。

 

「現状に即して、給特法の改正や廃止を検討していく必要がある。同時に、教員が労働者の権利を主張することは、子ども、そして社会全体のためになると信じて実践していかないといけないと思っています」

 

  • 給特法改正、「世論の高まり」が不可欠

 

今回の本は、当事者である教員に読んでもらうことを期待しているが、著者の2人は法改正を訴えるには「世論の高まり」も不可欠だと考えている。

 

「先生たち自身は、子どものために頑張っていることを誇りに思うところがあり、そこから逃れられない。時間管理が当たり前になっているところに異常と気づけない状況にもある。だからこそ、保護者や学校の外側にいる周りの人が『教員の働き方はおかしい』と言う必要がある」(内田さん)

 

ツイッターでは今日も、全国の教員が匿名で日々の業務の苦しさや学校の不満を呟いている。斉藤さんが個人で始めた給特法改正を訴える「change.org」(インターネット署名サイト)での署名活動には、611日現在、17000人を超える賛同者が集まった。斉藤さんは訴える。

 

「教員が労働者の権利を主張することは、ひいては子ども、そして社会全体のためになると信じています。特に現場にいる若い先生たちに訴えたい。若い先生が変えていかないとお先真っ暗。おかしいと思ったら、おかしいと言っていい。そう呼びかけたいです」

 

 

 

【教員の長時間労働をうむ「給特法」改正を 現役教員ら32500人分の署名提出 2018/12/4

 

公立教員の時間外勤務手当などを支給しないと定めている「給特法」の改正を求めて、現役公立教員と教育学者、過労死遺族などが124日、32500人分の署名を文科省と厚労省に提出した。

提出後に東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見した中部地方の高校教員、斉藤ひでみさん(仮名・30代男性)は「毎年のように同僚が倒れていくのを目の当たりにしてきた。現場の思いを国に知ってもらい、社会全体でこの問題を考えていただきたい」と訴えた。

 

  • 「原則として時間外勤務を命じない」給特法

1972年に施行された「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)により、公立学校の教員には時間外勤務手当と休日勤務手当が支払われないことになっている。その代わり、基本給の4%に当たる「教職調整額」が支給されている。

「原則として時間外勤務を命じない」ことになっているが、正規の時間を超えて勤務させることができるのは、(1)生徒の実習(2)学校行事(3)職員会議(4)災害など緊急事態からなる「超勤4項目」に限るとされている。

斉藤さんは今年2月末から「change.org」(インターネット署名サイト)で給特法改正を訴える署名活動を始めた。「教員の長時間労働の根源は給特法」と主張し、やらざるを得ない残業は残業と認める▽残業には労基法で定められた残業代を支払う▽残業時間に上限を設定するーーなどを求めていた。

 

  • 「中教審は給特法の問題、進めていない」

学校における教員の働き方改革をめぐっては、現在、中央教育審議会(中教審)の特別部会で議論が行われている。1113日に開かれた中教審では、答申骨子案が出されたが、給特法に関する具体的な記述はなかった。

共栄大学の藤田英典教授は「中教審の審議自体が、この給特法の問題について十分な対応を進めているようには考えられない」と指摘する。

「この20年で構造的に業務が膨れ、残業しないわけにはいかない状態。加えて、世間からは『教師は献身的に尽くして当たり前』という見方もある。それを支えているのが、給特法」と話し、中教審で検討されている変形労働時間制の導入では、問題の本質的な改善にはならないと懸念した。

日本大学の広田照幸教授も「中教審は今までの枠組みの延長でしか議論しておらず、抜本的な解決ができない」と話した。

 

 

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