公正・正直な高知市政を 財政面から検証する
昨年末にむけ、高知民報に10回連載した高知市政と党議員団の活動についての拙稿。
行財政分析、政策づくりなどをする上での視点など… 「世代継承」も含めて学習的な内容を意識で書いたもの。
①突然「財政が急速に悪化」宣言
②1年間で22億円収支悪化の真相
③大局的な流れは「大きく改善」
④中学校給食の完全実施への足取り
⑤子どもの医療費無料化拡充
⑥水道料値上げストップ
⑦下水道値上げで大幅黒字
⑧高すぎる国保料
⑨行き過ぎた人員削減
⑩「○○ありき」は「暮らしの冷たさ」と同根
① 突然「財政が急速に悪化」宣言
岡﨑誠也高知市長は、今年2月26日の記者会見で、16年度の実質単年度収支が、前年の約8億円の黒字から、約14億円の赤字に転換したことについて、子どもの医療費無料化、中学校給食などにより、経常支出が増えているとのべ、あたかも福祉の充実が原因であるかのような発言をしましたが、財政危機の原因としては、地方交付税が伸びていない、消費税増額が先送りなどに触れ、「財政が急速に悪くなっている」「収入が構造的にかなり変わった」と強調しました。つい最近ので「財政危機は乗り越えた」と言って、赤字必至の無駄な「道の駅」構想に32億円も投じようとしてきただけに、突然の「財政危機宣言」とも言える発言に、驚いたり、とまどったりした職員、市民が多数いたものと思われます。
この報に触れたとき、09年に、市長が突然、「このままでは夕張になる」と家庭ごみ収集有料化と固定資産税増を打ち出したことが頭によぎりました。当時、前市長の大型プロジェクトの推進により、財政が厳しい状態にありましたが、赤字規模が、自治体の年間予算の7年分もある夕張市と、市の試算でも年予算の4%ほどの財源不足が生じるという高知市ではレベルがまるで違う話しでした。負担増とともに、「ウソで市民を脅かす」というその手法自体に激しい怒りを覚えたことを思い出します。この時も財政論としては、高知市の人的経費〔人件費+物件費。物件費は、非常勤職員の賃金と業務の民間委託費など人的経費が約6割を占める。地方財政白書より〕は、中核市のトップクラスの低さであること、借金返済のピーク時を過ぎれば、急速に財政が改善するため、財政計画を借金返済がピークとなる5年間でなく、10年間で設定すれば、市民負担は回避できることを明らかにしたことが、市民運動の大きな運動の支えとなり、負担増はどちらも中止に追い込むことができました。
財政問題を使って市民に脅すやり方は、「道の駅」構想やオーテピア西敷地問題に見られる特定業者ありきで行政をゆがめていることは、市民無視という点でメダルの表裏の関係にあることを強く指摘しておきます。
この岡崎市長の主張を検証してみます。結論から言えば「ノー」です。「収入が構造的にかなり変わった」のが事実なら、全国的に大問題になっているはずです。ところが、知事会、市長会などによる「地方財政対策等についての共同声明」では「地方の一般財源総額について、、「地方の一般財源総額について、前年度を上回る62.1兆円を確保」「 社会保障関係の地方単独事業費の増に対応して歳出を確保したことは、地方六団体の提言に沿ったものであり評価する」〔18年度〕と、「収入構造が変わった」「大問題だ」という指摘はどこにもでてきません。19年度の声明も同様です。では、この急激な「財政の悪化」とは、どういうことだったのでしょう。市長の触れている「実質単年度収支」とは、単年度収支に地方債の繰り上げ償還額と財政調整基金への積立金を加え、積立金取り崩し額を差し引いたものです。「単年度収支」なら、厳しさを演出するために「財政調整基金」(市の基金)を積み立てたり、借金を早めに返したり(繰上償還)といった”やりくり”が可能ですが、今回はそういうものではありませんでした。
②1年間で22億円収支悪化の真相
実質単年度収支が15年度の黒字8億円から、16年度は赤字14億円と、1年間で22億円も収支か悪化していますが、その中身を検証したいと思います。
まず、自治体の予算案はどう組み立てられていくのか、スケッチ的に見てみます。大元は、国の地方財政計画に沿って策定されます。税収、地方交付税交付金、生活保護費や義務教育などの国庫支出金・負担金、地方債などによる歳入規模と、社会保障費、防災対策など投資的経費、人件費などの歳出規模が一致するよう、毎年、景気判断などにもとづき立案されます。全国的に税収が伸びれば、その見合いとして地方交付税は減少〔地方税収の75%が基準財政収入額として計算され、標準的なサービスをすべての自治体で行えるように算出した基準財政需要額との差が地方交付税として交付される仕組み〕します。また、その逆もあります。
よって、税収の予測が大きく違うと、地方財源に穴があくことになります。国には赤字国債を発行するなど、一般財源〔何にでも使える財源〕を確保する手段がありますが、地方自治体に、そうした手立てが限定的で、基金で対応するしかありません。
そこで16年度の政府予算が問題となってきます。安倍政権は、16年度の当初予算案を立てるにあたって、経済成長と財政再建という2つの課題をともに「実行」しているように見せるために、極めて高い経済成長率を設定し、税収増を演出し、赤字国債の発行を減少できるように見せかけたのです。この経済成長率は、多くの民間研究所の試算より極めて高く「楽観過ぎる」と批判されていたものです。結果は、懸念したとおり予算よりも税収が1.7兆円も下振れをしました。この結果、全国の自治体で、地方消費税収入、株の配当と譲渡益にかかる税収を原資とした地方への交付金が大きく減少しました。
高知市でも予算比で、地方消費税収入10.5億円、株式の利益に関する交付金3.5億円が不足しました。政府の政治的思惑をもった大甘の経済予測と、無批判に追随して予算案を立てた結果と言えます。これは16年度の特殊事業であり、2017年度は、実質単年度収支は、1.1億円の黒字にもどっています。よって16年度をベースに「収入構造がかわった」と今後の財政見通しを想定するのはフェアではありません。
もう一つは、手の込んだ財政操作です。この数字は「決算カード」などホームページ上の公表資料には出てきません。15年度は、黒字でしたが、支出を先送りする退職手当債を2.5億円発行し、黒字をかさ上げしました。一方、16年度は、赤字なのに、当初予算で3.8億円発行予定の退職手当債の発行を見送りました。さらに税収減に対して発行可能な減収対策債約4億円〔75%が交付税参入。発行しなくても後年度に清算される〕の発行を見送り、基金取り崩して対応し赤字幅を拡大しました。この2つを発行していれば赤字幅は6億円程度であり、15-16年度の差は、政府に税収の見込み違いによる14億円と一致します。
③大局的な流れは「大きく改善」
自治体の財政は、単年度の黒字、赤字だけでは判断できません。高知市の財政状況がどう変化しているのか、財政危機が言われ財政再建プランが立てられた08年度、5年間の再建プランの最終年の13年度、最新の17年度決算を比較して考えたいと思います。
まず、将来負担比率。簡単に言うと借金残高と今後発生する負担金、退職金の支払いなどの額〔将来負担額〕から、基金や地方交付税に参入される借金返済の財政支援分などの財源〔充当財源〕を差し引いた正味の負担額を、自治体の標準的な財政規模で除したものが将来負担率で、350%以上になれば「財政健全化計画」の策定が義務付けられます。
08年度は283.3%と極めて高めでしたが、13年度には、173.9%と急激に改善しています。将来負担比率を計算する分母の標準財政規模には大きな変動がないので、分子額を比べると662億円、年132億円の改善です。高知市は、この間、地方債や公社の負債などを計画以上に削減、取り崩す予定の基金を逆に積み増しするなど、財政再建ブランの目標を、166億円超過達成していることも党市議団の質問で、市に認めさせました。これが子どもの医療費無料化の拡充、中学校給食実現への大きな後押しとなりました。将来負担率は、13年度と17年度の非核で9.5%、額にして69億円とペースは落ちています改善を続けています。
借金の返済が進み地方債残高が減少したことで、毎年に支出に占める公債費〔借金返済〕も減少。08年度と13年度では年70-80億円減り、実質公債費比率〔借金返済額から、交付税に算入される借金返済の財政支援分を差し引いて計算〕も減少しており、暮らしの応援する予算を増やせる可能性を示しています。
職員数は財政再建プラン中、大きく削減され、防災事業の遅延やケースワーカー不足が深刻化するなど問題になりましたが、徐々に是正されてきています。08年度と17年度では職員給与は、職員の若返りもあり15億円減となっていますが、物件費は29億円増と、民間委託や非常勤職員などの増加が想定されます。
注目したいのが普通建設事業費。17年度の規模は、08年度に比べ144億円、13年度に比べ168億円も多く、大きく膨らんだ新庁舎建設費用などもあり、総額では2倍以上と急拡大しています。今後、毎年の借金返済額の増加が懸念されます。だからこそ、暮らしを守る予算をしっかり確保した上で、真に必要な投資事業に絞って投資額を身の丈にあったものにしていく運営を確立させることが極めて大事になっています。
④中学校給食の完全実施への足取り
この9月に高知市立の全中学校で念願の給食が開始され、子どもたちの喜ぶ顔がニュースで流れました。
中学校給食は、実は松尾全市長が公約で打ち出した94年から8年間様々議論がなされ、2校が親子方式、他は業者弁当の販売で決着を見てから長らく市政課題にはなってきませんでした。再スタートは2010年6月県議会で、党県議団が、中学校給食の遅れを指摘し「健康と学びの源泉として、県としても推進を」と取り上げ、その声が議会全体広がったこと、それを受けて2011年11月の知事選では尾崎知事が「給食サービスの拡充」を公約、同時に実施された高知市長選で、共産党公認候補が中学校給食の実施を公約して奮闘したことがきっかけです。四国の他の県都は100%実施に対し、高知市は17%〔対生徒比率〕。その遅れた状況が市民の共通認識となり、子どもの貧困問題ともあいまって、実施を求める声が広がりました。同年12月、党県議団の予算要望の席で尾崎知事は中学校給食について「全国最低クラスというのはさびしい。前進させたい」と述べ、高知市とも協議することを約束しました。
この後、県下の自治体が次々と実施を表明する中、高知市だけが「財政が厳しい」〔市長〕と否定的な態度を続けました。給食推進の立場の教育長は「昼食アンケート」を実施し、大多数が給食を望んでいることを明白にさせましたが、「財政は厳しい。実施できる段階ではない」との市の方針のもと「検討委員会」すら立ち上げられない状況が続きました。
転機は、2014年3月議会質問です。党市議団は、財政再建プランの到達点を分析。5年間で166億円も目標を大きく超えて財政改善していること、学校耐震化の目処もたったことを示し「実施できない理由はない」と迫りました。市長は「財政が厳しい」との言い逃れができず、「実施については、実施方向など具体的な検討が必要」「議会を含めて議論をいただく」と前向きな答弁を引き出しました。この変化を捉え、共産党は市民と力をあわせ実施をもとめる署名を1万3千筆集め、6月議会直前に提出。市長に「1万を超える方々からの思いが短期間で集まっており、要望の重さを感じる」と答弁させたことが実現への決定打となりました。15年3月議会で、与党会派の議員は本会議質問の中で「共産党の市議団の皆さんがいなかったら,実現しなかったかもしれない」「敬意を申し上げる」と評価するほどの奮闘でした。県市議団の連携、論戦と市民運動の勝利といえます。
⑤子どもの医療費無料化拡充
財政論がなぜ大事か。財政再建プラン中も、高知市は毎年度、20億円や30億円とかの「収支不足となる」と言って、財政の厳しさを強調してきました。
収支不足というの「支出に対し収入がたらない」ということですが、基金を予定より積み上げたり、借金を繰り上げて返したり、公共事業や社会保障費を多めに見積るなどをすれば、も操作できる数字です。
しかも、地方財政の詳しい仕組み、実態を知っているのは財政担当など一部の職員だけです。多くの職員は、市長が「財政が厳しい」と言い、実際に予算の査定で各部・課の歳出に厳しい枠をはめてきているので、市全体の財政は実際には好転していても、各部・課にとっては「金がない」というのは、ある意味事実です。市民の要望に冷たい対応をとらざるを得ない「根拠」がここにあります。
だからこそ財政改善の実態を、議会で認めさせたことは、各部・課の職員に「市民要求に応える財源はある」という強烈なメッセージとなり、市役所内部の世論を変えていく力となります。市民の側も、実施可能であることに確信を持って運動を進めることができます。中学給食実現は、その典型の1つです。
もう一つ気を付けたいのは、自治体財政は、健全〔黒字が多い〕なほど良い、とは言えないことです。家庭の場合は、定年や病気・失業の心配もありますから、借金はできるだけなくし、将来や子どもたちのために貯金をしておきたい、と考える方が多いと思いますが、自治体には、定年、寿命はありません。毎年の収入〔住民の負担〕をもとに、その年に住んでいる住民に行政サービスを提供する、という仕組みです。学校や道路などの建設は、あえて借金をして進め、少しずつ返すことで、今後に利用する住民にも公平に負担をしてもう「世代間の負担の公平」という考えで運営されています。
財政再建プランに対して、大きく目標を超えて改善しているというのは、この間、市民は、本来受けるべき行政サービスを削られ、過度に負担を強いられたということです。
市議会では、この問題を提起し、「一方的に我慢をさせていることは、『世代間の負担の公平』という行政運営の基本からみて問題がある」と指摘し、市の調査でも強い要望となっている子どもの医療費無料化の小学校卒業までの実施をもとめました。その論理は否定できず、市長も「順次可能なところから政策を展開していくということで…慎重な財政運営の中で検討しなければなりません」、健康福祉部長は「乳幼児医療につきましても拡充の時期も含め検討されるべき」と、検討するのは実施「時期」であり、「できない」と言わさず、実施に踏み出すこと事実上認めさせました。そして2016年10月から実現しました。次は、中学校卒業までの拡充です。
⑥水道料値上げストップ
「財政が厳しい」という「理屈」は、市民の願いを拒む時だけでなく、市民に負担を押し付けるために使われます。
水道料の値上げについて、市は、昨年は、収支が赤字に転落するので、「早ければ19年度に10-15%の値上げが必要」と主張していましたが、党市議団の論戦で、値上げの提案自体を5年間先送りさせる快挙を実現しています。
市の主張の問題点の第一は、水道施設の耐震工事に費用のうち、政府が、“利用者負担になじまなく、一般会計からの繰入れるべき”としている20億円分が水道会計に入れられておらず、経営悪化の要因となっていることです。市が自らの責任をサボって、市民に負担を押しつけるひどい対応です。第二は、将来の使用水量の減少見込みが「過大」で、「経営悪化」を演出していた問題です。市が前提とした毎年45万㎥ずつの利用量減少は、人口減の影響だけではなく、節水型家電の普及などで一人あたりの利用量も大きく減少する想定となっています。2000年の実績436㍑が、20年後には296㍑まで32%減少するという想定です。1%利用量が減れば8千万円の減収となることから、「減少予測」のとり方で、経営状況は大きく変わります。
17年6月議会で示された16年度の決算見込みで、予測が大きく外れていることが明らかになりました。15年度の利用量は3684万㎥で、16年度予測は3594万㎥と、90万㎥減ると予測してましたが、実際は、3万㎥の減少にとどまり、純利益が、予算より4億円強上回りました。こうした問題点を市議団が追求した結果、今年度から、耐震工事への一般会計からの繰り入れがルールどおりに改善され、使用水量減のよる減収予測も見直され、値上げは2025年度に繰り延べられたのです。
水道料金には、もう一つ大きな問題があります。仁淀川取水の協力金としていの町へ年約7500万円が、未来永劫支払われることとなっており、それが水道料金に転嫁されています。中内知事時代に政治的に決められた、覚書によるもので、党市議団は一貫していの町と協議をし、その解消を求めていますが、そもそも同取水は、人口増、企業誘致など地域活性化のための取水であり、まちづくりのための経費として、一般会計で見るべき性格のものです。水道料に転嫁された協力金は、20年間で18億円にもなっています。
第三の問題は、弱者への冷たい姿勢です。低所得者には、税金でも非課税措置があり、国保や介護保険料でも軽減制度があります。しかし、水道水は生きていくのに不可欠なものであるにも関わらず軽減がありません。広島市では低所得者、一人親、障害者世帯などへの減免制度を設けています。市議団の減免制度導入を求める質問に、市長は「サービスの対価であり、低所得者対策は考えていない」と冷たく突き放しました。この点をたたすことも来年の市議選の争点の1つです。
⑦下水道値上げで大幅黒字
昨年12月議会で下水道使用料の16%値上げ案〔毎年5億3千万円の負担増〕が強行されました。市が値上げの「理由」としたのは、人口減で使用量が減少し収入が減少する、施設の老朽化で、今後、維持管理費の増加する、そのもとで累積赤字21.8億円〔17年度〕も解消しなくてはならない、ということでした。
これに対して、党市議団は、大幅黒字を生む計画であり、収益減少が過大、2年後の汚泥処理費の減少を反映していないとなど指摘し反対を貫きましたが、3月議会に示された下水道事業の予算書で、指摘の正しさが証明されました。何と、計画より2億円以上も増収の7億4千万円、黒字は計画の2倍の4億円となっているのです。
値上げの「理由」の1つ、使用量は、上水道とリンクしているので前回説明した通りです。減収予測過大です。2つめの維持管理費の増加も、実態と違っていました。今年度は逆に昨年と比べ2億円近く減少しています。3つめのコスト削減とは、下水道処理場から出る汚泥を利用した消化ガス発電事業が高須浄化センターで開始され、売電収入によって、市負担が1億数千万円減少します。
想定を超える黒字と売電益による負担金の減少により、昨年3月の経営審議会答申では、累積赤字の解消は「17.7%の値上げ幅で2027年解消」と10年計画だったものが、実際には半分の5年間、22年度半ばには達成し、その後は、黒字がどんどん積み上げることになります。
そもそも大幅値上げを選択するべきではありませんでした。下水道事業は、大枠としては、雨水処理分は公費でまかない、トイレなど汚水処理は利用料負担を基本としています。単年度の汚水分の赤字解消には、2.8億円の収入増ですみます、流域下水道のコスト削減を計算に入れれば、不足額は1億3千万前後にまで圧縮されます。値上げは数%4で済みます。さらにその不足分も、下水が利用できる地域で下水道に接続している率〔水洗化率〕が、中核市で最低〔中核市平均94.7%、高知市84.1%。13年度〕だからで、中核市平均の水洗化率なら約4億円の増収となり、値上げなしで黒字になります。低い水洗化率という市の努力不足こそ赤字の原因です。
高すぎる下水道料金を抑えるために、全国の多くの自治体が税金を投入しています。高知市は、値上げ前でも国が負担の目安とする料金基準〔1㎥あたりの処理経費150円〕を超えており、市民の生活実態を考えれば、これ以上の負担増は避けるのが行政の責務です。
今後、大幅値上げの負担改善、特に低所得者、子育て世帯の減免制度の早期導入が求められています。
⑧高すぎる国保料
高すぎる国保が市民生活を直撃しています。真の原因は、国の貧困な社会保障制度にあります。医療・介護など社会保険制度は、負担上限額があるため、富裕層はほとんど負担しておらず、極めて逆進性が強い(図)のですが、その中でも、国保加入者は、年金生活者や非正規の労働者が多く、低収入である一方、高齢者が多く医療給付が多いという「構造的問題」を抱えています。その解決には、公費負担を増やすしかありません。全国知事会も1兆円の公費投入を要望し、3400億円の財政措置がとられましたが、またまだ足りていません。知事も、党県議団の追及に、さらに「政策提言していく」と答弁しています。
この高すぎる国保料問題でも、市の姿勢は大きな問題を持っています。高知市は、45億円の国保基金〔これ自体が保険料取りすぎの結果〕があることを「理由」に、市の独自減免制度〔現在は廃止〕による収入減と子どもの医療費窓無料化のペナルティ分対策として、市の一般会計から国保会計に毎年繰り入れていた約4億円の繰り入れを02年にストップしたのです。さらに低所得者や高齢者の多い自治体を支援するために92年に国が創設した「財政安定化支援事業」では、基準額の8割(交付税措置分)の繰り入れにとどめ、自治体独自負担の2割分の繰り入れを一貫してサボっていました。本来繰り入れるべき財源の不足額は、およそ60億円にもなります。
党市議団の粘り強い追及や国保署名など市民運動の力で、2013年度から「単独事業のペナルティ分」「財政安定化支援事業の市負担分」の繰り入れを実施させることができました。しかし、サボってきた繰り入れ分はそのままで、市民に犠牲を押し付けたことをまったく反省していません。党市議団は「財政再建が完了した、というなら、さかのぼって実施せよ」と粘り強く追及しています。これは、特別な措置ではなく、行政として果たすべき当然の責任を果たさせる取り組みです。
国保には、様々な制度矛盾があります。保険料を支払うと、所得が生活保護基準を下回る場合、介護保険では、この矛盾を解消するため保険料を軽減する制度がありますが、国保にはありません。そのため全国の約3分の1の自治体が独自に対策をとっていますが、高知市は「国において処理すべき問題」との冷たい態度です。また、国保には均等割と言って世帯人数が増えると保険料が増えるという他の医療保険にはない問題があります。政府は盛んに「少子化対策」を口にしますが、子どもの数が増えるとペナルティのように保険料が高くなるのですから、その改善は急務です。全国的に独自に減免措置をとっている自治体も存在します。この改善も、来年の統一地方選、参院選にむけての大きな課題の1つです。
⑨行き過ぎた人員削減
岡崎市政は、大型事業が招いた財政危機に対し、市民負担増とともに、職員数が多いとして、「中核市平均で住民130人あたり1人の職員」にするために、大幅な職員削減、職員犠牲を強行しました。その結果、職員数は3町村と合併し、面積も課題も増えたにもかかわらず、合併前より200人も減少(13年度)し、防災事業の遅れ、福祉部門の人手不足、長期病休の増加など、市民サービスが低下に直結する由々しき事態が多発しました。こうした事態を招いた市の職員削減方針のどこに、実態を無視した虚構があったのかを見ていきます。
正職員を減らしても、その代替として臨時職員、外部委託(ともに「物件費」の項目)をそれ以上に増やせば、職員数は少なくなっても人的経費は増大します。正確な評価には人件費と物件費を合わせて判断する必要があります。高知市の人的経費(人件費・物件費)は、財政再建プラン以前に、すでに「中核市平均」より33億円(住民一人あたりの費用を人口で換算)も低いものでした。市が総務省に提出している「市町村財政比較表」にも、「人件費・物件費等の状況」は「類似団体に比べ低い」と“自白”しています。無駄な委託等が少ないのです。
では、正規職員数はどうか。中核市は20万人以上、50万人未満の規模の自治体ですが、面積や地理的条件、住民の社会的経済的状況には大きな違いがあります。「中核市平均」という削減目標は、この違いを無視した暴論です。高知市は、中核市平均より、面積が広く、人口密度も半分しかなく、支所の配置など行政コストが高くなる構造となっています。また、低所得者層が多く、ケースワーカーなど福祉関係の職員を多くなる、女性の就業率が高く保育士も多数配置されています。しかも、こうした地域特性による行政コストの増加に対しては、国の制度として一定の財政措置があることも無視しています。
具体的な実態はどうか。同規模、同じ行政サービスを実施している他自治体との比較で、職員数が多いのは、福祉・保育などを担当する民生部門と、ゴミ行政等を担う衛生部門です。
民生部門は、マンパワー不足が以前から問題となっており、「現状以上の職員配置が必要」(他健康福祉部長)な状態です。ゴミ収集と清掃工場運営が直営であることから、職員数は多いのですが、ゴミ処理費用は中核市6番目の低さです。住民参加による資源ゴミの分別収集を確立していること、清掃工場を高い専門性を持つ職員がメーカー任せでなく効率的な運営に努力している結果です。たとえは、国に設置を強制させられた清掃工場の灰溶融炉を、職員が「不要」と判断して撤去し、7億円近い収支改善も実現しています。「先進的な取り組みが現場の職員から出されて実現できたことは大きな意義」(環境部長)を持つもので、公務における効率性とは何かを示す典型例と言えます。
日本共産党の粘り強い論戦の結果、新たな「定数管理計画」(2015年度作成)は「必要な部署に必要な人材を確保し、市民サービスを充実させることを目的」(総務部長答弁)としたもの是正され、ケースワーカーの配置、保育士の採用などで改善が進み始めています。
行政がゆがめられる時、恣意的な数字、説明が飛び交います。そのチェックは大事なたたかいです。
⑩「○○ありき」は「暮らしの冷たさ」と同根
連載では、財政論から、高知市政の特徴をみてきました。
「夕張になる」という威し、毎年「収支不足」を主張しながら、大幅な財政改善を隠していた問題、「歳入構造が変わった」という偽りの説明。「中核市平均」の職員数という実態を無視した数字での職員削減・行政サービスの低下の強行。それらに共通するのは、市政の主人公である市民に、正確な情報を提供せずに、市民をないがしろにする姿です。
それは市民の暮らしにかかわる問題でも共通しています。高すぎる国保料は、自公政治の責任に加え、厚労省でさえ一般会計から繰り入れるべきとしている財源を約60億円も繰り入れてない問題。水道料では、耐震工事にかかる一般会計からの繰り入れが20億円も不足していたことや仁淀川取水協力金18億円の水道料金に転嫁している問題。下水道料金も、前提となる汚水処理計画を機会にはからず内部で決め、大幅値上げ強行で、巨額の黒字を積み上げようとしていることなど、行政のルールから行っても、当然やるべきこともせずに、「赤字だ」「経営難だ」と言って負担を押し付けてきました。
こうしたことがまかり通るのは、市議会で、日本共産党以外の会派が、市長の与党として、容認しているからです。そうした中で、中学校給食の完全実施、小学校卒業までの医療費の無償化、学校へのエアコン設置の決定など、議会での論戦と、市民の運動で、市政を前向きに動かしたことは、今後の市政にとって、大きな財産となっています。
この間、「特定勢力・特定業者ありき」の市政運営が大きな問題となりました。市民無視では、暮らしの問題と根っこは同じです。
特定業者の所有地に、都市計画マスタープランを改ざんして「道の駅」を作ろうとして構想。道のないところに「道の駅」を30億円以上かけて作ろうとした構想は、全国放送でも取り上げられるほど酷いもので、市議会の論戦、地元の反対で白紙撤回となっています。また、同じ特定業者の所有地に産業団地を建設――県と市が財政負担を折半する仕組みを無視し、あえて市単独でやろうとする無理筋な計画で失敗に終わりました。
そして、オーテピア〔県市合築図書館〕西敷地問題。市民の声を無視し、幾重にもルールを蹂躙し「特定業者ありき」で高層賃貸マンション建設に暴走…。財政計画のずさんさ、公認会計士から太鼓判をもらったかのようなウソの説明など次々と問題が明らかになる中、予定していた12月議会への定期借地権の議案提出が出来ない状況にまで追い詰めています。あまりのひどさに、市議会の保守会派からも反対の行動が生まれたことは、新しい特徴であり、市民との共同の広がりを示したものといえます。
公正・正直な市政を築くことと、切実な暮らし願いに応える市政を築くことを一体です。そのたたかいの要とし、市政を動かす日本共産党市議団の役割はますます重要になっていることを強調し、連載を終わります。
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