自治体戦略2040 上から目線は大きなお世話
「平成の大合併」の頓挫、大失敗〔ひろくなりすぎて非効率となり、また周辺部の急速な人口減から、支所設置費用など「合併特例」終了による財政措置の7割を手当て゛ざるを得ない始末〕のあと、担当ポストの維持のためか、定住自立圏とか、連携中枢都市圏とか、わけのわからない実効性がほとんどない構想を打ち出し、今度は、「消滅自治体」をショックドクトリンとした「自治体戦略2040」・・・・
上から、スキームをつくって押し付けてもうまくいかないのは「平成の大合併」でまなぶべき。しかも、この構想・・・安倍政権が推し進める「地域創生」={ひと・まち・しごと創生総合戦略}が、まったく効果がないことを前提としていて、政府としての統一性なし。
地域のことは地域の人と自治体が知恵と力をあわせ進め、国はそれを支援すればよい。なお高知県は、人口400人の大川村で「安心して住み続けられる」仕組みづくりに、県行政の課題として共同をすすめている。
チョコチョコ質問の来るので、資料として・・・
【2040年問題 地方の自主性を尊重せよ 西日本新聞 2018年07月08日】
【2040年と町村の力 東京大学名誉教授大森彌 2018/11/28 全国町村長会大会メッセージ】
【自治体戦略2040構想研究会報告書の概要と課題 角田英昭(自治体問題研究所)2018.7】
【自治体戦略2040構想研究会第二次報告及び第32次地方制度調査会での審議についての意見書
2018年10月24日 日本弁護士連合会】
【2040年問題 地方の自主性を尊重せよ 西日本新聞 2018年07月08日】高齢化がピークを迎え、人手不足も深刻化するとされる「2040年問題」は地方にとっても待ったなしの課題である。 地方行財政制度を検討する第32次地方制度調査会(地制調)が設置され、2040年問題に対応する地方自治の在り方を検討することになった。
そこで注文したい。人口減や高齢化が進むからといって、地域を放棄するようなことを地方に強いてはならない。また、地方はそれぞれ独自の地域事情を抱えている。国が一律に方向を決めるのではなく、あくまで地方が自主的に決める分権的制度を構築したい。
2040年とはどんな年か。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、人口は1億1091万人で15年国勢調査より1618万人も減る。団塊ジュニア世代が65歳以上になり、高齢者数は3920万人と534万人も膨らむ。逆に15~64歳の働き手世代は5977万人で1751万人も減る。
厳しい数字が並ぶ。地方でも9割以上の市町村で人口減が見込まれる。人口減は税収減にもつながる。
有識者による総務省の「自治体戦略2040構想研究会」は「このままでは住民の暮らしと都市機能を保てなくなる」と指摘した。危機感は共有したい。
地制調はこの研究会と、小規模市町村の議員のなり手不足対策を検討した同省の「町村議会のあり方に関する研究会」による二つの報告書をたたき台に議論する。ただし、両報告書とも地方側の評価は必ずしも高くないことに留意すべきだ。
2040構想研究会は「個々の市町村が全分野を手がけるフルセット主義を脱却する」とうたい、複数の市町村で構成する「圏域」を行政主体として法制化し、連携して行政サービスを担う考え方を打ち出した。
しかし圏域内の中心都市に機能が集約され、周辺の衰退を加速したり住民との距離感が広がったりする懸念が付きまとう。既存の「連携中枢都市圏」との違いはどこにあるのだろうか。
地方議会の研究会は「多数参画型」と「集中専門型」-という二つの新たな形態を提案し、現行制度を含めて自治体が選ぶとした。この報告書にも「国が選択肢を示す手法は集権的」など反発が広がっている。
地制調は有識者、国会議員、地方関係者の計30人で構成する。初会合で全国町村会長の荒木泰臣熊本県嘉島町長は「押し付けでなく、選択可能な制度を作り、自治体が主体性を持って選択できるようにすることが重要だ」と述べた。全く同感だ。確かな地方の将来像づくりへ徹底的な論議を望みたい。
【2040年と町村の力 東京大学名誉教授大森彌 2018/11/28 全国町村長会大会メッセージ】「災害は忘れた頃にやってくる」といいますが、このところ災害は忘れる前に、あるいは忘れる暇もなくやってきています。全国いたる所に被災をされた方がいらっしゃいます。一日も早く安らかな日々になりますよう、切に願っております。
さて、今日は15 分の応援メッセージということで、十分言い尽くせるかどうか分かりませんが、二、三申し上げたいと思います。
今は、どなたでも枕詞のように「人口減少」「人口減少時代を迎えて」とおっしゃいます。日本はこの1 0 0 年の間に人口が増え続け、特に戦後だけで50 0 0 万人以上も増え、2 0 0 8 年には1 億2 8 0 8 万人となりました。この狭い日本列島に、1 億人以上の人が、この豊かさで暮らせるようになったことは素晴らしいことではありますが、これ以上増え続けたらどうなるか、ということも心配でした。ですから、私は、「人口増加が止まった」「ピークを打った」と聞いたとき、ほっとしたのです。いつまでも増え続けるものではない、と思っていたからです。
しかし、今度は人口が1 0 0 年前と同じような水準まで減っていくという見通しが出てまいりました。あまり急激に減り続けると、今まで人口増加の時代に築いてきた、ものの考え方・やり方がついていかれなくなります。ゆっくりと進むのならよいのですが、現実は相当なスピードで減っていて、恐らくは50 0 0 万人を切るのではないか、という見通しです。しかも、その時点での高齢化率は約40 % で、とても社会保障制度はもたないのではないかと危惧されます。社会保障制度は、人々の安心と暮らしを支える柱ですから、その行方が心配になります。
我が国の人口は今後しばらくこのまま減り続けることになります。いつの段階でこれに歯止めがかかって、穏やかな水準となるのかは分かりません。国も、はっきりと分かっているわけではないと思います。
しかし、人口減少は確かに起こっていますので、本日は担当大臣がお見えでございますが、「まち・ひと・しごと創生法」という法律が制定されました。この法律は人口政策法であり、戦後初めて明確に「人口減少に歯止めをかける」という目標が書かれています。この法律を廃止しない限り、国と自治体は力を合わせて人口減少に歯止めを効かせる政策に取り組まざるを得ません。しかし、それは、数十年単位、もう少し言うと半世紀以上に及ぶ努力なしでは実現しないと思います。
人口減少をもたらした要因は分かっているのです。未婚化と晩婚化と出生児数の減少です。せっかく結婚しても、第2 子、3 子が生まれにくいのです。このように原因は分かっていますので、手を打てないことはありませんが、決め手や奇策と呼べるものがないのです。ですから、これから半世紀に渡って、国と自治体が辛抱強く、出生率を高める政策を頑張ってやり続ける以外にないのです。これは、そう簡単な話ではないと思います。私の孫、ひ孫の時代に、日本はどうなっているのだろうと心配になります。さて、このところ急速に2 0 4 0 年問題が浮上しておりますので、これについて少しお話したいと思います。2 0 4 0 年問題について、最初に大きな問題提起をしましたのは、2 0 1 3 年12 月の中央公論に掲載された「2 0 4 0 年、地方消滅」という衝撃的な論文でした。いわゆる「増田レポート」です。増田さんは元岩手県知事で総務大臣をされた人です。2 0 1 0 年から2 0 4 0 年の30 年間に、20 ~ 39 歳の女性( 若年女性) がどの位減っていくかという推定を市町村単位で行いました。2 0 4 0 年に人口が1 万人未満になる町村で、若年女性が半分以上減る自治体が続々と出てきました。論文では、これらの町村は「消滅の可能性が高まる」と指摘されました。「消滅する」ではなく「消滅する可能性が高まる」でしたが、「うちは消滅するのではないか」という不安を感じた自治体もありました。
しかし、人口が減るくらいで自治体は消滅しません。市町村は法人なのです。自治体が消滅するということは、法人としての自治体が無くなることを意味します。通常は、法人格を失うのは合併のときです。合併は、従来の市町村を消滅させて、新しい市ないし町をつくる行為のことです。町村の人口規模はどこにも規定されておりませんので、数百人で自治体を維持できないわけではないと思います。
もちろん、人口が減り続ければ、その存続が危ぶまれる可能性もでてきます。
しかし、町村長や議会の議員、住民の皆さんが、どんなに苦しくなっても自分たちの自治体を守るという覚悟を持っていれば、絶対に町村は消滅しないのです。どんな時に消滅するかというと、もうこれ以上自分たちの自治体を支えるのは無理だ、お手上げだ、と気持ちが萎えてしまった時です。ですから、ここに参集されておられる町村長、またこれから町村長になられる方々が、どんなに苦しくとも絶対に自分の自治体は消滅させない、という強い意志を決めてくだされば、自治体は消滅しません。そのことが大事だと私は思っております。
とはいえ、そういった覚悟だけでは事は済みません。頑張らないといけないこともあります。ですが、町村は既に高齢化のピークを経験し、2 0 4 0 年ごろの深刻さを経験していますので、どう頑張ればいいかが大体見えているのです。危ないのは大都市の方です。その大都市を、町村の知恵で支える時代が訪れると私は思っています。
今まで町村は、過疎や中山間の地域を抱えて条件不利地域だと言われてきました。ところが、そういう町村地域からたくさんの若者たちを吸収しながら、その若者たちが安心して子どもを産めない地域はどこかというと東京圏なのです。東京圏は、出生率が最も低いという点では条件不利地域に変わってしまっているのです。この東京圏の問題を解決できなければ、我が国全体としての人口減少に歯止めがかかることはないのではないかと思います。このところ注目に値するのは、特に若者や女性に見られますが、便利で快適だと思われている東京などの大都市から農山漁村地域へ向かう人の流れが起こり始めていることです。田園回帰の現象こそが、全国の農山漁村地域の価値を表していると思います。外から入ってくる人たちを温かく迎え入れて、新しい地域をつくっていく、そういう取組こそが、大都市と共に生きる町村の姿ではないかと考えます。
もう一つ大事なことがあります。総務省の「自治体戦略2 0 4 0 構想研究会」が、第一次、第二次の報告を出し、それを受けて現在の第32 次地方制度調査会が始まっていますが、少し気になっている点がありますのでお話ししたいと思います。2 0 4 0 年に団塊ジュニアが65 歳以上になります。その頃、人口は約1 億1 千万人、現役世代が減り、高齢者数が約4 0 0 0 万人になると推計されています。「多死社会」が到来します。このような事態にどのように対応すればいいかということを考えなければならない。総務省の報告書は、2 0 40 年に向けて自治体行政( O S )の書き換えという考え方を打ち出しています。
O S というのは、自治体行政の運営・管理の基本的な手法のことです。大きく、スマート自治体への転換、公共私によるくらしの維持、圏域マネジメントと二層制の柔軟化、東京圏のプラットフォームが提案されています。このうち、圏域マネジメントと二層制の柔軟化は、扱い方によっては、町村に大きな影響が及ぶのではないかと考えますので、それを申し上げておきたいと思います。
人口減少時代がやってきて、仕事はあるのに人がいないという人手不足の状態が起こっています。従来の仕組みを変えないまま、働き手を確保しようとしますので、人手不足が起こるのです。ご承知の通り、この人手不足に、早急に手を打とうということで、政府は出入国管理法を緩めようとしています。在留資格を新設して外国人労働者を増やそうとしています。人手という点で人口減少に対処する方法は、一人ひとりが頑張って従来以上の働きをするというのが
1 つ、2 つ目には省力化の推進で、A I を含めた様々な機器に置き換えていくことで、そして、3 つ目に労働力を外国から入れるということです。
この外国人住民の増加は、全国の市町村に大きな影響を及ぼすことになると思います。我が国の国籍法は血統主義をとっています。子が生まれたときに父または母が日本国籍を持っている場合には、その子どもに国籍を与えるという考え方です。通常は、両親も日本国籍を持っていて、この夫婦が産み育てた子ども達が次世代を構成すると考えてきました。これを日本人人口と呼びます。
この日本人人口が減り始めているのです。何とかして、歯止めをかけようとしていますが、減り続ける人口を賄いきれないため、外国人の働き手を増やそうとしているのです。
地域に入ってきた外国人の住居、防災、教育、医療・福祉問題、税金などの問題に関し、市町村の苦労はこれから増えると思います。それでも、外国から来て、我が国のために働いてくれる外国人とどうやって仲良くできるかというのが新しい課題になると思います。地域では「多文化共生」や「ダイバーシティ」といっていますが、相当に困難や苦労が多くなると思います。日本は「多民社会」になっていく可能性が出てきました。
このように人手不足に手を打っても、今後、個々の市町村が施策のすべての分野を手掛けるというフルセット主義は無理で、そこから脱却して、「圏域」という行政体制を考える必要があるというわけです。市町村合併は無理なので「連携」でいくしかない。中心となる大都市に調整権限を付与し、圏域を構成する市町村が協力して、必要なサービスを確保していくという発想です。具体的な制度設計はこれからですが、少なくとも、町村にとっては、「それならば」と納得できるような方法を国にはとってもらいたいものです。一律に同じような仕組みを全国化することは避けてもらいたい。その声を大にして国に働きかけていただきたいと思います。
圏域行政の標準化が進む可能性がありますが、すべての自治体が大都市に接続しているわけではありませんので、そういう町村についてはどうするのかというと、都道府県が補完・支援する仕組みにするというのです。それを「二層制の柔軟化」と呼んでいます。それはそれで考えられるかもしれませんが、自治体行政の書き換えというのであれば、都道府県の体質を変えることが先決ではないかと思います。
どのように変えれば良いかということですが、今までのように都道府県は国のために存在するのではなくて、「市町村のために存在し、市町村を補完・支援することが、都道府県という広域自治体の任務である」というように都道府県の運営基準を変えてもらいたい。そのことによって、どんなに小規模な町村でも、どんなに財政力が小さい町村でも、その首長と住民が自分達の自治を守っていきたいと決心しているのなら、そういう町村の存続を守るんだというように考え方を変えてもらいたい。そうすることで都道府県と市町村は、真に「対等・協力」の関係を築くことができると思います。このことを声を大にして都道府県と国に要請していただきたいと思います。
最後に、今回の地方制度調査会の総会で、荒木会長は、「今後国が様々な改革をやるにあたり、押しつけではなく、選択可能な制度を作り、自治体が主体性を持って選択出来るようにすることが重要である」と発言されました。私もその通りだと思います。荒木会長のもとで皆さま方には、この点を強く国に求めていってほしいと思います。そして、農山漁村、町村が滅べば東京に代表される大都市は滅びるんだという認識を国是として打ち立てていただきたいと切に願っています
【自治体戦略2040構想研究会報告書の概要と課題 角田英昭(自治体問題研究所)2018.7】
《 問題点、課題 》この構想研の戦略目標は、「人口縮減時代の新たな社会像の構築、基本施策の開発、自治体行政の大胆な書き換え」であり、その中身は市町村行政のフルセット主義からの脱却、スマート自治体への転換、「圏域」単位での行政の推進です。 急速に進む人口減少社会への対応、持続可能な地域・自治体づくりは、喫緊の課題であり、検討が必要なことは事実ですが、問題はその方向、中身、進め方です。 構想研報告の詳しい分析はこれからであり、地制調の議論も始まったばかりということで、ここでは関連の動きも含め基本的な問題点、課題について簡潔に述べたいと思います。
1つは、「2040年頃に迫り来る危機」の内容です。それはビッグデータ等を駆使した統計的な事実であり、予測です。それをことさら強調し、危機感を煽っていますが、それらの内容は既に提起されているものであり、かつその危機に対して国も自治体も一定の対策を講じています。
例えば、現在政府が進めている「地方創生」施策は、それこそ「迫り来る危機」に対処する処方箋であったはずです。ところが、報告書はその努力や成果を考慮せず、「危機」ありきで今から自治体のあり方を大胆に「書き換える」先取り的な改革が必要だと提起しています。
この研究会の所管は総務省ですが、報告書の内容の検討と合わせ、同省がそれをこの時期に率先して提起する狙い、意図は何なのか、その解明も必要です。同時に、そう言うのであればまず自らの職責で2040年に向け「地方創生」など関連施策を抜本的に見直し、実効あるものにすべきです。
第32次地制調の第1回総会でも、地方から批判的な意見が相次ぎました。全国市長会の立谷会長(福島県相馬市長)は、これは「地方創生を頑張ろうとしている努力に水を差す以外の何物でもない」「努力の成果も検証できないうちに2040年には(地方は)ダメになるからという議論は適切か、総務相に考えてほしい」と訴えています(2018/7/6朝日新聞)。
2つ目は、「迫り来る危機」を強調し、「地方創生」と同様、政府側の戦略・手法に沿った全国画一的な対応を上から押し付けようとしています。このやり方は安倍政権の特徴であり、自治の侵害です。このことに関しても全国町村会の荒木会長(熊本県嘉島町長)は「上からの押し付けではなく、選択可能な制度や仕組みを準備することが重要だ」(同上)と提起しています。
3つ目は、スマート自治体への転換、自治体の執行体制のスリム化(半減化)です。
報告書は2040年頃には「(現在の)半数の職員でも業務に対応できる仕組みにする」「AI・ロボティクスが処理できる事務作業はすべてAI・ロボティクスによって自動処理する」としていますが、これについても自治体の事務・事業の性格、内容を踏まえた検証が必要です。安倍政権の狙いは、自治体・公務の民間化、外部化、産業化の推進であり、既に様々な手立てが講じられています。例えば、今年4月から市町村行政の要である窓口業務を、地方独立行政法人に包括的に委託できるよう法改正を行いしました。これを受けて掛川市(静岡県)は、全国で初めて地方独立行政法人の活用による実施を検討し、総務省も「その先駆性を評価する」として今年6月に業務改革モデルプロジェクト事業の委託団体に指定しました。今後、この動きは広がっていくと思われます。
なお、この窓口業務には公権力の行使も含まれており、今は定型的なものと述べていますが、構想研報告書では、今後「自治体行政の標準化・共通化」を更に進めるとしており、その範囲が拡大していくのは必至です。
現在、既に実行段階に入っている公共施設等総合管理計画も同様です。今年4月に開催された同計画の更なる推進に向けた説明会で、総務省が報告依頼した「先進事例」の秦野市(神奈川県)、浜松市(静岡県)、菊池市(熊本県)の施設総量(延床面積)の削減目標を見ると31%、36%、52%であり、まさにここでも半減化に向けた取組みが徹底されています。また、施設整備、維持管理・運営ではPPP/PFIの優先的導入が徹底されています。
また、AI・ロボットの活用でも、政府は6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」で「AI(人工知能)などで課題解決する社会の実現に向け、諸手続きの添付書類撤廃等の『デジタルファースト法案(仮称)』の今年度中の国会提出を盛り込んだ。新KPIでは、2020年度末までにAI等技術を活用する地域数を300とすることなどを定めた」〔2018/6/22自治日報)と報道されています。新経済連盟デジタルファーストPTは、今年5月に①対面原則、書面交付原則、押印原則、印紙原則の完全撤廃、②行政手続きにおける添付書類の撤廃によるワンオンリーの実現を提案しており、法案はこの内容を反映したものになると思われます。これはマイナンバー制度とも連動します。
基礎的自治体のあり方を巡っては、更に地域運営(自治)組織との関連が提起されています。既に地域運営組織は609市町村に3071団体(2016年10月現在)設置され、目標は上方修正され2020年までに5000団体となっています。地域自治組織のあり方でも2017年7月に研究会報告書が出されており、これらも自治体業務の受け皿として検討されています。これらがスマート自治体の実質的な中身であり、今から着々と準備され、具体化されています。4つ目は、「圏域」単位での行政の推進です。これも研究会報告の要であり、市町村行政のフルセット主義からの脱却、圏域単位での行政のスタンダード化、ガバナンスの強化を図るとしています。そのため、地制調答申のお墨付きを得て、2020年の通常国会で「圏域」単位で行政サービスを進めるための法整備を行う予定です。しかし、こうした措置は「自治体業務を細かく制限したり、独自性を奪ったりすることになり兼ねない」「中心都市部の周囲にある小規模自治体が埋没する」(朝日新聞)という声も出ており、新たな基礎的自治体の再編、「ステレス(隠れた)合併」に繋がります。 大森彌氏(東京大学名誉教授)は、自民党政務調査会の「財政再建に関する特命委員会」報告は、「既存の取組で市町村合併が進まなかった地域に関して更なる合併を推進する枠組みについても検討する」としている、「骨太方針2018」も「現行の合併特例法が平成31年度末に期限を迎えることへの対応を検討する」としており、この通りになれば「町村にとって事は一挙に重大化する」(2018/7/9町村週報3046号)と指摘しています。
更に、報告書は「核となる都市がない地域では都道府県が市町村の補完・支援に本格的に乗り出すことが必要」とも述べており、都道府県の関与、指導が強まる可能性があります。自治体間連携や補完・支援は、相互の自治保障、対等平等、基礎的自治体の維持・強化が基本であり、それがなければ市町村自治、住民自治の後退、否定に繋がります。
最後に、この問題の根底にある人口減少、少子高齢化の問題について若干ふれておきたいと思います。わが国の出生率の低下は以前から指摘されていたことです。なぜ、政府はフランス(1993年1,66→2010年2,0)やスウェーデン(1999年1,50→2010年1,98)のように、家族給付や出産・育児と就労の両立支援など若い世代の生活の実態に寄り添った措置を講じて計画的、系統的に改善を図ってこなかったのか、それが今日の状況、将来の危機を作り出しています。
出生率を見ても、過去最低の2005年(1.26)以降、緩やかに回復傾向を示してきましたが、2016年(1.44)、2017年(1.43)と連続して減少し、政府が目標に掲げた2020年1.60の達成は殆ど困難です。東京一極集中も改善が見られず、研究会報告は2040年頃も「東京圏には子育ての負担感に繋がる構造的な要因が存在し、少子化に歯止めがかからない」としています。これらは国家戦略として進めてきた「地方創生」総合戦略、施策の失敗を認めるものです。
その一方、小規模自治体は様々な施策や住民参加の取組み、知恵を使い、人口減少の抑制や人口増、持続可能な自治体づくりで成果をあげています。こうしたことに目を向けず、規模のメリット、サービス提供の効率性をことさら強調し、小規模自治体の自治の機能、役割、権限を縮減し、再編を迫っていくのは本末転倒です。
野田総務相は、地方側からの批判に対し「前向きに地方創生に取り組んでいくことも大切だが、それ以上に負荷がかかり始めている」「ここは思い切って次の時代のために変えていかなければならない」と述べ、先取り的な改革への協力を要請しています。総務省として2040年危機に立ち向かう本気度、内実が問われます。このように、自治体戦略2040構想研報告書は、今後の自治体のあり方を巡って重大な問題を提起しています。ある意味では時代の重要な転換点に立っており、今次の地方制度調査会の審議も極めて重要です。内容をよく精査、検討し、課題を明らかにし、対置政策(要求)、提言を発信していくことが必要です。皆さん方のご意見、提言をお寄せください。
【自治体戦略2040構想研究会第二次報告及び第32次地方制度調査会での審議についての意見書 2018年10月24日 日本弁護士連合会】第1 意見の趣旨
1 報告書が構想する,「圏域」に関する法律上の枠組みを設け(以下「法制化」という。),「圏域」が主体となって「行政のスタンダード化」を進めていくことは,以下のような重大な問題点があり,第32次地方制度調査会における「圏域」に関する審議は,慎重になされるべきであり,拙速に結論を出すべきではない。
(1) 「圏域」を法制化し,「圏域」が主体となって「行政のスタンダード化」を進めていくことは,これまでの広域連携の仕組みと異なり,自治体の個別事務ごとの自主的な判断ではなく,全国的に国が主導して,市町村の権限の一部を「圏域」に担わせようとするものであり,自治体が自主的権限によって,自らの事務を処理するという団体自治の観点から問題がある。また,住民による選挙で直接選ばれた首長及び議員からなる議会もない「圏域」に対し,国が直接財源措置を行うことは住民の意思を尊重する住民自治の観点からも問題がある。
これらの点は,憲法上の保障である地方自治の本旨との関係で,看過できない問題である。(2) 「圏域」単位での行政の在り方を検討するに当たっては,「圏域」の代表的なものである連携中枢都市圏構想について,どのような成果を生み,あるいは,どのような弊害を生じさせたのか,実証的な検証・分析を行い,その評価を参考にすべきであるがそれがなされていない。また,市町村数をほぼ半減させた平成の大合併についても,実証的な検証・分析を行うべきであるがそれがなされていない。
(3) さらに,報告書の構想する地方行政体制の変更は,国土政策に密接に関係するものであるから,国土交通省所管の国土審議会において,国土政策の観点からの検討と国土形成計画との整合性の検討がされるべきであるのにそれがなされていない。
2 地方制度調査会における地方行政体制の在り方についての調査審議を行うに当たっては,地方自治の本旨(団体自治・住民自治)及び基本的人権の保障の観点からの審議がなされるべきことはもちろん,前項(2)の点について専門家による実証的検証・分析がなされるとともに,同項(3)の国土政策の観点からの検討と国土形成計画との整合性の検討がなされるべきである。
また,全国知事会,全国市長会及び全国町村会等の現場からの意見等を十分に考慮し,尊重すべきである。〔以下、「理由」などは長くなるので略〕
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