サ高住 寝たきり、重度者優先の実態~社会保障の貧困さ反映
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、「終の棲家」とし、介護の必要な度合いが低い人向けを想定した施設で、急速に増加したが… 認知症の対応で困難を極め、また軽度では介護報酬も低いため、動けない人が優先されるという入所者の「選別化」が進んでいるという。特に低家賃のところで、その傾向が強いようだ。
5-6万円の国民年金で入れる施設は限られており、高齢者の住処は、大きな課題である。
【人生100年時代の「終の住処」どこに――サ高住で高齢者「選別」の実態11/17】
【高齢者住宅、安いほど要介護者流入 公費膨らむ懸念 日経2/3】
サ高住ではないが・・・
【寿町火災 超高齢化・日本の縮図 集合住宅共通の課題 神奈川新聞1/5】
一方、家賃20万円のところが人気と・・・格差社会の反映
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【人生100年時代の「終の住処」どこに――サ高住で高齢者「選別」の実態11/17】100歳まで生きることが珍しくない「人生100年時代」を日本は迎えようとしている。2018年時点で100歳以上は約7万人。今後も増加が見込まれる。そうしたなか、介護を受けながら暮らすことができる“終(つい)の住処(すみか)”として、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」も増え、全国で24万戸近くになった。その一部施設で入居者の「選別」が行われているのだという。本来は、主に介護の必要な度合いが低い人向けを想定した施設なのに、寝たきりの高齢者を優先させている、と。いったいどういうことなのか。
(取材・文=NHKスペシャル“人生100年時代を生きる”取材班/編集=Yahoo!ニュース 特集編集部)◆外に出た認知症の入居者を連れ戻す
「いないですね。いつもはこの辺にいるんですけど。車の通りが多いので、危険なんです」
猛暑の7月下旬、福岡市の閑静な住宅街。サ高住「スマイル板付」の岡山正和施設長(40)が、入居者を懸命に捜していた。認知症の山本勇さん、100歳。その行方が、夕食後から分からなくなったのだ。施設の防犯カメラには、車いすを自分でこいで、ゆっくりと交差点を横断する山本さんが映っていた。
約1時間後。山本さんは施設から500メートルほど離れた場所で見つかった。交通量の多い通りの道端で、ぼうぜんと行き交う車を眺めていた。3年前に入居してから、毎日のようにひとり歩きをしてしまい、4キロ離れた場所で警察に保護されたこともあったという。
「部屋をご案内しましょうか」。施設に戻ってきた山本さんが、サ高住の自室に案内してくれた。19平方メートルのワンルームにベッドと小さなタンス。ここが、山本さんの終の住処である。
入居前は、自宅で一人暮らしだった。やがて認知症が悪化し、ガスコンロの火のつけっぱなしも頻発した。そのころ、介護の必要な度合いは低いほうから2番目の「要介護2」。特別養護老人ホームは「要介護3」以上の高齢者しか原則入れないため、サ高住への入居を決めたという。このサ高住の料金は、食費込みで月におよそ12万円。年金で暮らせる場所はここだけだった。
子どもは3人いるが、すでに70歳前後。介護を頼ることはできない。妻は、11年前に交通事故で亡くなったという。
妻の話になると、山本さんが車いすからゆっくりと立ち上がった。車いすの後ろにあるポケットから小さな黒い鞄を取り出す。妻との写真が100枚ほど詰め込まれていた。
「ご覧になってください。女房ですよ。一緒に連れて歩いて、どこにも一緒に持って歩きよる。こっちが亡くなるときは、ともに散ってしまおうと思って」
部屋の壁には、100歳になったときに内閣総理大臣から送られた祝い状が飾られていた。長寿を祝う内容で、「慶賀にたえません」の文字が見える。しかし、山本さんは別れ際にこう漏らした。
「いつまでも生きているのは、おかしいですよ。何も悪いことしたわけじゃないけど」◆「自分で動ける」からこそ負担が大きい
いま、このサ高住は深刻な事態に直面している。入居者40人のうち、自分で動くことができる「要介護2」以下は21人。しかも、そのうち15人は認知症で、ひとり歩きなどのために介護の負担が大きくなっているという。
その現場も見た。
深夜23時、事務所のナースコールが鳴り響く。職員が駆けつけると、「要介護2」の女性(84)が、部屋をウロウロしていた。不安げな様子で職員に訴える。
「聞こえます? カサカサっていう音が……。部屋に侵入してきた男を捕まえてほしい。そんなふうに隠れてないで顔見せんしゃい、って言うたと。ガタガタ震えよるとですよ、怖い目に遭って」
認知症からくる幻覚だった。幻覚などで混乱したまま動き回ると、事故につながりかねない。昼夜を問わず、職員は入居者から目を離せない。深夜24時。職員は、104歳の女性の部屋に行った。認知症で「要介護1」だ。ところが、ベッドの上に姿がない。カーテンの陰に隠れていて、出てこようとしない。
職員があわてて声をかける。「そこはベッドじゃないですよ? ベッドに行きましょうか」。すると、女性は拒んだ。
「何ですか? 今ここで一時、遊んでるんです。裸になってるんで、開けないでください!」
押し問答は10分以上続いた。こうしたトラブルは同時多発的に一晩中続くという。国の定めによると、職員配置の基準はサ高住の場合、「少なくとも、日中1人」。これに対し、この施設では、「日中2人、夜間1人」の計3人を置かなければ、入居者の安全を到底守り切れないという。
岡山施設長は言う。
「放っておけない。ちゃんと見ていかないと、その人の健康が守れないですもんね。大げさかもしれないんですけど、人の命が奪われる可能性もあるんですよね、本当に」◆認知症のケアのため赤字経営が続く
サ高住の実態を調べるため、NHKは今年5〜9月、全国6646施設にアンケートを実施し、その約3割、1995施設から回答を得た。その結果、要介護認定を受けている入居者のうち認知症の人の割合は55%に上っていることが明らかになった。
厚生労働省の推計によると、65歳以上の高齢者全体に占める認知症の人の割合は2015年で16%。いかにサ高住入居者に認知症の人の割合が高いかが分かる。
認知症の入居者の増加は、サ高住の経営を圧迫している。
収入の柱は、入居者からの「料金」や「介護報酬」だ。このうち、介護保険から支払われる介護報酬は、要介護度の高い人ほど増える仕組みになっている。
ところが、このサ高住「スマイル板付」では、要介護度の低い人が多いため、認知症のケアの負担が大きい割に、介護報酬が少ない。さらに、24時間態勢でケアを行うため、人件費がかさみ、経営を圧迫しているという。オープンから4年、経営は厳しい。
人件費を削るため、岡山施設長が自ら泊まり勤務をこなしている。ある日の深夜2時過ぎ。夜食のカップラーメンを食べながら防犯カメラのモニターを見ていた岡山施設長は、その手を止めた。外に出ようとする入居者の姿がまた映ったのだ。100歳の山本さんだった。
あわてて連れ戻しに行くと、誰かに呼ばれたのだ、と山本さんは説明した。
「誰かから呼ばれたの? 男の人? 女の人?」(岡山施設長)
「男じゃないかな。外から聞こえたから玄関まで行ったけど、誰もいないし」(山本さん)岡山施設長は言う。
「入居者・家族から満足していますという声をいただくこともあります。でも経営的には、赤字が続いているっていうのが現実です」◆寝たきりがほしい
サ高住の経営実態は全国的にどうなっているのだろうか。サ高住を管轄する都道府県と政令指定都市に情報公開請求をしたところ、サ高住の制度が始まった7年前からこれまでに廃業や登録抹消が少なくとも421件あることが分かった。サ高住の経営はどうすれば良いのか。現場をさらに取材した。
西日本にあるサ高住を見てみよう。5年前のオープン以来赤字続きだったが、昨年初めて黒字に転じたという。経営状況を改善させたのは、昨年、施設長に就任した40代の男性だ。「きれいごとだけでは経営が成り立たない現実を知ってほしい」と、匿名を条件に取材に応じた。
男性は、赤字を抜け出すために入居者の「選別」を打ち出した。介護報酬が高額になる、要介護度の高い人を優先的に受け入れるようにしたのだ。その結果、入居者40人のうち「要介護3」以上が25人になったという。
「会社も赤になれば、職員に給料も払えません。うちはボランティアではありません。株式会社。お金をいただかないと」選別の基準はもう一つある。それは「事故のリスクの低さ」だという。
「寝たきりの人のほうが、介護は楽だと思います。何がベストかというと、本人さんの意思がないから寝たら寝っぱなし。もうそれがいいです」取材の日、この施設長は病院に電話をかけていた。退院予定の高齢者を紹介してもらうためだ。1カ月後くらいに部屋が空きそうだから、「要介護3」くらいの人がほしい、といった会話が聞こえる。
なぜ、「要介護5」ではなく、「3」なのか。施設長は言う。
「施設に入ると、だんだんと身体機能が落ちてくる可能性が高いんですよ。3の方が少しずつ悪くなれば次は4になる。だから売り上げが上がるんです」要介護度の低い人を入居させても、介護報酬が少なく、認知症の人はひとり歩きなどのリスクがある。だから、そういう人から申し込みがあっても「待機してもらう」という。
「『要介護2』以下の人には『まだ空いてません』って言って待ってもらっています。入居希望者の要介護度だけを見て選ぶって、本当に福祉なのかっていうのはあるんですけど、それをさせてるのは介護保険制度かなと思うんです」
入居に関連する書類。要介護度が低い人に待機してもらうこともあるというこうした入居者の選別を進めた結果、このサ高住はようやく黒字になった。それでも、利益はほとんどない。建設費の借入金もまだ数千万円残っている。
全国のサ高住を対象にしたNHKのアンケートでも「要介護度が低いことを理由に、入居を断らざるを得ない」と記した施設が相次いだ。
「認知症で徘徊が激しい人はお断りしています。『要介護1、2』だけでは経営できません」
「介護職員の報酬が社会的に低いと言われているなか、要介護度の低い人ばかりでは、職員に満足のいく給料が払えません」自由記述欄にはそんな声があふれている。
◆「歩ける人は“空室対策”」
入居者の「選別」を始めたこのサ高住も例外的に要介護度の低い人を受け入れることがある。この9月上旬、「要介護1」の夫(91)と「要介護2」の妻(87)が夫婦で入居した。ただし、「短期間で立ち退くこと」が条件だった。施設長が言う。
「空室対策ですね。今から入居者を探すとなれば、1カ月近くはかかる。要介護度が低い人でも入れていかないと運営的には厳しいので」
この夫婦はともに認知症だ。他の人の部屋に入ってトラブルになることも多く、これまでも施設を転々としてきたという。夫は客船の乗員として50年働き、夫婦で2人の子どもを育て上げた。しかし、息子は病気がちで、娘も離れた街で暮らしている。「子どもたちには迷惑をかけたくない」と言い、2人の終の住処を探し続けてきた。
夫婦には、大切にしてきたものがある。古びた、小さな靴箱。そこには家族の思い出の写真などが詰まっている。箱の底にはハーモニカ。家族だんらんのときに、いつも吹いていたという。夫は慣れた様子で昭和の歌謡曲「リンゴの唄」を吹いてくれた。ほとんどしゃべらない妻も、音色を聴いた途端、楽しそうに歌い始めた。わずか19平方メートルのワンルーム。二つのベッドを並べて暮らす。
「夫婦ですからね。一緒に苦楽をともにして、一生過ごしたいじゃないですか。できるだけ迷惑のかからんように、亡くなることができれば」◆「リスクがない」高齢者を受け入れる
9月下旬、このサ高住に病院から連絡が入った。退院予定の高齢者を紹介したいとの知らせだ。病院に向かう車内で、施設長の男性はこう語った。
「車いすって話は聞いてるんですよね。車いすから立ち上がろうとか、ベッドから起き上がろうとか、そういうリスクがなければ、入居させてもいいのかな」
病院に到着すると、車いすにじっと座る男性がいた。脳出血を発症し、体にまひが残る。月に31万円の介護報酬につながる「要介護4」。病院の担当者は「危険行為は全くありません。車いすから立ち上がる、ベッドから自分で起きようとする、そういうことはありません」と言い、施設長はこの男性の受け入れを決めた。◆「制度の誤算」
本来、サ高住は主に要介護度の低い人を想定している。しかし実際は、経営上の判断やリスク回避の観点から、要介護度の低い人は敬遠され、高い人が重宝される現実がある。
国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」の委員で、日本社会事業大学専門職大学院の井上由起子教授は「制度の誤算」を指摘する。「もともとサ高住は、日常生活はほぼ自立しているけど、ひとり暮らしは不安という高齢者を想定していました。だから制度上は『老人ホーム』ではなく、『住宅』という位置付け。介護も24時間態勢ではなく、1日数時間しか想定していなかった。ところが、ふたを開けてみれば、特別養護老人ホームに入れない、24時間見守りが必要な認知症の高齢者の受け皿になっている。大きな誤算でした」
長年、ケアマネジャーとして働き、介護現場の実態に詳しい東洋大学の高野龍昭准教授は、利用者本位の制度設計の大切さを語る。
「いまのサ高住は、とにかく“箱を増やす”ことが目的となっていて、結局誰のための施設なのか分からない。まだ元気な高齢者のための『住宅』なのか、要介護度の低い人のための『老人ホーム』なのか、高い人のための『老人ホーム』なのか。施設の目的をはっきりさせたほうがいい」◆「ここにいたい」でも退去
客船で働いてきた前出の夫とその妻。この夫婦はサ高住に入居後、1カ月で退去することになった。「要介護1」の夫と「2」の妻。その2人の代わりに、新たに要介護度の高い高齢者の受け入れが決まったからだ。
施設長は夫婦にこう告げた。
「今度、自分で歩けない、ご飯も食べられない人が来ることになりました。奥さんもご主人もまだまだしっかり歩けるし、元気ということで、今日でここは終わりになります」87歳の妻がすがるように言った。
「私ここにいたい。ここにもうずーっといたい」
夫婦はこの後、老人保健施設に入ることになっている。そこも短期間しかいられない。その次にどうするかはまだ決まっていない。
【高齢者住宅、安いほど要介護者流入 公費膨らむ懸念 日経2/3】見守りなどのサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。日本経済新聞が全国の利用実態を調べると、家賃月8万円未満の安い住戸は多くの介助が要る「要介護3以上」の入居者が5割を占めた。自立した高齢者向けとの想定に反し、特別養護老人ホーム(特養)が対応すべき低所得で体が不自由な人が流入している。安いサ高住は介護報酬で収入を補おうと過剰に介護を提供しがちで、特養よりも公費の支出が膨らむ懸念がある。
【寿町火災】超高齢化・日本の縮図 集合住宅共通の課題 神奈川新聞1/5簡易宿泊所(簡宿)で起きた火災で2人が死亡、8人が重軽傷を負った横浜の中心地にほど近い寿地区。ここでは60歳以上が7割近くに達し、障害がある人も少なくない。簡宿を“住居”とする人々が暮らしやすい街をいかに築くか。福祉ニーズの高い街は、やがて日本が迎える超高齢化社会の縮図とも言え、広く社会にも問題を投げ掛ける。
市生活支援課寿地区対策担当などによると、簡宿の宿泊者数は2017年11月1日現在で5728人。このうち60歳以上は3894人(67・9%)、身体障害者数は387人(6・7%)を占める。宿泊者の大半が単身高齢の男性で、8割以上が生活保護を受給するなど「福祉の街」となっている。
寿地区は高度成長期の1960年代、日雇い労働者を一時的に受け入れるために簡宿が相次いで建設された。築60年近くになる簡宿も数多く残る一方、建て替えの際に、宿泊者のニーズに合わせてエレベーターを設置して車いすに対応したり、身障者トイレを共用部に設けたりする場合が増加。同時に玄関にオートロックを設ける簡宿も増えた。複数の介護事業者が個別に利用者宅を訪問することで、地域との交流の機会が減っているのが実情だ。
従来の簡宿は帳場と呼ばれる管理人が24時間対応をしていたが、近年は住み込みが少なくなり、年末年始は不在になる場合も少なくない。大規模の簡宿では帳場が常駐するものの老人ホームのように複数の職員が勤務する仕組みになっておらず、火災時の避難誘導ではかねて課題を抱えていた。今回の出火当時は帳場がいたものの、約140人の救助は難航した。
消防法施行規則では年2回以上、避難訓練などを行う義務があるが、地域の関係者や中区役所などでつくる「寿プラザ地区地域防災拠点運営委員会」の事務局は「高齢者や障害者が入居している簡宿では人手が足りず、十分な態勢では行いにくい」と説明。設備面でも、現在は義務化されていないスプリンクラーを設置すれば「宿泊料金が上がる可能性がある」と宿泊者らは不安視する。
簡宿の営業許可や、簡宿に宿泊する高齢者医療や障害者、生活保護など担当する市の部局は複数にまたがる。ある職員は「問題があっても自分に決められた法律や条例の範囲でしか対応できず、他部局との調整に時間がかかってしまう」と、縦割り行政の弊害に頭を悩ませる。
ただ、寿地区に限った問題ではない。貧困問題に詳しい立教大の稲葉剛特任准教授は「寿地区の簡宿は建て替えが進み、設備や防火体制は格段にいい。(木造の簡宿が多い)川崎や山谷で起きていたら、もっと被害が広がっていたかもしれない」と指摘。それだけに、今回の火災は低所得者向けの施設で起きた過去の火災と同列には語れないという。「一般のマンションでも十分起こり得る火災で、簡宿だけの問題ではない。高齢者や単身者、障害者などが集合住宅に多く暮らす社会共通の問題として、どう対応すべきか考える必要があるのではないか」と警鐘を鳴らす。
【カンブリア宮殿も紹介。なぜ話題の高齢者住宅は月20万もするのか 】入居時かかる費用は0円、月の費用は、1人部屋で、家賃、共益費、生活支援サービスを含めて20万5,000円~。諸条件で、銀木犀の中でも、浦安が一番高いのですが、やはり一番人気だということです。
他の地域の銀木犀もコンセプトはまったく同じですが、諸条件から、同じサービスを15万円~で受けられるところもあるようです。ただし、介護、看護、医療サービスを受けるのには、別途費用がかかります。
・・・・ 以下略
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