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水産「改革」方針批判 と 真の改革方向 (メモ)

「食糧供給」「雇用」「利益」「地域共同体」「生態系・環境」という漁業の果たす役割は多面的であり、そのありようは国ごとに異なる。それを「目先の儲け」を唯一の目的に「改革」しようとするのがどう方針。
 有坂哲夫「議会と自治体」2018.11をもとに、いくつかの情報をプラスアルファしたもの。

《1》「水産改革」方針の主な内容と問題点

・「方針」の名目…「水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化」の両立
→資源管理に対する国の管理強化/国際競争力ある経営体への生産の集中/企業参入へ促進など
・規制改革推進会議・水産WGにより、水産業の素人・新自由主義信奉者による「結論ありき」の作業で、漁業関係者の声をまったく反映させていない代物


(1) 強引な資源管理手法「改革」

・「方針」の第一の柱…新たな資源管理システムへの転換
→TAC制度の対象漁獲を早期に、漁獲量ベースで8割に拡大。「準備の整った魚種から順次、個別割当(IQ)を導入する」「規模拡大と新規参入のため、漁船の譲渡と合わせた個別割当の移転(譲渡)を可能とする」

■TAC対象魚種の拡大

・TAC 対象魚種の資源量の把握と生物学的許容漁獲量(ABC)を科学的に把握することが必要
・水産庁 これまで、前提となる資源評価と評価予測、漁獲内容の把握に膨大な人手と資金が必要なため「採捕量が多く国民生活上重要な魚種で、漁獲可能量を決定するだけの科学的知見、蓄積のある魚種」に限定実施
→96年サンマ、スケトウダラ、マアジ、マイワシ、マサバ、ゴマサバ、ズワイガニ。17年までに追加されたのは1種スルメイカだけ。18年にクロマグロを追加/その漁獲割合で大問題発生

・日本の食用魚介類 数百種、漁獲量の80%を占める魚種で68種。~魚種ごとの系群(回遊・生息海域による区分け)の漁獲可能量を決定するためには、資源評価体制の抜本的強化と漁業関係者の協力が必要

・TAC規制への疑問…割当根拠となっているABCが漁業者の納得を得ていない。割当量が前年を踏襲し、漁獲量がTAC規制量に達しないなど実効性・有用性に対する疑念も少なくない

(★メモ者 TAC・IQは、北欧の底魚を対象とした資源管理のための手法。移動が少ない魚種で、因果関係の予測が容易ためTACを採用。が、共同的な管理を実施されていない中で、先を争って捕り、結果として一時に供給が集中・値崩れをおこす矛盾を回避するため、個別割当に進んだ。

 回遊魚を含む多種多様な魚種を対象とした日本の特徴。また漁業を軸に共同的な管理をしている日本にはなじまない制度/ ただし、クロマグロについては、初期資源量が2%台となっており、「予防原則」にもとづき、漁獲制限、産卵期の親魚の保護が求められている/日本は最後まで抵抗したが…

*カリフォルニア沖のマイワシは、過去1700年のウロコの化石から分析した資源量。この水域で漁業が開始されたのは200年程前。それ以前にも幾度も絶滅寸前まで減少しているが、その都度、資源を回復。資源量は人間の行為以外の「環境要因」によって変動していると考える実態がある。よって、環境要因をコントロールできない以上、資源は管理できない。という主張となっている。/むしろ海の環境破壊(埋め立て、温暖化による水温変化)の方が、影響が高いと指摘されている。当然、稚魚、産卵期の親魚を一網打尽にする漁法の抑制は必要)

(★「個別割当」自体が目的… クロマグロに見られるような沿岸漁業者が生活できない「割当」とし、廃業を加速させるとともに、経営難・後継者不在の漁業者から「枠」を買い取り、大規模漁業・養殖業に集約化させるツールとしてのもの。「資源保護」に対する国民の素朴な意識を、利用しての策略)

・管理は、都道府県… 体制的にも財政的にも抜本強化しないと不可能/が、体制の保障も、漁業関係者の合意なしに推進する背景
→漁民による共同管理を否定し「国民の財産である水産資源の保存管理は、行政庁が科学的かつ持続的な利活用の原則にもとづき責任をもって管理」すべきとして、漁業の漁業権の優先付与を否定し、「責任ある管理」ができる存在として大企業参入に道をひらくため。

■大規模経営への集中をすすめるIQ(個別割当)

・TACの体制が整った魚種から、漁獲制限割当を、IQに移行。「割当」譲渡を可能とする
~作業量は、TACよりさらに膨大となる(メモ者 実践的には、具体的な根拠なしの「適当」なものになる)
→ 割当の段階で、大規模化などの政策的意図を反映できる。譲渡も可能で、大企業に漁獲枠を集中できる/漁業に「国際競争力」を求めるのは、大規模化を推進する「口実」

・現在、IQ導入は、ベニズワイガニ、ミナミマグロのみ~北欧と違い、漁獲対象が多く、漁法、漁期も複雑に入れ込むため、多くの難問があるため。

◎国の漁業政策審議会でのIQ、ITQ(譲渡性個別割当)導入の検討
・メリット  漁獲競争が排除され、操業の効率性が図れる、IQの売買を通じ、経営の集中、構造転換が図れる
・デメリット 価格の低い小型魚の洋上投棄、漁獲量の虚偽報告、行政管理費用の増大、特定の漁業者への割当手中による漁村の崩壊、不良・豊漁に応じた適時適切な管理が困難
→ 多様な魚種・漁法の日本ではデメリットの方が大きい。/メリットの方も、共同管理に基づき対応可能


(2)漁協を弱め、企業参入すすめる漁業権見直し

・「方針」の第二の柱…漁業許可制度、漁業権の見直し

◎沿岸漁業を対象にした漁業権…優先順位を決めた要項(漁業法第6章)の廃止
・現在も企業参入は禁止されていない…漁協に優先権のある区画漁業権のもとで養殖業を営む場合、漁協の組合員になるか、優先順位者がいない場合が条件/漁場の管理の共同責任を負い、漁業権行使料も払う必要がある
・クロマグロ養殖を進めたい大手水産企業の要求…優先順位の廃止、養殖海域の拡大/行使料、管理責任の免除
~「方針」 都道府県に養殖のための新区画の設定を求め、「適当と考えられる場合」に国が「指示する」

(★メモ者 水産「改革」は、世界6位の排他的経済水域の広さとポテンシャルを強調。そのポテンシャルが活かされていない、とノルウェーにおける世界一の養殖業を「成功例」を取り上げているが・・
・それは米国主導の200海里設定により、日本の漁業が世界の漁場から締め出され、苦境にたたつれたことと一体のもの。その広大な面積のもととなっている南鳥島、沖ノ鳥島の周辺で養殖業ができるわけもなく、何たる言葉遊び。
・そもそも養殖に適した静穏な水面は限られ、すでに飽和状態。そのため、「持続的養殖生産確保法」に基づく漁場改善、適正養殖体制の実現がとりくまれており、水産庁は、生産数量ガイドラインにより、供給過多による暴落防止をとっている。
・ノルウエー フィヨルドに代表される養殖に適した静穏な水面をもつ海岸線が非常に長く、そこに住む人も少ない。地理的条件を無視した空論。
→同国のマリンハーベスト社が03年に大分に進出。地元漁業者との間で、国外販売、加工工場建設を約束し進出したが、約束は一切果たされず、5年連続の赤字で撤退。宮城県水産特区でも、進出はわずか1社。それもルールを無視した出荷で地元ブランドを毀損したうえ、経営赤字の惨状
 【水産特区の失敗に学ばない安倍・水産「改革」~漁村崩壊、環境・安全保障のリスク 2018/11 土佐のまつりごと】  )

■漁業や漁民の行政参加を後退させる

・「方針」…漁業権のとりあげ、国際的に高い評価をもつ漁業者の共同管理システムを崩壊させるもの。
・漁協「改革」…、農協「改革」と同様、所得向上の責を負わせ、広域合併推進、販売に精通した理事の選任、規模の大きな漁協への会計監査士監査の導入など義務づけ
・海区漁業調整委員の公選制廃止。都道府県の任命(農業委員会の「改悪」と同じ)
・水産業の輸出産業化=市場の再編(メモ者 すでに卸市場法改定で、民間による市場開設が可能に)


(3)巻網漁船などの大規模化を促進

・「方針」…漁業権見直しに関連し、巻網、底引き網など沖合漁業の規制を緩和
~「IQ導入などの条件の揃った漁業種類については、トン数制限など…漁船の大型化を阻害する規制を撤廃」「漁業許可を受けた者に各種報告を義務づけ」「資源管理を適切に行わない漁業者・生産性が著しく低い漁業者に対する改善勧告、許可の取り消し」
→現状でも、沖合の巻網漁船の乱獲への批判の声。トン数規制撤廃を器具する意見がだされている

(★メモ者 真の目的は、報告義務の押し付けや生産性を「口実」にし、中小漁業者を「駆逐」することを前提にし、その分の魚額枠の増大に対応するための大型化)


(4)「改革」方針先取りのクロマグロ規制

 略・・・以前整理した別資料参照
【クロマグロ「規制」と漁業権開放~小規模・沿岸漁業追い詰めるアベ「改革」の本質 2018/08 土佐のまつりごと】


《2》 漁業者・国民の立場に立った漁業・水産政策へ

(1)日本と世界の漁業情勢の特徴

■日本漁業・水産業の現状――生産も消費も減少

・世界三大魚場の1つ(太平洋北東部は)を持ち、南北に細長い列島の長い海岸線と島しょ、沿岸・沖合を暖流と寒流が流れるなど、多種類の漁獲物、養殖による生産が多面的に行われている。
・1980年代 水揚げ1千万トン、水産加工は輸出産業の1つ
・20世紀末、環境の大きな変化…国際海洋法の制定、200海里の漁業専管区域の設定…遠洋漁業の縮小、沿岸・沖合・養殖の比重増、生産量全体の縮小傾向
→ 漁業・水産資源の永続的利用を保障する資源管理が重要課題に

・漁獲量 1960年・約700万トンから84年・1282万トンへ増。その後、2016年・435.9万トンにまで減少
・16年の漁業生産量(種類別) 遠洋33.4万トン、沖合193.6万トン、沿岸99.4万トン、海面養殖103万トン、内水面2.8万トン、内水面養殖3.5万トン
→ 06年比較/全体24%、海面漁業23%、海面養殖12.7㌫の減少
→ 原因/従事者の減少、高齢化による生産力低下。開発などでの環境悪化。イワシ・サンマ・イカなどの多獲性魚種の資源循環。200海里規制による沿岸諸国の漁業生産拡大など・・多数の要因がからんでいる
・国民の水産物消費の減少(国民一人年当たりの魚介類の消費量)…01年40kgをピークに16年24.6kgへ
→ 国民の生活悪化と、食料の外国依存政策(輸入食肉の増加)/地方の過疎化、鮮魚店減少よる特定魚種・水産加工品への集中にも要因

■世界と漁業生産と消費の動向

・世界の漁業生産と消費は増加~人口増、1人当たり消費量増
~1人当たり消費量 61年9kg、2013年19kg/人に供給される動物性タンパク質…1人1日32gの17%・5g〔FAO〕を供給
・生産量 16年2億224万トン~1960年3678万トンの7倍
~うち漁獲9千万トン、養殖8153万トン/この20年、漁獲は横ばい、養殖は60年202万トンの40倍


(2)漁業の持続的発展…国民的国際的な課題

・漁業資源の自然の再生産システムに、影響を与えない、適切な漁獲量を維持すれば、永続的利用が可能
~が、現在、漁業生産の拡大が、世界的な資源減少とともに漁場環境の悪化を招いている。

■出来るだけ多くの沿岸漁業・小規模漁業の持続を~地域再生、東京一極集中の是正という国づくりの観点で

■小規模漁業維持は国際的流れ~FAO「責任ある漁業のための行動規範」〔95年採択〕

 「乱獲防止と資源の生産力・持続的利用にそった漁獲努力量〔メモ者 機械的な漁獲割当ではなく、自然条件による豊漁・不漁を織り込んだ一定期間内で漁獲量を制限しようとする取り組み〕の設定」「漁業資源の最適利用と持続利用--短期的目的でこれらの目標を害してはならない」とし「生存漁業、小規模漁業及び沿岸小規模漁業を営む漁業者の利益を考慮する」~多様な漁業、漁村を持つ日本こそ率先して具体化すべき

〔★メモ者 
①FAO「責任ある漁業のための行動規範」〔95年〕…小規模・沿岸漁業者の利益と権利を守るとする条項があり、そのためのガイドラインを具体的に規定〔2015年〕
②国連「持続可能な開発目標」…小規模・沿岸漁業者に「漁場・市場へのアクセスを保障」と規定
③WCPFC〔中西部太平洋マグロ類委員会〕条約…小規模漁業者を保護する条項〕

〔★メモ者 漁業のあり方、位置付けは国によって異なる。上記のノルウェーの養殖、底漁を主とする北欧の個別枠設定、地域共同体を維持するために敢えて一人でも多くで営むアラスカなど…/政府の「漁業の成長産業化」には定義がない。
 世界的に著名な資源学者 レイ・ヒルボーン教授 2011年に科学雑誌「ネイチャー」で発表した共同研究の成果などを基に、漁業の目的を以下の5つに分類 「食糧供給」「雇用」「利益」「地域共同体」「生態系・環境」
〔2014年3月 東京開催の「海の恵みと食糧安全保障を考える国際シンポジュウム」〕

■中小漁業生産への支援策

・資源問題、漁船の老朽化、漁価の低迷、後継者不足など、多くの課題
→若い担い手確保、漁船・加工施設の近代化支援、生産者魚価の安定と水産加工品の販路の確保、資源管理にともなう禁漁・減船に対する所得補償などが必要。/若者が就業・定着できる地域づくり等への支援
/被災時の再建支援、開発、干潟減少など環境破壊の防止〔★メモ者 山の手入れが重要〕、トドなど海獣被害対策〔、エチゼンクラゲ、オニヒトデなどの被害防止も 〕/原発被害の補償

〔★メモ者 広義には、教育・子育て、医療介護、文化スポーツなど、地域づくりの課題とリンク〕
→漁業外交の確立/主権の確保、国際的な資源管理、違法操業の取り締まりなど

〔★メモ者 漁業の困難は、61年の輸入自由化に端を発している。また資源外交では、初期資源量比2%台のクロマグロの規制に反対、同50%のカツオの規制強化を求めるなど、ダブルスタンダードの主張で、国際的な信頼を失っている〕、

■広い漁業者の参加・協力による資源管理に

・量の制限に加え、成長しきっていない小型魚、産卵期の親魚の保護が不可欠
→そのための管理方法/どの方法を主にするかは、漁業の形態、漁業者数、資源の状態と評価の精度で異なる
 ①インプットコントロール/隻数、トン数規制よる漁獲圧力を制限する投入量規制
 ②テクニカルコントロール/産卵魚の採取禁止、網目の大きさの規制等の技術的規制
 ③アウトプットコントロール/漁獲努力量の順守など漁獲量を制限する出口規制

・国際的にも高い評価…共同管理/08年、漁期規制等の漁獲管理、操業水域制限等の漁場の管理により、自主的な資源管理に取り組む漁業管理組織 全国で1738/多くの漁業者の話合い、合意のもとで実行しているために、効果が高い

→水産白書2010年/漁業者の自主的とりくみと行政とが共同する「共同管理」の意義を明記
 ①資源管理に関する漁業者の責任感の向上、②漁業者同士の相互監視による操業秩序の向上


(3)漁業・漁村が持つ多面的機能の発揮を保障する

・「方針」は、資源管理、漁業権とともに「漁村の多面的機能の発揮」を項目にあげている。
~国民への安全・安心に水産物の供給、地域の基幹産業としての雇用機会の維持・創出、水産資源や沿岸の環境保全、海難救助、国境監視、交流の場の提供、伝統文化の形成・維持なと
→多面的機能の発揮には、漁村・離島に人が住み続け、それを支える生業の確立が不可欠

・が、「方針」は、漁業の競争力強化、企業参入はあっても、条件不利地、離島などの維持・発展の具体策は皆無/漁業生産と流通の大型化、漁協の弱体化など〔漁獲割当による沿岸、中小漁業者の排除〕により、漁村・離島をいっそう疲弊させ、多面的機能をさらに弱体化をもたらす

・漁業・水産業政策の転換方向は、現実に漁業を担っている人々の暮らしと漁村の再生・発展に置くことが必要

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