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地方公務員5人に1人が非正規・ワーキングプア~元凶は自公政府

 現場でのたたかいとともに、その真の原因…「三位一体改革」による6.8兆円の地方財源の削減が、自治体を直撃。歳出削減のターゲットになったのが人的経費である。正職員の大幅削減を、非正規雇用とアウトソーシング〔ともに歳出項目として「物件費」〕でやり過ごさなくてはならなかったこと背景をまず見る必要がある。
 次に、その矛盾が激化する中で、各種手当ての支給可能な「会計年度任用制度」が、2020年度よりはじまる。が、当然処遇改善で財政支出が増えるのだが、政府は、その分をどう手当てするのか明確にしていない。増えなければ、正職員から非正規への置き換えを加速させるテコとになる。一方、人手不足を「口実」に、公的分野を儲けの対象として民間開放する政策が安倍政権のもと露骨にすすめられておる。
真の「問題点」は、財界奉仕の自公政権にある。
【「役所がワーキングプアを生んでいる」 地方公務員5人に1人が非正規に 11/6】

【「役所がワーキングプアを生んでいる」 地方公務員5人に1人が非正規に 11/6】

「ワーキングプア」という言葉が日本で広がったのは10年ほど前のことだった。この間、ワーキングプアの大部分を占める「非正規雇用」は公務員にも拡大。中でも、地方自治体の非正規職員は2016年、約64万3000人に達した。2005年の約45万6000人から4割以上も増え、行政の現場は今や「5人に1人が非正規」だ。低賃金で不安定な働き方は、民間の非正規労働者と変わらない、まさに「官製ワーキングプア」である。一貫してこの問題に取り組んできたNPO法人「官製ワーキングプア研究会」理事長の白石孝さん(68)にインタビューした。(藤田和恵/Yahoo!ニュース 特集編集部)

◆あらゆる部署に「非正規公務員」

総務省の公表資料によると、非正規公務員約64万3000人の職種別内訳は「事務補助」が約10万人、「教員・講師」が約9万人、「保育所保育士」が約6万人である。

また、自治労(全日本自治団体労働組合)の調査では、非正規公務員の割合は「都道府県」より「市町村」のほうが高い。「町村」に限れば、その比率は37%にも達する。財政難の自治体では「2人に1人が非正規」というところもある。職種別では、学童指導員や消費生活相談員の9割、図書館職員や保育士などの6割などとなっており、市民と直接接する機会が多く、専門的なキャリアが求められる部署で増加が目立つ。賃金は「月給16万〜18万円未満」が3割と最も割合が高く、多くがフルタイムに近い働き方をしながら年収200万円程度を下回るとみられる。

ワーキングプアとは、正社員か、非正社員であるかを問わず、フルタイムで働いても、生活保護水準以下の収入しか得られない貧困層を指す。こうした調査から見えてくるのは、公正で安定した公共サービスの提供を求められる自治体が自ら大量のワーキングプアを生み出している、という図式だ。

――総務省が統計の対象とした非正規雇用の地方公務員は「任用期間6カ月以上」などに限られています。ということは、この統計が示す「約64万3000人」に含まれない非正規の地方公務員もいるということでしょうか?

「私の知り合いに東京都の臨時職員の女性がいるんですが、彼女の任用期間は2カ月単位、最大6カ月です。なので、その時点で総務省の統計から漏れています。2カ月ごとに職場が変わるので、有給休暇もゼロ。そして6カ月働くと、1カ月の空白期間を挟んで再び任用される。こうした働き方をもう10年以上も続けています。以前、まだ幼かったお子さんがインフルエンザにかかり1週間の登校禁止になったとき、仕事を休まざるを得なかったのですが、有休がありませんから、その間の給与はまるまるカットになりました」

「それから、この総務省統計には国の非正規公務員が含まれていません。例えば、厚生労働省の機関であるハローワークでは、相談員の6割は非正規。その数はおよそ1万6000人ですが、このデータには入っていません。彼らは1年ごとの更新です。安定した雇用や求人を紹介するのが仕事のはずの彼らが、突然、雇い止めに遭う。そうした相談員からは(更新時期の)年度末が近づくたび『4月からは自分がカウンターの向こう側に座ることになるかもしれない』という不安の声が、研究会にも数多く寄せられます」

――行政の業務を外部委託によって賄うケースも増えています。自治体側の委託費切り下げによって、こうした現場では、最低賃金割れや偽装請負、不適切な孫請けなども発生していると聞きます。

「自治体では、庁舎清掃や電話交換といった仕事の外部委託が進んできました。受付や窓口の業務を派遣社員で賄う自治体も増えている。官製ワーキングプアの問題は『公共サービスに従事している労働者全体の問題』だと考えているのですが、こうした外部委託先の民間企業で働く人たちの数は、公務員の扱いではないので、当然、これらの統計には含まれません。つまり、官製ワーキングプアの全体像はこうした数字からは見えてこないのです」

「非正規公務員の給与は『人件費』ではなく、『物件費』などとして予算計上されていることをご存じですか? また、外部委託の場合は『委託費』に含まれます。いずれも定数をベースにした『人件費』ではないので、実態の把握さえ簡単ではありません。研究会では、地方自治体の非正規公務員だけでも、ゆうに70万人を超えるとみています」

◆「官製ワーキングプア」 問題の核心は雇い止め

――白石さんは2011年に退職するまで、40年近く東京都荒川区の職員でした。長年、正規公務員として勤めたのに、なぜ非正規公務員に関心を持ったのでしょうか?

「区役所に就職した当時、周囲を見渡すと、ほとんどが正規職員だったんですね。ところが、2001年に職員労組の書記長に立候補したころは、様子が一変していました。私がいた職場では、10人ほどの職員のうち正規は半分ほど。残りは、嘱託、臨時、派遣といった非正規でした。彼らは組合員ではないので、労組執行部を選ぶ時、投票ができません。そう言えば、非正規の人たちは夏と冬のボーナス支給日、『今日だけは出勤したくない』とこぼしていたな、ということにも気が付きました。彼らにはボーナスがないからです。正規とほとんど同じ働き方をしていても、年収は私たちの3分の1以下でした」

「そのころ、ボーナスの時期になると、組合は労働金庫と一緒に、出勤する職員に『ボーナスは労金へ』というチラシを配っていました。非正規職員もこのチラシを強制的に受け取らされていたわけです。私が組合の書記長になって初めにやったことは、このチラシ配りをやめることでした。続いて非正規職員も有給休暇を取れるように人事に掛け合いました。労組への加入も進めました。書記長時代、区役所内の非正規職員の組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は35%までいきました」

「かつて、役所の非正規職員といえば、主に『家計を助ける主婦』といったイメージがありました。そう思っている人は今もいるのではないでしょうか。実際は違います。特に2000年以降は人数も急増し、男性やシングルマザー、若者などあらゆる層に広がりつつある。その多くが、役所からの収入で生計を立てなければならない、ワーキングプア状態にあります」

――退職後にNPO 法人「官製ワーキングプア研究会」を発足させました。どんな活動を?

「一つの労働組合では、できることに限界があります。広く社会運動として進める必要があると考えたわけです。ですから、学者や弁護士、政治的な枠組みを超えた労働組合の役員、当事者である非正規公務員、ジャーナリストといった方々に参加を呼びかけました」

「研究会の主な仕事の一つは、相談業務です。弁護士や自治体担当者、マスコミなどからは法律や制度に関する問い合わせがありますし、非正規公務員当事者からの相談もあります。彼らが直面する問題の本丸は、やはり『雇い止め』なんです。東京の武蔵野市では、21年間も国保のレセプト審査に携わっていた嘱託職員が『みんな5年で辞めているのに、あなただけ続けているのはわがまま』と言われて雇い止めにされたことがあります。ハローワークの非正規相談員で、セクハラを告発し、被害自体は認められたのに、その直後に、10年近く勤めた職場を突然、雇い止めにされたシングルマザーの方もいました」

――雇い止めは、民間の非正規労働者にとっても死活問題です。

「この2人はそれぞれ裁判を起こしましたが、雇い止めは覆りませんでした。民間の非正規労働者なら、長年契約更新を繰り返していたり、合理的な理由がなかったりする場合、雇い止めは認められません。これに対し、非正規公務員が雇い止め撤回訴訟で勝った事例は、私が知る限り、一つもない。非正規公務員は、労働契約法もパート労働法も適用されないからです。かといって、正規公務員のような手厚い身分保障があるわけじゃない。彼らが『法の谷間に落ち込んだ存在』といわれる理由はそこにあります」

「研究会は2015年、全国の自治体を対象に『非正規公務員ワークルール調査』を行いました。非正規公務員の勤務条件や社会保険の加入状況、福利厚生など50項目について調べ、それらの達成度を自治体名も含めて公表したんです。実数さえ分からない非正規公務員の働かされ方を、少しでも明らかにすることが目的でした。その結果、下位にランキングされた自治体は休暇制度などを見直してくれました。この調査結果は、研究会のホームページでも公開しています」

◆非正規は「命の重さ」にも差

今年8月、「公務災害 非常勤も申請可」「総務省、全国の自治体に要請」「北九州の元職員女性自死 契機」というニュースが流れた。それ以前は、一部の自治体では、非正規公務員は仕事で亡くなったり、けがや病気になったりしても、公務災害(労災)の請求さえできなかったのだ。給与や福利厚生どころか、非正規と正規には「命の重さ」にも格差があった。

――北九州市のケースは何が問題だったのでしょうか。

「ニュースになった元職員とは、嘱託職員だった森下佳奈さんです。2012年から、子ども・家庭問題の相談員として働いていましたが、在職中にうつ病になり、退職後の2015年に27歳で自ら命を絶ちました。『(上司からにらまれ)怖くて電話できらんし、窓口もできらん』『死んでしまいたいわ』といった悩みをメールなどに残していました」

「ご両親は、自殺は過重な業務負担や上司のパワハラが原因だとして、市に労災請求したのですが、市は『条例上、非常勤職員や遺族に請求権はない』と回答してきたんです。ご両親は昨年8月、門前払いは不当だとして市を提訴しました。今年7月にはお母さんの眞由美さんが、(地方自治体を所管する)総務省の野田聖子大臣(当時)に手紙を書かれました。すると、すぐに直筆の手紙が返ってきたんです。『子を持つ母親として、大切な命が失われる不幸をなくす』という言葉と、『非正規公務員に対する不合理な対応を見直すよう、各自治体に求めるつもりだ』という趣旨のことがつづられていたそうです。実際にその直後、全国の自治体宛てに関連の条例の見直しを求める通知が出されました」

研究会も一連の問題を重視し、この春、都道府県や政令市などの自治体を対象に、非正規公務員の労働安全衛生制度に関する調査を実施した。この結果、回答があった139自治体のうち、非正規公務員からの労災請求を認めていない自治体が23もあることが分かった。「本人申請できる」と回答した自治体の中にも、条例で明文化していないところも複数あったという。命と健康にかかわる制度が、自治体によってバラバラであることが、明らかになった。

「佳奈さんのお母さんは『娘が生きた証しのため、私が闘わなきゃ』とおっしゃっていて、その言葉を聞いたときはグッと胸に迫るものがありました。ご両親の訴えが理不尽な制度を変えたといえますし、研究会も理論面から、少しだけお手伝いができたかなと自負しています」

◆非正規を正規に戻す取り組みを

――非正規公務員は今も増え続けています。何か改善策はあるのでしょうか。

「韓国・ソウル市の取り組みは参考になるかもしれません。ソウル市でも非正規公務員が増え続けてきましたが、2011年以、段階的に正規化する政策が進んでいます。まず、市の非正規職員約1400人を雇用期限に定めのない無期雇用に転換し、賃金アップを実現しました。さらに、清掃や警備など市の外部委託先で働いていた労働者を、市の関連子会社の直接雇用とした後、無期転換させました」

「この結果、確かに人件費は増えました。でも、委託にかかっていた管理経費が大幅にカットされ、例えば、清掃部門の予算は5%圧縮できたそうです。正規化は、必ずしも財政を圧迫するわけではないんです」

――2020年4月からは、臨時・非常勤職員は、新たに設けられた「会計年度任用職員」にほとんど移行されます。

「この制度については、マスコミなどでボーナスが出ることばかりがアピールされました。一方で、職員は公募試験を毎年受けなければなりませんし、そのたびに1カ月の試用期間を経なくてはならない。毎月の給与自体は、下がる恐れがあるともいわれています。より雇い止めをしやすくし、将来的にはその業務をまるごと外部委託することが想定されているのではないでしょうか。ソウル市とは逆の政策ですね」

「非正規公務員がここまで増えてしまった今、公務職場の職員労働組合が官製ワーキングプアの問題に取り組まないとしたら、その存在意義はもはやないと思います。正規公務員の中には、いまだに『公務員試験を通った正規と、非正規の待遇が違うのは仕方ない』と言う人がいます。しかし、同じような働き方をしているのに、給料が3分の1以下、ボーナスもゼロ、労災申請もできないなどという実態は、もはや人権の問題です。非正規公務員が安心して働けるようになれば、公共サービスの質も向上します。官製ワーキングプアの問題を解決することは、サービスを受ける側の、私たち市民にとっても大切なことなんです」

●白石孝(しらいし・たかし) 
NPO法人「官製ワーキングプア研究会」理事長。1974〜2011年、東京都荒川区役所に勤務。2001年から職員組合の書記長を務め、退職後の2011年に同研究会を発足させた。今年3月、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長へのインタビューを含む編著『ソウルの市民民主主義 日本の政治を変えるために』を発刊。同研究会のHP


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