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「記者殺害」でも「武器売却」に固執…雇用数を盛って国民威嚇 米政権

 当初、サウジの武器売却で4万人の雇用効果と言っていたのに、サウジの「記者殺害」で、武器売却への批判が高まると「100万人の雇用が失われる」と、合理化しようとしている。
が、そもそも生産ラインはあるので、増加するのは生産であり、雇用ではなく、軍需企業の儲けを増やすだけとの指摘もある。またサウジと契約した1100億ドルがそもそも盛った数字とも言われている。
 「人権」を、外交の武器にしてきた米国。今までもダブルスタンダードだったが、こうもあからさまでは・・・。外交的影響も大きい。
【コラム:米国のサウジ武器売却、「中止なら雇用喪失」は本当か ロイター10/24】
【トランプ氏のサウジ傾斜、陥った大きなジレンマ The Wall Street Journal発 10/26】

【コラム:米国のサウジ武器売却、「中止なら雇用喪失」は本当か ロイター10/24】

[ワシントン 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領のサウジアラビア向けの武器売却契約は、実際のところ、大統領が見込むような雇用創出効果はない。

 10月23日、トランプ米大統領(写真)のサウジアラビア向けの武器売却契約は、実際のところ、大統領が見込むような雇用創出効果はない。ワシントンで撮影(2018年 ロイター/Leah Millis)
トランプ氏は、100万人の雇用が脅かされるとして、武器売却中止によるサウジへの制裁を避けるよう議会に求めている。ただ、武器売却はロッキード・マーチン(LMT.N)など米航空防衛機器大手の利ざやを押し上げるかもしれないが、雇用にはあまり寄与しないだろう。
サウジの反体制派記者ジャマル・カショギ氏の死亡事件を巡り、米国では同国に対する制裁を求める議員が増えている。トルコのイスタンブールにあるサウジ総領事館で殴り合いになって同記者が死亡したというサウジ政府の説明に、米議員は納得していない。

上院外交委員会の委員長を務めるボブ・コーカー議員(共和党)は21日、CNNに対し、サウジは「信頼性を失った」と語った。
トランプ氏は昨年、大統領として初の外遊でサウジへの武器売却契約を発表して以来、大々的にこのディールを宣伝してきた。今年3月、サウジのムハンマド皇太子が訪米した際には、トランプ大統領は同契約により4万人分の雇用が生まれると語った。
しかしサウジへの強硬姿勢を求める声が高まるにつれ、トランプ氏はその数をつり上げていき、今月に入り45万人としていた雇用数は19日には100万人に急増している。

だが外国への武器売却により恩恵を受けるのは、主に米国防総省の仕様に合わせて武器を開発する請負業者だ。
ロッキードは昨年、サウジが約280億ドル(約3.1兆円)相当の防空システムやミサイル防衛システム、戦闘艦や戦術航空機を購入する意向だと明らかにした。その大部分は、ロッキード社製の高高度防衛ミサイル(THAAD)に関わるものだ。

これら製品の大半は、米軍や他の顧客向けにすでに製造されている。つまりそれは、サウジの注文によって増加が見込まれるのは生産であり、雇用ではない。THAADの売り上げによって、ロッキードのミサイル・射撃統制部門の今年1─9月の営業利益率は、過去最高の14.4%にまで上昇した。
サウジとの契約がどうなろうと、実質的に雇用が増減することはないと防衛アナリスト2人は指摘する。ロッキードは昨年、サウジとの契約が完全に履行されれば、向こう30年にわたり、米国内で約1万8000人の雇用を支えることになると明らかにした。
現時点で、ロッキードは約200億ドル相当のサウジ向けの売却が終了したことを米議会に通知している。これは同社の取引がほぼ最終段階にあることを意味する。残りの契約が前進したとしても、雇用には大きな変化はないだろう。 Gina Chon

【トランプ氏のサウジ傾斜、陥った大きなジレンマ The Wall Street Journal発 10/26】 Peter Nicholas and Rebecca Ballhaus 

 ドナルド・トランプ米大統領が昨年にサウジアラビアを訪問するに当たり、その準備で毎日のように対話していた2人がいる。大統領上級顧問ジャレッド・クシュナー氏と、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子だ。
 事情に詳しい関係筋によると、大統領の娘婿であるクシュナー氏は、サウジの約束を確定させ、トランプ氏が初の外遊で面目を失わないよう尽力していた。
 2日間の日程でリヤド訪問を終えたクシュナー氏とホワイトハウスは、サウジが約束を果たしたと考えた。サウジはテロとの戦いや米国への巨額の投資を確約したのだ。
 2017年5月のサウジ訪問は外交政策上の大きな賭けだった。トランプ政権は、サウジとの関係を改善させ、大きな果実を手にしたいと考えていた。
 しかし、サウジの反体制派記者ジャマル・カショギ氏がサウジ工作員によって殺害されたことで、その賭けはリスクが増し、トランプ氏はジレンマを抱え込むことになった。自身が2年間かけて育んできたサウジとの協力関係を脅かすことなく、サウジをいかに罰するかというジレンマだ。
 トランプ氏はサウジに対する制裁を示唆し、米国務省はサウジ政府当局者ら21人(氏名は公表せず)の入国を制限した。しかし、米国の対応は一部同盟国が求めていた内容には及んでおらず、それが各国との新たな不和を招く可能性がある。オバマ前政権がサウジとの関係を損ねたとするトランプ氏とホワイトハウス高官らは、両国関係を維持する重要性を強調し、サウジ指導者らと敵対するのを避けている。

◆極めて好ましい同盟国

 トランプ氏は23日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、カショギ氏殺害について事前に情報を得ていなかったとするムハンマド皇太子の主張を信じたいと述べた。
「サウジは極めて好ましい同盟国だ」。こう表現したトランプ氏は「彼らは米国の軍装備品などに多大な投資をしている。彼らは米国から膨大な量の品々を購入している。だから私は絶対に彼を信じたい」と語った。
 トランプ氏の対応を難しくしているのは、カショギ氏失踪に関してトルコ当局者から小出しに発信される情報だ。それらの情報は、事件に関するサウジ側の説明とことごとく矛盾していた。
 トランプ氏はインタビューで「極めて悲しむべき状況であり、明らかに当初から非常にまずい対応だった」と述べた。

 一方、ムハンマド皇太子は24日、事件後初めて公式発言の中で事件を「忌まわしい出来事」だと語り、トルコ当局と協力する意向を表明した。
 トランプ氏が危機に対応するなか、その姿勢には民主党から厳しい監視の目が注がれている。同氏にはサウジとの間にビジネスの歴史があるからだ。トランプ氏は2015年8月、大統領選の遊説で「サウジについて言えば、私は彼らとうまくやっている。サウジは私から複数のマンションを購入した。彼らは4000万~5000万ドル(約44億8000万~56億円)を支払った」と述べていた。
 米司法省の記録によれば、大統領選後の数カ月間にトランプ氏が保有するワシントンのホテルは、サウジによるロビー活動の一環としてサウジ絡みの資金およそ27万ドルを受け取っている。

 一方でトランプ氏は、2001年の米同時多発テロ事件でハイジャック犯19人のうち15人がサウジ国籍だったとして、たびたびサウジを非難してきた。
 WSJとのインタビューでトランプ氏は、「ブッシュ大統領(当時)によるイラク攻撃に私は常に批判的だった。私は『イラクが世界貿易センターを破壊したのではない。連中はサウジから来たのだ』と言っていた」と、当時を振り返っている。

◆クシュナー氏がパイプ役

 それでもトランプ氏は、大統領に就任する前からサウジとの関係改善を検討していた。事情に詳しい関係者によると、サウジ当局は2016年の政権移行期間中にトランプ陣営に接近し、関係改善について米側の意向を打診してきたという。
 この提案に前向きだったのがクシュナー氏だった。同氏はイランの影響力排除や過激派組織「イスラム国」打破など、米国の掲げる目標でサウジと協力することを望んでいた。クシュナー氏は早い段階でムハンマド皇太子とのパイプ役となった。両者はともに30代で、大きな影響力と権力を持っている。
 トランプ氏は彼らのことを「仲が良い2人の若者」と称していた。
 ある関係者によると、元政府当局者らはメッセージサービスのワッツアップで連絡を取り合っている2人の関係を個人的かつ親密だと表現していた。ホワイトハウス当局者はクシュナー氏が外国の指導者と連絡を取る際には「(外交)儀礼とプロセス」に従っていると述べた。

 元政権関係者によると、米国の安全保障当局には、クシュナー氏が担う役割を不快に思う向きもあった。こうした人々は、ムハンマド皇太子に対応するのに適切なのは、国務長官か国家安全保障担当補佐官だと考えていた。一方、元国家安全保障担当補佐官のH・R・マクマスター氏などは、当初はサウジが米国への約束を果たすことに懐疑的だったかもしれないが、クシュナー氏がこうした役割を担うことを比較的受け入れていたという。
 ムハンマド皇太子は昨年ワシントンを訪問した際、国防総省で米当局者と非公式に会談し、テロについて話し合った。会談に詳しい人物によると、一部の当局者は皇太子がイランに焦点を向け過ぎると感じていた。すると、マクマスター氏が発言し、米同時多発テロのハイジャック犯にイラン人は1人もいなかったことを指摘する場面があったという。

 関係者らによると、サウジとの関係が深まるなか、クシュナー氏以外の米当局者もムハンマド皇太子との接触を増やし始めた。その中にはマクマスター氏やマイク・ポンペオ国務長官が含まれる。マクマスター氏は昨年、皇太子を自宅に招いて夕食を共にしたという。

 だが、カショギ氏殺害が厄介で複雑な事態を招いた。事情に詳しい人物らによると、10月10日にムハンマド皇太子とクシュナー、ボルトンの両氏との間で行われた電話会談は張り詰めた雰囲気だった。両氏は皇太子に対し、透明性の高い調査を行い、事実を迅速に公表するよう促したという。

◆数字が誇張された可能性

 トランプ氏はリヤド訪問時に発表した多額の武器輸出契約を自身の功績として語ることが多いが、この契約は規模が誇張されている可能性もある。
 交渉に携わったある関係者によると、ホワイトハウスからは当局者に対し、オバマ政権時代から引き渡しが保留になっているものを加えたり、他の分野を膨らませたりして1000億ドルを目標とするよう要請があった。きりの良い数字の方が聞こえが良いからだという。
 結局、約1100億ドルという数字が導き出された。同当局者は、承認プロセスが始まり、契約がまとまる段階になれば、数字はかなり小さくなる公算が大きいと述べている。

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