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介護施設 「ヒヤリ・ハット」体験7割超 人手不足で無資格職員採用

 介護労働安定センターによる2017年度「介護労働実態調査」〔8782事業所の職員21250が回答〕。施設の職員では業務上の事故の経験が32・9%、ヒヤリ・ハットの経験が72・5%。
人手不足のため現場経験が乏しい無資格者の採用が増え、技術の指導や教育が追いつかない現状が背景にあるとのこと。処遇改善など、働く環境の改善が不可欠である。
 そうした介護現場で増えているのが外国人介護士。ただし、日本に定住し、働き続けてもらうには、言葉の問題の克服など家族・子どもへのトータルな支援が必要となっている。
【介護現場「ヒヤリ・ハット」増 人手不足で無資格職員採用 東京9/19】
【介護現場を担う外国人 10年目の現場から NHKハートネット7/12】

【介護現場「ヒヤリ・ハット」増 人手不足で無資格職員採用 東京9/19】

 特別養護老人ホーム(特養)などの入所施設では、業務中の職員の三人に一人が利用者の事故やけがを経験、重大事故につながりかねない「ヒヤリ・ハット」体験は七割を超えた-。公益財団法人介護労働安定センター(東京都)による二〇一七年度の介護労働実態調査でこんな実態が分かった。人手不足のため現場経験が乏しい無資格者の採用が増え、技術の指導や教育が追いつかない現状が背景にある。 (五十住和樹)

 調査は、同センターが毎年実施。昨年度は施設や在宅のサービスを提供する八千七百八十二事業所の職員二万一千二百五十人が回答した。施設の職員では業務上の事故の経験が32・9%、ヒヤリ・ハットの経験が72・5%。施設での事故は、利用者がベッドや車いすから落ちて骨折するケースが多い。入浴の介助時に、利用者や職員が滑って大きなけがをすることもある。

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 研修などで講師を務める元ホームヘルパーの桜井和代さんは、「施設は人手が足りず、夜勤が増えて勤務がきつくなっている。介護福祉士などの資格を持たない人も多い。教育や研修のバックアップがなければ、事故の可能性は一層高まる」と警鐘を鳴らす。

 都内で特養などを運営する社会福祉法人の幹部は、「介護保険開始当初は、施設でも在宅サービスでも有資格者が当たり前だったが、人手不足が深刻な今は、無資格の人でも助かる」と現状を明かす。

 別の特養の施設長は、新人が日常の仕事をこなせるようになるには、最低でも三カ月かかると言う。新設の特養では職員が確保できず、ベッド数を予定より減らしてオープンしたという事例も。この施設長は「職員定着、そして十分な教育というところまでいかないのでは」とみる。

 介護現場の事故防止対策に詳しい、特養「レジデンシャル常盤台」(横浜市)施設長の高橋好美さんは「資格のある人を確保するのは大変。しかし、採用した人を育成するのは施設や法人の責任。人手不足は理由にならない」と指摘する。

 調査では訪問介護など在宅サービスの職員の事故経験は12・8%、ヒヤリ・ハットは39・6%だった。在宅の利用者と一対一で対応する介護職員は初任者研修修了者である必要がある。

 事故やヒヤリ・ハットの情報共有に努める施設もある。東京都東村山市の特養「白十字ホーム」は毎月、介護職や理学療法士ら九人による「安全管理事故防止委員会」を開催。十四日の会合では「夜間、ベッド脇で転倒が続いた」「入浴時に左腕や脇腹に内出血を見つけた」などの報告が続き、「車いす移乗時に脇に手を入れて内出血した可能性がある。移乗はタオルを使って二人で行う」などと対策を話し合った。

 ホーム長の西岡修さんは「うちでは年間約四百件のヒヤリ・ハットがある。重大事故にならないよう事例を共有して、職員に気付きを促す」と話している。

◆実態調査 深刻さ浮き彫りに

 今回の介護労働実態調査では、介護現場の人手不足の深刻さが浮き彫りになった。不足を感じている事業所は四年連続で増えて過去最高の66・6%。不足の理由は「採用が困難」(88・5%)、「離職率が高い」(18・4%)などで、56・9%が「同業他社との人材獲得競争が激しい」と答えた。

 西岡さんは、調査の諮問委メンバーも務めており「介護職の魅力が下がり、専門職養成校の生徒が減ってきた。力量のある職員が少なくなった職場で、不足感が強まっている」と話す。


【介護現場を担う外国人 10年目の現場から NHKハートネット7/12】

2025年には、34万人の人材不足に陥るとされる日本の介護現場。そうしたなかで、いま、活躍が期待されているのが、外国人介護士たち。去年、新たな在留資格ができるなど受け入れが拡大しています。一方、受け入れを続けてきた現場では、さまざまな課題が浮き彫りになっています。日本人と外国人が“人と人”としてともに働くために、何が求められているのか。全国に先がけて10年前から外国人介護士を受け入れてきた施設の現状から考えます。

◆外国人は介護現場で欠かせない人材

いま、人手不足が深刻化する日本の介護現場が大きく変わろうとしています。流ちょうな日本語で、質の高いケアを提供する外国人介護士たち。いま、受け入れが拡大しています。その先がけとなったのが、EPA(Economic Partnership Agreement/経済連携協定)に基づいて来日してきた人たちです。

EPA・経済連携協定では、介護士の場合、日本の介護現場で働きながら研修を行い、4年目に介護福祉士の国家試験を受験して合格すれば、在留期間の上限なく働けると定めています。これまでに、インドネシア、フィリピン、ベトナムから、累計4,000人を超える人たちが来日。700人以上が介護福祉士の国家試験に合格しています。
制度が始まって10年。外国人介護士たちはいま、どのように働いているのでしょうか?

徳島県内のグループホームで働くユスフ・フィルダウスさんは10年前、EPAによる外国人介護士の受け入れ1期生としてインドネシアから来日。現場で働きながら、国家資格の取得を目指しました。そして猛勉強の末、介護福祉士の国家試験に合格。現在は正職員として責任のある仕事を任され、一緒に仕事をする職員たちからも信頼を集めています。

「すごく優しいんですよ。もう見たら、優しさが出てると思うんですけど。優しいし穏やかだし、利用者さんからも、職員さんからも評判がよくて。常に笑顔で接してくださるので、利用者さんにとっては安心できる存在になってると思いますね。」(同僚の職員)

さらに、介護福祉士の国家試験に合格後、さらなるキャリアアップをした人も。ユスフさんとともに来日し、EPAで来日した外国人として初めてケアマネージャーの資格を取得したアリフ・バスミンさん。現在は、現場の管理職も務めています。

「いまは介護の仕事と同時に、ケアマネージャーの仕事も兼務でさせていただいております。ケアマネージャーは、ケアプランを作ったり、それを家族さんに伝えたり、ほかの職種に伝えたりとかするのが、少し介護福祉士よりは大変かなと思いますね。でも、日本に来てよかったです。アイデンティティを探していたところだったので、日本に来てから、やっと見つけました。」(アリフさん)

この施設を運営する法人が受け入れた外国人はこの10年で283人。100人以上が介護福祉士の国家試験に合格しました。その陰には、専門部署をつくり、専属の職員が日本語や国家試験の勉強はもちろん、買い物に付き添ったり、食事をともにするなど、施設側の献身的な支えがあります。当初、外国人の受け入れは組織の活性化が目的でしたが、今や彼らはなくてはならない存在だと、法人で本部長を務める中村晃子さんは語ります。

「当時は、いまほど介護人材不足と言われるような状況ではなかったのですが、この10年で大きく状況は変わっていると思います。利用者さんも高齢化、重度化しています。人数が増えただけではなく、外国人介護士の役割や重みはますます高まっていますし、今後もさらにそれは続くと思います。」(健祥会グループ 本部長 中村さん)

◆人生の岐路に立つ外国人介護士たち

EPAで外国人介護士を受け入れ始めて10年。日本で働き続けてきた彼らの生活にも大きな変化が出てきました。30代になった1期生たちは、それぞれ人生の分岐点に立っています。

来日前、インドネシアで看護師をしていたワヒューディンさんは現在36歳。家族の生活を支えるため、よりよい待遇を求めて10年前に来日しました。現在は職場でリーダーを任され、日本での暮らしにも満足しているワヒューディンさんですが、いずれは帰国を考えているといいます。

「最初はですね、目的は3年だったんですね。3年まず、日本で働きたい気持ちね。それで、だんだん日本で、自分にとってこういう仕事は向いていると感じて、やりがいがあって、いま10年間になりました。日本で働いたおかげで、妹を大学まで行かせることができて、両親にはコーヒー農園とかも買ってあげて、人を雇える環境を作りました。日本の介護施設で仕事をしてもらった給料は、自分にとって高いレベルです。でも、長くても、あと5年間くらいかな。さらに、目指したいことがあります。インドネシアで事業を興したいので、そういうところをがんばっていきたいと思います。」(ワヒューディンさん)

◆外国人介護士の家族が抱える不安

家族とともに暮らす外国人介護士たちもまた、新たな悩みに直面しています。

国家試験に合格後、定住を目指してインドネシアから妻を呼び寄せたユスフさん。2人の子宝にも恵まれ、いまは家族4人で暮らしています。妻のウミさんは、慣れない日本での暮らしに、当初は大きな不安を抱えていました。
「一番困ったのは言葉ですね。ほとんど毎日家にいました。以前は車もなかったので、外出するのはモスクやスーパーのみでした。郵便屋さんが手紙を届けに来たときにも、日本語が話せないので、ドアを開けるのが怖かったです。」(ウミさん)

家族を呼び寄せた人がいる一方、この法人では受け入れた283人のうち、結婚や家族の事情などで、すでに120人以上が帰国しています。そこで、家族が日本でも安心して暮らせるようにと始めたのが、配偶者支援です。

現在は月に1度、外国人介護士とその家族、そして近所に住む日本人親子を招いて交流をはかっています。さらに、日本語が話せない家族のための日本語教室も開催。また、これまで言葉の問題などから仕事を見つけられずにいたウミさんに、施設の清掃のアルバイトをあっせんしました。こうしたサポートを受け、ウミさんの不安は少しずつ和らいできています。

一方、日本で生まれ育った子どもたちは、日本での生活にすっかりなじんでいます。しかし、成長にともなって、新たな悩みが生まれていると父親のユスフさんはいいます。

「娘は来年小学生になるのですが、イスラム教では女の子は9歳からジルバブ(スカーフ)をかぶらないといけません。それ以前に、ジルバブをかぶる練習をしてもらって、慣れてほしいのですが、周りの人はジルバブに慣れていないと思うので、友だちからいじめに遭ったり、悪いイメージをもたれたりしないか、ちょっと心配です。」(ユスフさん)

◆ともに暮らし働くために いま求められるサポートは?

外国人介護士の定着が難しい理由について、この問題に詳しい淑徳大学の結城康博教授は、もともとEPAは人事交流という側面があると指摘。そのため、一定期間だけ働いて帰国しようと考えている外国人も少なくなく、時間もお金もかけて受け入れる施設側との思惑がミスマッチしていると説明します。

「来日する外国人介護士は、来る前からいろいろと考えていて、その思いは、基本的には次の3つに分かれると思います」

① 資格を取ったら帰りたい
② 合格後 数年間働いたら帰りたい
③ ずっと日本で働きたい

日本で介護士の資格を取り、母国に戻って介護施設で働く人も一部います。また、日本で国家資格を取ることによって、介護以外で、例えば日系企業で採用されるということが、非常に多いですね。」(結城さん)

EPAのほかに、最近では技能実習制度に介護分野が加わっています。さらに、短大や介護の専門学校に留学している外国人が国家試験に受かれば、そのまま日本で働けることになるなど、外国人介護士の受け入れルートが増えているなか、家族も含めた支援など、定着をサポートする体制が求められていると結城さんは指摘します。

「施設側では限界があるので、公的な支援も必要です。外国人介護士を定着させるためには、施設側の努力と、(外国人介護士の)家族に対する支援が欠かせないと思いますね。」(結城さん)

タレントのサヘル・ローズさんは自身の体験から、家族に対する周りのサポートが大切だと語ります。

「誰かが親御さんの心の声を聞く、そういうケアもすごく大事なんだなって思います。今回、見ていて自分の母親と重なった部分があって。お母さんも一生懸命働いてはいても、言葉が分からなくて、外に出るのがおっくうになってしまう時期もあったり、社会から孤立してしまうんですよね。文化も違うし、言葉の壁もある。居心地のいい職場っていうのも大事ですけれども、居心地のいい生活環境っていうのも、隣人の私たちも一緒に考えて、制度だけとかではなく、施設だけではなくて、その地域社会でサポートすることも大切なんでしょうね。」(サヘルさん)

さまざまな在留資格ができ、介護だけでなく幅広い分野でこれからも外国人労働者が増えていくことが見込まれています。ともに暮らし、働く仲間として。私たち自身がともに考え、行動することがいま、求められています。

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