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在宅被災者戸別訪問の結果を踏まえた災害法制に関する提言 仙台弁護士会

 東日本大震災の被災者で、半壊・一部損壊した住宅に住み続けている「在宅被災者」。その支援を続けているチーム王冠のウェブサイトを開くと、仙台弁護士会と協働で実施した実態調査にもとづく提言が2月に発表されていた〔以前、石巻の実態調査にもとづく提案について、県議会で活用させていただいた〕。

 西日本豪雨、北海道地震など大規模な災害が続いた。東日本大震災から数年を経た時期の実態調査にもとづく提言であり、当初からどういう視点で対策を強化すべきか、重要である。

【仙台弁護士会、「在宅被災者戸別訪問の結果を踏まえた災害法制の整備・運用に関する提言書」を発表 チーム王冠3/15】

【宅被災者戸別訪問の結果を踏まえた災害法制の整備・運用に関する提言書 2018年02月08日】

【仙台弁護士会、「在宅被災者戸別訪問の結果を踏まえた災害法制の整備・運用に関する提言書」を発表 チーム王冠 3/15】 チーム王冠と協働で在宅被災者の実態調査に取り組んできた仙台弁護士会(会長亀田紳一郎)が、2011年3月の東日本大震災で被災した家屋に未修繕のまま済み続ける在宅被災者の戸別訪問調査の結果を踏まえ、提言書を発表しました。 約2年で在宅被災者など延べ563軒を訪問。聞き取った約8割が65歳以上の高齢者で、低所得の「災害弱者」が目立ったほか、仮設住宅に比べ物資や情報が集まりにくいという指摘も寄せられました。 提言では、在宅被災者向けに災害時に弁護士が戸別に住宅を回り、適切な補助金の申請などを手伝えるよう法整備が必要だとしました。山谷澄雄弁護士は「首都直下地震では仮設住宅が足りなくなることも想定される。在宅被災者対策をより強化しなくてはならない」と述べました。
【宅被災者戸別訪問の結果を踏まえた災害法制の整備・運用に関する提言書 2018年02月08日】

2018年(平成30年)2月8日
仙台弁護士会 会長 亀田紳一郎

第1 提言の趣旨
1 国に対し、災害時におけるアウトリーチ型法律相談事業の法制化を求める。
2 国に対し、弁護士等専門家が関与する災害ケースマネジメント事業の法制化を求める。
3 国・県・市町村に対し、被災者間の支援格差・情報格差が生じないよう、災害救助法・災害対策基本法に基づく施策を適切かつ確実に運用することを求める。
4 国に対し、災害救助法に基づく応急修理費用の増額を求める。
5 国・県・市町村に対し、今後発生する災害において、災害救助法に基づく応急修理制度を利用した被災者であっても個別事情に応じ応急仮設住宅に入居できるよう、運用改善を求める。
6 国に対し、被災者生活再建支援金のうち加算支援金の上限額を少なくとも500万円に増額することを求める。
7 市町村に対し、今後発生する災害において、加算支援金を受給した被災者であっても個別事情に応じ災害公営住宅に入居できるよう、運用改善を求める。
8 県・市町村に対し、自治体の独自事業について、被災者の実情を踏まえた制度の策定及び運用をするよう求める。

第2 提言の理由

1 はじめに

当会は、平成27年11月1日から平成29年11月30日にかけて、在宅被災者に対する戸別訪問型法律相談を実施し、その訪問戸数は、通算で563世帯に及んだ。この在宅被災者戸別訪問を通して、被災者支援に関する様々な課題が浮き彫りとなった。
 そこで、当会は、在宅被災者戸別訪問の結果を踏まえ、以下のとおり提言するものである。

2 アウトリーチ型法律相談・災害ケースマネジメントの法制化(提言の趣旨第1項及び第2項)

⑴ アウトリーチ型法律相談の必要性

在宅被災者戸別訪問を通して、在宅被災者の多くは、十分な支援や情報が行き届かず、住宅の再建や生活の再建もままならず、劣悪な住環境の中での生活を余儀なくされている等、様々な課題を抱えていることが明らかとなった。
 しかしながら、在宅被災者戸別訪問の相談者の約8割が65歳以上の高齢者であり、かつ、その多くは年金受給者など低所得者で金融資産もない者であった。また、このような高齢者を始め、疾病・障害等の事情を抱えたいわゆる災害弱者の場合、法律相談所や法律事務所に出向くこと自体が困難である。
 その結果、在宅被災者などの災害弱者は、課題を解決しないまま自宅に閉じこもり、行政や弁護士等に相談するきっかけもつかめないまま、ただ時間だけが経過していく状況にあったことも明らかとなった。
 このような在宅被災者などの災害弱者に対して、必要な法的支援を行うためには、法律相談所等による法律相談の実施のみでは不十分であり、弁護士が、いわゆる災害弱者と呼ばれる方々の自宅等に訪問して相談を行うことが必要である。

⑵ 災害ケースマネジメントの必要性

在宅被災者個別訪問を通して、個々の被災者ごとに抱える課題は千差万別であることが浮き彫りとなり、被災者の個別事情に応じた支援や行政・福祉機関の連携が必要であることが確認された。そして、被災者が抱える課題は一度の相談で一挙に解決するものはそれほど多くなく、むしろ複合的重層的な課題を抱えていることが多く、その解決には多岐にわたる専門知識が必要とされる。
 たとえば、住まいや生活の再建についていえば、建物・土地の応急危険度判定制度の判定結果を踏まえて、建物・土地の居住の可否やその管理方法、災害救助法に基づく応急修理制度の利用の是非の判断、被災者生活再建支援金(特に加算支援金)の利用等の問題につき、長期にわたり継続的に専門家に相談し助言を受け、家族で協議してはまた専門家の相談を受けるなどの経過を辿って方向性を決定するに至ることが想定される。
 そして、そこでの相談結果は、各種士業や平時の社会福祉政策を担う専門家、自治体の復興事業等に引き継がれていくことによって、現実の解決に結びついていく。
 これらの支援策を一体的に実施していくためには、いわゆる「災害ケースマネジメント」(被災者一人ひとりの個別状況に合わせた必要な支援を実施するために、被災自治体が被災者台帳を作成・活用する等し、また、被災者一人ひとりの個別の被災の影響を把握し、それに合わせた支援策をパッケージし、各種専門家と連携して、支援を実施していく仕組み)の構築が必要である。

⑶ 法制化の必要性及びその手法

被災者は、災害発生直後から、様々な課題に直面する。したがって、アウトリーチ型法律相談及び災害ケースマネジメントは災害発生直後から実施する必要があり、そのためには、災害の発生に先立ってこれらの制度が法制化され、必要な予算措置を速やかに講じることができる仕組みが不可欠である。
 なお、これらの法制化の手法の1つとして、生活困窮者自立支援法、及び「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(以下、「激甚法」という。)の活用が考えられる。
 すなわち、生活困窮者自立支援法は、「生活困窮者自立相談支援事業」の1つとして、「就労の支援その他の自立に関する問題につき、生活困窮者からの相談に応じ、必要な情報の提供および助言を行う事業」を定め(同法2条2項1号)、また、「当該生活困窮者に対する支援の種類及び内容・・・を記載した計画の作成その他の生活困窮者の自立の促進を図るための支援が一体的かつ計画的に行われるための援助として厚生労働省令で定めるものを行う事業」(同法2条2項3号)を定めている。このように、生活困窮者相談支援事業は、被災者を直接の対象とするものではないものの、ケースマネジメントを通じて生活困窮者の自立の支援を実施するものであり、生活に困窮した被災者に対する災害ケースマネジメントにも活用ないし応用しうるものである。
 また、激甚法は、激甚災害が発生した場合における地方公共団体に対する財政援助等について定めているが、その対象事業(同法3条1項)に生活困窮者自立支援法に規定する生活困窮者自立相談支援事業を加えることにより、激甚災害が発生した場合、地方公共団体は、国の財政支援を受けつつ、生活困窮者自立支援法に基づくケースマネジメント事業を実施することが可能となると考えられる。

3 支援格差・情報格差の問題(提言の趣旨第3項)

在宅被災者には、避難所に避難していたり仮設住宅に入居している被災者等と比較して、必要な支援や情報が十分に行き届いていなかったという事例が多数報告されている。
このような問題が生じた原因としては、国・県・市町村等をはじめとする関係者に、在宅被災者が被災者だとの認識が薄かったことが挙げられるほか、災害対策基本法、防災基本計画、地域防災計画、及び各種マニュアルにおいて、在宅被災者に対する情報提供・支援方法等が盛り込まれていなかったことが挙げられる。
この問題については、東日本大震災後、災害対策基本法が改正され(避難所以外の場所に滞在する被災者についての配慮(86条の7)、情報の収集及び伝達等(51条)、国民に対する周知(51条の2)、避難行動要支援者名簿の作成(49条の10)、名簿情報の利用及び提供(49条の11)、名簿情報を提供する場合における配慮(49条の12)、被災者台帳の作成(90条の3))、一定の立法的手当はなされるに至った。
しかしながら、支援格差・情報格差の問題が生じないようにするためには、かかる改正災害対策基本法や災害救助法に基づく施策が、被災地の現場において適切かつ確実に運用されることが必要不可欠である。また、そのためには、防災訓練やシミュレーション訓練等を平時から行っておくことが必要である。

4 応急修理制度の増額(提言の趣旨第4項)

災害救助法が定める応急修理制度は、同制度を利用して応急的に修理すれば居住可能となることが予定されているものであるが、東日本大震災当時は1戸当たりの上限額が52万円にとどまっていた。
 そのため、在宅被災者の中には、人件費や資材の高騰も相まって、同制度を利用しても、床や外壁、風呂・トイレ等、居住に必要不可欠な部分の補修すらままならなかったとの事例が多数報告されている。
 平成26年度には、上限額が54万7000円に若干増額されたものの、修理費用としてはいまだ不十分であることは明らかであり、更なる増額が必要である。

5 応急修理制度利用者の仮設住宅への入居拒否問題(提言の趣旨第5項)

災害救助法が定める応急修理制度を利用したことを理由として、仮設住宅への入居が拒否されたとの事例が報告されている。
 この問題は、応急修理制度の利用により、仮設住宅の供給要件の1つである「居住する住家がないもの」との要件(災害救助法23条3項、「災害救助法による救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の基準」(いわゆる「一般基準」)2条2号イ)を充足しないとの解釈・運用がなされたことに起因する。
 しかしながら、たとえ応急修理制度を利用しても、十分な補修を行うには至らず、仮設住宅への入居が必要となる被災者が存在することは明らかである。
 したがって、応急修理制度を利用した被災者であっても、個別事情に応じて仮設住宅に入居することが可能とする運用がなされる必要がある(なお、石巻市は、当会とのケース会議等による協議を踏まえ、応急修理制度を利用した在宅被災者であっても、戸別状況の確認によって仮設住宅への入居を可能とする運用改善を実施した。このような運用改善が全国的に実施されることが望まれる)。

6 被災者生活再建支援金の増額(提言の趣旨第6項)

被災者生活再建支援金を利用して住宅の修繕を試みたものの、人件費や資材の高騰等もあいまって、資金不足により、十分な補修ができず、いまだ住環境が復旧していない在宅被災者が多数存在することが報告されている。
在宅被災者支援活動に携わった建築士等によれば、十分な修繕を行うためには500万円~600万円程度の費用が必要となる被災者が相当数存在したと報告されている。しかしながら、現行制度における被災者生活再建支援金の上限額は、建設・購入にかかる加算支援金200万円、補修にかかる加算支援金100万円、賃貸にかかる加算支援金50万円にとどまっており、到底十分な金額とは言えない。
 以上のような実情を踏まえれば、被災者生活再建支援金のうち加算支援金の上限額を少なくとも500万円に増額することが必要である。
 なお、東日本大震災では、仮設住宅1戸当たり約1000万円、災害公営住宅の建設費用として1戸当たり約2000万円の工費が投入されている。また、首都直下地震や南海トラフ地震が発生した場合には、仮設住宅や災害公営住宅の建設用地の確保が困難となることも想定される。この点、被災者生活再建支援金を十分な補修が可能となる程度の金額まで増額し、被災者が従前居住していた住居に継続して居住することが可能となれば、その分、仮設住宅や災害公営住宅の建設戸数は抑えられ、用地取得費用や工費も大幅に削減することが可能となり、被災者の生活再建に資するのみならず、財政的にもより合理的かつ効率的である。

7 加算支援金受給者の災害公営住宅への入居拒否問題(提言の趣旨第7項)

被災者生活再建支援法に基づく加算支援金を受給して住居を補修した被災者の中には、十分な補修がかなわず住環境が悪いために、復興公営住宅への入居を希望したにもかかわらず、拒否された例が報告されている。
このような事例が発生したのは、加算支援金を受給した被災者は、復興公営住宅の入居要件である「現に住居に困窮していることが明らかな者であること」(公営住宅法23条3号)に該当しないとの解釈運用がなされていたことによる。
 しかしながら、加算支援金の金額には上限があり、必ずしもすべての被災者が十分な補修がなしうるとは限らない。にもかかわらず、加算支援金を受給したことを理由として、被災者の住環境如何にかかわらず災害公営住宅への入居を拒否することは、被災者が置かれている実態にそぐわない運用であると言わざるを得ない。
したがって、たとえ加算支援金を受給していた被災者であっても、その住居の状況等によっては、災害公営住宅への入居を柔軟に認める運用がなされるべきである(なお、石巻市においては、加算支援金を利用した被災者についても、家屋の状況等の事情如何によっては、災害公営住宅への入居を一概に否定しないとの見解が示されるに至っている。このような運用が他の自治体でも採用されることが望まれる)。

8 自治体の独自事業の運用改善(提言の趣旨第8項)

自治体の独自事業の策定・実施の過程において、被災者の実情にそぐわない運用がなされた事例が報告されている。
  たとえば、ある自治体が独自に立ち上げた住宅再建補助事業に関し(なお、独自の補助事業を立ち上げたこと自体は、高く評価できるものである)、補助金申請の添付資料として修繕にかかる領収証等がないことを理由として、補助事業の利用が拒否された事例が複数報告されている。
 しかしながら、被災後に、大工を職としていたり、あるいは日曜大工の延長で自分で住家修繕をした在宅被災者も多数存在していることが確認されており、また、補修工事を行った業者と連絡が取れなくなっている被災者も確認されている。
 それにもかかわらず、補助事業の申請に際して、被災者の個別事情如何にかかわらず一律に領収証添付を求めることは、被災者の実情を看過したものと言わざるを得ない。
 被災者の実情を踏まえれば、たとえ領収証がない場合においても、建築士などの専門家の意見書等、領収証に代わる資料の添付で代替させられる必要がある。
以上の例にとどまらず、自治体が独自事業を実施するにあたっては、被災者の実情を踏まえた制度の策定及び運用がなされることが必要である。

以 上

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