東京医大女性差別~ 社会の停滞の正確な尺度
150年前のマルクスの言葉(クーゲルマンへの手紙 1868年12月12日)。
「いくらかでも歴史を知っている者はだれでも、大きな社会的変革は、女性の力の働きなしには起こりえないことを知っています。社会の進歩は、美しき性の社会的地位を尺度として、正確にはかることができる」と指摘した。
女性問題だか、男性問題であり、社会のありようの問題。男性の長時間過密労働、労働力の再生産過程としての女性の家事、子育てを前提とした社会は、資本主義のもとでも、少子化、経済成長の低迷として破たんしている。
【性差別、職業選択の自由侵害 女子減点「違憲の疑い」 東京8/5】
【過労自殺医師の遺族警告「女性排除 男性の命も削る」 女性医師次々去り負担集中 東京8/22】
【性差別、職業選択の自由侵害 女子減点「違憲の疑い」 東京8/5】東京医科大(東京都新宿区)が一般入試で女子受験者の得点を一律に減点していた疑惑は、性別を理由とした恣意(しい)的な得点操作といえるだけに、性別などによる差別を否定した憲法に違反している可能性が高いとの指摘が出ている。憲法学者で女性の人権に詳しい仏教大の若尾典子教授=写真、仏教大提供=に聞いた。 (聞き手・川田篤志)
-憲法上の問題は。
「『法の下の平等』で性別などによる差別を否定した憲法一四条に違反している疑いが強い。不正操作は『妊娠や出産を機に職場を離れる女性が多く、系列病院の医師不足を回避する目的』と報道されている。事実なら明らかに女性差別だ。受験では大学の裁量権は認められるが、テストの点数を操作するのはその範疇(はんちゅう)を超えている」
-差別された受験生にとって不利益は大きい。
「職業選択の自由を規定する憲法二二条にも違反している疑いがある。医者になるには医大や医学部を卒業し、国家試験に合格しなければならない。大学に入れなければその機会を奪われる。間接的に見えるかもしれないが、女性の労働権も侵害しているのでは」
-東京医科大特有の問題なのか。
「私も二十年前に女子学生に、受験の面接で男性教授から『結婚や出産で医者を辞めないか』と聞かれた、と相談された。昔からあった問題が表面化していなかっただけで、本当に根が深い問題だ。医学教育のあり方が問われている」
◆日本国憲法
14条1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
22条1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
【過労自殺医師の遺族警告「女性排除 男性の命も削る」 女性医師次々去り負担集中 東京8/22】医学部入試で女子受験生の点数を一律に低くし、合格しにくくしていた東京医科大の問題では、出産や子育てで働けない時期のある女性医師を敬遠する医療界の差別的な体質が浮かび上がった。「女性の排除は、働き方改革を妨げ、男性の命にもかかわる」。十九年前に小児科医の夫を過労自殺で亡くし、現在は講演活動などに取り組む中原のり子さん(62)=東京都中央区=は警告する。 (柏崎智子)
中原さんの夫、利郎さんは一九九九年八月、勤務する都内の病院の屋上から飛び降りた。四十四歳だった。遺書には、人手不足のため三十時間以上連続勤務となる当直を月に数回こなす疲労の蓄積や、女性医師が増える中で、結婚・出産の際に他の医師にかかる負担が放置されている状況への苦悩がつづられていた。
六人の小児科常勤医のうち、男性は利郎さん一人だった。部長代理になった同年二月、前部長の六十代の女性が定年退職。三月には五十代で当直もこなしていた女性医師が、両親の介護と両立できず病院を去った。追い打ちを掛けたのは、半年の育児休業から戻る予定だった若い女性医師の退職だった。乳飲み子がいるのに、病院から「月四回以上の当直をこなせない医者は辞めてほしい」と迫られ、退職せざるを得なくなった。現在、都内で開業するこの医師は「百パーセントを要求されなければ働き続けたかった。辞めて十数年はパートしかできなかった」と振り返る。
利郎さんはこの医師が子育てと両立できるよう当直を二回にする提案書を書いたが、病院へ出せなかった。中原さんは「そんな雰囲気ではなかったのでしょう。日中だけでも働いてもらえたら、もう少し楽だったはず」と思いやる。
六人から三人となり、利郎さんの当直は月八回に。心身の状態が悪化し八月、「仕事を辞めたい」と家族に漏らした。「退職を病院へ伝える」と約束し出勤した十時間後、身を投げた。
中原さんは「女性医師が働き続けられない職場では、男性医師も馬車馬のように働かされている。入試で女子受験生を排除したのは、医師の働かせ方を変える気がない証拠」と話す。
さらに「東京医科大だけの問題ではない」と指摘。利郎さんの死後、医師になった長女の智子さん(36)は「女医は妊娠・出産で迷惑をかけるから、三倍働け」という暴言にさらされた。のり子さんも「東京過労死を考える家族の会」共同代表として各地で講演する中で、女性医師の悲鳴のような声を聞く。埼玉県のある三十代の小児科医は「人の子どもの命を預かるが、私は子どもを持つどころか結婚さえ許されない労働環境」と打ち明けた。
のり子さんは訴える。
「入試不正の問題が明らかになったのを機に、男性も女性も使い倒す働かせ方を本当に改善してほしい。それが夫の願ったことです」
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