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「ダムはラオス国民に負担」 決壊から1ヶ月~日本は資金提供で加担

  日本のODAは、経済インフラ分野が半分(2015年)を占め、教育、保健、上下水道など社会セクターへの支援(18%)が極めて低い。以前から、援助国の国民のためでなく、大企業の利益確保、海外進出基盤づくりのが特徴〔1999年、開発援助委員会加盟国 食糧援助など緊急援助 加盟国平均11・1%、日本2・9%。経済インフラ 加盟国平均17・2%、日本31・5%。開発資金を円借款で貸し付けるものが多いのも特徴〕。
 一部の開発者や投資者を潤す、一方、国民は、環境破壊、食料安全保障の危機、強制移住など深刻な負担にさらされている。安倍政権のODA「改革」で、自国利益中心、大企業優遇〔政務によるリスク保障〕が一段とひどくなっている。原発輸出。石炭火力推進もこの延長。
 今回のラオスの建設中のダム決壊も、そうした流れで見て、日本の政治のあり方として捉えなおす必要がある。時事の現地からの報告と、志葉玲さんのリポート。
【「ダムはラオス国民に負担」=依存に警鐘-決壊から1カ月 時事8/21】
【建設中に決壊したラオスのダムは、日本の資金によるものだった――韓国叩きに終始するメディアが報じるべきこと 志葉玲  ハーバービジネス2018.08.21】



【「ダムはラオス国民に負担」=依存に警鐘-決壊から1カ月 時事8/21】

 【バンコク時事】ラオス南部アッタプー県で建設中だった水力発電所のダムが決壊してから23日で1カ月になる。決壊は130人以上の死者・行方不明者を出しただけでなく、隣国カンボジアにも深刻な洪水被害をもたらす惨事となった。環境保護団体は「ダムは経済発展に寄与するどころか、国民の負担になっている」と訴え、ダムへの依存に警鐘を鳴らしている。
 ダムは7月23日夜に決壊し、大量の水が下流域をのみ込んだ。被害は13村に及び、特に5村は帰還が困難な状態。約6000人の避難生活者は雨が降り続く中、過酷な環境で不安な日々を送っている。政府による原因究明も進まないままだ。
 ラオスは有力な外貨獲得源として、メコン川や支流を活用した水力発電を推進し、周辺国に電力を供給。「東南アジアのバッテリー」と呼ばれてきた。昨年時点で水力発電所46カ所が稼働中で、54カ所の新設を目指していたが、政府は決壊を受け、すべてのダムの安全性を調べるとともに、水力発電計画への新規投資を凍結する方針を示した。
 決壊したダムは、韓国のSK建設と韓国西部発電、タイのラチャブリ電力、ラオスの国営企業による合弁会社が建設を手掛けた。日本の金融持ち株会社傘下のタイ銀行大手も融資している。
 韓国・西江大学東アジア研究所の金昭延准教授はバンコクで開かれたセミナーで、韓国のエネルギー産業は飽和状態で、企業は東南アジア市場をにらんでいると分析。「大きな利益を短期で上げるため、経費縮減と工期短縮により低水準のダムを建設した」と批判した。
 決壊したダムは、稼働開始後は電力を主にタイ発電公社に供給する予定だった。NGO「メコン・エネルギー生態学ネットワーク」のウィトゥーン事務局長は「タイは既に供給過剰の状態」と指摘。電力需要を考慮せず、業者の利益だけのために開発が進んでいると懸念を示した。
 NGOや識者の横断組織「セーブ・ザ・メコン」は声明で、水力発電所の建設は生態系や食料安全保障の脅威となると警告し、決壊は「自然災害ではなく人災」と非難。「ダムが生む利益を開発者や投資者が獲得する一方、住民は危険にさらされる」と強調している。

【建設中に決壊したラオスのダムは、日本の資金によるものだった――韓国叩きに終始するメディアが報じるべきこと 志葉玲  ハーバービジネス2018.08.21】

◆ダム建設に韓国企業が加わっていたことで、韓国叩きの“燃料”に

ダムの決壊で村が水没、家の屋上に避難した住民たち。(写真/時事通信社)
 今年7月、東南アジアのラオスで起きたダム決壊事故。メコン河の支流セコン川水系に建設中のセピアン・セナムノイ・ダムの貯水池に設置した補助ダムが崩壊し、あふれ出た膨大な水が下流の6 の村を直撃。のべ13の村が浸水する大惨事となった。
 現地報道によれば、数十人が死亡、約100人以上が行方不明、約6000人が家を失ったとされるが、調査も困難であるため詳しい状況は確認されていない。このセピアン・セナムノイ・ダム事業を実施している合弁会社にはSK建設などの韓国企業が加わっていたため、日本でも保守系メディアが大きく取り上げ、韓国企業を批判した。
 ネット上でも、韓国叩きの“燃料”としてネット右翼たちが大いに盛りあがった。だが問題のダムには、日本の公的機関や民間企業も資金面で関与しているのだという。東南アジアでの開発と人権について政策提言を行うNPO「メコン・ウォッチ」の木口由香事務局長は「日本の責任も大きい」と指摘する。

◆決壊したダムは日本の資金によるものだった

 日本の資金がどのようにセピアン・セナムノイ・ダム事業に関わっているのか。木口さんがこう解説する。
「同事業を実施しているのは、タイと韓国の民間企業、ラオスの国営企業による合弁会社です。この合弁会社に協調融資するタイ銀行団のうち、クルンシィ・アユタヤ銀行は現在、株式の76.88%を三菱UFJ銀行が保有し、三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下にあります。融資決定は統合前となりますが、現経営陣には最高経営責任者(CEO)をはじめ多数の日本人が加わっています」
 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もセピアン・セナムノイ・ダム事業に関わっている。
「GPIFは、クルンタイ銀行の株を時価総額で約14億8265万円の株を保有しています。また、GPIFは、合弁会社を構成するラオス国営企業に融資をしている韓国輸出入銀行の債権も時価総額で約62億6814万円を保有しています」(木口さん)

◆日本の支援で造られたダムが契機となり、急ピッチで進むラオスのダム開発

《ラオスの人々は長年、小規模漁業などメコン河の恵みで生計を立ててきた。しかし、ダムによる水位の変化が生態系にも悪影響を及ぼしている(写真/Big Brother Mouse)》

 現在のラオスでは、タイなど国外への売電を目的とした大規模水力発電事業が急ピッチで進められている。しかしラオスは一党独裁のもと、人々が自由に発言したり、集会を行ったりすることもできない国だ。
「事業が行われる現地の人々の安全や権利を軽視した性急なダム開発が、今回の決壊事故につながった」と木口さんは見ている。そして、ラオスがダム開発をその経済成長戦略の柱とした背景には、日本の影響も色濃くあるというのだ。
「日本政府が世界銀行(世銀)やアジア開発銀行(ADB)を通して支援を行い、『ラオスの貧困削減と環境保全につながる持続的な開発のモデル』として2005年に着工し、2010年から創業を開始したのがナムトゥン2ダムです。
 この事業を契機に、ラオス政府は急速なダム開発へと本腰を入れました。同事業の前に操業されていた1MW以上の水力発電事業はわずか10基でしたが、現在は操業13基、建設段階が22基、MOU(了解覚書)段階39基、事業開発合意の段階は23基、という水力発電ダム計画が進んでいます。
 しかしナムトゥン2ダム建設では、強制移住させられた約6200人の住民の生計回復が困難であること、ダム下流の水量の変化による洪水悪化などの問題が起きています。今後建設されるダムでも、同様の問題が起きる恐れがあるのです」(木口さん)

◆大規模ダム建設に依存するラオスの開発政策と、援助国や融資機関の役割を見直すべき

 木口さんは「今回の悲惨な事故に多くの人びとを巻き込んだのは、一義的には関連企業の責任です。しかし、企業のダム建設を可能にした融資機関、さらには大規模ダム建設に依存するラオス政府の開発政策とそれを後押ししてきた援助国・融資機関の役割についても検証する必要があります」という。
「昨今の予測不能な天候に対応できない可能性の高い既存のダムは、運営の停止を。環境・社会影響に比して収益の見合わないダム計画について、融資機関や援助国は中止を検討するよう求めること。大規模ダム建設を推進する、対ラオス開発援助政策自体を改めるべきでしょう」(木口さん)
 セピアン・セナムノイ・ダムの決壊を、格好の「嫌韓ネタ」として消費するのではなく、自国の政府や企業の姿勢も問われている問題として取り上げることが、日本のメディアに求められている。


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