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マルクスの世界観 ~世界は変えられる〔メモ〕

 牧野広義・阪南大学名誉教授の論稿〔経済2018.5〕の備忘録。
  
 「物質的存在条件」と 「人類はつねに、自らが解決できる課題だけみずからに提起する」ことの意味と関係・・・など、短い論稿ゆえの明快さが魅力。 

【マルクスの世界観 ~世界は変えられる】

 牧野広義・阪南大学名誉教授 経済2018.5

・理論研究と実践的活動の中で形勢された世界観〔自然、社会、人間の捉え方〕~大学で法学を学び、哲学・歴史を研究。古代ギリシアの唯物論哲学に関する論文で学位取得。その後、ジャーナリストとして活動するなかで、経済学の研究、未来社会の検討の必要性を感じ研究にまい進。48年の革命運動に参加、亡命先のロンドンで経済学批判の仕事に集中し、「資本論」第一巻を刊行する一方、国際労働者協会の指導にあたる

Ⅰ. マルクスの「新しい唯物論」

1.若いマルクスの哲学研究
・ベルリン大でヘーゲルの弟子の法哲学者ガンスから学ぶ。すでにヘーゲルは亡くなって〔1831年〕おり、「青年ヘーゲル学派」によって、ヘーゲル哲学の批判が起こる。
・マルクス ヘーゲルを研究しながら、その観念論的な体系の後に来る「新しい哲学」のあり方を模索
→ 古代ギリシアのプラトンとアリストテレスの観念論哲学の後に登場したエピクロスに注目し研究

・学位論文「デモクリトスとエピクロスの自然哲学の差異」〔1841年〕
→ともに「原子〔アトム〕」を根源ととらえる唯物論 /マルクスは古代哲学の観念論、唯物面に精通していく

・ヘーゲル哲学、古典派経済学を研究にもとづく、人間の労働の意義を明らかにするとともに、労働によって人間が人間らしさを失う「疎外された労働」を論じる〔経済学・哲学草稿1844年〕

・「青年ヘーゲル派」を批判的に乗り越え、近代哲学の観念論と唯物論の闘争の歴史を論じる〔聖家族45年〕

☆このような研究の中で、マルクスの思想は飛躍的に発展/以上の研究成果を踏まえ「フォイエルバッハにかんするテーゼ」〔45年〕執筆
→ フ氏は、マルクスにも影響を与えた先輩の唯物論者/マルクスはフ氏も含めた「古い唯物論」を批判しながら、また観念論との対決も意識しながら「新しい唯物論」を提唱

2.「新しい唯物論」の特徴

・11のテーゼで「新しい唯物論」の主張を極めて凝縮した言葉で表現

①現実をつくりかえる「実践」の強調
・「古い…」は、現実の世界を目の前の「客体」として「観察」するに留まるという欠陥を持つと主張
→ 自然や社会をありのままに見ることは必要だが、人間は「主体」として実践的にかかわる/労働によって自然を変え、社会的実践によって社会を形成⇔現実の世帯は、人間の主体的な「実践」よって作られ、変えることができる。
・観念論は、人間の能動性を主張するが、意識・精神の能動性を強調するだけ。/現実を作り変える労働や社会的実践によってこそ、人間は活動性を発揮する/〔テーゼ1〕

②人間の感覚、理性などは、労働や社会的実践によってこそ豊かになる/「五感の形成はいままでの全世界史の労作である」~人間の意識も社会や歴史がつくりだすもの/が、人間は環境によって作られるだけでなく、環境を変えることによって自分自身をつくり変える〔テーゼ3〕

・人間が思考によって作り出す理論も、実践によってその真理性―認識と対象の合致―が証明されなければならない/実践こそが「知は力」であることを証明する〔テーゼ2〕
・人間は社会的存在…「人間の本質は、その現実のあり方においては、社会的諸関係の総体〔アンサンブル〕である」〔テーゼ6〕/人間の現実のあり方は、家族・市民社会・国家などの総体の中でこそ理解できる
→しかも人間は、社会をつくり、それを変える実践的存在/「すべての社会的生活は本質的に実践的である」〔テーゼ8〕

③「古い唯物論」は、封建制、絶対王政は批判するが、ブルジョア社会を肯定的にとらえる/権力の横暴、腐敗を批判したり、貧困などを論じても、その改良を主張するだけ。/「古い唯物論の立場はフセルジョア社会である」〔テーゼ10〕/「新しい唯物論」は、ブルジョア社会が階級に分裂していることを捉え、労働者自身による根本的な変革を主張/「新しい唯物論の立場は、人間的社会であり、社会的人間である」〔テーゼ10〕
→「人間的社会」=共産主義 経済哲学草稿「人間による人間のための人間的本質の現実的獲得としての共産主義」/「社会的人間」=社会的に協同し連帯した人類のあり方
人間の本質 〔メモ者 人間の「自由な意識的活動」と「社会的共同性」〕を現実に獲得するような「人間的社会」「社会的人間」の実現こそが「新しい唯物論む」の立場

・テーゼの結論「哲学者たちは世界をさまざまに解釈したにすぎない。肝心なことは世界を変革することである」
→ 新しい唯物論は「世界の変革の哲学」として成立

Ⅱ 社会の歴史についての唯物論

・「フ・テーゼ」後に「ドイツイデオロギー」「経済学批判」を執筆/この中で、「史的唯物論」を確立
・唯物論…「物質」を世界の根源と捉える見方/古い唯物論は、社会や歴史については唯物論を徹底できず

・「新しい唯物論」は、人間の労働、社会的実践によって現実の社会を作っていると捉える/そのことにより、社会や歴史を唯物論的に捉える「史的唯物論」が確立
→自然の物質だけでなく、人間や社会も「物質」と捉える~「物質」とは、「現実の存在」の意味

1. 現実的な生活過程と社会の構造

・「史的唯物論」は、人間の「現実的な生活過程」を出発点とする
・「現実的な生活過程」とは、人間が社会的な集団の力で生活手段を生産することによって、人間生活を社会的に生産すること ⇔ 生産とは「生活の生産」

・また、人間は、土地を開墾し農地をつくったり労働用具をつくるなど、生産手段も生産/このような生産と消費とともに、人間の欲求も増大し、生産活動を発展させる
・また、繁殖によって人間そのものを生産し、家族をつくり、社会的な集団生活を発散させる

・このような「人間生活の社会的生産」において、人間は人間と人間の関係をつくる。/生産における人間関係を「生産関係」と称する

・「生産関係」 原始共同体・奴隷制・封建制。資本制のように変化・発展
・社会的変革の要因・・生産力=i人間が自然力を利用しながら、労働によって「人間と自然との物質代謝」を制御する社会的な能力
⇔「生産力の社会的発展」に対応して「生産関係」つくられる/その姿とは・・

・原始共同体 生産力が極めて低く、共同体のだれもが労働
生産力が発展すると、一部の人間が労働から解放されて、政治、宗教、労働の指揮など行う

・古代 人間が最大の生産力。大量の人間を奴隷として支配するための国家の成立。
→ 奴隷の抵抗・氾濫/怠惰、労働用具の乱暴な扱いにより、生産の停滞、古代社会の崩壊へ

・中世 王が領主に領地を与え、領主は濃民を土地に縛りつけて農業を発展/その成果を年貢として搾取。/王・領主、自由な商取引を許された商人は富み、農民は貧困に苦しむ。農民の反乱の頻発と、その抑圧のための専制支配の成立〔メモ者 中世的的都市国家から統一国家「絶対王政」の成立へ〕/生産力の発展とともに余剰物の商品交換〔貿易も含め〕が活発になり、国内外の富を蓄えた貴族、商人らがしだいに資本家となり、農地を失った農民が労働者にる

・力をもった資本家たちが、農民や労働者を従えて「絶対王政」をくつがえす市民革命〔自由競争、移転の自由、商品所有者たちの同権。資本主義の自由な発展〕により、近代的国家を結成。

・歴史において、その社会の「生産関係」の総体が社会の「経済的構造」を形成。それが社会の土台となり、その上に、「法律的・政治的な上部構造」として「国家」がそびえたつ/国家とは、支配階級が法律や強制力によって社会を支配するための機関〔メモ者 同時に、社会的対立を緩和、共同体的事務をつかさどることによって、社会全体を代表しているかのような仮象を生み出す〕/また、社会の土台に対応して「社会的意識の諸形態」が形成される。宗教、芸術、社会思想、哲学のようにまとまった思想をなしているものが「イデオロギー」。教会、学校、メディアなとは、イデオロギーを形成する重要な機関

⇔ 経済的構造という「土台」と法律・政治と社会的意識諸形態という「上部構造」が社会の構造的仕組みである「経済的社会構成対」を形成する

・物質的生活の生産様式〔メモ者 人間手段が、生きていくために、創世記より、日々繰り替えてきた行為= この繰り返しの蓄積の中で、量から質への転化としての社会的変革が用意されてきた/そこなは、種を継続するたの生殖と子育てなとの形態という、二重の意味での「物質的生活」の生産を意味する〕が、社会集団による社会的な生活過程や、政治的生活過程、および精神的生活過程を制約する。

→「社会構造」は、物質的な生活を基礎にした社会的・政治的、精神的な「生活過程」によって形成される。

・マルクス「人間の意識がその存在を規定するのではなく、逆に、人間の社会的存在がその意識を規定する」
~ここにも唯物論の原則が生きている

・「自由、平等、所有」という近代人権宣言のイデオロギーやそれを制度化した近代国家が、いかに資本主義生産関係によって規定され、資本主義的性格をもっていたかを、明らかにした。

2. 生産力と生産関係の矛盾と社会革命

・社会の変革/「社会の物質的生産力」は、その発展のある段階で、それまでのそれらの内部で発展してきた既存の「生産関係」と矛盾するようになる。古い生産関係は生産力を発展させるどころか、生産力の桎梏となる。/生産力が「破壊力」となる〔ドイツイデオロギー/メモ者 「一時的破壊」=恐慌。それは矛盾を通じて発展する資本の生活様式であり、その矛盾の決着は、労働者階級のたたかいが必要〕
・生産力の発展は、恐慌をともないながらも人間と労働力の浪費、自然破壊をともないながら進行する。

・「生産力と生産関係との矛盾」が「社会変革」の時期を示す/「経済的基礎が変革するにつれて、巨大な上部構造の全体が、徐々にせよ急激にせよ、くつがえされる」

→が、経済的基礎の変革でけでは「社会革命」はおこらない/「経済的な生産条件・・物質的な変革と/人間がこの抗争を意識し、この抗争をたたかって決着をつける場となる、法律、政治・・・イデオロギー的諸形態とを、つねに区別しなければならない」〔メモ者 自動崩壊論を明確に否定〕

3. 社会革命の物質的条件

・「1つの社会構成対は、すべての生産力がその中ではもう発展の余地がないほどに発展しきらないうちは、決して没落することはない」
・「また、新しいさらに高度な生産関係は、その物質的な存在条件が古い社会の胎内で孵化しきらないうちは、けっして古いものには取って代わることはない。だから人類はつねに、みずからが解決できる課題だけをみずからに提供する。というのは…課題そのものが生まれるのは、その解決の条件がすでに存在するか、または少なくともそれらが生成の過程にあることが把握される場合だけである」

・「物質的存在条件」とは何か … 古い生産関係のもとでの生産力は、もう発展の余地がないので、社会革命の基礎であっても、新しい生産関係の「物質的諸条件」とはなりえない

→ 注意が必要! 「物質」ないし「物質的存在条件」には、社会や人間が含まれる
 例〕「本源的蓄積」/農民の土地からの追放・・・新しい生産関係を担う階級の形成が、新しい社会をつくる「物質的存在条件」/国内外の富の独占など、文字どおりの「物質的」な条件とともに、生産の担い手の形成が含まれる

・「自らが解決できる課題だけみずからに提起する」の意味…人類は、その歴史の発展段階で、新しい社会の形成を「みずからの課題」とする階級を生み出す。そのような階級によって解決できる課題を自らに提起する。
〔資本主義社会を変革する「物質的存在条件」については、後述〕

4.世界史の発展とブルジョア社会の位置

・世界史のおおづかみな流れ 原始共産制、総体的奴隷制〔その崩壊後の特異的なギリシア、ローマの古典古代奴隷制〕、封建制、近代ブルジョア制~生産力の発展にもとづく「経済的社会構成体」の進歩として示すこと

→続いて/「ブルジョア的生産関係は、社会的生産過程の最後の敵対的形態である。敵対的というのは、個人的な敵対という意味ではなく、諸個人の社会的生活諸条件から生じる敵対という意味」/階級的敵対

・「ブルジョア社会の胎内で発展しつつある生産力は、同時にこの敵対を解決するための物質的条件をつくりだす。それゆえ、この社会構成体をもって人間的社会の前史は、終わりを告げる」

→ 資本主義のもとで発展する「生産力」が、この敵対〔資本家と労働者の階級対、階級闘争〕を解決する「物質的存在条件」をつくり出す

5.資本主義社会の矛盾と変革の条件

・資本主義が持っている矛盾から、資本主義を変革する「物質的存在条件」がどのように形成されるか

①資本の利潤は、労働者の労働を搾取することで得られたもの

・そのため労働時間、賃金をめぐって、階級闘争が起こる
・労働者は、労働組合をつくり、ストライキも行い労働条件の改善を勝ち取る/イギリス工場法は、労働時間を法律で制限/ここで得られた自由時間で労働運動も発展〔メモ者 生産力が上がり、資本家も賛成の側に〕

②資本による富の蓄積の一方で、労働者の貧困が深刻に/格差と貧困の拡大

・「資本の蓄積」は、労働者の「貧困、労働苦、奴隷状態、無知、野蛮化、道徳的頽廃の蓄積」
~若死、健康被害、児童労働など資本の横暴による人間破壊~工場法は子どもの学校教育も資本家に義務づけ

③資本主義における「生産力と生産関係との矛盾」が明瞭な姿で現れる

・「資本の生産力」による労働者の人間破壊だけでなく、自然破壊も発生 ~ 資本の活動により「人間と自然との物質代謝」がかく乱され、都市の環境破壊、農地の荒廃、資源の乱獲による自然破壊など
・また、資本による過剰生産が原因で、経済恐慌が周期的に勃発

~ こうして、資本の限界があきらかになる。

④生産手段を労働者が共同で使用し、多くの労働者が協力しあう「協業」が進展し、生産力を高める

・が、その成果は、生産手段を私的に所有する資本家が独占
〔メモ者 小経営が中心、社会的分業にもとづく商品社会では、私的労働とちっぽけな私的所有の生産用具による生産の成果は、誰が所有するかは自明。/そこに、1つ1つの生産施設で、社会的、人間集団よる生産が開始される〔単純協業から始まって・・〕が、生産手段を資本家が所有、労働力は賃金と引き換えに資本家のものであり、その労働の成果である生産物は、商品社会のルールにのっとり、資本家のものに/ 商品社会のルールのもとで、労働の成果が、労働したものでない他人の所有になる、という大転換が成立する〕

→「社会的〔メモ者 人間集団の〕生産」と、剰余労働含んだ成果の「資本主義的取得」〔搾取〕の矛盾としてあらわれる。

・マルクスは、生産手段を社会の共同所有にすれば、生産者がともに働き、その成果の一定の基準で、共に分け合う仕組みができると考えた。

⑤労働者階級は、生産の社会化により、生産力の発展をにない、経済活動を支えるだけでなく、労働運動などによって社会的な力を増大させる。

→資本主義の発展にとっても、学校教育が必要となり、また労働者が自主的に学びあい、精神的にも成長
→さらに、普通選挙権の獲得、民主主義の発展により、政治的にも成長

〔メモ者 生産力の発展=働時間短縮の可能性、法的な規制の実現。資本の文明化作用=個性の発展。生産の社会化・技術革新=全体的労働者の必然性など〕

・こうした労働者階級と、資本の支配を貫こうとする資本家階級が、国家の政策、イデオロギーをめぐり衝突

☆以上のような矛盾を解決するのは、労働者階級の経済的、社会的、政治的、精神的な成長!

→ 資本主義社会を変革する「物質的存在条件」とは、資本主義のもとで、生産力の発展、生産の社会科、民主主義の発展などによって、経済的・社会的・政治的・精神的に発達する労働者階級
→ この労働者階級が、新しい社会を準備

6.「人間社会」としての共産主義

・ブルジョア社会をもって「人間社会の前史は終わりを告げる」とは・・・

 先述したテーゼの「新しい唯物論」の立場は「人間社会」、経済哲学草稿の記述。

→「人間社会」とは、「共産主義」のこと。/ブルジョア社会でもって「人間社会〔共産主義社会〕の前史が終わるということ。/本源的蓄積が資本主義の「前史」と表現したように、今度は、資本主義が人間社会〔共産主義〕の前史となり、未来社会を準備する

・共産主義社会の「土台」は、生産手段の「社会的所有」による平等な生産関係/ この平等な関係においてこそ、共に生産し分け合う「共同社会」〔コミューン〕を実現することができる。

・共産主義社会全体の「根本原理」…資本論「個人の誰もが十分に自由に発達することを根本原理とする、より高度な社会形態」〔メモ者 マルクス「労働日の短縮こそ根本条件」「時間は人間発達の場」〕

★まとめ
  資本主義の中から、経済的・社会的・政治的・精神的に成長した労働者階級が、資本主義社会を変革し、こうして形成された共産主義社会においてこそ、各個人の十分で自由な発展が実現できる――これが「世界の変革」を提唱するマルクスの世界観の重要な内容

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