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原発・石炭火力 安倍政権のインフラ輸出に展望なし

 原発は、福島事故以前は「原発ルネッサンス」と喧伝されでいたが、事故の深刻な影響を目の当たりにし、安全対策が強化され、政府が全額債務保証しなければやっていけないというビジネスとしては破たんした事業となった。一方、「高性能の石炭火力の輸出戦略」も、温暖化対策、再生エネの爆発的な技術進歩のもと「脱炭素革命」にさらされ、新規需要は半分以下に減少。特に牽引してきた中国とインドでの政策変更が大きい。
 安倍政権のインフラ輸出戦略に引きずられ、東芝に続き、日立、三菱重工と、旧態依然の発想で、日本のものづくりの基盤を崩壊させる道をつき進んでいる。
 まあ、インフラ輸出は、最後は国民負担で、特定企業の利益を確保することと、中国の影響力をそぐという特定の思惑から出ているもので、経済政策としてのまともな見通しがそもそも存在しない。
【トルコ原発「費用倍困難に」 事業費4兆円超、伊藤忠会長懸念 東京5/3】
【英の原発新設で支援要請 日立会長、メイ氏と協議へ 東京5/3】
【原発輸出 英で新設、政府債務保証 大手銀など1.5兆円 毎日1/3】
【三菱重に迫る火力「2020年問題」 日米で生産再編 日経5/1】
【中国とインドが悟る、石炭に魅力なし スマートジャパン17/3/24】
【新規の石炭火力発電が大幅に減少、特に中国とインドで顕著 自然エネルギー財団2018/3/30】

【トルコ原発「費用倍困難に」 事業費4兆円超、伊藤忠会長懸念 東京5/3】

 伊藤忠商事の岡藤正広会長は二日、日本政府や三菱重工業などが進めているトルコでの原発建設計画について「費用が倍になっている。三菱重工は大変だと思う」と述べ、当初二兆円規模と見込んだ総事業費が二倍の四兆円以上に膨らみ実行が難しくなっているとの認識を示した。東京都内で開いた決算会見で語った。
 伊藤忠は事業化の可否を見極める調査に加わっていたが、二〇一五年時点で「商社ができる役割は限られており、参画は極めて困難」などと参入見送り方針を表明。契約期限の今年三月で正式に調査を終え、計画から離脱した。三菱重工は調査を続けているが、安全対策費用がかさみ、目標とする二三年の稼働開始は見通せない状況だ。
 岡藤氏は「(トルコ政府側の)要求がどんどん出てくるし、向こうも財政難」と、トルコ側の資金繰りが悪化して計画が行き詰まる可能性を指摘。鈴木善久社長は、離脱方針を決めた背景として「(東京電力福島第一原発事故後の)社会的環境があった。費用の問題も、実現性があるかは厳しかったと思う」と話した。
 トルコへの原発輸出は一三年に政府間で合意。日仏企業連合とトルコ国有企業が出資して黒海沿岸のシノップに原発を建設、運営する方式を想定している。

【英の原発新設で支援要請 日立会長、メイ氏と協議へ 東京5/3】  【ロンドン=共同】英紙タイムズは二日、日立製作所が進めてきた英国の原発新設事業を巡り、中西宏明会長がメイ英首相と三日に会談すると報じた。安全対策費用がかさんで総事業費が三兆円規模に膨らむことから、日立は協議を通じて英政府からの直接出資などを得たい考えだ。支援が得られなければ事業から撤退する可能性もある。  英原発事業は、日本政府が成長戦略の柱に据えるインフラ輸出の目玉。協議が決裂すれば、政府は戦略見直しを余儀なくされそうだ。  日立の計画は英原発子会社ホライズン・ニュークリア・パワーを通じ、英中西部アングルシー島の原子力発電所に改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)二基を新設する。二〇二〇年代前半の運転開始に向け、原子炉の設計などを進めてきた。  工事遅延などで巨額損失が発生した場合の業績への悪影響を抑えるため、日立は着工を最終判断する一九年までにホライズンを連結対象外とする方針で、英政府などにホライズンへの参画を求めてきた。


【原発輸出 英で新設、政府債務保証 大手銀など1.5兆円 毎日1/3】

日立製作所が英国で進める原発新設プロジェクトに対し、3メガバンクと国際協力銀行(JBIC)を含む銀行団が、総額1.5兆円規模の融資を行う方針を固めた。事故などによる貸し倒れに備え、日本政府がメガバンクの融資の全額を債務保証する。政府系の日本政策投資銀行は出資による支援を行うほか、中部電力など電力各社も出資を検討する。総額3兆円規模に上る原発輸出を、政府主導の「オールジャパン体制」で後押しする。
JBICや政投銀による投融資も含めると、政府が巨額のリスクを抱える形となる。損失が発生すれば、最終的には国民負担を強いられる懸念もある。・・・・


【三菱重に迫る火力「2020年問題」 日米で生産再編 日経5/1】

 三菱重工業が不振の火力発電機器事業でリストラに乗り出すことが1日、分かった。日米の工場で生産の統廃合や人員の配置転換を進める。再生エネルギー拡大や環境規制強化により火力発電の新設需要は大きく落ち込み、2020年には三菱重工も手持ちの受注がほぼ底をつく。コスト削減で乗り切る構えだが、市場が回復しなければ一段の構造改革は避けられない。・・・・


【中国とインドが悟る、石炭に魅力なし スマートジャパン17/3/24】

全世界の石炭火力発電の状況をまとめた報告書「Boom and Bust 2017」は、計画段階から許認可、建設に至る世界的な動向に「乱流」が生じたことを指摘した。これまで増設に次ぐ増設を続けてきた中国とインドが方針を180度転換。OECD諸国と歩調を合わせた形だ。需給バランスや発電コストが主な要因だと指摘する。全世界で唯一、この流れに沿っていない国についても指摘

 中国とインドで100以上の石炭火力発電所の開発プロジェクトが凍結。二カ国で68ギガワット(GW)分の発電所の建設が停止。全世界でも建設の開始が62%減少――石炭火力発電所の動向を追う米End Coalが2017年3月21日に発表した内容だ

◆石炭火力の新設は経済的に釣り合わない
 
中国とインドは電力が不足しているのではなかったのか。なぜ火力発電の中で最も安価な石炭火力から手を引き始めたのか。
 理由は複数ある。第一に電力需要自体の伸びが低減していること。これによって大規模な発電所の設備利用率が低下している。すると大規模な発電事業者の収益が低下し、設備投資を手控えるようになる。今回の報告書ではこの理由が最大であると指摘している。
 「数多くの場所で建設の凍結が始まった。(これまでの10年間と比較すると)異例なことだ。中国政府とインドの銀行家が、これ以上の石炭火力発電所の建設を資源の無駄遣いだと認識し始めている。建設中止は気候変動や雇用にもプラスの効果をもたらしており、さまざまな条件を見ると、このような変化は止まらない」。Boom and Bust 2017に基礎データを提供した米CoalSwarm*3)でディレクタを務めるTed Nace氏は発表資料でこのように語っている。

 理由は他にもある。第二に再生可能エネルギーを用いた発電コストが十分に下がり、石炭火力の魅力が低下したことだ。第三に火力発電の中で最も二酸化炭素排出量が多く、地球温暖化防止の取り組みに反するからだ。深刻な大気汚染の原因にもなる。一部の発展途上国では、農業との間で水資源の奪い合いになるという問題も起きている。
 Greenpeaceで石炭と大気汚染に関するシニアグローバルキャンペーン担当を務めるLauri Myllyvirta氏は発表資料の中で次のように述べている。「2016年は大きな転換点だ。中国はほぼ全ての新規プロジェクトを停止した。クリーンエネルギーの驚異的な成長によって、既存の石炭火力発電所が『冗長化』されたからだ。2013年以来、新たに必要になった全ての電力は化石燃料以外から得ている」。

◆計画中断から延期まで全ての段階で減少

 石炭火力発電所は大規模な設備であり、ほとんどの国で環境アセスメントを含む政府の認可が必要だ。そのため計画発表から完成まで10年程度の期間が必要な場合もある。
 
全ての開発段階の動向を把握しなければ、将来、運転を開始する発電所の予測はできない。
 CoalSwarmは全動向を把握しており、Boom and Bust 2017に結果をまとめた。結論はこうだ。全ての段階で減少傾向にある(図2)。図2では全世界の出力30メガワット(MW)以上の石炭火力発電所の状況を示した。

 例えば2017年1月時点で発表済みの計画規模は出力247.909ギガワット(GW)。これは2016年1月時点の487.261GWの約半分(50.9%)にすぎない。計画段階で出力(施設)が半減した。
 建設に向けた準備もやはり半減(51.1%)し、許認可の取得に至った事例は59.2%まで低下。過去12カ月以内に着工した事例はさらに少なく、38.3%。このため、建設中の発電所は80.6%、過去12カ月以内に完成した発電所は71.2%に減った。

◆中国とインドが全世界の動向を決定

 Boom and Bust 2017では全世界の動向を扱っているものの、特に中国とインドに重点を置いている。なぜだろうか。
 二カ国で石炭火力の過半数を占めているからだ(図3)。稼働中の発電所のうち58%を両国が占めている。完成前の比率も高い。準備中の46%、建設中の71%だ。
 だが、延期された発電所の数値を見ると、86%を両国が占めている。つまり、二カ国の動向が全世界の「風向き」を大きく変えたことになる。

◆政府の厳しい抑制策が効いた中国

 中国では中央政府が計画的に石炭火力発電を抑制している。司令塔は国家能源局(NEA)と国家発展改革委員会(NDRC)。2016年11月に第13次5カ年計画(2016~2020年)を発表し、石炭火力の総出力に上限(1100GW)を設けた。稼働中の設備の出力を引くと、約180GWしか建設できないことになる。これが図3に示した抑制的な状況につながった。
 5カ年計画を実現するために、具体的な省の名前を挙げて新規計画の承認を差し止めたり、建設工事の開始を中止した他、旧式設備の廃止計画を公開している。地域ごとに外部に送電できる量を規制する政策は、珍しい試みだといえる。
 Boom and Bust 2017によれば、中国の火力発電量は2013年にピークを迎え、2015年時点には平均設備利用率が50%以下に下がったという。政府の決定には経済的な裏付けがあるということだ*4)。

◆資本の論理が働いたインド

 中国と比較して、インドは経済的な発展が遅れており、これから電力需要が大きく伸びると予測されてきた。例えば英BPは2035年までインドの石炭需要が伸び続けると予測している。
 Boom and Bust 2017ではインド動力省が2016年6月に発した声明を紹介している――2019年までインド国内の電力需要をまかなう十分な石炭火力発電所が既に運転中だ、と。
 インドの場合、中国ほど厳しい政策はないものの、2016年12月31日に発表された「Draft National Electricity Plan(NEP)」には、建設中の発電所以外の増設は2027年まで必要がないと示されている*5)。これに反応したのが金融資本なのだという。
 インドが石炭火力から離れつつある2番目の理由が太陽光発電だ。インドでは太陽光発電所を入札形式で立ち上げる場合、Boom and Bust 2017によれば応札価格が1キロワット(kW)当たり2.97ルピー(約5円)まで下がっている。この水準であれば、新設の石炭火力に勝ち目はない。
 増設が必要のない石炭火力発電所のかわりに、中央政府は2027年までに各種の再生可能エネルギーを利用して215GWの発電所の建設を促している。

◆先進国として唯一の日本、何が?

 中国やインドの動向は必ずしも楽観視できない。経済的な状況が変化した場合、石炭火力に戻ってくる可能性があるからだ。それでも政策を打ち出して、エネルギー計画を適切に修正したことは称賛すべきだ。
 Boom and Bust 2017は、中国とインド以外の国々の動向もまとめた。準備と建設を合わせた出力、これが大きい上位30カ国のリストも示した)。
図4では、これから立ち上がる量(濃い灰色で示した準備と赤色で示した建設中)と、延期(緑色)の量に注目して欲しい。
 Boom and Bust 2017の指摘は手厳しい。日本と韓国、インドネシア、ベトナム、トルコを再生可能エネルギーの開発に失敗した国々と指摘している。汚染度の高い新型の石炭火力発電所の建設と計画にこだわっているからだ。
 図4に戻ろう。トルコやインドネシア、ベトナムは準備・建設中が多いものの、延期すべきものは延期していることが分かる。これはその他の国にも当てはまる。
 この傾向に当てはまらない国が1カ国だけある。日本だ。エネルギー政策が硬直的だと批判を浴びる理由だ。
 Boom and Bust 2017では「TEN HOT SPOT」として、課題がある10カ国を取り上げている。日本に関する記述はこうだ*6)。

“ 石炭火力発電所から転換するというOECD諸国に共通する方針に例外がある。日本だ。開発中の発電所が多い。過去5年間に建設した出力は1950MWにとどまるが、現在4256MWを建設しており、計画段階に17343MWが控えている。気候変動対策への公約を果たすよう、日本は国内外から強い圧力を受けている。2017年1月、赤穂発電所(兵庫県赤穂市、関西電力)を石炭火力に転換する計画を停止したこと、これはマイルストーンとして画期的だ。”

 延期についてはわずか1つの事例しかないと指摘された形だ。赤穂発電所については、本誌の記事を参照して欲しい。
 他のOECD諸国はどのような状況にあるのだろうか。開発を抑制することはもちろん、欧州連合(EU)と米国を中心に過去2年間で64GWの石炭火力発電所を廃止した。これは今回中国とインドが抑制した68GWに並ぶ数字だ。
 GreenpeaceのMyllyvirta氏は発表資料の中で次のように述べている。「旧式の石炭火力発電所の閉鎖は米国と英国で進んでいる。ベルギーとカナダのオンタリオ州は完全に石炭を廃止し、G8のうち3カ国は石炭を段階的に廃止する期限を発表した」*7)。

◆気候変動抑制には3つの方針で

 End Coalに協力するCoalSwarmとSierra Club、Greenpeaceが石炭火力発電所の抑制にこだわった理由は、地球温暖化の抑制に役立つからだ。
 石炭火力発電所の新設を抑制し、古い設備を廃止することで、平均気温の上昇を2℃以下に保つ可能性が生まれたと指摘している。複数のシナリオを提示し、可能性の程度を見積もった。
 石炭火力発電に関して、2℃以下を実現するためには以下の3つの方策が役立つと、Boom and Bust 2017はまとめている。
 
第一に中国とインドが延期した計画を再開しないように促すこと、第二に10カ国を含む他の国々が新設を抑制し、電力需要の増加には再生可能エネルギーで対応することだ。
 第三に日本を含むOECD諸国の努力が必要だ。旧式の石炭火力発電所をクリーンエネルギーで素早く置き換えなければならないと指摘した。


【新規の石炭火力発電が大幅に減少、特に中国とインドで顕著 自然エネルギー財団2018/3/30】

 2017年に世界各国で運転を開始した石炭火力発電設備の容量は合計61ギガワット(6100万キロワット)にとどまり、過去10年間で最低を記録した。このデータは化石燃料に関する研究者の国際ネットワークであるコール・スワーム(Coal Swarm)が2018年1月に発表した「グローバル石炭発電所トラッカー」によるものだ。
 近年で石炭火力発電設備の新設が最も多かった2015年(合計101ギガワット)と比べると、2017年には40ギガワットも減った。主に中国とインドで減少した結果である。両国は過去10年以上にわたって石炭火力発電の新設計画をリードしてきたが、現在では石炭火力に代わって自然エネルギー、特に風力発電と太陽光発電を大量に導入している。


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