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医療版マクロ経済スライド、「地域別診療報酬」…皆保険への新たな攻撃、

 4月25日の財政審で、財務省は「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入」を提案した。人口減と高齢化の影響、医療費の伸びを、公費の拡充は不問にし、もっぱら患者負担増のみで対応するという医療版のマクロ経済スライド、厚労省は難色をしめしているようだが、一方で、厚労省は、医療費が高い都道府県の診療報酬を引き下げる制度の全国的導入をすすめる方向であることが報じられた。地域あげての医療サービスの抑制をすすめさせるもの。
 いずれにしても医療機関にかかることのハードルをあげようというもので憲法25条違反。

【「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入」 提案の撤回を求める
―患者負担が「天井知らず」に引き上がり、国民皆保険が壊れてしまう― 保団連会長声明5/10】

【医療保険の給付率、自動調整する仕組み導入を 財政審で財務省 ケアマネタイムス4/25】
【高齢者の医療の確保に関する法律第14条について 日医会長記者会見4/11】
【診療報酬、都道府県が設定 財務省が社会保障改革案 産経4/11】

【「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入」 提案の撤回を求める ―患者負担が「天井知らず」に引き上がり、国民皆保険が壊れてしまう― 保団連会長声明5/10】

 4月25日の財政制度等審議会財政制度分科会において、財務省は、「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入(以下、「仕組み」)」を提案した。同様の提案は、すでに自民党の「財政再建に関する特命委員会 財政構造のあり方検討小委員会 中間報告書 ~次世代との約束~」(3月29日)でなされている。

 この「仕組み」を、平たくいうと、医療費が伸びた場合、保険料の引き上げ抑制を口実に、公費の拡充は不問にし、もっぱら患者負担増のみで対応するというものである。
 この「仕組み」について、厚労省は、(1)患者負担の引き上げにあたって、患者の受診行動や家計といった医療や生活の実態が考慮されず、患者負担が過大になるおそれがある、(2)インフルエンザの流行や新薬の導入などの一時的要因で変動する医療費や、景気の変動等に応じ、頻繁に患者負担が変わり、将来の医療に対する国民の安心を損ねるおそれ、を指摘している(4月19日の社会保障審議会医療保険部会)。

 憲法第25条第2項では、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とある。この規定からいっても公費の拡充を不問にした「仕組み」の導入は認められない。
 この「仕組み」が導入されれば、2002年健保法改正法附則に規定された「将来にわたって7割の給付を維持すること」さえ踏みにじられ、天井知らずに患者負担が引き上がる恐れがある。保険料負担にあわせて、高率・高額の患者負担となれば、医療保険制度の存在意義が揺らぎ、国民皆保険制度そして日本の社会保障制度は壊れてしまう。
 このような提案は、ただちに撤回すると共に、「骨太方針2018」に「検討事項」として盛り込むようなことも絶対にあってはならない。

 あわせて、経済財政諮問会議「経済・財政再生計画」の「改革工程表」で2018年度末まで検討事項とされ、財務省等が提案している「75歳以上の窓口負担の原則2割化」「受診時定額負担」「薬剤の自己負担引き上げ」「金融資産等の保有状況を考慮に入れて負担を求める仕組み」の導入についても、受診抑制を引き起こすものであるため、強く反対する。
 超高齢化社会に必要なのは、むしろ患者負担を軽減し、世代・所得に関わらず、お金の心配なく医療機関に受診できることで、重篤化を防ぎ、健康寿命の延伸を進めることである。それが、国民間の連帯と政府への信頼を築くことになる。
 私たちは、患者負担が「天井知らず」に引き上がり、国民皆保険が壊れてしまう「医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入」の提案の撤回を求める。
〔会長 住江 憲勇〕


【医療保険の給付率、自動調整する仕組み導入を 財政審で財務省 ケアマネタイムス4/25】

財務省は4月25日の財政制度等審議会・財政制度分科会に、医療費が大幅に増加した際に、保険給付率を自動的に調整して自己負担を引き上げる仕組みの導入を提案した。現役世代人口の減少が加速する2025年以降も、社会保障制度を維持していくためには必要な施策との認識を示し、「人口減少が本格化する前に速やかに導入すべき」としている(p104参照)。
財務省は、保険料と公費負担で賄われる医療給付費は、▽人口の高齢化と医療の高度化に伴う医療費の増加▽後期高齢者の増加に伴う実効給付率の上昇-などで、今後、増加すると見通した。一方で、その支え手である現役世代人口は急速な減少が見込まれ、将来世代への負担の付け替えになる財政赤字の増加も懸念される。
こうしたなかにあっても、将来にわたって社会保障制度を持続させ、財政赤字の縮減を図っていくには、保険給付率の見直しが必要と指摘。具体策では、経済成長の鈍化、人口動向の変化などで支え手の負担能力を超える医療費の増加があった場合に、一定のルールに基づいて保険給付率を自動的に調整し、公費負担と保険料の上昇を抑制する仕組みの導入を提案した。財政赤字の縮減も期待できるとしているが、保険給付範囲が縮小する分、患者自己負担は増えることになる(p104~p105参照)。
このほか、▽後期高齢者の医療費自己負担2割化(p100参照)▽介護保険の利用者負担2割化(p101参照)▽後期高齢者医療制度における「現役並み所得者」の判定方法見直し(p103参照)-なども提案している。

【高齢者の医療の確保に関する法律第14条について 日医会長記者会見4/11】

 横倉会長は、4月11日の一部新聞報道で、政府が6月にまとめる財政健全化計画の中に、社会保障費の抑制策として都道府県ごとの診療報酬の設定を盛り込む方向であることが報じられたことを受け、日医としての所感を述べた。
 横倉会長は、まず、「高齢者の医療の確保に関する法律第14条」(以下、第14条)に規定される都道府県別の診療報酬の特例については、法文上は存在するものの具体的な運用規定がないことから、これまで実効性はなかったとした。
 その上で、日医は、平成29年5月31日の定例記者会見で、「医療は社会全体で均一に維持され、誰もが等しく受益できる公共的なサービスであると同時に社会的共通資本である。従って、医療は、地域によって分け隔てなく、全国一律の単価で提供すべきである」としたように(別記事参照)、これまでも一貫して反対の姿勢を示してきたと説明した。

 また、都道府県ごとの診療報酬の設定は、県境における患者の動きに変化をもたらし、それに伴う医療従事者の移動によって地域における偏在が加速することで医療の質の低下を招く恐れがあるとする一方で、診療報酬では、既に人事院規則で定める地域に従い、1級地から7級地までの地域加算があり、入院基本料などに加算されているとした。
 更に、昨年度、社会保障審議会医療保険部会で議論された際には、診療側、保険者側双方から反対意見が出されたことや、全国知事会会長、全国市長会会長代理、全国町村会会長からも反対の意見が示されたことなどを紹介した。

まずは2023年度までに都道府県行政が住民の健康増進に取り組むことが重要

 その上で、3月29日に厚生労働省保険局医療介護連携政策課から発出された、医療費適正化計画の実績評価の基本的な考え方を示す通知を踏まえ、「第14条の運用に当たっては、国と都道府県が医療の効率的な提供の目標を計画に定め、計画期間において保険者・医療関係者等の協力も得ながら目標の達成に向けて取り組みを行った上で、計画終了後に、目標の達成状況を評価した結果に基づき、なお目標達成のため必要があると認める時に、第14条の規定の適用の必要性について検討していくことになるとされている」と指摘。

 「第3期医療費適正化計画は本年4月から始まったばかりであり、2023年度まで実施される。医療費適正化計画では特定健診の実施率、特定保健指導の実施率、たばこ対策、予防接種などの目標が盛り込まれており、第14条の規定の適用については、これらの取り組みを全て行っても計画が未達だった時に検討されるものである」と述べ、まずは2023年度までに都道府県行政がしっかりと住民の健康増進に取り組んで、目標を達成することが重要だとした。

 また、公立病院の病床数は年々減少傾向にあり、必要となる地方交付税の補助金も減少していくことが予想されるとして、「安易に都道府県ごとに診療報酬を設定するのではなく、これまで活用していた地方交付税の補助金を、他の財源に振り替えることなく、これまでどおり社会保障財源として活用していくべきである」と主張。
 その一方で、地方の基礎的財政収支は黒字であることや、インセンティブの付与の方法として都道府県ごとの診療報酬の設定によって単価の上昇を期待する向きもあるが、昨今の国の財政状況を考えると短絡的であるとの見方を示した。
 更に同会長は、本年2月に静岡県と宮城県で"日本健康会議"の都道府県版が設けられたことにも言及。「都道府県ごとに経済界、医療関係団体、保険者、自治体などとこのような健康会議を設置し、住民の健康寿命の延伸により、医療費の適正化を図っていく必要がある」と述べ、日医もこのような取り組みに協力し、国民の健康寿命の延伸と医療費の適正化の両立ができるよう努めていくとした。


【診療報酬、都道府県が設定 財務省が社会保障改革案 産経4/11】

財務省がまとめた中長期的な社会保障改革案が10日、分かった。医療費や薬の調剤費として医療機関などに支払う「診療報酬」は全国一律になっているが、都道府県別の設定を推進すると明記した。介護分野は軽度の人の自己負担を増やす。11日の財政制度等審議会分科会に提案し、6月に策定する財政健全化目標に反映させたい考えだ。
 高齢化が一段と進展するのに備え、財政支出の膨張を抑える狙い。医療費には実態として地域差があり、効率的な制度運用が期待できる半面、日本医師会などは経済性優先として反発する可能性もある。改革案は厚生労働省など政府内での調整も残っており、実現に向けては曲折もありそうだ。
 医療では、厚生労働相や知事が特例で単価を定められる「地域別診療報酬」の全国的な導入を進める。これまで制度はあっても活用例はなかったが、奈良県が実現を目指しているのを機に国が後押しする。医療費の伸びが著しく、住民の国民健康保険料が高くなる地域で報酬単価を下げるといった対応が可能になる。
 新しい薬や医療技術の公的保険適用時に企業の利益を上乗せして価格を決める現状を改め、費用に見合う治療効果があるかを重視する。市販薬と同じ成分の湿布やビタミン剤などは保険適用から外すほか、受診のたびに患者が窓口で一定額を負担する制度の導入も盛り込んだ。
一方、要介護1、2の人向けの生活援助を保険給付から外し、市区町村の事業に移して自己負担を増やす。訪問介護サービスの過剰な利用は抑制。サービス利用時に必要なケアプラン作成にも利用者負担を設定する。
 財務省によると、75歳以上の後期高齢者数は2030年まで急増し、40年ごろに再び増える。従来20年度としてきた基礎的財政収支の黒字化時期の遅れを最小限にするには、社会保障改革が不可欠とみている。

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