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2017年「障害者就労継続支援事業等」の倒産 前年比2倍増

障害者就労継続支援事業。17年の倒産は過去最高だった前年の2倍強の23件、休廃業・解散はその1.7倍の39件。負債合計は前年の6.8倍増。「就労継続支援A型事業所」の倒産による障害者の大量解雇が話題になった。
今年度の障害者福祉サービスの報酬改定で、一般就労への定着率、月別平均工賃の多寡にわる報酬の選別化が強化され、多くの事業者で減収、対策としての障害の重い人の排除がすすむことが懸念されている。
 
【2017年「障害者就労継続支援事業等」の倒産状況 東京商工リサーチ5/10】
【成果主義の強化により減収、重度者排除へ 障害福祉サービス 報酬改定影響調査 2018/4】

【2017年「障害者就労継続支援事業等」の倒産状況 東京商工リサーチ5/10】

 2017年(1-12月)の「障害者就労継続支援事業等」倒産は、過去最多の23件に急増した。給付金や助成金を支えに新規参入が目立つ障害者就労継続支援事業だが、ここにきて経営に行き詰まるケースが相次いでいる。また、雇用契約を結んで賃金が支払われる「就労継続支援A型事業所」では、倒産による障害者の大量解雇も起こり、行政を含めた支援対策が問われている。
※本調査は、TSR業種コードのうち「その他の障害者福祉事業」の企業倒産を集計・分析した。

◆障害者の働く場としての「就労継続支援事業」

 障害者就労継続支援とは、一般企業への就職が困難とされる障害者を対象に就労の場を提供するもので、就労継続支援には「就労継続支援A型」と「就労継続支援B型」の2種類がある(※下記参照)。また、障害者雇用を促進するため、事業所は国や自治体から障害者の継続雇用に向けた給付金や助成金を受け取ることができる。

 ◇A型(雇用型)は、18歳から65歳までの障害者が対象で、事業所と障害者が雇用契約を結び、行った仕事に対して給料が支払われ、社会保険の加入が義務付けられている。
 ◇B型(非雇用型)は、主にA型の仕事が困難な障害者(年齢制限なし)が対象で、雇用契約は結ばず仕事も負担の少ない短時間になっている。給料は支払われないが、それに代わり作業した分の工賃(手間賃)が支払われる。

◆2017年の倒産、前年比2倍増の23件

 2017年(1-12月)の「障害者就労継続支援事業等」の倒産件数は23件(前年比109.0%増)になり、これまで過去最多だった2016年(11件)の2倍増に達し、最多件数を更新した。
 また、2017年に倒産以外の「休廃業・解散」などで事業活動を停止した事業所は39件(同2.6%増)にのぼる。これは倒産件数の1.7倍に達する水準で、「障害者就労継続支援事業等」を取り巻く経営環境の厳しさを浮き彫りにした。

◆負債額別 1億円未満が8割

 負債合計は20億2,400万円(前年比583.7%増、前年2億9,600万円)で、前年の6.8倍増と大幅に膨らんだ。このうち負債1億円未満が19件(同90.0%増、同10件)と大幅に増加し、負債全体の8割(構成比82.6%)を占めた。
 形態別では、破産が21件(前年比90.9%増、前年11件)と、全体の9割(構成比91.3%)を占めた。一方、再建型の民事再生法は2件(前年ゼロ)にとどまり、業績不振に陥った事業所の再建が極めて難しい状況を反映している。

◆原因別 「事業上の失敗」が2.2倍増

 原因別では、最多が「事業上の失敗」の9件(前年比125.0%増、前年4件)で、前年の2.2倍増と増勢が目立った。次いで、「販売不振」が前年同数の6件、「運転資金の欠乏」が4件(前年1件)だった。事業普及のため、自治体等は受け入れる障害者数に応じて給付金や助成金を支給している。これは事業収益が不安定でも業界参入が可能な構造ともいえ、事業計画の甘い事業者が自立できる業績を上げられず経営に行き詰まるケースもあるようだ。

◆地区別件数、全国9地区のうち7地区で倒産発生

 地区別では、全国9地区のうち、7地区で倒産が発生した。最多は近畿の6件(前年1件)で、次いで中部4件(同2件)、関東4件(同3件)、九州4件(同2件)、中国3件(同1件)、東北1件(同ゼロ)、四国1件(同ゼロ)の順。北海道(同2件)と北陸(同ゼロ)の2地区は発生なし。
 
・2018年3月14日に厚生労働省が公表した「就労継続支援A型事業所」の調査結果によると、実態を把握できた3,036事業所の71%にあたる2,157事業所が、経営不振のため経営改善計画書の提出が必要とされた。また、この2,157事業所の約半数(49.7%)を設立5年未満の営利法人が占め、資金調達力や社内体制が未整備な新規事業者の多い実態が浮かび上がった。

 就労継続支援A型事業所は、2017年4月に指定基準が改正された。事業収入から生産活動に必要な費用を控除した額が利用者の総賃金以上にならない場合は、経営改善計画書を都道府県などの指定権者に提出する必要がある。こうした支給要件の厳格化で、障害者の賃金を事業収入で賄えない事業所が倒産に至っているとの指摘もある。

 給付金や助成金に頼り、事業収益では障害者の賃金を賄えない実質赤字の事業所も多く、関係者からは「生産性の高い仕事を確保できない限り、20人以内の障害者数でなければ事業を続けるのは難しい」との声も聞かれる。新規参入の急増が目立つ障害者就労継続支援事業だが、ここにきて倒産の増加で問題点が浮き彫りになっており、今後の支援策と併せた展開が注目される。

◆主な倒産事例 倒産による障害者の解雇が増加

 1.一般社団法人あじさいの輪(TSR企業コード:712230360、岡山県、負債8憶6,200万円、民事再生法)は、就労継続支援A型事業所を経営していたが、事業不振で2017年7月末に事業所を閉鎖。9月に民事再生法の適用を申請し、障害者約220人を解雇した。

 2.一般社団法人しあわせの庭(TSR企業コード013289632、広島県、同2億8,000万円、破産)は、福山市と府中市でパンやポップコーン製造販売、食品包装材加工などの就労継続支援A型事業所を経営していたが、事業不振で破産を申請。障害者112人を解雇した。

 3.(株)障がい者支援機構(TSR企業コード:403131391、愛知県、同3,400万円、破産)は、就労継続支援A型事業所を名古屋市、さいたま市、千葉県船橋市などで展開していたが、事業拡大に資金繰りが伴わず事業所を閉鎖して破産を申請。障害者154人を解雇した。

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