介護保険の状況 2016会計検査報告 ~「一般財源繰入」違反と言っていない
介護保険会計への一般財源の投入については、厚労省は、いわゆる3原則「保険料の全額免除は不適当、負担能力を収入のみで判断して一律に減免することは不適当、保険料の減免分を一般財源からの繰入れにより補てんすることは不適当」の技術的助言をおこなってきた。ただし、国会論戦では「義務があるというわけではない」、「絶対駄目だと、やめろということまで言っていない」(02年3月19日、参院厚労委、日本共産党井上美議員への厚労大臣答弁)となっている。
最近、ある自治体で、繰り入れダメの根拠として「2016年の会計検査院の報告」が出されたらしく、調べてみたが、そんなものはなかった。「結果に対する所見」では触れられてもいない。
「住民の福祉の増進」が自治体の役割であり、その大原則にもとづき判断すべき、と思う。
【介護保険制度の実施状況に関する会計検査の結果についての報告書(要旨) 平成2 8 年3 月 会計検査院】
2 検査の結果
(1) 介護保険の財政状況
ア介護給付費等及び介護保険事業特別会計における経理の状況
・・・・・ 市町村の一般会計からの介護保険事業特別会計への繰入れについて、法の規定に基づき介護給付費のうち市町村が負担することとなっている割合を超えてこれを行うことは、本来、第1号被保険者の保険料で負担することとなる費用について制度上想定されない市町村の一般財源を充てることになることから費用負担の公平性を損なうおそれがあるものと考えられるが、このような繰入れを行っていた保険者が、第4期では5保険者、第5期では10保険者見受けられた。
◎所見
・我が国の急速な高齢化に伴い介護給付費は増大しており、これに伴い国、都道府県及び市町村の費用負担は増大し、保険料も上昇していて、介護保険制度の実施状況に対する国民の関心はますます高まっている。
また、近年の法改正等に基づき、今後も順次介護保険制度の改正が行われることとなっている中で、給付と負担の均衡を図りつつ、介護保険制度の持続可能性を確保していくことが求められている。
(1) 介護保険の財政状況について
ア 介護保険事業特別会計における経理の状況等を踏まえ、各保険者及び各都道府県において、今後の高齢化の一層の進行等に伴い、各種の介護サービスの利用が増大して介護給付費が増大した場合に備えて、介護保険財政の健全化について引き続き留意すること、また、厚生労働省において、介護保険制度が持続可能なものとなるよう、その運営に十分に留意すること
イ厚生労働省において、財政安定化基金からの交付金については、保険者間の負担の公平性を確保するために、交付超過額が生じた保険者から当該交付超過額を返還させる取扱いとすることなどについて検討すること
【報告書 全体版】
■検査結果について
◎ウ 法定負担割合を超える一般会計からの繰入れ
市町村の一般会計からの介護保険事業特別会計への繰入れについて、法定負担割合を超えてこれを行うことは、本来、第1号被保険者の保険料で負担することとなる費用について制度上想定されない市町村の一般財源を充てることになることから、費用負担の公平性を損なうおそれがあるものと考えられる。このようなことから、厚生労働省は、介護保険制度創設時から一貫して、法定負担割合を超えて一般会計から繰入れを行うことは適当でないとしている。
しかし、図表1-10のとおり、183保険者のうち、一般会計から法定負担割合を超えて介護保険事業特別会計に繰入れを行っていた保険者が、第4期では5保険者(繰入額計4億7579万余円)、第5期では10保険者(同計10億3189万余円)、計11保険者(同合計15億0768万余円)見受けられた。
■検査結果に対する所見
◎結果/さらに、市町村の一般会計からの介護保険事業特別会計への繰入れについて、法定負担割合を超えてこれを行うことは、本来、第1号被保険者の保険料で負担することとなる費用について制度上想定されない市町村の一般財源を充てることになることから費用負担の公平性を損なうおそれがあるものと考えられるが、このような繰入れを行っていた保険者が、第4期では5保険者、第5期では10保険者見受けられた。
◎所見
(1)介護保険の財政状況について
ア 介護保険事業特別会計における経理の状況等を踏まえ、各保険者及び各都道府県において、今後の高齢化の一層の進行等に伴い、各種の介護サービスの利用が増大して介護給付費が増大した場合に備えて、介護保険財政の健全化について引き続き留意すること、また、厚生労働省において、介護保険制度が持続可能なものとなるよう、その運営に十分に留意すること
★メモ者の意見
・会計検査院は、視点は、「介護保険財政の健全化」「制度の持続可能性」を目的としたもの
・一般財源の繰り入れは、検査結果の中で、「公平性を損なう恐れがあると考えられる」、厚労省も「適当でないとしている」と述べているにとどまり、結果についての所見の中では「やめろ」とか指摘してはいない。
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