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使い道もない。足もない・・水陸機動団

 敵前上陸など時代遅れとなり、米海兵隊そのものが存在意義を問われている。それを形だけまねた水陸機動団。
もともと制海権、制空権がないと行動できない。陸上幕僚監部の作戦担当幹部も「もちろん航空優勢、海上優勢が確保されていなければ、上陸しません」と断言したという。それならば平時に輸送して、港から陸揚げするのと同じことになり、水陸機動隊の出番はない。それなのに旧式の「鉄製はしけ」を買ってしまった。買ったのに、輸送する足がない。つかいようがない。こんな無駄なところに税金と人員を使って、防衛能力を低下させているのが安倍政権。
【これで離島防衛できるの? 自衛隊版「海兵隊」が早くもつまづく気配 1年前倒しで今月発足だが…
自衛隊の新部隊 深刻なつまずき 半田滋  現代ビジネス 3/4】

【週のはじめに考える 水陸機動団は有効か 東京・社説 3/4】

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◆「足」となる船がない

離島の奪還を主任務とする「水陸機動団」が今月末、長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地に誕生する。「殴り込み部隊」といわれる米海兵隊の自衛隊版だ。本来なら2018年度末、つまり来年3月に新編される予定だったが、中国の軍事力強化に対抗し、1年前倒して発足する。
ただ、予定した3個連隊ではなく、当面2個連隊にとどまることや、機動性が売りにもかかわらず、海上輸送力の決定的な不足など最初から波瀾含み。そのつまずき方は、当初の予定通り1年後に発足したとしても追いつかないほど深刻である。
「水陸機動団の新編は、わが国の厳しい安全保障環境、とりわけ南西防衛について喫緊の課題と思っている。離島の防衛を主体とする部隊の新編により、わが国の主として島しょ防衛に対する実効性ある抑止、また対処能力が向上するものと思う」
山崎幸二陸上幕僚長は2月22日の会見で胸を張って、こう述べた。
これまでの陸上自衛隊による島しょ防衛は、情勢が緊迫した時点で部隊を離島に事前展開し、抑止力を高めて侵攻を未然防止する作戦だった。それでも敵に占領されることはあるわけで、取り戻すとなれば、全国に散らばった部隊を動員するほかなかった。
水陸機動団は陸上自衛隊に欠落していた奪還機能を持ち、敵前上陸する専門部隊である。世界の海兵隊の中で最強といわれる米海兵隊をお手本に、装備品も垂直離着陸輸送機「オスプレイ」、水陸両用車「AAV7」とまるごと米海兵隊を真似ている。
ところが、「いざ出陣!」となる場面で大きな問題が浮上する。米海兵隊が「移動の足」として使う強襲揚陸艦が自衛隊には1隻もないのだ。
例えば、沖縄の米海兵隊を輸送するため、長崎県の米海軍佐世保基には強襲揚陸艦1隻とドック型揚陸艦3隻が配備されている。
佐世保に配備された強襲揚陸艦「ワスプ」の場合、ハリアーやF35Bといった垂直離着陸攻撃機、オスプレイ、各種ヘリコプターなどを搭載するほか、艦内に戦車、水陸両用車とそれらを陸揚げするエアクッション揚力艇(LCAC)を積み込み、さらに海兵隊員約1900人を一度に輸送することができる。
つまり、空母と輸送艦の機能を合わせ持つのが強襲揚陸艦なのである。そんな強襲揚陸艦を持たない自衛隊が水陸機動団の海上輸送にチャレンジするとすれば、どうなるのか。
米海軍ワスプ級強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」(Photo by gettyimages)
陸上自衛隊の作戦担当幹部は「海上自衛隊の『おおすみ』型輸送艦で戦車や水陸両用車を運び、航空管制機能を持った『ひゅうが』『いずも』といった護衛艦でオスプレイやヘリコプターを輸送するほかない」という。
米海兵隊なら1隻で足りる艦艇を2隻動員する必要が出てくるというのだ。ただし、単純に2隻あれば、何とかなるという話ではない。水陸機動団は訓練用を含めてAAV7を52両保有することになる。
海上自衛隊の「おおすみ」型輸送艦で運べるAAV7は1隻あたり16両に過ぎず、海自が保有する「おおすみ」型3隻をフル動員しても購入する52両は運びきれない。またAAV7を満載すれば、戦車や装甲車を上陸させるためのLCAC2隻を積み込めず、上陸する際の戦力は決定的に不足する。

さらに「おおすみ」型輸送艦は艦内ドックの改修なしにはAAV7を積み込めない構造のため、2014年度防衛費から毎年度改修費が計上されている。18年度予算案にも計上されおり、改修は終わっていない。「上陸の足」となるAAV7さえ満足に積めない状態なのに水陸機動団は発足してしまうのだ。
山崎陸幕長は会見で「水陸機動のための輸送、また上陸についてはまだまだこれから整備していかなくてはいけないという認識は持っている」と現状の不備を率直に認めている。

◆「ナッチャンWorld」を民間から借りるが…

海上輸送力の確保には、強襲揚陸艦のあらたな建造しかないが、強襲揚陸艦をめぐっては2015年度の防衛費に海外調査費が500万円付いたのを最後に、建造費はもちろん関連する経費は16年度以降、1円も計上されていない。
これは艦艇の発注元の海上自衛隊の協力が得られていないことを意味する。海上自衛隊の関心は、九州を起点にして、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオに至る中国が主張するところの第一列島線、そして伊豆諸島を起点に、小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至る中国主張の第二列島線との間に挟まれた太平洋に進出する中国海軍の潜水艦や水上艦の監視にある。
そのための護衛艦と潜水艦の追加建造を進めており、陸上自衛隊のための艦艇、すなわち強襲揚陸艦の建造に回すカネはないというわけだ。
陸上自衛隊は水陸機動団の発足に歩調を合わせ、機甲師団を除いて全国に14個ある師団・旅団を7個ずつ機動運用部隊と地域配備部隊に分け、いざという場面で機動運用部隊を島しょ防衛に派遣することにしている。
これにより水陸機動団さえ満足に運べない海上輸送力がさらに不足するのは確実なため、防衛省は民間輸送船「はくおう」「ナッチャンWorld」の2隻を2015年から20年間、借り上げる契約を結んだ。ただし、輸送量に限界があるうえ、有事に民間人の乗組員が協力してくれる保障はどこにもない。
2016年に防衛省が正式に利用契約を結んだ民間船「ナッチャンWorld」
悩みは航空輸送でも変わりない。航空自衛隊が保有するC130などの輸送機では圧倒的に空輸量が不足する。民間に依存しようにも日本航空、全日空など国内の航空会社は武器を運んではくれないのだ。
国連平和維持活動(PKO)などで海外へ派遣される自衛隊は、海外の航空会社のチャーター便を利用して武器を運ぶか、艦船で運んでいる。国内航空会社を利用したとしても、武器を持たない丸腰の隊員を運んでいるにすぎない。
見てきた通り、輸送力不足を解消するのは簡単ではなく、島しょ防衛の致命傷になりかねないのである。
次に抱える問題は、3個目の水陸機動連隊の配備先が沖縄本島の米海兵隊基地となりそうな点である。
もともと水陸機動団は中国の軍事力強化に対抗して、沖縄の島しょ防衛を目的に設立される。陸上自衛隊が思い描く、中国による離島侵攻のシナリオは以下の通りである。
(1)中国軍が領有権を主張する尖閣諸島を武力で占領する
(2)周辺にある石垣島や宮古島などに自衛隊が駆けつければ、尖閣奪還のための拠点となりかねない
(3)そこで自衛隊に対抗するため、中国軍は尖閣占領と同時に石垣島や宮古島も占領する
陸上自衛隊が現在、石垣島、宮古島、さらに鹿児島県の奄美大島に地対艦ミサイル部隊と地対空ミサイル部隊の配備を進める背景には、こうした想定がある。

◆本土防衛がお留守になるジレンマ

であるならば、3個目の水陸機動連隊の配備先は当然のこと、石垣島や宮古島と距離的に近い沖縄本島となるのである。
沖縄本島の米海兵隊は、2012年に日米合意した「『米軍再編』見直し」により、実戦部隊の海外移転が決定した。名護市にあるキャンプ・シュワブの第4海兵連隊はグアムへ、金武町にあるキャンプ・ハンセンの第12海兵連隊はいずこかの海外へ移転する。
実戦部隊が海外へ移転するのに、実戦部隊を空輸するためのオスプレイが配備された普天間基地の機能を、キャンプ・シュワブがある名護市辺野古に移設する必要があるのか疑問だが、本稿はこの問題には触れない。
広大な米海兵隊基地を利用する実戦部隊が2個、海外へ移転するのだ。空き家が目立つようになる基地を、陸上自衛隊が利用したいと考えたとしても不思議ではない。
現に日米両政府は昨年8月、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表で、南西諸島を含めた自衛隊の態勢を強化するため、基地の共同使用促進を再確認した。すでに米海兵隊基地の共同使用に向けた協議は始まっている。
ただ、沖縄の人々からすれば、自衛隊による米軍基地の共同使用は「基地の固定化」につながる。海外移転により、不要となる米軍基地が返還されるのではなく、自衛隊基地に代わるだけなら「基地負担」は永遠に消えない。「3個目の連隊」が歓迎されるとは到底、考えられないのである。
そもそも中国は、日本人が普通に生活する島々を占領する挙に出るだろうか。沖縄を訪問する観光客は台湾、韓国、中国の順に多く、2016年度、台湾と中国を合わせると100万人以上にのぼった。
中国政府が国内政治の不満解消にも役立っている日本の観光資源を攻撃対象にすると考えるのは、行き過ぎではないだろうか。
南西防衛、島しょ防衛は、冷戦が終結したことにより、戦車、火砲を4分の1にまで削られ、定数も削減された陸上自衛隊の「生き残り策」でもある。中国という巨竜に対抗する新たな戦略は、国民の支持を受けやすいことも追い風になっているだろう。
しかし、長距離移動の訓練を伴う島しょ防衛に力を注げば、その分、本土がお留守になるのは自明である。陸上自衛隊の中から不思議なほど「北朝鮮対処」が聞こえないのはどういうわけだろうか。
制服組幹部の中には「島しょ防衛が完成すれば、均衡ある本土の防衛体制を取り戻すまでに30年はかかる」と嘆く声があることを紹介しておこう。

【週のはじめに考える 水陸機動団は有効か 東京・社説 3/4】

 自衛隊版海兵隊の「水陸機動団」が今月、陸上自衛隊に誕生します。奪われた島を取り返す専門部隊ですが、その役割と課題について、考えてみました。
 水陸機動団は二個連隊、隊員二千百人規模。長崎県佐世保市で産声を上げます。その役割について、山崎幸二陸上幕僚長は会見で「離島の防衛を主体とする部隊。この新編により、主に島しょ防衛の実効性ある抑止、また対処能力が向上する」と述べています。

◆オスプレイも活用

 これまでの島しょ防衛は、情勢が緊迫した段階で陸上部隊を離島に事前展開し、抑止力を高めて侵攻を未然に防止するというやり方でした。
 水陸機動団も事前展開を重視することに変わりないものの、島しょを占領された場合、奪回するのを主任務としています。そのための装備として垂直離着陸輸送機「オスプレイ」や水陸両用車を活用します。
 奪回には航空優勢、海上優勢の確保が欠かせません。敵に空域、海域とも抑えられている状況下で上陸を敢行するのは自殺行為に等しいからです。
 以前、取材に応じた陸上幕僚監部の作戦担当幹部は「もちろん航空優勢、海上優勢が確保されていなければ、上陸しません」と断言。それならば平時に輸送して、港から陸揚げするのと同じことになり、オスプレイや水陸両用車の出番はありません。
 出番の有無に関係なく、防衛省はオスプレイを十七機、水陸両用車を五十二両、米政府から購入します。ともに陸上自衛隊がお手本とする米海兵隊の主力装備でもあります。危険な敵前上陸はしないにもかかわらず、「殴り込み部隊」といわれる米海兵隊と同じ装備を持つのは違和感があります。

◆不足する海上輸送力

 すっきりしない印象が残るのは、水陸機動団が誕生するまでの経緯と関係しているのではないでしょうか。
 民主党政権下の二〇一一年度に改定された日本防衛の指針「防衛計画の大綱」で陸上自衛隊は一人負けしました。海上自衛隊と航空自衛隊の増強が認められる一方で、陸自は定員千人を削られ、戦車と大砲も削減されました。
 第二次安倍晋三政権下の一四年度に再改定された大綱は、冷戦期に想定した大規模な陸上兵力を動員した着上陸侵攻が起こる可能性をほぼ完全に排除しています。陸上自衛隊が主役となるような戦争はもう起きないというのです。
 このままでは先細る一方の陸上自衛隊が着目したのは、中国による離島侵攻を想定した島しょ防衛でした。ただ、中国は尖閣諸島以外の島々について領有権を主張していません。海軍力を強めているのは事実とはいえ、その目的が沖縄の離島占拠にあると考える専門家はあまりいないことでしょう。
 それでも南西防衛、島しょ防衛を打ち出した陸上自衛隊は、全国の師団・旅団を機動運用部隊と地域配備部隊に分け、いざという場面で機動運用部隊を島しょ防衛に派遣することにしました。その先陣を切るのが水陸機動団なのです。誤解を恐れずにいえば、陸上自衛隊という実力組織の「生き残り策」のシンボルといえるかもしれません。
 付け焼き刃を裏付けるのは、輸送力が足りないのに発足してしまうことです。そもそも米海兵隊が使っている強襲揚陸艦は自衛隊に一隻もありません。
 代わりに使う「おおすみ」型輸送艦で運べる水陸両用車は一隻あたり十六両にすぎず、「おおすみ」型三隻をフル動員しても購入する五十二両は運びきれません。
 水陸両用車を満載すれば、戦車や装甲車を上陸させるのに必要なエアクッション揚陸艇(LCAC)二隻を搭載できず、戦力は決定的に不足します。
 輸送力の確保には、強襲揚陸艦などの建造が欠かせませんが、艦艇の発注元である海上自衛隊の関心は中国の水上艦や潜水艦の動向監視にあるので連携プレーは望めそうもありません。
 問題はまだあります。
 水陸機動団は本来、三個連隊なのです。いずれ三個目の連隊を発足させますが、配備先として沖縄の米海兵隊基地が浮上しています。基地の固定化につながる部隊配備を沖縄の人々は歓迎するでしょうか。

◆先行する内向き理屈

 他の組織改編も同時にあって「陸上自衛隊始まって以来の大改革」といわれますが、陸自が実際に活躍する場面は災害救援なのでは。本土を手薄にしていいのでしょうか。北朝鮮の動向も気になりますが、政府は起こりうる事態を示すことなく、「国難」を叫ぶばかり。内向きの理屈を先行させる国防政策でいいはずがありません。

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