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昨夏の電力余力  震災前の原発分上回る ~再エネ・省エネ効果

夏の最大使用電力は節電の定着で震災前の一〇年に比べて二千四百万キロワット減っている。再生エネと節電合計で、原発四十四基分にあたる四千四百万キロワットの余力をつくり出した計算。
これは2010年当時稼働していた全ての原発が生み出した三千四百万キロワットを一千万キロワット近く上回っている。 
 エネルギーシフトに不熱心さのもとでもこの変化。原発固執勢力には「不都合な真実」
【昨夏の電力余力  震災前の原発分上回る 東京3/8】
【2017年、世界の風力発電市場の成長と日本の課題 energy-democracy3/7】

【昨夏の電力余力  震災前の原発分上回る 東京3/8】

 年間通じて最も電力が必要になる夏の発電状況について、電力の供給余力が昨年、東日本大震災前の二〇一〇年を大幅に上回っていたことが明らかになった。再生可能エネルギーが過去最大まで拡大したほか節電が進み、震災前に稼働していた原発の合計分を大きく上回る電力の余裕が生まれたため。東京電力管内では厳寒となった今年一月下旬も、大手電力間で電力を融通し合う仕組みなどで電力不足を回避した。
 政府と電力業界は原発再稼働を急ぐが、原発がなくても十分な余力があることが裏付けられた形だ。
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 電力業界の組織「電力広域的運営推進機関」の数値をもとに本紙が計算した。
 電力の余裕は実際の電力消費に対し、供給余力がどの程度あるかを表す「予備率」で示される。例年、冷房で電力が使われる夏に最も低くなる。3%を下回ると停電懸念が生じるとされるが、一七年夏は最大需要を記録した瞬間でも供給余力が二千百万キロワットあり、一億五千五百万キロワットの需要に対する予備率は約14%と、震災前の約9%を大きく上回った。予備率は一六年も約13%あり、供給に大きな余裕がある状況は定着した。
 背景にあるのはまず再生エネの拡大。再生エネは震災前までは地熱発電の三十万キロワットだけだったが、昨年は太陽光を中心に約二千万キロワットに増加。これは原発二十基分(一基百万キロワットとして計算)に相当する。
 需要についても夏の最大使用電力は節電の定着で震災前の一〇年に比べて二千四百万キロワット減っている。再生エネと節電合計で、原発四十四基分にあたる四千四百万キロワットの余力をつくり出した計算。これは一〇年当時稼働していた全ての原発が生み出した三千四百万キロワットを一千万キロワット近く上回る。
 震災後、電力を融通し合うルールが進んだことも余裕を生んでいる。
 今年一月は厳しい寒さで暖房利用が急増。このため震災後に発足した電力広域的運営推進機関を通じ東北電力などが余剰電気を首都圏に供給、東電はさらに事前に契約している企業に電力利用を抑えてもらう「ネガワット(節電)取引」も初めて使い、問題なく乗り切った。

◆原発必要論 根拠失う

<解説> 福島原発事故から七年がたとうとする中、電力の供給余裕が震災前の水準を超えて拡大、「電力を安く安定的に供給するには原発が必要」としてきた安倍政権や経済産業省の主張は根拠を失っている。
 経産省は、国の電力政策の根幹となる「エネルギー基本計画」で、二〇三〇年に必要な電力の20~22%を原発でまかなう方針。電力に余裕がある今も「再生エネは天候に左右され不安定」(経産省幹部)として原発再稼働を急ぐ。
 しかし、今年一月に死去した九州大大学院の吉岡斉(ひとし)教授は「原発こそ電力が不安定になる原因」と指摘していた。発電量が大きすぎ急に止まると穴を埋められないからだ。実際、東日本大震災時だけでなく、中越沖地震のあった〇七年にも東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)が停止し、首都圏は電力不足に陥った。
 原発が「安い」という根拠も乏しくなっている。
 海外では再生エネを安定して利用する技術の開発が進み、発電費用も下がり続ける。一方で原発のコストは放射性廃棄物の処理などがどこまで膨らむか先行きが見えない。政府は「福島のような事故は四千年に一回」との前提で事故処理費を軽く見積もるが、根拠は薄い。
 政府が原発に固執するほど、「安く安定した電力」から懸け離れていく構図になっている。(吉田通夫)
(東京新聞)


【2017年、世界の風力発電市場の成長と日本の課題 energy-democracy3/7】

松原 弘直 /2018年3月7日

世界の風力発電市場は2017年に5,300万kWが導入され、太陽光の年間導入量1億kWと合わせると年間導入量が1億5,000万kWを超えて史上最高を記録した。すでに自然エネルギーは世界のエネルギー市場で主役となっている。

世界の自然エネルギー市場はこの10年間で急成長を遂げてきたが、その中でも風力発電は太陽光発電に先行して1990年代から着実に導入が進んできた自然エネルギーである。風力発電の累積設備容量は2015年の時点ですでに原子力発電の設備容量を超えた(図1)。


図1. 世界の太陽光、風力および原子力発電の累積設備容量の推移(出典:ISEPプレスリリース「2017年、太陽光発電はついに原子力発電を抜き去った」)

10年前(2007年)の風力発電の累積導入量は1億kW未満だったが、2017年末には5億4,000万kWと6倍近くに達し、太陽光と合わせた累積設備容量はいまや原子力発電の約2.5倍の10億kWに達しようとしている。

世界全体の発電量でも風力発電はすでに4%を超え(2016年、REN21「自然エネルギー世界白書2017」)、自然エネルギーとして水力に次ぐ主力電源の一角となった。今後、年間導入量がおよそ5,000万kW程度の安定成長が続くという控えめな想定でも、今後10年で倍増ペースで拡大してゆくため、太陽光発電とともに今後ますますエネルギーの主役となってゆくことは明らかである。

◆世界の風力発電市場

世界の風力発電の年間導入量は、2015年に約6,300万kWと過去最高を記録したが、2016年以降は5,000万kW程度に減少しており、2017年末までの累積導入量は前年比11%増の約5億4,000万kW(世界風力エネルギー協会)と同水準で、ほぼ安定成長期に入ったと見てよいだろう。近年、年間導入量が年々拡大する「指数関数的な成長」を続ける太陽光発電は、今なお技術学習効果による急速なコスト低下が続いている。対照的に、安定成長期に入った風力発電(特に陸上風力)は大型化や技術学習効果によるコスト低下が比較的緩やかになってきている。

一方、1990年代以降、世界の原子力発電の累積導入量はあまり増加しておらず、2015年末には3億8,300万kWの原子力発電に対して、風力発電が4億3,200万kWと上回った。1992年から2017年までの25年間に飛躍的な成長を遂げ、風力発電の累積導入量は200倍以上になっている(図2)。


図2. 世界全体の風力発電の導入量の推移(出典:世界風力エネルギー会議データよりISEP作成、*1GW = 100万kW)

そのため、すでに陸上での風力発電の発電コストは、既存の火力発電を下回るレベルまで国際的には低下してきている(国際再生可能エネルギー機関 Renewable Power Generation Costs in 2017)。2010年と比べて2017年の陸上風力の平均発電コストは8セント/kWhから6セント/kWhへと2割以上低下して化石燃料の中でも発電コストの低い石炭火力と同レベルになっている。洋上風力についても、平均発電コストは14セント/kWhまで低下しており、今後の入札では2020年には10セント/kWh以下に下がる見通しとなっている。

◆中国での風力発電の躍進

風力発電市場の急成長は、2008年ごろまではドイツやスペインなど欧州の一部の国や米国が牽引していたが、2010年以降は中国が風力発電市場を先導し、欧州各国(英国、フランス、イタリア、トルコ、スウェーデン、ポーランドなど)や他の新興国(インド、ブラジルなど)でも導入が進んでいる。

中国の国内での2017年の風力発電の年間導入量は約2,000万kWだったが、2014年以降は毎年2,000万kWを超えている。世界全体の風力発電の年間導入量5,300万kWの約4割を占めており、日本国内での年間導入量18万kWの実に100倍以上に達している。

また、2017年末には累積導入量が約1億8,800万kWに達し、風力発電導入世界一となると共に、EUに加盟する全28か国の累積導入量1億7,800万kWを上回っている。これは、日本の累積導入量340万kWの50倍以上に相当する(図3)。


図3. 世界各国の風力発電の累積導入量の推移(出典:世界風力エネルギー協会、世界風力エネルギー会議データよりISEP作成、*1GW = 100万kW)

2017年末の時点で風力発電は中国内の全発電設備の約9%に達しており、2017年の風力による年間発電量は3,057億kWhで中国全体の年間発電量の4.8%に達している(China Energy Portal “2017 electricity & other energy statistics”)。中国での風力発電は、火力発電や水力発電に次ぐ第3番の電源としての地位を固め、原子力発電の年間発電量を超えている。

◆風力により進むドイツのエネルギー転換

ドイツの風力発電の累積導入量は5,600万kW(このうち洋上風力が約500万kW)となり、2017年の総発電量の16%に達している(洋上風力が約3%)。これはほぼ同じ国土面積、人口が約1.5倍の日本と比べて約16倍の規模の累積導入量であり、発電量の割合では約26倍に相当する(日本は0.6%)。

風力と太陽光と合わせた変動自然エネルギー(VRE)の割合では22%に達しており(日本は約5%)、自然エネルギー全体では33%にもなる(日本は約15%)。2018年1月1日には、ドイツでは一時的に電力需要に対する自然エネルギーの割合が初めて100%に達し、そのほとんどが風力だった。

参考:Clean Energy Wire “Germany’s energy consumption and power mix in charts”および“Renewables cover about 100% of German power use for first time ever

◆出遅れた日本の風力発電市場

世界的に風力発電の成長が進む中で、日本の2017年の年間導入量はわずか18万kW程度で、累積導入量がようやく340万kWを超えたが、年間発電量は国内の1%にも満たないという段階である。

一方、固定価格買取制度の設備認定を受けた後、2017年3月末時点で運転を開始していない風力発電設備は600万kW以上ある。また、日本風力発電協会によると、2017年11月末時点で環境アセスメントの手続き中のプロジェクトが1,500万kW以上あり、今後の導入の進展が期待されている。しかし、系統への接続問題(「接続可能量」「空容量ゼロ問題」および「工事負担金問題」)や、環境アセスメントの規模要件が海外に比べて厳しく(原則として1万kW未満)、審査期間も3年以上に達するという問題がある。

日本国内の風力発電は、固定価格買取制度がスタートした2012年度以降も、3~4年と長期にわたる法的な環境アセスメント手続きや電力系統への接続の制約などで本格的な導入にはなお時間がかかる状況となっている。

環境アセスメントの手続き中のプロジェクトのうち1,000万kW は東北地方、300万kW は北海道での事業計画であり、電力系統への接続が大きな課題となっている。特に東北電力エリアでは、風力の接続可能量(30日等出力制御枠)が251万kWと設定されるなか、450万kWが設備認定され、1,000万kWが環境アセスメントの手続き中である。さらに東北北部での系統接続の入札制度(電源接続案件募集プロセス)では募集容量280万kWに対して1,500万kWを超える申込みがあり、このうち約8割が風力発電(約5割が洋上風力)となっている。

経産省の2030年のエネルギーミックスでは風力発電は全発電量の1.7%(約1,000万kW)とされているが、日本風力発電協会(JWPA)では3,600万kW以上の導入目標を想定している。今後、日本の風力発電市場が成長を続けていく上では、長期的な導入目標の上方への見直し、環境アセスメントの手続きや電力系統の接続ルール改善・拡充、電力システムの改革などの課題をクリアしていくことが求められる。

◆拡大する世界各国の風力発電市場

風力発電の累積導入量が世界第2位の米国では、トランプ政権に逆風下でも約700万kWが1年間に導入され、2017年末には8,900万kWに達して、米国内の総発電量の2%以上を占めるまでになっている。

風力発電市場が成熟期に入ったヨーロッパ全体では1年間で約1,700万kWの風力発電が新規に導入され、累積設備容量が約1億7,800万kWに達した。これまで市場を先導してきたデンマークやドイツに続いて、他の欧州各国やアジア・南米などの新興国での導入が進んでいる。さらに、イギリスを始めドイツ・中国では洋上風力発電が本格的に導入されている。以下、国別に風力発電市場の概況を見ていこう。

・イギリス
イギリスでも風力発電の導入が進み、累積導入量が1,900万kW近くに達し、そのうち洋上風力が世界第1位の680万kW導入されている。

・フランス
原発大国のフランスでも風力発電の導入が進んでおり、年間導入量が170万kWに達して、累積で1400万kW近くに達している。

・ポーランド
石炭火力に大きく依存しているポーランドでも累積で約600万kWの風力が導入されている。

・デンマーク
デンマークでは人口一人当たり、面積あたりの風力発電の導入量が世界トップになっており、2017年には総電力需要量の約43%を風力で発電している。

・新興国
アジアの新興国では、インドの新規導入量が2017年に420万kWとなり、累積導入量が約3,300万kWに達している。南米では、ブラジルでも200万kWが2017年に導入され、累積で1,200万kWを超えた。

・洋上風力発電
洋上風力発電については、2017年に430万kWが欧州を中心に新規導入され、累積導入量では約1,900万kWに達している。特にイギリスでは、約170万kWの洋上風車が新規に導入され、第2位のドイツの120万kWに続き、中国でも120万kWが新規に導入されている。

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