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労働生産性(付加価値生産性)の低さ~国民の貧困化が原因

 川上則道・都留文科大学名誉教授「日本経済と労働生産性の問題」(経済2018.1)のメモ
 
 安倍政権が最重要視する「労働生産性の引き上げ」

が、 本来の使用価値の生産に関する概念=「労働の生産力」の意味である「労働生産性」を、所得を基準として「付加価値生産性」と混同させて、日本の労働者の働きの効率が悪いとする主張。その誤りを批判する論考

 「国民経済論」は、所得の生産、所得の分配、所得の支出が同一と捉えるもので、1人あたりの「粗付加価値」の国レベルで集約したものがGDP。つまりGDPが低迷している、経済成長率が低いということ。その原因は、供給側にあるのでなく、供給を制限している需要の低迷・・具体的には経済の6割を占める消費の低迷=実質賃金の低下、社会保障(間接賃金)の低下が続いていることにある。
 また、産業別の労働生産性(粗付加価値生産性)の高低についても、比較は誤りと指摘する。

【日本経済と労働生産性の問題』

 川上則道・都留文科大学名誉教授 経済2018.1

■はじめに

・自民党選挙公約 「働き方改革」など「改革」が40回、「生産性革命」など「革命」が26回使用 ~「安部政権は…壊滅的になっている金融政策とか財政運営になるべく触れない。いまやひとえに生産性を上げることばかりを目指しています」〔浜矩子・同社大教授〕
~ 安倍政権は、日本経済の最重要課題を労働生産性を引き上げることに置いている。

・本来、労働生産性(労働の生産力)の向上=社会の生産力を前進させること、同時に搾取の強化/一概によいとは言えず、また今日の最重要課題ではない

・テーマの目的/「付加価値生産性」という近代経済学の用語が「労働生産性」と混同され、大きなミスリードがなされている。

・テーマの中心点
①「付加価値生産性」…一人の労働者がどれだけの付加価値を生産したか、の指標
→「付加価値」は、分配され所得(賃金+利潤)となる/一人の労働者がどれだけの所得を生産したか、のこと
→ 統計的に「付加価値」を捉えるときは「粗付加価値」を使用。その国内全体の合計がGDP
→ 一国の労働者の生産性は、就業者一人当たりのGDP
→ 「労働の生産性が低い」/経済成長率が低い、停滞していること

②本来の意味「労働の生産力」  使用価値の生産に関する概念
  一人で米50キロ生産していたものが100キロに/労働生産性は2倍になった
 
 ①と②は、まったくちがった概念

1.労働生産性(=「労働の生産力」)の概念

(1)労働生産性は、どう記述されている

・経済学辞典など 略 (上記②参照)
・「資本論」での「労働の生産力」の使用例
「労働の生産力を増大させ、労働の生産力の増大によって労働力の価値を低下させ、そうしてこの価値の再生産に必要な労働部分を短縮するためには、資本は・・その生産方法を変革しなければならない」
「商品の価値は労働の生産力に反比例する。労働力の価値も、諸商品価値によって規定されているので、同じく労働の生産力に反比例する。これに反して、相対的剰余価値は、労働の生産力に正比例する」

(2).労働生産性は同じ使用価値をもつ生産物ごとに規定される

・労働生産性の概念の中心的な意味は、単位あたりの労働が、どれだけの量の労働生産物(使用価値)を生産できるかにある。労働の物質的生産能力の高さの程度を表すもの(わかりやすい概念)
・注意すべき点/同じ使用価値をもつ生産物ごとに規定。生産物の同一を前提としてのみ比較可能
~A 米50キロ生産 B100キロ C自転車二台/ BはAの2倍。A、BとCは比較しようがない

(3).労働生産性は経済社会を把握するための基本概念

・労働の生産力の概念…経済社会を把握するための歴史貫通的な概念/社会の豊かさの、また、社会が階級編成されることの物質的な基礎
→労働生産性が向上し、労働者一人の生産する生産物が、労働者一人とその家族が生活のために消費する生産物の量を超えると「剰余生産物」が発生
→その剰余生産物を奪うことで、労働から解放される人たちが生まれ、階級社会が出現
・資本主義のもとでの労働生産性の向上…相対的剰余価値率を高める
・個々の資本家は労働生産性を高めて、自らの商品の価値を引き下げ、特別剰余価値を獲得し、競争に打ち勝とうする。さもなくば敗北
→ 個々の資本家は、労働生産性の向上を競争によって強制される

・よって、資本主義は、労働生産性の引き上げが組み込まれた体制

2 付加価値性生産性の概念(近代経済学の生産性概念)

(1) 付加価値性生産性と付加価値
・ケインズ「国民所得論」(国民経済計算論)…一定の科学性を持つが、その中心概念の1つが「付加価値」
・生産物の産出量を「付加価値」でとらえる「付加価値・労働生産性」
~今日てば、「労働生産性」は、「付加価値生産性」と同義のものとして使われている

・「付加価値」とは
 例)パン工場で、労働者5人がパンを1ヶ月で1000万円生産/原材料費500万円、減価償却費100万円
→ 付加価値生産額400万円。
→ 一般に「付加価値」= 生産額 -(原材料費+減価償却費)~小麦、パン焼釜などはパン工場で生産したものではないので除いて、パン工場が真に生産したものを把握。それが「付加価値」
~労働者一人 1ヶ月の付加価値80万円。1ヶ月20日働いたとすれば1日4万円、1年なら960万円

・付加価値= 生産額-コスト(原材料費+減価償却費)=儲け=賃金+利潤=所得
・粗付加価値(=生産額-原材料費=賃金+利潤+減価償却費)/この合計がGDP

(2)付加価値生産性の労働生産性(労働の生産力)との違い

①付加価値生産性…使用価値ではなく生産額(価格)によって生産量(産出量)を捉える
・先の米と自転車の話・・・使用価値のことなる生産物では比較できない
・が、米の価格1キロ500円、自転車の価格一台15000円とすれば
 一日の生産額 A25000円、B50000円、C30000円となり、/生産量を生産額ではかれば、
 Bの生産性はAの2倍、CはAの1.2倍と、比較が可能となる。
(注 付加価値生産額は普通の生産額とは違うが、生産額という点では共通なので、例ではその相違を無視)

・実質付加価値生産性…生産額で捉える生産性では、同じ設定でも米の値段が600円にあがれば、付加価値生産性が20%アップとなる/この価格上昇の生産性への作用を除いたもの

②付加価値生産性には、「労働の生産力」以外の要素も含まれる
・外部の市場状況(価格、需給)によっても多大な影響をうける
・実質付加価値生産性として「価格」の影響をのぞいても需給が影響する
→ 需要不足で生産能力を十分に発揮できないとき、「労働の生産力」は同じでも、生産額が減り、実質付加価値生産性を引き下げることになる。/需要過多の場合はその逆

・生産の捉え方の違い/ 国民所得論 所得が基本概念で、所得の生産と所得の分配と所得の支出が同一のものとしてとらえる(三面等価の原則)
~もともと物質的生産物の生産ではなく、所得。所得の生産を生産の概念である付加価値の生産と捉えなおしたもの/ よって、サービス部門も、所得を生むので付加価値を生産する生産部門となる。

・サービス業の事業者の稼ぐ労働者一人当たりの所得を「労働生産性」とよぶのは、この用語の拡大解釈による流用である、労働生産性概念からの逸脱

3.今日の日本経済における付加価値生産性と労働生産性

・今日の問題は、労働生産性(労働の生産力)と付加価値生産性が同じものとされ、それにもとづき日本経済の状況が分析され、労働生産性の向上が最重要課題とされていること。真の状況はどうか・・・

(1) 付加価値生産性の低順位と労働生産性との関連

・16年版「労働経済白書」~図「OECD諸国における粗付加価値生産性の水準」を掲載し、「名目労働生産性、実質労働生産性ともら日本は最も低い水準にある。…米国や英国を初めとする主要国と日本との差についても、おおむね1.5倍から2倍程度の差があ」る。
→ この図は、白書では「粗付加価値生産性」ではなく「労働生産性」となっており、政府は、粗付加価値生産性と労働生産性とを同一視している。

・政府の主張は「粗付加価値生産性の引き上げが課題である」というもの
→ それを、労働生産性の引き上げるという課題とはむすびつかない
→日本の粗付加価値生産性が、他の先進諸国より小さく、格差が拡大しているのは、労働生産性を含む生産の側にあるのではなく、需要(国民の購買力)の側にあるから

(2)日本経済の低成長と需要不足

・粗付加価値生産性=就業者一人当たりのGDPのこと。/一国の就業者数の変動幅は大きくないので、上昇率を決める主な要因はGDPの上昇率。
 →つまり、政府の「労働生産性の引き上げが課題」=「経済成長率の引き上げが課題」とほぼ同じ

・高度経済成長時  経済成長率10%程度、実質粗付加価値生産性の上昇率も同程度の高さ
・今日、日本で実質粗付加価値生産性の上昇率が低いのは、経済成長率が低いから

・経済成長率の低い要因…国民経済の規模での需要不足(生産能力が十分に発揮できない状況)
→この関係をとらえたのが「GDPギャップ」~生産能力(潜在GDP)とそれへの需要(実質のGDP)との乖離を推計したもの/00-16年、ほぼマイナス(06.07.年2%近くプラス、13年わずかにプラスのみ)

Data294

Data295

・内閣府資料
Data633


・国民経済規模の需要不足…日本の実質賃金が低下し、先進諸国に比べでも水準がさらに低下したことで、国民の購買力が抑制されたから
~85年派遣法成立など非正規雇用の拡大、そのことが正規労働者の賃金上昇も抑制

★緊急の課題は、労働条件の改善、賃金の引き上げ(+社会保障の充実、税負担の不均衡是正)~ 日本の労働者にとって切実な要求/ その実現は、国民経済規模での需要を拡大し、日本経済の健全な成長を回復するカギ

(3)付加価値生産性の産業別格差について

・次に「日本の労働生産性は産業別格差が大きいので、労働生産性の低い産業のそれを引き上げることが課題だ」という主張を吟味し、その誤りの要点を示す

・付加価値生産性と労働生産性とは異なる /就業者1人あたりのGDPを一国の労働生産性と呼ぶのが誤りであるように、産業ごとの就業者1人あたりの粗付加価値を、産業別労働生産性と呼ぶことも誤り
→労働生産性は、生産物の同一を前提にしてのみ比較可能/異なる生産物の生産について、その生産性の変化率の差は比較できても、水準の差は比較できない
→ が、付加価値生産性は、生産量を生産額でとらえるので、異なる生産物の間でも数値計算が「可能」/「付加価値生産性」を「労働生産性」と呼ぶと、生産物の異なる労働についても比較可能と見える/それは錯覚

・就業者1人あたりの粗付加価値は、各産業で大きく違う
→ 売上高(収入)を得る仕組みが大きく違うから/1人の就業者がどれだけの売上げ高を上げれば、その産業が成り立つか、の違い ・・・産業構造の違い、その産業の主な担い手の規模

*粗付加価値=生産額-原材料費=賃金+利潤+減価償却費
  たとえば、減価償費が大きい産業構造は、粗付加価値が大きくなる

例)不動産業 就業者1人当たりの粗付加価値 5632万円と突出~主はマンションなどの住宅賃貸業=家賃収入/建設資金の利息も含めた回収分と原価償却費とが家賃収入に占める割合が高い。就業者の賃金分は小さくならざるを得ない。⇔1人の住宅管理者あたりの家賃収入がその給与に比べて大きくなくてはならない
→ この分野の「労働生産性が非常に高い」というのはばかげたこと

例)農林水産業、宿泊・飲食サービス ~この業種には自営業が多く、利潤分はえられなくても自らの生活費をまかなうだけの売上げ額を稼げればなんとか営業をつづけられる
(メモ者 家族、就業員の生活をささえ、税・保険料を担うとともに、地域社会の維持、国土の保全などで少なくない社会役割をになっている。「利潤」を生んでいない、と評価しないのはまちがい。)

・外国との産業別労働生産性(粗付加価値生産性)の比較・・
  同じ業種、同じ産業の場合(その構成の差異は十分考慮が必要)は、水準比較は馬鹿げてはいない。しかし、労働生産性でなく、あくまで「粗付加価値生産性」についてである。


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