米のエルサレム首都承認~自身の選挙運動で、米国と中東の危機拡大
トランプ米大統領が6日、エルサレムをイスラエルの首都と宣言したことでイスラム、独仏、ローマ法王など批判、憂慮の声が続出している。
これについて中東調査会のコラムは、自らの「選挙公約の実現」を目的にしたもので、「これは外交政策ではなく、内政問題あるいは大統領の再選のための選挙運動である。」「中東地域で活動する米軍兵士や外交官あるいは大使館や米国企業への攻撃など、米国の国益を損なう決定になる可能性もある。さらに中東の反米勢力やトランプ大統領が引き続き戦うはずのイスラーム過激派には、対米攻撃のための格好の宣伝材料を提供することになるだろう。」と警告する。イラク戦争で不安定にした中東をさらに混乱させるもの。まさに「最大の過ち」といえる。
【トランプ大統領のエルサレムに関する演説 中東調査会12/6】
【米のエルサレム首都承認は「最大の過ち」 国際社会から批判の声 】
【米トランプ政権はエルサレムの首都認定を撤回せよ
2017年12月6日 日本共産党幹部会委員長 志位和夫】
【米のエルサレム首都承認は「最大の過ち」 国際社会から批判の声 】CNN) トランプ米大統領が6日、エルサレムをイスラエルの首都と宣言したことについて、パレスチナ首脳は「最大の過ち」と強く非難した。この宣言によって聖戦を唱える過激派が勢い付き、米国が和平合意の仲介役を果たすこともできなくなると警告している。国際社会も批判の声を強めており、国連安全保障理事会は、8日にこの問題について協議する。
パレスチナのアッバス議長はテレビ演説の中で、トランプ大統領の発表について「過激派組織が仕掛ける宗教戦争を助長し、地域全体に損害を及ぼす。それは重大な局面を経て、終わりのない戦争へと我々を導くだろう」と警告した。
中東和平交渉のパレスチナ側の責任者サエブ・エレカット氏は、これで米国が和平プロセスにおける役割を果たすことはできなくなったと指摘し、「トランプ大統領は、2国家(解決)の一切の可能性を破壊した」とする声明を発表。CNNの取材に対しては、「トランプ大統領は人生で最大の過ちを犯した」と語った。
パレスチナの各派は3日間の抗議運動を呼びかけ、米国務省はパレスチナ西岸とエルサレムの旧市街について渡航警戒情報を発表した。イランの最高指導者ハメネイ師は公式ツイッターに掲載した声明で、米国の決定は「絶望と衰弱」から生じたと述べ、「パレスチナは解放される。パレスチナ国家は勝利を遂げる」とした。
トランプ大統領の発表が中東を不安定化させ、イスラエルとパレスチナの和平合意の妨げになるとの懸念は強まっている。国連のグテーレス事務総長は、エルサレムの地位はイスラエルとパレスチナの交渉を通じてのみ解決すべき問題だと指摘し、「2国家解決に代わる代替策はない」と言明。
「2国家が平和と安全と相互承認の中で共存し、エルサレムをイスラエルとパレスチナの首都とし、最終的な地位問題は交渉を通じて恒久的に解決され、双方の人々の切実な願いがかなえられる」という展望の実現によってのみ、この問題は解決できると訴えた。フランスのマクロン大統領は、訪問先のアルジェリアで演説し、トランプ大統領の決定に遺憾を表明。米国の新しい政策は国際法違反に当たるとの見方を示した。
ヨルダンやエジプトなど中東諸国も一斉に反発し、米国に対して再考を求めている。
ロシアのペスコフ首相は定例記者会見で、プーチン首相がアッバス議長と5日に電話で会談し、「情勢悪化の可能性に関する深刻な懸念」を表明したと語った。
英国のメイ首相は、「エルサレムの地位はイスラエルとパレスチナの交渉の中で決定されるべき」との立場に変わりはないと述べ、エルサレムはいずれ、両国が共有する首都となるべきだと指摘した。
ローマ法王フランシスコも今回の事態に深い憂慮を表明、中東の一層の不安定化を防ぐため、エルサレムに関しては分別をもって慎重な姿勢で臨むよう呼びかけている。
【米トランプ政権はエルサレムの首都認定を撤回せよ 2017年12月6日 日本共産党幹部会委員長 志位和夫】 一、米国のトランプ政権は6日、エルサレムをイスラエルの首都として認定し、テルアビブにある米大使館をエルサレムに移転する方針を決めた。これは、イスラエル・パレスチナ問題の解決に関する国連の諸決議に反し、問題の公正な解決、中東の平和と安定に逆行する暴挙である。決定のすみやかな撤回を強く求める。 一、国連は安保理決議478(1980年)をはじめとする諸決議で、イスラエルが同年に占領地を含むエルサレム全体を首都とした決定を、国際法違反で無効なものとして認めていない。国連総会は、パレスチナ国家の樹立、イスラエルとの2国家平和共存などを基本に、エルサレムの地位は交渉で決めるとして、パレスチナ問題の平和解決を目指す決議を圧倒的多数で採択している。米国は1995年に議会が採択した法律で大使館のエルサレム移設を決めているが、歴代政権はその実行を延期してきた。 トランプ政権の行動は、国連の諸決定はもとより、米国の歴代政権の立場をも覆すものである。それは中東和平に重大な障害を持ち込み、地域の緊張を高めるものである。パレスチナ自治政府やアラブ諸国、欧州各国をはじめ国際社会から強い批判が起こっているのは当然である。 一、日本政府はこれまで、2国家の平和共存によるイスラエル・パレスチナ問題の解決を支持してきた。安倍政権は、米トランプ政権に対し、今回の無法な決定の撤回を強く働きかけるべきである。 一、日本共産党は中東和平について、イスラエルの占領地からの撤退、パレスチナ独立国家樹立を含む民族自決権の実現、両者の生存権の相互承認を求めるとともに、日本政府がパレスチナ独立国家を承認するよう主張してきた。米トランプ政権による新たな逆流がつくられるもと、中東問題の公正な解決のためいっそう力をつくす決意である。
« 原発は「未完の技術」、再エネを基幹に 「学術会議」提言 | Main | 植民地独立。そして核兵器禁止~大国の言動が「違法化」されていく時代 »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 基礎控除引上げ、消費税減税…絶対額でなく負担比率の変化で見る (2024.12.09)
- 2024.11地方議員学習交流会・資料(2024.12.02)
- 所得などの「控除方針は金持ち優遇」と闘ってきた歴史(2024.11.15)
- 「立憲民主」の選挙政策を見る (2024.10.09)
- 「賃上げ・時短」政策と「人手不足」問題~ カギは、持続可能な働き方(2024.10.01)
« 原発は「未完の技術」、再エネを基幹に 「学術会議」提言 | Main | 植民地独立。そして核兵器禁止~大国の言動が「違法化」されていく時代 »
Comments