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原発は「未完の技術」、再エネを基幹に 「学術会議」提言

 学術会議の提言は、事故の長期にわたる深刻な影響、過去の収益で事故対策費もまかなえない事業。そして、過酷事故の可能性を排除できない上、過酷事故を防止するために、常に最高の対策を取り入れるバックフィット方式のもと、安全対策費の事前予想が不可能の原発は「未完の技術」である指摘し、再生エネを基幹的エネルギーとして計画への転換を提言している。

 爆発的に普及する自然エネルギー。中国、発展途上国での導入が急テンポである。
広大な地域に送電網をめぐらす巨大発電施設より、地域分散型の発電システムが合理的である。
ガラパゴス化した「原発」固執が日本経済をダメにする。

【提言  我が国の原子力発電のあり方についてー東京電力福島第一原子力発電所事故から何をくみ取るか
2017年9月12日  日本学術会議】

【中国“再エネ”が日本を飲み込む!? クロ現代+12/4】
【自然エネルギー世界白書2017ハイライト日本語版の公開 ISEP11/28】

【提言  我が国の原子力発電のあり方についてー東京電力福島第一原子力発電所事故から何をくみ取るか 2017年9月12日  日本学術会議】

「提言」の一部を引用

(1) 原子力発電のコスト問題
従来から、原子力発電に関しては安全性に関して厳しい指摘を受けながら、出力が安定していること、電力生産コストが安いこと、温室効果ガスの直接的な排出が少ないこと等が評価されて設置数が増えてきた。しかし、東電福島第一原発事故は、この点でも国民の認識を大きく変えた。その理由は、何よりも、事故への対処費用が既に倍増していることと、今回のような過酷事故を回避すべく安全対策を立てた場合、これから原発を稼働していくのに要する費用が大きく増加するとともに、バックフィット方式*が取り入れられたことで、そもそも安全対策費用の事前予測が困難になったことである。

今回の事故の費用をみてみよう。2016 年末に、国は東電福島第一原発の事故処理費がこれまでの想定額である11 兆円を大きく上回って、21.5 兆円に達する見通しであることを公表した[52]。内訳は、廃炉費用については、溶け落ちた燃料の取り出しに巨額の費用を要するため2兆から8兆円へ増額、賠償費用については、避難先の住居費の確保等によって5.4 兆円から7.9 兆円へ増額(実績は第2章(2)に示した)、除染費用については、作業員の人件費高騰等によって2.5 兆円から4兆円へ増額、さらに、除染土等の中間貯蔵費用は輸送費の増加等で1.1 兆円から1.6 兆円増額、というものである。

こうした事故処理費用の増額をもとに、東電福島第一原発1号機が稼働を始めた1971年から2011 年までの同原発による発電単価の増加額を試算すると、東電福島第一原発の累積発電電力量は9,339 億kWh なので21、23.0 円/kWh となる。もちろん、これは、これまでの東京電力の電力料金単価を上回り、事故処理費用の総額は30 年以上にわたって稼働してきた同原発がもたらした総収入を上回るものである22。したがって、東電福島第一原発は、企業として存続しえないほどの損失を生んだ事業であったことになる。

今回の事故処理費用の見直しでは、その財源を確保するために、東電の利益積み立て、国保有の東電株の売却、託送料金*の引き上げによる全国の電力利用者の負担増等を行うとしている。特に、賠償財源の一部は、託送料金の引き上げによって、新電力の利用者等原子力発電による電力利用を行わない利用者にも負担を求めることになっている23。

廃炉、除染、賠償、避難先の住居確保等は、いずれも事故に伴って発生する費用として必要性を持つものである。したがって、それらの費用負担について、国は、事故の原因者である東京電力の責任を明確にしつつ、今回の見直しで示された方式について十分な説明責任を果たして消費者・国民の理解を得るべきである。

我が国の原発稼働の約45 年間の歴史で、4基の原子炉が過酷事故を起こした事実が生じた。これを踏まえるならば、将来においても過酷事故の可能性を想定しなければならない。このため、今後も原発を稼働させれば、再稼働にあたって安全対策を強化することはもちろん、バックフィット方式により、絶えず最新の安全対策を適用することが必要となり、それに要する費用が、過酷事故を未然に防止するための費用として積み上がっていくことになる。それらの額は、事前に予測可能なものとはならない。このことは、原子力発電が工学的に未完の技術であることを示している。したがって、原子力発電を安価な電力供給法と見なすことには既に懸念が生じており、原子力発電関連で、一部の企業では深刻な経営危機すら発生している2

(2) エネルギー供給構成の見直しと原子力発電
原子力発電は、核燃料サイクルによるプルトニウムの増殖利用の実現が見通せない中で、ウラン資源の賦存量に制約されたエネルギー供給源になっており、化石燃料起源のエネルギー同様、長期的にみれば供給力に限界がある。また、既にみたように、環境を汚染したという意味で環境適合性において大きな問題を持つことが明らかになったとともに、経済性についても他のエネルギー供給法より確実に優位にあるとはいえなくなった。これまでは、低炭素性や経済性から原子力発電が選ばれるとされてきたが、東電福島第一原発事故を踏まえれば、こうした選択について見直しが必要となっているといわざるを得ない。

2017 年6 月初旬現在では稼働中の原発は5基である。このため、エネルギー供給源としての原子力への依存度は1%を切っており

近年、世界には再生可能エネルギーの供給量を大きく増やしている国があり、我が国でもシェアを拡大する余地はあると考えられる。福島県が県内の一次エネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄う目標を設定している[55]等の意欲的な試みを支援して、我が国でも再生可能エネルギーを基幹的なエネルギーにしていくことが重要である。

また、既に我が国の人口が減少局面に入ったことを背景に、長期的には最終エネルギー需要も減少に向かい、省エネ技術の進展等によってこの傾向はさらに強まるとされる[54]。こうした中で、エネルギー供給構成においても、「S+3E」をより重視することが可能となる。

【中国“再エネ”が日本を飲み込む!? クロ現代+12/4】

「化石燃料と原発」のイメージが強かった中国。そのエネルギー事情に地殻変動が起きている。大気汚染が国内で限界に達し、次の主力と考えていた原発も日本での事故を受け世論から不安の声が上がり新規建設が年々厳しくなるなか、必要に迫られ再生可能エネルギーへのシフトが始まった。それから数年、技術力は高まり、コスト競争でも他の追随を許さないほどに成長。気づけば世界の市場をリードするまでに。欧州各国が再エネへ舵を切り始めると、チャンスとばかりに中国政府も強力に国内産業を後押しし始めた。一方、日本の再エネ市場は低迷。太陽光パネルメーカーの撤退が相次ぎ、震災直後盛り上がりを見せた新規参入事業者も減少を続けている。背景にはわが国特有の規制の壁があった。中国、日本の再エネビジネスの最前線を取材する。



【自然エネルギー世界白書2017ハイライト ISEP11/28】

■ 2016年、自然エネルギー容量の新規導入量は161GWと新たな記録を樹立し、これは世界全体で見ると2015年に比べ約9%の増加となった。太陽光発電は2016年に最も躍進し、自然エネルギー増加量のうちの47%を占め、続いて風力発電が34%、水力発電が15.5%を占めた。5年連続して、自然エネルギー(水力を含む)導入への投資は火力発電への投資額のおよそ2倍となり、2498億ドルに達した。今や毎年、世界の自然エネルギー容量の導入量は、化石燃料関連の容量の導入量よりも多くなっているのである。

■ 太陽光発電と風力発電のコストは急激に低下している。アルゼンチン、チリ、インド、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦では、前例のないような太陽光発電の入札が行われており、入札価格は市場によってはキロワットアワー(kWh)あたり0.03ドルとなった。風力発電部門は、チリ、インド、メキシコ、モロッコなどいくつかの国で成長し、同様に低い入札価格となった。デンマークとオランダでは洋上風力で過去最低の入札価格を記録し、2025年までに洋上風力を石炭よりも安くするというヨーロッパの産業界の目標に近づいた。

■ 過去2年間と同様に2016年は、世界経済が3%成長してエネルギー需要は増加したにもかかわらず、化石燃料と産業界から排出された世界のエネルギー関連のCO₂量は変わらなかった。これは何よりもまず石炭の消費量の減少によるものであり、自然エネルギー容量の増加やエネルギー効率の向上にも由来するであろう。経済成長とCO₂排出のデカップリング(分離)は、世界の気温上昇が2度を大幅に下回るために必要な排出量の大幅削減を達成するために、重要な第一歩である。

■ 太陽が出ていない時や風が吹いていない時には、火力発電と原子力発電は「ベースロード」電源を供給するために必要であるという神話は誤りであると示された。2016年には、デンマークとドイツはそれぞれピーク時に、自然エネルギーからの発電の割合を140%と86.3%にすることに成功した。またいくつかの国々(たとえばポルトガル、アイルランド、キプロスなど)では、蓄電を追加しなくとも変動性の自然エネルギー割合を例年20~30%にしている。高い割合の変動性の自然エネルギーを統合していくためには、発電システムに最大限の柔軟性をもたせる必要があるということが最大の教訓である。

■ さまざまな都市や州、国、主要な企業が100%自然エネルギーという目標に参画する数が急増してきた。というのも100%自然エネルギーという目標は、気候や環境、公衆衛生といった点で理に適っているばかりではなく、経済的にもビジネス的にも理に適っているからである。2016年には新たに34の企業が、事業運営を100%自然エネルギーでまかなうことを目標とする国際的なイニシアチブであるRE100に加盟した。2016年を通して、100%自然エネルギーへ転換する―エネルギー利用全体において、ないしは電力部門において―世界中の都市の数は増え続け、すでに100%自然エネルギーの目標を達成した都市や自治体もある(たとえば日本では100を超える自治体が達成している)。
気候エネルギーに関する市長誓約の下では、2億2500万人もの市民を擁する7200以上の自治体が、エネルギー効率を向上させて自然エネルギーを導入することで、2030年までにCO₂排出量を40%削減するべく参画している。そして100%自然エネルギーに取り組もうとしているのは、企業や地域の主体だけではない。2016年11月にモロッコで開催されたCOP22マラケシュ会議では、48の発展途上国の指導者たちが、100%自然エネルギーでの電力供給に向けて積極的に取り組むとした。__

■ 何十億という人々がいまだ電気へのアクセスなしに(およそ12億人)、また衛生的な調理設備なしに(およそ27億人)暮らしている発展途上国において、パラダイムシフトが進んでいる。系統の拡張だけで電気へのアクセスを提供しようとする面倒な手法は時代遅れになっている。というのも新しいビジネスモデルや技術によってオフグリッド市場が発展しているからである。ミニグリッドと独立型システムの市場はともに急成長中である。  
バングラデシュは主にマイクロクレジットのスキームによって、最大のソーラーホームシステム市場を有しており、その導入数は400万件に上る。モバイル技術(たとえば携帯電話で使用量を払うような形で)によって支えられている「PAYG(Pay as you go: その都度払いすること)」モデルは、急速に発展している。2012年にはPAYG モデルの太陽光発電企業への投資はわずか300万ドルに過ぎなかったが、2016年までには2億2300万ドルにまで上昇した(そのたった1年前には1億5800万ドルだった)。この傾向は東アフリカで始まり、すぐに西アフリカに広がり、南アフリカにも広がった。ミニグリッド市場は今や例年2000億ドルを超えている。2016年には、太陽光発電と風力発電による、23MW を超える規模でのミニグリッドプロジェクトが発表されている。

■ 自然エネルギーは豊かな国しか導入できる余地はないという考えは適切ではない。新規導入された自然エネルギーの大部分は、主に中国など発展途上国のものであるし、中国は過去8年間、自然エネルギーと熱利用をどの国よりも開発してきた。太陽光発電革命がインドで始まり、今や48か国もの発展途上国が100%自然エネルギーという目標を掲げていて、世界における自然エネルギーの中で発展途上国の占める割合はさらに増えていくと考えられている。さらには、2015年には発展途上国や新興国が、初めて自然エネルギーへの投資で先進国を凌駕した(2016年には、中国がなおも単独では最大の投資国であったにも関わらず、先進国がリードを取り返していた)。  
自然エネルギーは高すぎる、あるいは一握りの豊かな国しか自然エネルギーで優位に立てないという神話は、もはや信用性をなくしている。多くのケースで、自然エネルギーはもはや最も安い選択肢なのである。

■ 自然エネルギーに基づく未来への転換という点で、間違いなく最も大きな課題に直面している交通部門においてさえ、大きな変化が起こっている。自然エネルギーを交通部門で利用していくための政策面での支援は、主にバイオ燃料混合に集中し続けているが、電気自動車(EV)の購入を促進するための政策が目立ってきている。この政策は効果を上げ始めていて、具体的には、国際的に路上交通に電気自動車、とくに電気乗用車を導入する動きが近年急速に広がっている。
2016年には、世界の電気乗用車の売り上げはおよそ77万5千台に達し、2016年末までに世界では200万台を超える電気乗用車が走っている。しかし自然エネルギーと電気自動車の直接的なつながりはまだ限定的なものである。大部分ではなくとも多くの電気自動車は、燃料電池の電気自動車が走っているノルウェーを除いては、まだ原子力と火力発電でつくられた電気で走っている。とはいえ明るい兆しはある。たとえば英国とオランダではカーシェアリングのキャンペーンで、電気自動車を自然エネルギーで充電できるようになっている。系統電力における自然エネルギーの割合が増加していることと同様に、交通に使われる電気における自然エネルギーの割合も増加していくだろうし、このことは電力と交通部門を繋げるためには体系的な計画や政策の構想が必要であることをよく表している。
鉄道交通は、交通部門での総エネルギー使用量の2%を占めているが、ここにも自然エネルギーは入り始めている。とくにインドやモロッコなどで、2016年には多くの鉄道会社が自然エネルギーを自家発電するプロジェクトを実施した(たとえば鉄道用地に風車を立てたり、太陽光パネルを駅に設置したりした)。

■ 熱利用部門と冷房部門の進展は少なかったが、いくらかの好ましい発展もあった。太陽熱エネルギーのプロセス熱利用は食品産業や工業で増加を続けたが、他の産業にも拡大している。現在はとくにデンマークで発達しているが、ヨーロッパには太陽熱を大容量で地域熱供給システムに組み込む大きなプロジェクトが行われている国がある。EU では地熱による地域熱供給の利用が拡大していて、自然エネルギーを熱に変換することで電力システムに柔軟性をもたらす地域熱供給には、関心が高まっている。

■ 最後に、実現技術が自然エネルギーの導入を容易にして促進している(2017年のGSR で初めて、実現技術がいっそう重要な役割になっていることが論じられている)。いくつかの例を挙げれば、ICT(情報通信技術)、エネルギー貯蔵システム、電気自動車、ヒートポンプなどが、自然エネルギーの導入を容易にし、促進している。これらの技術は、本来自然エネルギーのために開発されたものではないが、より大規模なシステムを統合し、電力需要により効率的に応答することを容易にするために、非常に大きな可能性を示している。
とくにエネルギー貯蔵は、電力システムにさらに柔軟性を与える可能性があるため、大きな注目を集め始めている。エネルギー貯蔵は限定的な市場の中で急増しているが、まだその規模は小さい。2016年には、およそ0.8GW の非揚水型エネルギー貯蔵容量が使用可能になり―主に蓄電池(電気化学)だが、CSP(集光型太陽熱発電)でのエネルギー貯蔵も含む―、2016年末には総量でおよそ6.4GW に達した。非揚水型エネルギー貯蔵容量は、世界でおよそ150GWある揚水エネルギー貯蔵容量を補っている。エネルギー貯蔵の増加のほとんどは蓄電池(電気化学)におけるもので、イノベーションの大部分は電気自動車産業によって引き起こされている。エネル
ギー貯蔵システムはいっそう大規模な発電所プロジェクトに導入されるようになっていて、屋根に設置した太陽光発電の電気を貯蔵をするために家庭でも利用されている。


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