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社会保障財源はどこに―企業は儲けて税収減、原因は優遇税制

 超高齢化社会にむかっているのに日本の社会保障のGDP比は国際比較で中位。にもかかわらず膨大な財政赤字があるのは、税負担のGDP比がOECDの中で最低水準--その主因は、大企業の税負担の低さゆえ。その別の側面が400兆円もの内部留保。
  

【社会保障財源はどこに―①企業はもうけて税収は減少 全国保険医新聞11/15】

【社会保障財源はどこに ―② 大企業中心の優遇税制― 全国保険医新聞12/5】

【社会保障財源はどこに―①企業はもうけて税収は減少 全国保険医新聞11/15】

 財政危機が叫ばれ、政府は社会保障削減と消費税増税による「財政再建」を強調するが、それは正しいのか。日本の税収構造を検討しながら、保団連が提案する社会保障財源の考え方を連載で解説する。今号では法人税率の引き下げを考える。

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 2013年度(この図は別のものから貼り付け)

■問題は税収構造にある

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図1 各国の租税収入(対GDP比:%)

 日本の対GDP比の社会保障支出は決して高くない。高齢化率等も踏まえれば、諸外国と比較してむしろ低く抑えられており、財政赤字の原因が社会保障支出にあるとは言えない。
 「財政危機」の問題の本質は社会保障などの支出ではなく税収構造にある。日本の税収の対GDP比は国際的に見て非常に低い水準だ(図1)。日本の税収対GDP比(地方税含む)は18.7%。ドイツは23.3%でEU諸国の中では低い方だが、その差は4.6%、日本のGDPで考えると24.5兆円となる。明らかに税収の規模が小さい。
 日本の税制の転機は1989年だ。この年に、法人税率の引き下げ、所得税の最高税率の引き下げとセットで消費税が導入された。89年度の税収は54.9兆円で、所得税は21.4兆円、法人税は19兆円、消費税は3.3兆円だ。これが2016年度には税収55.9兆円、所得税17.7兆円、法人税11.1兆円、消費税16.8兆円となった。消費税は13.4兆円増え、所得税・法人税は合わせて11.6兆円減少。消費税増税は法人税と所得税の減税に置き換えられただけで、税収全体はほとんど増えていない。
 同じ期間に名目GDPは約130兆円増加しており、経済規模が大きくなっても税収は増えない構造が作られてきた。

■軽減され続けた企業の税負担
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図2 法人税率の推移

 2016年度の税収は7年ぶりに前年比マイナス、当初見込みの2.1兆円から大幅な下振れとなった。企業は過去最高益を更新し、内部留保は400兆円を突破したにもかかわらず、特に大きく見込みを下回ったのが法人税だ。企業が利益を上げても税収が増えない税制の歪みがわかりやすくあらわれた。
 国税の法人税率は最も高かった1984年の43.3%から23.4%に、20ポイントも引き下げられてきた(図2)。地方税も含めた法人三税の実効税率は現在29.97%だが、第二次安倍内閣発足当時は37%だった。安倍首相は「法人実効税率20%台を目指す」として引き下げを続け2016年には20%台となった。
 法人税率引き下げの理由に必ず挙げられるのが「日本の税率は国際的に高い」ということだ。しかし、日本の法人税には大企業ほど有利なさまざまな優遇がある。象徴的な例では、トヨタは08年度から12年度までの5年間、大きな利益をあげながらも法人税を納めていない。見かけの税率から実際の税負担率はわからず、税率による単純な比較はできない。
 歴代政権が行ってきた法人税率の引き下げは、企業の税負担を大きく軽減し、企業業績が好調であっても税収増とならない構造を作ってきた。その結果が今日の税収の不足と、内部留保の積み増しとなっている。

以上


【社会保障財源はどこに ―② 大企業中心の優遇税制― 全国保険医新聞12/5】

 財政危機が叫ばれ、政府は社会保障削減と消費税増税による「財政再建」を強調するが、それは正しいのか。日本の税収構造を検討しながら、保団連が提案する社会保障財源の考え方を連載で解説する。今号では大企業の税負担を抑える優遇措置を考える。

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 日本の大企業の利益に対する実際の税負担率は、法人税の税率よりも低い。税負担を軽減するためのさまざまな仕組みがあり、大企業ほど優遇されている。法人税を考える際には税率だけでなく、この点を踏まえる必要がある。

 税理士の菅隆徳氏は、国税庁の統計資料から資本金階級別に法人税の実質負担率(2014年度)を推計している(図)。同年度の法人税率は23.4%だが、企業の規模が大きくなるほど実際の税負担率は低くなり、資本金100億円超の法人では14.0%、関連子会社を抱える連結法人に至っては5.9%と著しく低い。

 優遇の代表的なものは研究開発減税だ。財務省の「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書(2017年2月)」では、この税制の適用企業件数は1万2,287件、適用金額は6158億円となっている。そのうち、適用企業件数の一握りにも満たない上位10社への減税が約3割の1965億円にのぼる。医薬品を含む化学工業の適用金額は1145億円で全体の18.6%を占める。この制度を最大限活用すれば、法人税額の4割もの軽減が可能であり、製薬企業は薬価での手厚い保護などに加え、税制でも保護される形となっている。
 連結法人の実際の税負担率が著しく低いのは連結納税制度による。この制度は関連子会社の赤字を親会社の利益と通算することにより、課税される所得を小さくし税負担を軽減することができる。その恩恵の大きさは5.9%と極端に低い実質負担率を見れば一目瞭然だ。

 大企業の実際の税負担率はさまざまな優遇税制によって大企業ほど低く抑えられ、その恩恵はきわめて大きい。日本経団連前会長の米倉弘昌氏は在任中「租特(租税特別措置)をなくすのなら、法人税減税はいらない」と発言しているほどだ。

以上

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