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対日人権勧告  政府は真摯に対応を

国連人権理事会の審査において、日本に関して発言をした国数は106か国に及び、勧告数は200を超えた。勧告の主な内容は、反差別、死刑制度、国内人権機関の設置、個人通報制度等の選択議定書の批准、女性や子どもの性的搾取や人身取引に関するものであった。
 なお、同盟国の米国も毎年レポートを出しているが、最新のレポートでも「被疑者の勾留に関する適正手続きの欠如、刑務所および収容施設の劣悪な状況があった。他にも根強く残る人権問題として、庇護希望者の収容、女性に対する配偶者からの暴力、セクハラ(性的嫌がらせ)および職場での差別、子どもの搾取、外国人技能実習生の搾取を含む人身取引、障害者、マイノリティー・グループ、先住民、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・インターセック ス(LGBTI)の人々に対する社会的差別などがあった。報道の自由に対する懸念もあった。」と指摘しふおり、国際的な日本への評価として真摯に対応する必要がある。

【国連人権理事会における日本の第3回普遍的定期的審査に関する会長声明 日弁連11/15】
【対日人権勧告 聞きっぱなしにするな 東京11/20】
【対日人権審査】政府は警鐘に向き合え 高知新聞11/20】
【2016年国別人権報告書―日本に関する部分 在日米国大使館 2017/3/3】

【国連人権理事会における日本の第3回普遍的定期的審査に関する会長声明 日弁連11/15】

昨日(ジュネーブ時間2017年11月14日午前)、国連人権理事会の普遍的定期的審査作業部会は、日本の人権状況についての審査を行った。

 このたびの審査において、日本に対する発言をした国数は106か国に及び、勧告数は200を超えた。勧告の主な内容は、反差別、死刑制度、国内人権機関の設置、個人通報制度等の選択議定書の批准、女性や子どもの性的搾取や人身取引に関するものであった。とりわけ女性、LGBT、人種・民族的少数者に対する差別、性的指向を理由とする差別の解消を求める勧告は60を超えたほか、死刑廃止に関連した勧告は30を超え、国内人権機関の設置を求める勧告も30近くに及んだ。なお、当連合会の2016年人権擁護大会における「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」に触れた国が2か国あった。

 そのほか注目される勧告として、刑事手続や被拘禁者の処遇、福島第一原子力発電所事故の避難者、メディアの独立性と特定秘密保護法、技能実習生などの移住労働者、ビジネスと人権に関する勧告が複数あったほか、原爆被爆者や核兵器禁止条約の未批准に関する勧告もなされた。

 当連合会は、昨日の審査に先立ち、本年3月に国連人権高等弁務官事務所に対して日本の人権状況について文書による情報提供を行ったほか、在日本各国公館向けに実施した説明会や、本年10月にジュネーブ国連本部で実施された在ジュネーブ各国政府代表部向けのセッション等を通じても、情報提供を行ってきた。

 今回の審査において、他の国連加盟国から、法律の制定及び法改正並びにその適正な運用を示唆する多くの勧告がなされたことは、日本の行政機関のみならず国会及び司法の課題として受け止めなければならない。

 当連合会は、日本政府に対して、今回出された全ての勧告の受け入れについて、国際基準に照らして真摯に検討し、特に2020年オリンピック・パラリンピック及び国連犯罪防止刑事司法会議の開催を前に、国際社会において日本が名誉ある地位を占めるにふさわしい人権状況を具体的に整えるべく努力するよう求める。

 そして当連合会もまた、勧告内容を踏まえて日本の人権状況の改善に向けた日本政府との建設的対話を継続し、各課題について国民的議論を活発にすべく社会に広く情報発信し、基本的人権を擁護し社会正義を実現する使命を果たす所存である。

2017年(平成29年)11月15日 日本弁護士連合会 会長 中本 和洋


【対日人権勧告 聞きっぱなしにするな 東京11/20】

 五年ぶりとなる国連人権理事会の対日審査で、特定秘密保護法をはじめとする日本の人権状況に関する勧告が相次いだ。政府は謙虚に受け止め、改善に努めるべきだ。
 国連人権理事会は、全ての国連加盟国を対象に人権に関連する問題について、数年おきに審査している。日本が対象国となったのは今回が三回目だ。
 日本政府や、非政府組織(NGO)が提出した報告書を基に、今回、発言した国・地域は百六、勧告数は二百十八だった。
 日本弁護士連合会によると、女性や性的少数者(LGBT)、人種、民族的少数者などに対する差別の解消を求める勧告が六十以上、死刑制度の廃止に関連した勧告が三十以上あった。
 社会的弱者に対する日本政府の保護が、まだ十分でないと考える国が多いということだろう。
 また韓国と中国は、旧日本軍の従軍慰安婦問題を取り上げ、誠意ある謝罪と補償、公正な歴史教育の実施を求めた。
 見過ごせないのは二〇一三年に成立した特定秘密保護法と、メディアとの関係だ。ブラジルとベラルーシは、特定秘密保護法が、メディアの独立性に影響を与えているとして懸念を示した。
 米国は、政府による放送局の電波停止権限の根拠となる放送法四条に関連し、「メディアに対する規制の枠組みを懸念する」と発言、政府から独立した監視機関の設立を提言した。オーストリアもメディアの独立性の保証を求めた。
 言論と表現の自由に関してはデービッド・ケイ国連特別報告者が六月に人権理事会で演説し、日本の報道が特定秘密保護法などで萎縮している可能性に言及して、法改正などを求めている。
 日本政府は「不正確で、不十分な内容」と反論したが、この問題に関心を持つ国は少なくない。
 勧告は、来春の人権理事会本会合で正式に採択される。
 人権理事会の勧告は、国連の総意ではなく、あくまで各国の意見表明を取りまとめたものだ。政治的な思惑を反映した発言が含まれる、との意見もある。
 それでも、勧告を聞きっぱなしにしてはならないだろう。人権問題を扱う法務省は、二〇二〇年の東京五輪に向けて「人権大国・日本」を掲げている。このスローガンに恥じないためにも、より多くの勧告に耳を傾け、改善に取り組んでほしい。



【2016年国別人権報告書―日本に関する部分 米国国務省民主主義・人権・労働局 2017年3月3日】

日本は、議院内閣制を採用する立憲君主制国家である。2012年、自由民主党の安倍晋三総裁が首相に就任した。7月に実施された参議院議員選挙は、自由かつ公正とみなされた。
文民当局は治安部隊に対する実効的な統制を維持した。
 主な人権問題には、被疑者の勾留に関する適正手続きの欠如、刑務所および収容施設の劣悪な状況があった。
他にも根強く残る人権問題として、庇護希望者の収容、女性に対する配偶者からの暴力、セクハラ(性的嫌がらせ)および職場での差別、子どもの搾取、外国人技能実習生の搾取を含む人身取引、障害者、マイノリティー・グループ、先住民、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・インターセック ス(LGBTI)の人々に対する社会的差別などがあった。報道の自由に対する懸念もあった。
政府は人権侵害を禁止する法律を執行し、侵害行為を行った政府職員を訴追した。

第1部 個人の人格の尊重(以下の状況からの自由)

a) 恣意的な人命のはく奪およびその他違法なまたは政治的動機に基づく殺人
政府またはその職員による、恣意的、または違法な人命のはく奪は報告されなかった。

b) 失跡
政治的動機に基づく失跡の報告はなかった。

c) 拷問およびその他の残酷、非人道的、または屈辱を与えるような処遇または処罰
法律はこのような行為を禁止しており、知られている限りでは、政府職員がこうした行為を行ったという報告はなかった。

日本政府は依然として、死刑囚に対し、死刑執行日に関する情報を事前に提供せず、死刑囚の親族に対しては、死刑執行後、その事実を告知した。政府 は、この方針は受刑者に自分の死期を知る苦しみを与えないものであると考えた。 権威ある心理学者の中にはこの論理を支持する者もいたが、異議を唱える者もいた。

自衛隊では、しごき、いじめ、体罰、セクハラが続いた。防衛省は2014年4月から2015年3月までに、部下に恣意的な制裁を加えたとして(24万7000人の自衛隊員のうち)47人の隊員を懲戒処分にしたと報告した。防衛省は2015年9月、いじめ、しごきへ対処する指針を発表した。

■刑務所および収容施設の状況
刑務所の状況は、全般的に国際基準に合致したものであったが、いくつかの施設では医療体制が不十分で、冬季の暖房または夏季の冷房に不備があった。

・物理的な状況
全国の被収容者数は、(入手可能な直近のデータである)2014年末時点で施設の最大収容人数を大幅に下回ったものの、77カ所の刑務所うち4カ 所は定員超過だったと法務省は報告した。当局は、刑務所や通常の収容施設では20歳未満の未成年者を成人とは別に収容したが、入国者収容施設では未成年者 を成人と別の施設に収容することを義務付ける規定はない。
国内の一部の非政府組織(NGO)によると、ほとんどの施設では、暖房の代わりに衣類や毛布が追加して与えられたが、受刑者を寒さから守るには不十分だった。東京の外国人受刑者は引き続き、寒さに長期間さらされたために重度の異なるしもやけができた手足の指を見せた。報道によると、2015年に大阪で受刑者1人が熱中症で死亡したことを受けて、一部の収容施設は、暑さから受刑者を守るため、空調設備および扇風機を取り付け、うちわおよび経口補水液を支給した。
この分野の一部の専門家は、医療処置が不十分であった事例を文書に記録し、その中には既存の疾患がある被勾留者や受刑者も含まれていた。法務省によると、2014年に矯正医官の数は20%以上定員割れしていた。報道によると、2016年に4人の受刑者が死亡した。1人は自殺と報道されたが、その他の事案については当局は死因を公表しなかった。警察および刑務所は精神疾患の治療が遅く、精神科の治療を提供するための手続きがな い。外国の専門家はまた、歯科治療は最低限のものしか提供されず、緩和ケアが行われていないと指摘した。NGO、弁護士、医師は、警察が管理する留置施設ならびに入国者収容施設における医療体制を引き続き批判した。警察が管理する留置施設では、2016年に10人の死亡が報告された。

・管理
あるNGOは、刑務所の管理部門は2015年に単独室の使用を減らし、期間を最長3カ月に設定したが、必要と認められる場合には1カ月ごとの更新が可能であったと報告した。
当局は通常、死刑囚を死刑執行まで単独室に収容する。当局は、死刑囚への親族、弁護士、およびそれ以外の人々による面会を認めている。このような単独室での収容期間は事例によって異なり、数年間にわたる場合もある。あるNGO関係者によると、死刑に相当する犯罪で訴えられた受刑者は、 裁判前も単独室に収容されていた。
当局は受刑者と被勾留者が検閲を受けることなく司法当局に苦情を申し出、問題があると主張する状況の調査を要求することを認めていたが、調査結果 については、最終結論以外の詳細がほとんど書かれていない書簡を受刑者に送っただけだった。あるNGOによると、受刑者の信書による苦情申し出を不許とした刑務所の決定を、法務大臣が不適当であると判断した事例が1件あった。刑務所を監察する行政監察官は存在しなかったが、独立性を持つ委員会(下記「監 督」を参照)がその役割を果たした。

・独立した監督
政府は全般的に、NGOおよび国際機関による視察を許可した。
刑事収容施設法令では、法務省が管理する刑務所および拘置所と警察が管理する留置施設を、独立性を持つ委員会が視察する旨、規定されている。当局 は、医師、弁護士、地方自治体職員、地域住民で構成される委員会が、刑務官の立ち会いなく被収容者と面接することを認めた。
法律により、入国者収容施設についても第三者による視察委員会が視察を行い、委員会が提出した意見に関し、概して真摯(しんし)な検討が行われた。
国内外のNGOおよび国際機関は、この手続きが刑務所の視察にかかる国際的な基準を満たしていないと引き続き指摘した。その事例として、法務省が 視察委員会の全支援業務を担当していること、被収容者との面接時に法務省の通訳を使うこと、委員会の構成が透明性に欠けていることを挙げた。
政府は、2015年に成立した2つの法律を施行し、20歳未満の少年犯罪者や非行少年を対象とした少年院および少年鑑別所を管轄する視察委員会を設置した。

d) 恣意的逮捕または留置・勾留
法律により恣意的逮捕や留置・勾留は禁止されているが、信頼できるNGOとジャーナリストは引き続き、大都市の警察が人種プロファイリングを用い、「外国人のように見える」人、特に肌が浅黒いアジア人やアフリカ系の人に理由なく嫌がらせをし、時には逮捕することもあったと主張した。

■警察および治安維持機構の役割

国務大臣がその長を務める政府機関である国家公安委員会が警察庁を管理し、都道府県公安委員会が都道府県警察を管理する。政府は権利の乱用および 汚職を捜査し、処罰する効果的な制度を有していた。2016年には、治安部隊に関係する刑事免責の報告はなかった。一部のNGOは依然として、都道府県の 公安委員会が警察機関からの独立性に欠けている、または警察機関に対する十分な権限を持たないと批判した。

■逮捕手続きと被拘禁者の処遇

当局は、正当な権限を持つ当局者が証拠に基づいて発付した令状により公に個人を逮捕し、被拘禁者を独立した司法制度の下で裁いた。この分野の国内外の専門家は、令状は高い頻度で発付され、証拠の根拠が薄弱であるにもかかわらず留置・勾留が行われることがあるほか、複数回にわたる被疑者の再逮捕が、警察の立件を容易にするために使われたと、引き続き主張した。

警察の管理する留置施設を使用することで、被疑者は取調官の監督下に置かれた。警察は逮捕された被疑者の大部分を警察の留置施設に送った。

法律により、当局は起訴することなく、最長23日間にわたり被疑者の身柄を拘束することができる。

法律により、被勾留者、その親族、または代理人は、裁判所に対して、起訴された被勾留者の保釈を請求することができる。起訴前の保釈は認められて いない。信頼できるNGOは、不正行為ではあるが、取調官が被勾留者に対し、自白と引き換えに刑期の短縮や執行猶予を申し出ることもあったと述べた。6月23日に施行された刑事訴訟法の規定(5月24日に改正)により、裁判所が保釈の可否を判断する場合、勾留が被勾留者に与える健康上、経済上、あるいは社会生活上の不利益の程度、勾留が裁判の準備をする被勾留者の能力に及ぼしうる悪影響の程度、および保釈された場合、被疑者が逃亡する、あるいは証拠を隠滅する可能性を考慮することが可能になっている。

起訴前に勾留されている被疑者は、取り調べを受けることが法的に義務付けられている。警察庁の指針により、取り調べ時間は1日最長8時間に制限さ れ、夜通しの取り調べは禁止されている。起訴前の被勾留者は、国選弁護人との少なくとも1回の接見を含め、弁護人と接見することができた。しかし、取り調べ中に弁護人が同席することは認められていない。

法律により、被疑者が逃亡する、あるいは証拠を隠匿または隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある場合、警察は被勾留者が弁護人以外の人物と面会 することを禁止できる(第1部d. 「起訴前の勾留」を参照)。薬物犯罪の容疑をかけられている被勾留者の大半を含む、多くの被勾留者は、起訴前までこの制約を受けたが、収容施設職員立ち会いのもと親族からの面会を許可された者もいた。犯罪の種類と、当局が親族やその他の者による被勾留者への面会を拒否できる期間との 間には法律上の関連性はない。しかし、薬物犯罪の容疑をかけられている被勾留者については、検察官が、親族やその他の者との接触が取り調べの妨げになると考え、他の被疑者と比べ長い間、面会を拒否する場合が多かった。

国家公安委員会の規則は、警察官が被疑者に接触すること(やむをえない場合を除く)、物理的な力を行使すること、脅迫すること、被疑者に長時間一 定の姿勢を取らせること、言葉で虐待すること、自白を引き出すために被疑者に好ましい申し出をすることを禁止している。警察庁は、2015年にこのような不正行為が28件あったと発表した。あるNGOは、当局がこの規則を適切に執行せず、いくつかの事例では、依然として被勾留者に対し長時間の取り調べを行なったと主張した。報道によると、大阪地方裁判所は3月25日、大阪府警察に対し、2013年の取り調べにおいて威圧的な手法を用いて自白を強要したとして、被疑者(後に無罪が確定)への損害賠償の支払いを命じた。

凶悪犯罪、知的あるいは精神障害のある被疑者に関わる事案、その他の事案などに関して、検察庁および警察が試験的に取り調べの全過程を録音・録画することが増えてきた。独立した監督は行なわれなかった。2016年には録音・録画は義務ではなかった。国内のNGOは依然として、被疑者は、主に録音・録画されていない取り調べ中に、強制的に自白させられたと主張した。

警察の監察部門は、取り調べに関する指針の違反者を懲戒処分としたが、警察庁は関連する統計を公表し なかった。

・起訴前の勾留
当局は通常、逮捕から72時間まで、警察が運営する留置施設に被疑者の身柄を拘束した。法律では、起訴前の勾留は、ある人物が罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由があり、かつ証拠の隠匿もしくは隠滅、または逃亡のおそれがある場合に限られるが、起訴前の勾留は日常的に行われていた。裁判官は逮捕から72 時間が経過する時点で被疑者を面接した後、起訴前の勾留期間を10日間ずつ、最長20日間まで延長できる。検察官はこの延長を日常的に請求し、許可を得た。暴動、外国からの侵略、暴力的な集会などの例外的な事案の場合、検察官はさらに5日間の延長を請求できる。
裁判官が習慣的に検察官の勾留延長請求を認めるゆえ、「代用監獄」として知られる起訴前の勾留は通常23日間続いた。2016年の被勾留者のほとんど全ては、代用監獄に勾留された。信頼できるNGOおよびこの分野の外国の専門家は、代用監獄の被勾留者は弁護人や外国人の被勾留者の場合は自国の領事との接見以外は他の者との接見を許されなかった、と引き続き報告した。

・裁判前の留置・勾留の合法性に異議を申し立てる被拘禁者の能力
法律により、被拘禁者には、その留置・勾留の合法性に関する迅速な司法決定を受ける権利が与えられており、当局は被拘禁者に対して、直ちに容疑を告知しなければならない。

・受け入れを拒否された庇護希望者または無国籍者の長期的収容
信頼できるNGOは、庇護希望者などの非正規移住者を長期間収容するという政策が依然として問題であると指摘した。NGOは、申請手続きを簡素化して申請者の収容期間を短縮する法務省の継続的な取り組みにより改善が見られたと述べた。

e) 公正な公開裁判の拒否
法律により、独立した司法制度が規定されており、日本政府は、全般的に司法の独立性を尊重した。

■ 審理手続き

法律により、全ての国民に公正で、公開された裁判を受ける権利が与えられている。起訴された個人はそれぞれ、遅滞なく独立した裁判所で公開裁判を受ける権利を 有し(ただし、外国の専門家は、精神疾患を患う被勾留者について、裁判が無期限に延期されることもあると指摘した)、貧困にある場合に提供される国選弁護人を含め、弁護人を得ることができ、反対尋問の権利が与えられている。重大な刑事事件に関しては裁判員制度が置 かれており、被告は自己に不利益な供述を強要されない。被告は容疑について速やかに、詳細な情報を得る権利を与えられている。刑事事件の被告が外国人である場合は、当局が、無償の通訳サービスを提供した。民事事件で被告となった外国人は、通訳費用を負担しなければならないが、裁判官は裁判所の判決を踏まえ、その費用の支払いを原告に命じることができる。

被告は、有罪と証明されるまで推定無罪とみなされるが、信頼できるNGOおよび法律家は、実際に被告が法手続きの間、推定無罪とみなされているかどうかについて、 引き続き疑問を呈した。日本政府は、主に自白に基づいて有罪判決が下されているのではないこと、および取り調べに関する指針は被疑者が罪の自白を強要されない旨を規定していると引き続き主張したが、NGOによると、起訴された被勾留者の大半は、警察に勾留されている間に自白した。

被告は弁護の準備、証拠の提示、および上訴のため、自らの弁護人を選任する権利を与えられている。裁判所は弁護士会を通じて、被告による弁護人の選任を支援することができる。弁護人費用を負担できない場合、被告は国選弁護人を要求できる。

一部の独立した立場の法律学者によると、審理手続きは検察側に有利となっている。この分野の専門家は、弁護人が依頼人との面会時の電子的な録音・録画機器の使用を禁止されていることで、相談・助言の有用性が損なわれていると述べた。また法律では、被告側の弁護人が開示手続きに関する厳しい条件を満たす場合を除いて、検察官に よる資料の全面開示を義務付けていないため、被告側に有利な資料の隠蔽につながる可能性がある。5月に改正された刑事訴訟法では、12月から、特定の事案における証拠開示範囲の拡大、および検察官が入手した証拠の一覧表の提供を検察官に義務付けている。

■政治囚と政治的被拘禁者
政治囚または政治的被拘禁者が存在するとの報告はなかった。

■民事司法手続きと救済
民事事件に関しては、独立した公正な司法制度がある。個人は、人権侵害に対する損害賠償、あるいは人権侵害の中止を求める訴訟を起こすことができる。不正行為の申し立てに対しては、行政による救済措置と司法による救済措置の両方がある。

f) プライバシー、家族、家庭、または信書に対する恣意的または違法な干渉
法律により上記のような行動は禁止されており、実際に日本政府は、全般的にこれを順守した。

第2部 市民の自由の尊重

a) 言論と報道の自由
全般的に、独立した報道機関、効果的な司法制度、および機能する民主的政治制度が相まって、言論と報道の自由を促進した。憲法により言論と報道の自由が規定されており、日本政府は、全般的にこうした権利を尊重した。

しかし、2016年には、いくつかの出来事により、批評力のある独立した報道機関に対する政府の圧力の高まりに対して懸念が生まれた。例えば、2月、高市早苗総務大臣は、このような措置を取る計画あるいは意図を否定しつつ、政府は政治的に公平でないと判断した放送事業者の業務を停止させる権利を有すると反復した。意見および表現の自由に関する国連特別報告者は、4月の訪日の後、「報道の独立性が重大な脅威に直面している」と述べた。同報告者は、自らの分析結果を導き出す要因として、記者クラブ制度に加え、「脆弱な法的保護、(新たな)特定秘密保護法、および持続的な政府の圧力」を挙げた。

・検閲または内容の制限
報道機関は、明白な制限を受けることなく、さまざまな意見を表明した。にもかかわらず、主要新聞社や放送局を含む報道関係者は、政府が間接的に主要な報道機関内部での自己検閲の実践を助長したという懸念を非公式に表明した。国境なき記者団の調査は、報道機関の自己検閲は法改正および政府からの批判を受けて増したと結論づけた。一部のジャーナリスト、メディアアナリストおよびNGOは、記者クラブを、自己検閲を助長し、ジャーナリストを取り込んでいるとして引き続き批判した。こうした記者クラブは、省庁などの個々の組織内に設置されており、記者クラブ非加盟者による省庁などの組織に対する取材を妨げる場合もある。

■インターネットの自由
政府はインターネットへのアクセス制限や介入、またはオンライン上のコンテンツの検閲をしなかった。また政府が適切な法的権限なく、個人的なオンライン通信を監視したとの信じるに足る報告もなかった。インターネットは広く利用可能であり、かつ利用された。

■学問の自由と文化的行事
文部科学省による歴史教科書検定は、特に日本の20世紀の植民地支配および軍事に関する歴史の扱いについて、論争になった。
国歌と国旗は、引き続き一定の議論を呼んだ。報道によると、国旗掲揚時に起立し、国歌を斉唱することを拒否した公立学校の教員に対して懲戒処分とした事例が時折あった。

b) 平和的な集会および結社の自由
法律により集会と結社の自由が規定されており、日本政府は、全般的にこれらの権利を尊重した。

c) 信仰の自由
国務省の「信仰の自由に関する国際報告書」(www.state.gov/religiousfreedomreport/) を参照。

d) 移動の自由、国内避難民、難民保護および無国籍者
法律により、国内の移動、外国旅行、移住、本国帰還の自由が規定されており、日本政府は、全般的にこれらの権利を尊重した。日本政府は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)およびその他の人道支援組織と協力して、国内避難民、難民、庇護申請者、無国籍者、およびその他の関係者に保護と援助を 行った。

■国内避難民
2011年の地震、津波および福島第一原子力発電所の事故の後、政府は全般的に、避難所およびその他の保護サービスを十分に提供するとともに、移住または再建の選択肢を提供しようと努めた。復興庁の統計によれば、12月9日時点で、避難者数はおよそ13万人で、2015年から大幅に減少した。

■難民の保護
・庇護へのアクセス
法律は、庇護の付与あるいは難民の認定を規定しており、日本政府は既に国内に居住する難民を保護する制度を確立している。しかし、政府が難民認定をすることは極めてまれであった。
2015年の難民認定申請者は7586人で、日本が難民認定を開始して以降、最多となり、2014年比で50%超増加した。当局が難民認定した数は27人だった。
難民と庇護申請者は、難民審査参与員制度の下での審問への参加を弁護士に依頼することができる。法的支援を求める多くの難民および庇護希望者は、 政府の援助による法的支援を受けることができなかったが、日本弁護士連合会が、金銭的な余裕がない申請者に対して無償で法律支援を行うプログラムに、引き 続き資金を提供した。
政府、日本弁護士連合会、およびNGO「なんみんフォーラム」は、成田空港に到着し、仮上陸または仮滞在の許可を得た難民認定申請者に対し、住居、社会福祉および法的サービスを提供する試験的プロジェクトを延長した。

・ルフールマンの原則
政府は、「国連難民の地位に関する条約」および「難民の地位に関する議定書」に従い、生命や自由が脅かされると考えられる国への難民の国外退去あるいは送還を行っていない。庇護申請を判断する際の政府の証拠基準が厳しいという批判を受け、法務省は2015年9月、出身国の紛争から逃れてきた外国人に対して、 難民とは認定しないものの、「待避機会」を認めることができる旨を規定する、難民認定および庇護の判断にかかる運用指針をあらためて公表した。活動家の中には、政府の基準は国際基準に準じていないと引き続き批判している者もいる。
2016年にルフールマンの原則が適用される庇護希望者の事案は報告されなかった。

・雇用
難民認定申請者は、有効な短期滞在ビザを所持しない限り、通常就業が認められていない。収入を得る活動に従事するには、ビザの有効期限内に許可を申請しなければならない(資格外活動許可)。許可を得るまでの間、経済的に困難な状況にある一部の申請者に対し、政府が出資する公益財団法人、アジア福祉教育財団の一部門である難民事業本部が、少額の給付金を支給した。

・基本的なサービスへのアクセス
難民は依然として、他の外国人と同様、住居、教育、雇用の機会を制限される差別を受けた。就業する権利を得る条件を満たす人を除き、難民申請が未 決、または異議申し立て手続き中の人は、社会福祉を受ける権利がなく、こうした状況下では、過密状態の政府のシェルターや、違法な就労、または NGOの援助に頼るしかなかった。

・一時的な保護
政府は、難民と認定されない可能性のある個人を一時的に保護した。2015年にこうした保護を受けた人は79人で、2014年より31人減 少した。


第3部 政治プロセスに参加する自由

法律により、日本国民には、平等な普通選挙権に基づき、無記名で実施される、自由かつ公正な選挙を通じて政府を選ぶ能力が与えられており、国民はこの能力を行使した。

■選挙と政治参加
・最近の選挙
7月、現政権の監督下で3回目の国政選挙である国会の参議院議員選挙が行なわれた。この選挙は全般的に自由かつ公正とみなされた。

・女性およびマイノリティーの参画
憲法では、女性が政治プロセスに参加する権利が規定されており、当局はこの権利を保護した。7月の参議院議員選挙後、衆議院では475議席中 44議席、参議院では242議席中50議席を女性議員が占めた。8月3日の内閣改造後には、19人の閣僚のうち3人が女性であった。与党・自由民主党の党三役に女性はいなかった。2016年末時点で、47の都道府県のうち、女性知事は3人いた。女性の政治参画が限定的である理由は複雑で、政府および学識経験者が詳しく調査している。2016年には、小池百合子氏が女性で初めて東京都知事に選出された。また、村田蓮舫氏が主要政党の一つ(民進党)で初の女性党首(かつ混合民族の血を引く初の党首)に選ばれた。

民族に基づくマイノリティー・グループの中には混合民族の血を引く人や、マイノリティーであることを自ら明らかにしない人もいるため、民族に基づくマイノリティーの中で国会議員となった人の数を把握するのは難しかった。帰化して日本国民となった国会議員は、蓮舫氏を含め、少なくとも2人いた。


第4部 政府の汚職と透明性の欠如

法律により、公務員による汚職には刑事罰が規定されており、日本政府は全般的に法律を効果的に執行した。公務員は時として汚職に関わることがあった。独立した立場の学識経験者は、政・官・財のつながりは密接であり、汚職は依然として懸念される問題だと述べた。NGOは、退職した政府の幹部職員が、 政府との契約に頼る民間企業で高報酬の職を得る慣行が行われていることを引き続き批判した。法務省は2015年に贈収賄容疑で85人を起訴したと報告し、最高裁判所は2015年に41人に贈収賄で有罪判決を言い渡したと報告した。著名な政治家および公務員が関与した財務会計に関する不祥事の捜査がたびたび報道された。甘利明・経済再生担当相は、1月28日に閣僚を辞任したが、議員辞職はしなかった。あっせん利得処罰法違反容疑に対する地方検察庁の不起訴処分の決定を受け、最終的に8月1日に議員活動を全面的に再開した。県議会および市議会議員による政務活動費の不正使用の事例が複数あった。特筆すべき例として、富山市議会では議員40人のうち12人が辞職した。

・汚職
警察庁および国税庁を含む、複数の政府機関が汚職対策に従事している。他にも、公正取引委員会が、談合のような不当な取引制限および不公正な商慣行を防止するため、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)を執行する。犯罪収益移転防止対策室は、マネーロンダリングおよびテロ リストへの資金供与の防止に責任を負う。国家公務員倫理審査会は、倫理規定違反の疑いのある公務員を取り締まる。会計検査院は、政府が主要株主である企業 の会計を監査する。汚職対策に従事する機関は全般的に十分な資金を得て独立して効果的に活動を行ったが、一部に要員の不足があった。

・資産公開
法律により、国会議員には、所得、および不動産、有価証券ならびに輸送機の所有状況を含む資産(ただし普通預金を除く)の公開が義務付けられて いる。法律により、県知事、県議会議員、市長および主要20都市の市議会議員には、地方の条例に基づいて所得および資産の公開が義務付けられているが、残る約1720ある市区町村の議会議員に対しては、同様のことは義務付けられていない。虚偽の公開をした場合の罰則はない。同法律は、選挙で選ばれていない公務員には適用されない。NGOおよび報道機関は、法律が不十分であると批判した。これとは別に、閣議決定された規範は、閣僚、副大臣、および大臣政務官に対して、本人、配偶者および扶養する子の資産を公開するよう規定している。

・情報への国民のアクセス
法律により、一般市民には、政府の情報を入手する権利があるが、この分野の専門家は時として、政府は進んで情報開示はしなかったと主張した。地方自治体職員は時として、地元の政治家の公費不正使用疑惑に関連する情報の請求者の身元を、当該政治家本人に開示した。総務省は、9月30日に、全国都道府県知事および市町村議会議長に対し、情報開示請求の萎縮、あるいは情報公開制度の信頼性低下を防ぐため、情報開示請求者の個人情報を保護する対策を講じるよう求めた。


第5部 人権侵害の疑いに対する国際機関および非政府機関の調査に対する政府の姿勢
国内外の多くの人権団体は、全般的に、政府による制約を受けずに活動し、人権侵害の事例について調査し、調査結果を公表した。政府関係者は、通常協力的であり、こうした団体の見解に対応した。

・政府の人権機関
法務省の人権相談所が全国315カ所に設置されている。約1万4000人のボランティアが、直接面談して、あるいは電話やインターネットを通じて 質問に答え、秘密厳守で相談に応じた。一部の相談所では外国語での相談も可能だった。こうした相談所は、問い合わせに対応するのみで、個人や公的機関による人権侵害を調査する、助言を与える、あるいは仲裁する権限がないと主張する者もいた。地方自治体には、さまざまな人権問題を扱う人権担当部署が設置されている。

国のレベルで独立した行政監察機関は存在しなかったが、総務省の部局である行政評価局の行政相談制度に十分な人員が配置されており、行政 監察機関と同じ役割を多く果たした。その局長が、国際的な行政監察機関で日本代表を務めた。


第6部 差別、社会的虐待、人身取引

■女性

・強姦および配偶者からの暴力
法律により、暴力を用いた女性に対するあらゆる形態の強姦が犯罪とされている。法律は、配偶者間の強姦を否定しないが、婚姻が破綻している状況にある場合(正式な離婚または別居など)を除いて、そのような判決を下した裁判所はこれまでにない。法律により、強姦とは「暴行または脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫すること、または13歳未満の女子を姦淫すること」と定義されている。法律は、3年以上の有期懲役を義務付けている。裁判所は、「強制的」を、性交を強姦と判断するには、被害者による物理的抵抗が不可欠であることを意味する、と解釈してきた。この分野の専門家は、裁判官、検察官、弁護士が性犯罪とその被害者を理解するための研修が不足していると指摘した。

内閣府の2015年の調査によると、強制的な性交の被害に遭った女性のうち警察にその犯罪を届け出たのは4.3%にすぎなかった。この分野の専門家は、女性が強姦の届け出に消極的なのは、被害者支援の不備、警察の対応の際の二次被害の可能性、強姦被害者に対する理解を欠く裁判手続きなどさまざまな要因にあるとした。

複数の情報源によれば、女性に対する配偶者からの暴力は法律で禁止されているが、依然として深刻な問題であった。生活の本拠を共にする交際相手、配偶者、元配偶者からの暴力の被害者は、シェルターにおいて保護を受け、裁判所による保護命令を申し立てることが可能であった。

NGOは、企業が女性や、いくつかの事案では男性に対し「モデル」契約と偽り、ポルノビデオへの出演を義務付けた多数の事案を報告した。こうした女性や男性がビデオ出演を拒否すると、これらの企業は違約金の支払いを要求した。ポルノビデオに出演させるために女性を派遣した大手芸能事務所の代表者たちを警察が逮捕した事案が2件あった。そのうち1件について、裁判所は6月、事務所の社長と社員に罰金を科した。警察は10月、もう一方の事案を検察に送致したと発表した。

日本は、第2次世界大戦時の「慰安婦」(性的目的のために取引された女性)に関する2015年の韓国との合意の履行を開始した。この合意は、一部の市民社会グループとの間では依然として論争になっているが、日本政府は合意した10億円(約970万ドル)を、元「慰安」を支援するために韓国が設立した財団に拠出した。

・セクシュアルハラスメント
法律ではセクシュアルハラスメントを犯罪と規定していないが、セクシュアルハラスメント防止を怠った企業を特定する措置が規定されており、都道府県労働局および厚生労働省はこれらの企業に対し、助言、指導、勧告を与えた。政府の指針を順守しない企業名は公表できる。非常にまれではあるが、名前を公表される企業が出始めている。職場におけるセクハラはまだ広範囲に見られた(第7部d.を参照)。
ストーカー規制法は、電子メールによる嫌がらせを禁止している。

・リプロダクティブ・ライツ
夫婦と個人は、自由に、かつ責任を持って、子どもの数、子どもを持つ間隔と時期を決め、自らのリプロダクティブ・ヘルスを管理し、差別や暴力を受けたり、強制されることなく上記の決定を下すための情報と手段を有する。女性は避妊法と、出産時の熟練した介助、妊婦健診、不可欠な産科治療や分娩後のケアなどの妊産婦医療サービスを利用することができた。

・差別
法律により性差別は禁止され、全般的に女性には男性と同じ権利が与えられている。内閣府の男女共同参画局は引き続き、政策を検討し、その進捗状況を監視した。
このような政策にもかかわらず、NGOは引き続き、性差別撤廃措置の実施が不十分であるとし、法律における差別的な条項、労働市場での女性に対する不平等な扱い(第7部d.を参照)、選挙で選ばれた高位の議員の中に女性が少ないことを指摘した。NGOは政府に、女性にのみ適用される離婚後6カ月間の再婚禁止規定の廃止、婚姻最低年齢における男女の区別の撤廃、および選択的夫婦別姓制度の採用を要請した。2015年末、最高裁判所は、夫婦同姓規定を支持したが、女性に対する6カ月間の再婚禁止期間を違憲とする判決を下し、再婚禁止期間を100日に短縮するよう勧告した。6月1日、国会は、再婚禁止期間を100日に短縮し、さらに女性が妊娠していないと医師が診断すれば、100日経過していなくても再婚を認める、民法の一部を改正する法律を可決した。改正民法は6月7日に施行された。

■子ども
・出生届
法律では、子どもの父親が日本人でその子の母親と結婚しているか、子どもを認知している場合、子どもの母親が日本人である場合、または子どもが日本で生まれ、その両親が不明あるいは無国籍の場合に、生まれた子どもに日本国籍を認めている。法律により、国内で生まれた子の場合は14日以内に、国外で生まれた子の場合は3カ月以内にそれぞれ出生届を出すことが義務付けられており、この期限はおおむね順守された。提出期限を過ぎた出生届も受理されたが、罰金が科せられた。

法律により、出生届に子が嫡出子か非嫡出子かを明記することが義務付けられているが、現在法律は、嫡出子と同等の相続権を非嫡出子に認めている。法律は、離婚成立から300日以内に生まれた子は離婚した男性の子であると推定しており、そのため、正確な人数は不明だが、子どもの出生届が出されず無戸籍となる状況が発生している。

・子どもに対する虐待
厚生労働省によると、国民の意識が高まったことから、児童虐待の報告件数は増加した。2015年4月から2016年3月までの間に各地の児童相談所が対応した、親あるいは保護者による児童虐待の報告件数は過去最多の10万3260件だった。警察庁によると、2015年1月から12月までの間に、親子心中、保護責任者遺棄致死および親や保護者による虐待など、822件の児童虐待の事案で849人が逮捕された。死亡した児童は58人だった。2016年にいじめを防止する法律が全面施行されたが、文部科学省の報告によると、学校でのいじめは増加の途にあり、2015年4月から2016年3月までの間に公立小学校、中学校、高等学校において22万4540件のいじめを記録した。教師による男女の子どもに対する性的虐待が報告された。

5月27日、政府は法律を改正し、児童虐待が疑われる家庭の臨検手続きを簡素化し、児童相談所に法律、心理学、医療の専門家を配置することを義務付け、より多くの自治体に児童相談所の設置を認め、公共の施設への入所対象年齢を引き上げた。

・早婚および強制婚
法律は、婚姻適齢について、男性は18歳以上、女性は16歳以上と規定している。20歳未満の者は、少なくとも両親のいずれかの同意がなければ結婚できない。

・子どもの性的搾取
児童買春は違法であり、児童買春をした成人は5年以下の懲役もしくは300万円(約2万7600ドル)以下の罰金、あっせん業者は7年以下の懲役 および1000万円(9万2000ドル)以下の罰金に処せられる。引き続き行われている「援助交際」や、出会い系、ソーシャル・ネットワーキング、「デリバリー・ヘルス」などのウェブサイトの存在が、性的搾取を目的とする児童の人身取引、およびその他の商業的性産業を助長した。「JK(女子高生)ビジネス」として知られる風潮が、引き続き拡大した。これらの業者には、未成年の少女が接客する飲食店や高校生の年代の少女が雇われているマッサージ店などがある。「JKビジネス」で働く少女を支援するNGOは、これらの事業と買春による子どもの性的搾取の関連性を報告した。

法定強姦に関する法律は、同意の有無にかかわらず13歳未満の少女との性交を犯罪としている。法定強姦をした者は3年以上の懲役に処せられ、法律は執行された。加えて、法律や条例は、少年の被害者を含む未成年者の性的虐待について包括的に対処している。

日本は、児童ポルノの製造および人身取引犯による子どもの搾取の現場であった。法律により、2014年以降、児童ポルノの単純所持は犯罪である。法の施行は2015年7月に開始された。児童ポルノの商用化は違法であり、3年以下の懲役もしくは300万円(約2万7600 ドル)以下の罰金に処せられる。警察はこの犯罪の厳重な取り締まりを続けた。警察の報告によれば、2015年の児童ポルノの捜査件数は過去最高の1938 件であり、905人の子どもが被害者となった。

性描写が露骨なアニメ、マンガ、ゲームには暴力的な性的虐待や子どもの強姦を描写するものもあるが、日本の法律は、こうしたアニメ、マンガ、ゲームを自由に入手できるという問題に対処していない。専門家は、子どもに対する性的虐待の描写を容認するような文化が子どもに被害を与えると示唆した。
国務省の「人身取引報告書」(www.state.gov/j/tiprpt/)を参照。

・国際的な子の奪取
日本は、1980年に採択された「国際的な子の奪取の民事面に関する条約(ハーグ条約)」の締約国である。国務省の「ハーグ条約の順守状況に関する国務省の年次報告書」を参照。

■反ユダヤ主義
日本国内のユダヤ人の人口は約2000人である。2016年に、反ユダヤ行為の報告はなかった。

■人身取引
国務省の「人身取引報告書」(www.state.gov/j/tiprpt/)を参照。

■障害者
障害者基本法により、身体障害者、知的障害者、精神障害者、およびその他の心身に影響を及ぼす障害のある人たちに対する差別は禁止されており、公共および民間部門における障害を理由とする権利および利益の侵害は禁止されている。4月に施行された障害者差別解消法は、雇用、教育、医療およびその他のサービスの提供に関し、公共部門には合理的配慮の提供を義務付け、民間部門には努力義務を規定している。法律は、差別を受けた障害者の救済、ならびに違反した場合の罰則を規定していない。

法律は、公共部門に対し合理的配慮を義務付けるとともに、民間部門に対してはそのように「努める」ことを規定している。障害者の支援団体はこの法律を広く支持した。それにもかかわらず、一部の公共サービスについては障害者の利用が制限された。

法律は、政府および民間企業に対し、障害者(精神障害者を含む)を一定の比率(2%)以上雇用することを義務付けており、違反すると罰金が科せられる。障害者の権利擁護団体は、障害者を雇用するより罰金の支払いを選択する企業もあると主張した(第7部d.を参照)。

公共施設の新たな建設プロジェクトでは、障害者のための設備を整備することがアクセスビリティに関する法律で義務付けられている。政府は、病院、劇場、ホテル、およびその他の公共施設の経営者が、障害者用の設備を改善または設置する場合には、低金利の融資および税制上の優遇措置を認めることができる。

統合教育を提供した学校もあったが、障害のある子どもは一般的に特別支援学校に通学した。

精神衛生の専門家は、精神障害への偏見を軽減し、うつ病やその他の精神疾患は治療可能な、生物学に基づく疾患であることを一般の人々に知らしめる政府の努力が十分になされていないと批判した。障害者の虐待は深刻な懸念事項であった。家族、障害者福祉施設職員または雇用者から虐待を受けた障害者は、全国でみられた。民間の調査によると、障害のある女性に対する差別や性的虐待があった。

相模原市の障害者施設の元職員が7月、同施設の入所者をナイフで刺し、19人を殺害、26人にけがを負わせた事件で、この元職員は罪に問われた。これは過去数十年間に日本で起きた大量殺人事件の中で、最も多くの犠牲者を出した事件だった。後に地元の警察は、被害者の家族のプライバシーに関わるとして被害者の身元の公表を拒否した。一部の障害者の権利擁護団体は、被害者の氏名を公表しないのは、障害者は社会から切り離しておくべきであると主張する人たちの意見を暗に認めることになると批判した。被疑者は以前、「重度障害者は死んだ方が良い」、さらに「施設を回って10月までに600人を殺す。まず自分がいた施設からやります」などの脅迫文をソーシャルメディアに投稿していた。

■国籍・人種・民族に基づくマイノリティー
マイノリティーは、その程度はさまざまであるが社会的差別を受けた。
12月、国会は、部落民 (封建時代に社会的に疎外された者の子孫)に対する差別の問題に取り組むことに特化した初の法律である部落差別解消の推進に関する法律を成立させた。12月に施行されたこの法律に従い、国および地方公共団体は部落差別について調査し、啓発教育を行い、相談体制を充実させる。部落民の権利擁護団体は引き続き、多くの部落民が社会経済的状況の改善を実現したにもかかわらず、雇用、結婚、住居、不動産価値評価の面での差別が横行している状況が続いたと報告した。公式に部落民というレッテルを貼って部落出身者を識別することはもうなかったが、戸籍制度を利用して部落民を識別し、差別的行為を促すことが可能であった。部落民の権利擁護団体は、多くの政府機関も含め、就職希望者の身元調査のため戸籍情報の提出を求める雇用者が、戸籍情報を使って部落出身の就職希望者を識別・差別する可能性がある、と懸念を表明した。

日本で生まれ、育ち、教育を受けた多くの外国人を含む、日本で永住権を有する外国人は、差別に対する法的な保護措置があるにもかかわらず、住居、 教育、医療、および雇用の機会の制限など、さまざまな形で根深い社会的差別を受けた。外国人や、「外国人のように見える」日本国民は、ホテルやレストラン など一般の人々にサービスを提供している民間施設への入場を、時には「外国人お断り」と書かれた看板によって禁じられたと報告した。NGOは、こうした差別が通常あからさまで直接的であったにもかかわらず、政府がそのような制限を禁止する法律を執行していないと訴えた。

永住永住資格を持つ韓国・朝鮮人または日本に帰化した韓国・朝鮮人の社会的受容は概ね引き続き向上した。帰化申請のほとんどは当局により許可されたが、支持団体は、帰化手続きを複雑にする過度の官僚的な障壁や、不透明な許可基準について引き続き抗議した。帰化しないことを選択した韓国・朝鮮人は、公民権および政治的権利の面で困難に直面した。国連人種差別撤廃委員会に対する日本の定期的な報告によれば、住居、教育、その他の給付を得る上で頻繁に差別を受けた。

極右グループが人種を誹謗(ひぼう)する言葉を用いたことから、ヘイトスピーチとして報道機関や政治家から非難された。政府高官は、民族集団への嫌がらせが差別を助長するとして公に拒絶し、国内のあらゆる人の個人の権利を保護することを再確認した。

5月のヘイトスピーチ解消法の可決に続き、大阪市は7月、ヘイトスピーチに対処する初の地方条例を施行した。

9月27日、大阪地方裁判所は、フリーランスジャーナリストの李信恵(リ・シネ)氏がヘイトスピーチにより精神的苦痛を被ったとして、過激論者の極右政治団体である「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の桜井誠前会長個人に責任があると、「在特会」に対して77万円(7084ドル)の損害賠償を支払うよう命じた。判決によると、侮辱的な発言はインターネット上と街宣活動の双方で発せられた。増森珠美裁判長は、桜井氏と「在特会」が社会通念上許される限度を超えて李氏を悪意をもって侮辱し、李氏のジャーナリストとしての仕事を中傷したと述べた。

報道およびNGOの報告によれば、インターネット上でのヘイトスピーチは継続した。
最高裁判所は、永住資格を持つ外国人は日本国民ではないため、生活保護の受給権を持たないという判断を下したが、困窮している永住外国人に対しては、慣例として自治体が生活保護を支給した。さらに、最高裁判所の判決後、厚生労働大臣は、人道上の理由により外国人居住者に対しても政府が引き続き支給を行うことを再確認した。
旧社会保険庁の通達により、外国人語学教師の場合には、日本人の語学教師と異なり、雇用者による年金と健康保険料の雇用者負担分の支払い回避が可能になっている。雇用者は、外国人について、日本人と異なる契約を用いることができ、裁判所は概ねこの区別について差別には当たらないとした。

■先住民
アイヌは他の全ての国民と同じ権利を享受したが、明らかにアイヌであると識別されると差別を受けた。法律はアイヌ文化の保存を重視しているが、土地の所有権の認定、国会と地方議会での議席の割り当て、過去の政策についての政府の謝罪など、アイヌ団体が要求している条項は含まれていない。政府は国会での審議を経て、アイヌを先住民族として認めた。ただし、この認定には法的な影響は全くなかった。

3月25日、アイヌの遺骨返還に関する長年の訴訟において、北海道大学とアイヌとの間で和解が成立した。7月、同大学は11体の遺骨を浦河町杵臼に返還した。第1次提訴の原告および他のアイヌは、遺骨の返還を歓迎し、一連のアイヌの伝統葬儀を行い再埋葬した。これは先住民が(個人の権利というよりも)民族の権利を主張した日本で初めての訴訟であった。

「アイヌ民族なんて、いまはもういない」と主張し、アイヌを自認している人々に特権を与えていると、政府の政策を批判した札幌市議会議員が、2015年の選挙で落選した。アイヌを自認している人々の所得は、周りの他の日本人と比べ依然として低かった。

学術研究に使用されるアイヌの遺骨の取り扱いに関する懸念に対処するため、2015年政府は、身元が特定できないアイヌの遺骨を埋葬する慰霊施設を建設すると発表した。北海道アイヌ協会は政府の計画を歓迎したが、身元の特定と、子孫あるいは故郷への遺骨の返還を支援するよう引き続き要請した。

日本政府は琉球民(沖縄と鹿児島県の一部の住民を指す言葉)を先住民族と認定していないが、彼らの独自の文化と歴史を公式に認め、その伝統を保存し尊重する努力をした。

■性的指向および性同一性に基づく暴力行為、差別、その他の虐待
性的指向または性同一性に基づく差別を禁止する法律はない。全般的に、LGBTIの人々に対する社会的受容性は引き続き改善した。そのような差別に対する罰則は存在せず、関連する統計も入手できなかった。法律では性交が男女間の膣性交としてのみ定義付けられていることから、強姦、性交渉およびその他の性交を伴う行為を律する法律は、同性間の性的行為には適用されない。このような定義が、男性を強姦した加害者に対する罰則を軽微にし、同性間の売春を取り巻く法律上の曖昧さを増すことにつながる。

LGBTIの人々の権利を擁護するNGOから、組織に対する妨害の報告はなかったが、いじめ、嫌がらせ、および暴力行為の報告は何件かあった。 LGBTIの人々を取り巻く偏見が、差別や虐待を自ら報告する妨げに依然としてなっており、また学校でのいじめや暴力に関する調査では、全般的に、関係者の性的指向や性同一性が考慮されていなかった。また、LGBTIの人々を取り巻く広く浸透した社会的不名誉により、多くの人が自らの性的指向を公にすることを妨げられ、LGBTIの人々の代理人を頻繁に務める弁護士によれば、性的指向を公表するといって依頼人が脅された事例が2015年に数件あった。報道機関の自己検閲が引き続き一つの足かせとなりLGBTI問題が主流な議論となることが妨げられた。

法律により、トランスジェンダーの人々が法律上の性別を変更することは可能であるが、これは性同一性障害であるとの診断を受けた後にのみ可能である。

■HIV・エイズ感染者に対する社会的不名誉
HIV・エイズ感染者に対する差別を禁止する法律はないが、拘束力のない厚生労働省のガイドラインには、事業者にはHIV感染を理由に人を解雇あるいは不採用にしてはならないと明記されている。裁判所は、HIV感染が理由で解雇された個人に損害賠償請求を認めてきた。

HIV・エイズ感染者に対する差別についての懸念やこの疾患に伴う不名誉が多くの人にHIV・エイズの感染を公表させなかった。NGOによれば、解雇の恐れから、多くの人が感染を知られないようにした。

第7部 労働者の権利

a) 結社の自由と団体交渉権
法律は、民間部門の労働者が事前認可あるいは過度の要件なしに、組合を結成し、自分が選んだ組合に所属する権利を規定し、ストライキおよび団体交渉を行う権利を保護している。
公共部門の職員および公共企業体の従業員には、法律により、組合を結成し、自分が選んだ組合に所属する権利に制限が課されている。公共部門の職員にはストライキをする権利がない。公共部門でストライキを扇動する労働組合の指導者は免職され、罰金または3年以下の懲役に処せられる場合がある。公共部門の職員は、公共部門職員の組合に参加することが許されており、こうした団体が公共部門の雇用者と賃金、労働時間、その他の雇用条件について一括して交渉することができる。消防職員および刑事施設職員には団結権が認められておらず、団体協約を締結する権利を持たない。

発電および送電、運輸および鉄道、通信、医療および公衆衛生、郵便などの必要不可欠なサービスを提供する部門の労働者は、ストライキをする日の10日前までに当局に通知しなければならない。必要不可欠なサービスの提供に関わる従業員には団体交渉権がない。法律は組合に対する差別を禁止し、組合活動のために解雇された労働者の職場への復帰を規定している。

日本政府は結社の自由および団体交渉権について規定する法律を効果的に執行した。違反があった場合には、労働者または労働組合は労働委員会に異議を申し立てることができ、労働委員会は雇用者に救済命令を発することができる。その後、原告はその問題について民事訴訟を起こすことができる。裁判所が救済命令を支持し、救済命令違反を認定した場合、100万円(9200ドル)以下の罰金または1年以下の禁固、またはその両方の罰則に処すことができる。政府の取り締まりとこれらの罰則は、全般的に違反の防止に十分であった。

政府と雇用者は結社の自由と団体交渉権を尊重したが、短期雇用契約の増加は、正規雇用を損ない、団体活動を妨げた。団体交渉権は民間部門で一般的であったが、一部の企業は、法律の下での従業者の保護を回避するため、法人格の形態を変更して、法律的には雇用者とみなされない持ち株会社制度に移行した。

b) 強制労働の禁止
法律によりあらゆる形態の強制労働は禁止されている。
政府は法律を効果的に執行したが、一部の区分に属する外国人労働者のように、労働市場のごく一部では、違反が根強く残っており、法の執行を強化する余地があった。強制労働に対する法律上の刑罰は、強制労働の形態、被害者、このような犯罪を訴追する検察官が適用した法律により異なった。全ての形態の強制労働に十分な刑罰が科せられているわけではなかった。例えば、強制労働を目的とする採用に対しては、法律は20万円(1840ドル)以下の罰金を認めているが、違反を防止するには十分でなかった。一部のNGOは、強制労働に対する法律の定義が狭すぎると主張した。

当局は、技能実習制度(TITP)の下で発覚した法律違反を処罰するにあたり労働法を適用した。TITPは、外国人労働者が日本に入国し、事実上の臨時労働者事業のような形で最長3年間就業することを認める制度である。厚生労働省の労働基準監督官および法務省の現地の入国審査官が、TITPの下で技能実習生を雇用した事業場を監督した。NGOは監督が不十分であると主張した。TITPにおいて企業が規則を順守しない場合の政府の対応として、一例を挙げると、警告および勧告を発出し、企業のTITPへの参加を今後1~5年間禁止することが規定されていた。厚生労働省には、技能実習生を採用する日本の機関を監督する法的権限がない。厚生労働省は、2015年に技能実習生を雇用していた3万カ所以上の事業場のうち、懸念される5173カ所を調査し、3695カ所で労働時間、安全基準、割増賃金の支払い、その他の規制に関係する違反を認めた。厚生労働省はこうした雇用者に是正措置を取るよう指導し、措置を怠った46件について検察庁に送致した。

製造業、建設業および造船業において強制労働の報告が引き続きあった。これは主に、TITPを通じて外国人を雇用している中小企業にみられた。このような職場で働く労働者は、移動の自由およびTITP関係者以外の人物との連絡の制限、賃金の未払い、母国の仲介業者に対する多額の借金、ならびに身分証明書の取り上げを経験した。労働者は時として「強制貯金」も求められたが、こうした貯金は実習の切り上げ、あるいは強制送還の場合には没収された。例えば、報告によると、技能実習生の中には、仕事を得るため自国で最高100万円(9200ドル)を支払った者もいた。また報告によると、技能実習生が実習を切り上げようとした場合に、自国で数千ドル相当の没収を義務付けられる契約の下で雇用されていた。こうした行為はいずれも、TITPの下で違法である。日本に不法入国した労働者やビザの期限が切れたまま不法滞在した労働者は、特に弱い立場におかれた。

11月18日、国会は、技能実習生を受け入れる事業者・団体を監督する新たな監督機関を設置し、違反に対する新たな罰則を定める「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」を成立させた。この法律により、技能実習の最長期間が3年から5年に延長されるため、同制度の利用拡大が見込まれる。
国務省の「人身取引報告書」(www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/)を参照。

c) 児童労働の禁止と雇用の最低年齢制限
15歳から18歳未満の年少者は、重量物の取り扱いや、運転中の機械の掃除、検査または修繕など、危険な、あるいは有害と指定される仕事でなければ、いかなる仕事にも従事することができる。15歳から18歳未満の年少者の深夜業は禁止される。13歳から15歳までの児童は「軽易な労働」であれば従事でき、13歳未満の児童でも芸能界であれば働くことができる。
政府はこれらの法律を効果的に執行した。児童労働に関する違法行為に対する罰則には罰金と懲役があり、違法行為の防止に十分なものであった。
子どもは、商業的性的搾取の対象となった(第6部「子ども」を参照)。

d) 雇用および職業に関する差別
法律は雇用および職業に関し、人種、性別、個人または政治的信条、出身国または国籍、社会的地位または門地、障害、年齢、ハンセン病などの感染症に基づく差別を禁止している。法律は雇用および職業に関し、性的指向および/または性同一性、HIVの感染、あるいは言語に基づく差別を明確に禁止していない。労働法は宗教に基づく差別を明確に禁止していない。法律はまた、男女平等の同一賃金を義務付けている。法律は、政府および民間企業に対し、障害者(精神障害者を含む)を一定の比率(2%)以上雇用することを義務付けている。法律により、従業員200人以上の企業が障害者を一定の比率以上雇用する義務に従わなかった場合には、法定雇用数に足りない障害者1人当たり毎月5万円(460ドル)の罰金を支払わなけ ればならない。

男女雇用機会均等法施行規則にはまた、全ての労働者の募集、採用、昇進、職種の変更に関して、差別する意図を持って採用されたものではないが、差別的な効果のある(法律で「間接差別」と呼ばれる)方針や行為の禁止が含まれている。これらの規定の執行は全般的に脆弱であった。

3月29日、国会は育児・介護休業法および男女雇用機会均等法の改正法案を成立させた。改正法は2017年1月1日から施行される。改正育児・介護休業法により、例えば、従業員に認められた休業を3回に分割して取得することを可能にするなど、介護休業の取得の柔軟性が高まることが見込まれる。改正法はまた、有期契約労働者の育児休業取得要件の緩和も目的としている。改正男女雇用機会均等法は、雇用者にマタニティハラスメントを防止する措置を講じるよう義務付けている。4月1日、国および地方公共団体、ならびに301人以上の従業員を雇用する民間企業に、それぞれの組織における女性の雇用状況の分析と、女性の参画と活躍を推進する行動計画の提出を義務付けた2015年成立の法律が施行された。その後間もなく厚生労働省は、個々の企業が報告した女性の雇用状況に関するデータを公表した。

違反があった場合、厚生労働省はその問題について雇用者に報告を求めることができ、また助言、指導、是正勧告を行うことができる。雇用者が厚生労働省の勧告に従わない場合、企業名を公表する場合もある。雇用者が報告を怠る、あるいは虚偽の報告をした場合は、20万円(1840ドル)以下の罰金が科すことができる。

都道府県の労働局雇用均等室の政府ホットラインは、セクシュアルハラスメントに関する相談に対処し、可能な場合は紛争を調停した。

女性は依然として、職場での不平等な待遇について懸念を表明した。女性の平均月給は、男性の約70%にとどまった。職場におけるセクシュアルハラスメントはまだ広範囲に見られた。この分野では初めての調査で、厚生労働省は、常勤および非常勤の女性従業員のうち30%が職場でセクシュアルハラスメントを経験したことがあると報告した。常勤従業員のセクシュアルハラスメント経験者は35%であった。

雇用者が妊娠した女性に辞職を強要する事案が引き続きみられた。厚生労働省は、データの入手が可能な最後の年である2015年度に、マタニティハラスメントに関して労働当局から助言を求めた事案の数が、前年度から19%増加したと報告した。2015年、厚生労働省は、妊娠を理由に女性従業員を不当に解雇し、同省の是正勧告を繰り返し拒否した雇用者の名前を公表した。同省は、本件がこの法律に基づき雇用者の名前を公表する初めての事案であると述べた。2015年の別の事案で、広島高等裁判所は、地元の病院に対し、妊娠を理由に軽い業務への配置転換を希望した後に降格された理学療法士に175万円(1万6100ドル)の賠償金を支払うよう命じた。

政府は保育施設を充実させるとともに、有価証券報告書での女性の登用状況の開示を民間企業に促した。 厚生労働省の統計によると、データの入手が可能な最後の年である2014年における公共部門の障害者雇用率はおよそ2.2~2.3%だったが、民間部門の障害者雇用率は約1.8%と、法律で義務付けられた最低限の比率に至らなかった。

障害者の権利擁護団体は、障害者を雇用するより罰金の支払いを選択する企業もあると主張した。
8月、日本労働組合総連合会は、回答者の23%が、職場や仕事関連の活動でLGBTIの人々に関係するハラスメントを個人的に経験あるいは目撃したとする調査を発表した。

e) 許容される労働条件
10月に改定された最低賃金は、時給714円(6.57ドル)から932円(8.57ドル)まで幅があり(都道府県別に定められている)、2015年比で平均25円(0.05ドル)上昇した。貧困線は、年間所得122万円(約1万1225ドル)だった。

法律により、ほとんどの産業で労働時間は週40時間と規定されており、例外もあるが、一定の期間に認められる時間外労働の時間数は制限されている。1日8時間を超えて働いた場合、1カ月45時間を超えない範囲の時間外労働には、賃金の25%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられている。1カ月45時間から60時間までの時間外労働については、法律は企業に25%以上の割増賃金を支払う努力をすることを義務付けている。1カ月に60時間を超える時間外労働については、少なくとも50%の割増賃金を支払うことを義務付けている。法律はまた、国民の祝日を有給の休日とするほか、6カ月間継続して勤務した正規労働者に対し、年間少なくとも10日の年次有給休暇を支給することを義務付けている。労使で合意すれば、労働者は10日の年次有給休暇のうち5日を限度として、時間単位で取得することができる。日本政府は労働安全・衛生基準を定めている。

厚生労働省が、ほとんどの業種の賃金、労働時間および安全・衛生に関する法律・規則の執行について責任を負う。国家公務員の労働安全・衛生については人事院が所掌する。鉱業については経済産業省が、海運業については国土交通省が労働安全・衛生をそれぞれ所掌する。

法律は、最低賃金を支払わなかった雇用者に対し、対象となる従業員の数や違反の期間に関係なく50万円(4600ドル)以下の罰金を規定している。300以上の労働基準監督署に雇用された約4000人の労働基準監督官が、これらの法律・規則を執行した。労働組合は、依然として、政府が労働時間制限の執行を怠っていると批判し、政府職員を含め労働者は日常的に、法律で定められた労働時間を超えて働いた。

日本政府は全般的に、全ての産業において、労働安全・衛生に関する法律・規則を効果的に執行した。労働安全・衛生基準違反に対する罰則には罰金と懲役がある。労働基準監督官は、重大な違反の場合には、安全でない操業を直ちに停止させる権限を有するが、重大でない場合は、拘束力のない指導を与えることができる。労働者は、自らの雇用を危険にさらすことなく、健康や安全を脅かす状況から離れることができる。厚生労働省の職員はしばしば、430万カ所以上の事業所を監督するには資源が不十分であると述べた。

非正規雇用労働者(非常勤、有期契約および派遣労働者を含む)は、2014年の労働力人口の約37%を占めた。これらの労働者は正規雇用労働者より低い賃金で働き、多くの場合、雇用の安定性や福利厚生が劣っていた。一部の非正規雇用労働者には、保険、年金および研修を含むさまざまな福利厚生を受ける資格が与えられていた。この分野の専門家は、4年または5年未満の契約、および5年に至る直前の契約終了が増加していると報告した。これは、労働者が無期労働契約への転換を雇用者に申し込むことが可能になる、通算5年を超える契約期間に達することを妨げる措置になりうる。研究者、技術者、大学の教員など大学や研究開発法人に勤務する労働者について、無期労働契約に転換するまでの期間が10年に延長された。

危険な装置や不十分な研修に起因するけが、賃金や残業手当の未払い、過度の、時として誤った賃金控除、強制送還、および標準以下の生活環境など、TITPにおける悪用事例の報告がよくみられた(第7部b.参照)。さらに、この分野の専門家は、TITPの労働条件を監督する監督官および審査官は、TITPを共管する省のうちの2省が雇用していることから、利益相反も存在したと指摘した。監督官や審査官の中には、事業主が支持する政府のプログラムに対して否定的なイメージを与えかねない調査を行うことに難色を示す者もいた。

また、仮放免許可を受けており、就労許可がない外国人庇護希望者が非公式に雇用されているという複数の報告があった。このような労働者は、不当な扱いを受けやすく、一般的な労働者としての保護や監督を受けることができなかった。

労働災害による死亡の原因として最も多かった のは、墜落・転落、道路交通事故および重機によるけがであった。また厚生労働省は引き続き、過労死の認定を求める遺族からの申請を受けた。10月、注目を集めた事案で、東京労働局は、2015年の若い女性の死亡について、その従業員の1カ月の時間外労働が130時間に及び、1週間の睡眠時間が10時間であったことを示す記録があったことから、過労死と認定した。大手広告代理店に対するこの裁定により、過度な労働が引き起こす深刻な結果にあらためて注目が集まった。10月、政府は過労死に関する初の白書を発表した。同白書によると、調査した1700社のうち、20%の企業で1カ月の時間外労働が80時間を超える正規雇用従業員(フルタイム)がおり、11.9%の企業が従業員に100時間を超える時間外労働をさせていた。同白書は、2015年に発生した自殺のうち2159件が、仕事疲れやいじめなど勤務問題を原因の1つとするものであるとした。また、業務における強い心理的負荷による精神障害について、2015年度に過去最多の1515件の労災補償申請があったと報告した。


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