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協力的問題解決 、女子の方が成績が良い OECD調査

 協力的問題解決においては、女子生徒の方が男子生徒よりも良い成績を上げていることが、OECDが初めて行った協力的問題解決能力の評価であきらかになったとのこと。 
 共同して物事に取り組むときの女性のパワーは常々実感していることだが・・・そはのパワーを社会的に排除しているシステムに未来があるのか・・・OECDですら指摘しているジェンダーギャップの問題。 

 このテスト結果では、社会的に恵まれた生徒と恵まれない生徒との間、または移民と移民でない生徒との間で成績に大きな差は見られなかったことから、社会的経済的な背景の影響は小さいと見られる。
 最近の脳科学では、女性の脳は、論理をつかさどる「左脳」と感情をつかさどる「右脳」の連携が非常に強く、表情から相手の気持ちを読み取り、深く理解しようとする。つまり「共感」する力が強いことが報告されている~出産、子育てを共同でのりきってきた人類の発達の歴史の表れだろうか。

 また、調査では、学級内で多様性を感じることが協調性スキルの向上と関係している可能性が指摘されているが、大空小学校のとりくみを想起させる。

【協力的問題解決では、女子の方が男子よりも成績が良いーOECD PISA世界教育調査より 11/21】
【NHKスペシャル 家族が非常事態!妻が夫にキレる本当のワケ 2017/6/11】
【すべての子どもに、居場所のある学校を。不登校ゼロの「みんなの学校」がめざす学びの姿】

【協力的問題解決では、女子の方が男子よりも成績が良いーOECD PISA世界教育調査より 11/21】

協力的問題解決においては、女子生徒の方が男子生徒よりも良い成績を上げていることが、OECDが初めて行った協力的問題解決能力の評価から明らかになりました。
このテストには、世界52カ国・地域の15歳の生徒約12万5000人が参加し、生徒がグループでどのくらい協力できるか、協力することに対する姿勢、また性別や放課後の活動、社会的背景といった要素が及ぼす影響について分析しています。

アンヘル・グリアOECD事務総長は、次のように述べています。「社会的技能を重視する傾向が世界的に強まっている中、教育制度はこうした技能を学校のカリキュラム全体で体系的に育成できるように努める必要がある。親と社会全体も役割を担わなくてはならない。より良い人生を送るためにより良い技能を身につけられるよう、共同体全体が協力するべきである。」

読解力または数学の成績が良い生徒ほど、協力的問題解決の成績も良い傾向があります。それは、情報を管理、理解し、推論する能力が問題解決に必要とされるからです。また、同じことは国際比較についても言えます。PISAの成績が良い国々、アジアでは日本、韓国、シンガポール、欧州ではエストニアとフィンランド、北米ではカナダが、協力的問題解決のテストでも良い成績を上げています。

オーストラリア、日本、韓国、ニュージーランド、米国の生徒は、協力的問題解決において、これらの国々の科学、読解力、数学の点数を元に予測されるよりも良い成績を上げています。しかし、PISA調査に参加した中国の4都市・地域(北京市、上海市、江蘇省、広東省)の生徒の成績は、数学と科学の結果ほどは良くありませんでした。

OECD諸国全体での平均では、28%の生徒が簡単な協力を必要とする問題しか解けません。それに対して、エストニア、香港(中国)、日本、韓国、マカオ(中国)、シンガポールの生徒では、協力的問題解決の成績が良くない生徒は6人に1人未満です。

このテストに参加した全ての国・地域において、女子生徒の方が男子生徒よりも良い成績を上げており、その差は平均で学校教育半年分に相当します(29点)。OECD諸国平均で、協力的問題解決において、女子生徒の方が成績上位者になる可能性が男子生徒より1.6倍高いのに対して、男子生徒が成績下位になる可能性は女子生徒より1.6倍高くなっています。これは、2012年に行われた個人の問題解決能力のテストで男子生徒の方が女子生徒より成績が良かったという結果と、非常に対照的です。

このテスト結果では、社会的に恵まれた生徒と恵まれない生徒との間、または移民と移民でない生徒との間で成績に大きな差は見られませんでした。しかし、学級内で多様性を感じることが協調性スキルの向上と関係している可能性があります。例えば、一部の国々では、移民の生徒が多い学校に通っている移民ではない生徒は、このテストの協力という側面でより良い成績を上げています。

総合的に見ると、体育の授業を受けている生徒、またはスポーツをする生徒の方が、協力に対して肯定的な態度を示しています。それに対して、OECD加盟国平均で、学外でテレビゲームをする生徒の協力的問題解決の点数は、ゲームをしない生徒よりもわずかに低くなっています。他方、インターネットやソーシャルネットワークを学外で利用する生徒の点数は、しない生徒よりも若干高くなっています。
学校で良好な人間関係を育むことは、特にそこに生徒が直接関わっている場合に、生徒の協力的問題解決能力に有益に働きます。学校は、これを奨励するために、より多くの社会活動を組織するとともに、教師には学級管理といじめ対策のための訓練を受けさせることができます。



【NHKスペシャル 家族が非常事態!妻が夫にキレる本当のワケ 2017/6/11】

夫にキレる妻と妻のイライラの原因に気づかない夫。今、夫婦のすれ違いが深刻化している。年間21万7000組が離婚しているが、7割が妻からの申し出だ。また、夫からの申し出では、離婚動機の第2位に「妻からの精神的虐待」が浮上している。
なぜ妻は夫にキレるのか? 最新研究から男女の脳とホルモンの違いが、「共感」や「思いやり」といった夫婦仲を左右する能力に影響を与えていることが明らかになった。お互いの違いを理解し、絆を強めるため解決法を探る。

■共感できない男性脳、気持ちを読み取る女性脳

番組では冒頭、夫に罵詈雑言を浴びせる妻の殺伐とした映像を映し出した。結婚5年目の佐々木ケイスケ・ナツミさん夫婦。夫婦の日常を居間に取り付けたカメラで追った3日目。ナツミさんが「転職しようかな」と口に出した。ナツミさんの転職の話しは過去何度も行われてきた。その度に現状のまま頑張ろうと確認してきたという。「またか」と思ったケイスケさんが「わかってる」と生返事をした途端、ナツミさんの形相が変わり、物を放り投げた。

ナツミさん「わかってねーし!」

「なぜキレたんですか」という番組スタッフの問いに、ナツミさんは泣きながら「自分がキレる理由をわからない」と話した。福祉関係の会社で働くナツミさんは、時短勤務で夕方に帰社し1時間半かけて2人の子を預ける保育所に向かう。キレる時は、ケイスケさんが自分の悩みに向き合わないと感じる時だ。一方、ケイスケさんには結論が出ている話をなぜ蒸し返すのか理解できない。ナツミさんがケイスケさんに求めたものは転職へのアドバイスではなく、悩みに対する「共感」だったのだが......。

ナツミさんがキレたシーンの録画映像を持って、番組スタッフは米ペンシルバニア大学の脳科学者ルーベン・ガー教授を訪れた。男性脳・女性脳の研究の第一人者で、2013年に脳内における情報伝達の仕組みに男女差があることを初めて突きとめた人物だ。録画映像を見せると、ガー教授はこう分析した。

ガー教授「非常に典型的なすれ違い夫婦ですね。夫には妻の悩みをわかってあげようとする共感力がありません」
ガー教授が発見した男性脳・女性脳の違いはこうだ。人間の脳には右脳と左脳がある。右脳は主に感覚的に認識する能力、左脳は論理的に認識する能力をつかさどる。たとえば人間と向き合った時、相手の表情を視覚として捉えるのが右脳、その表情が持つ意味を分析しようとするのが左脳だ。女性の脳は、右脳と左脳の連携が非常に強く、女性は表情から相手の気持ちを読み取り、深く理解しようとする。つまり「共感」するのが得意だ。ところが、男性は右脳と左脳の連携が弱い。相手の表情を単なる「映像」と見るため、気持ちを読み取ろうとせず、共感することが苦手だ。

それを確かめるため、ガー博士は約11万人の男女を対象に、さまざまな顔写真の表情から感情を読み取るテストを行なった。すると、回答の正確さも答える速さも女性の方が圧倒的に成績はよかった。

MCのお笑い芸人・恵俊彰「いや?意外ですね。女性は相手の表情を見て、どうして怒っているか、どうして笑っているかを考えようとするのですね。女性の方が理論的で、男性の方が感覚的ですね」
男性脳と女性脳の発達の違いについて、京都大学霊長類研究所の中村克樹教授は人類の進化からこう解説した。

中村教授「男は狩りに出て獲物を持って帰る。残った女性が木の実や葉っぱを集めて食事を作り、子育てをした。女性のコミュニティーの中でいい関係を作ってきました。そして周りのメンバーのちょっとした表情やしぐさの変化から相手の気持ちを読む共感力を高めてきたのです」

■「根に持つ女」「すぐ忘れる男」覚える場所の差

男女のすれ違いは「共感力」だけではない。「記憶力」も影響する。結婚して28年になる今井タカヤ・ミチヨさん夫婦の日常をカメラで追った。ミチヨさんが冷蔵庫の中を見て、突然キレた。中の物をバンバン床にぶちまけた。

ミチヨさん「家にある物をなぜこんなにたくさん買い込むんだよ~! ええ~、何とか言ってみなよ!」
 タカヤさんはオロオロして何も言えない。キレた理由についてミチヨさんは「ずっと我慢して今日まできた。この人、浪費癖があって私もだいぶ苦労したんです」と話した。かつて苦労した記憶が突然よみがえり、キレるのだ。「どうせこの人、覚えていないよ」と言いながら、ミチヨさんは具体例をいくつか話した。番組スタッフが「覚えていますか?」とタカヤさんに聞くと、「いや、全然」と首を振った。

なぜ、嫌な記憶に大きなギャップがあるのか。米カリフォルニア大学の脳学者ラリー・ケイヒル教授は、ネガティブな経験が脳内にどのように記憶されるか研究を行っている。脳の奥深くにある扁桃体(へんとうたい)は怒りや悲しみなどの感情を生み出す中枢だ。そうした感情は記憶をつかさどる海馬に伝わり、つらかった怖かったといったネガティブな記憶として残る。この扁桃体と海馬のペアは左右の脳に1組ずつある。

研究を重ねるうち、ケイヒル教授は驚きの発見をした。男性はネガティブな出来事を右脳のペアで、女性は左脳のペアで記憶することがわかったのだ。右脳は感覚的に認識するから、記憶は漠然としたイメージしか残らない。ところが、左脳は論理的に認識するから、記憶は些細なことまではっきりと残る。「女性は根に持つ」といわれるように、妻が夫の不始末をいつまでも覚えているのに対し、夫が覚えていないのは、「男は都合の悪いことは忘れる」わけではなく、記憶する場所の違いからきていたわけだ。

ゲストのモデル押切もえ「なるほど。私もそういう(嫌な記憶の)引き出しがありますね。いざという時、ぶちまけちゃいます(笑い)」
 
それにしてもなぜ、嫌な出来事に対して女性はよく覚えているのに、男性は覚えていないだろうか。「それは、進化の歴史から理解することが大切です」と、中村教授が解説した。

中村教授「女性が、ネガティブなことを事細かに記憶するのは、敵から子どもと自分を守るためのリスク回避の要素があるのです。女性は体が弱いですし。一方、男性は狩りに出ていくわけですから、いちいち嫌なことを記憶していては、不安になって狩りになんか行けませんからね」

■妻の男性ホルモンが夫の数倍という逆転現象

妻が夫にキレるの理由は、脳の違いだけではなく、女性の働き方からくる「ホルモン」の乱れも影響している。石井サトル・ヨウコさん夫婦は、ヨウコさんが在宅で海外の企業を相手にコンサルティングの仕事をしている。バリバリのキャリアウーマンだ。サトルさんが家事や育児を担い、子どもの弁当まで作る。ヨウコさんもよくサトルさんにキツイ言葉で当たり散らす。

番組では、石井夫婦の唾液を採取、ホルモンをチェックした。男性ホルモン・テストステロンの量を検査したのだ。テストステロンは筋肉や骨をたくましく成長させ、攻撃性を高めるため「闘争ホルモン」とも呼ばれる。驚いたことに3回の検査の結果、ヨウコさんの方が3~8倍の割合でサトルさんを上回った。男女逆転現象が起こっているのだ。
ヨウコさん「(苦笑いしながら)ショックです。考えないといけませんね」

ホルモンを研究している麻布大学の菊水健史教授がこう解説した。

菊水教授「米国で行われた実験では、女性のテストステロンが高いカップルほど男性の満足度が低くなる傾向があります。管理職の女性は高い傾向があるといわれています」

さて、キレる妻を救い、夫婦円満になる秘訣はないのだろうか。米クレアモント大学のポール・ザック教授は人間の愛情に関わるホルモンを研究している。教授は、夫婦たちを集め、わざと相手を怒らせることを言い合う実験を行なった。険悪になるカップル。そこで、カップルにあるスプレーを鼻から吸わせる。すると、カップルの表情が和らぎ、互いに手を取り合って話し始めた。

このスプレーに入っていた成分が、「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンだ。オキシトシンは、脳の報酬系と言われる部分に作用し、「この人とずっと一緒にいたい」という気持ちを起こさせる。もともとは、赤ちゃんに授乳する時に母親の体内で分泌され、母と子の絆を深める「母性愛の源」のホルモンだ。哺乳類はすべて持っている。

■魔法の「愛情ホルモン」を増やす方法

実は、人類の歴史はほぼ数百万年の間、一夫多妻だった。チンパンジーやゴリラのように力の強い男性が多くの女性を得ていた。一夫一妻制になったのは、ほんの数千年前で、一説によると、人類の存亡を脅かすほどの性感染症が流行したためだという。そこで、一夫一妻制を選択したわけだが、その時に夫婦の絆の役に立ったのがオキシトシンだった。男性の脳にオキシトシン受容体が誕生し、1人の女性だけを好きになるようになり始めた。テストステロン支配から抜けて、オキシトシン受容に変わったのだ。支配から、

ザック教授「進化の過程で人は複数のパートナーと関係を結んできましたが、オキシトシンにより1人のパートナーを選ぶように動機づけられるようになりました。しかし、まだ一夫一妻制の歴史が浅いため、体の中でテストステロンとオキシトシンの葛藤が続いているのです」

オキシトシンが多く分泌されるようになると、妻もキレにくくなるし、夫も妻に共感するようになれる。「魔法のホルモン」増やすにはどうしたらよいだろうか。ザック教授はこう語った。

ザック教授「2人で向かい合い、手をつないで話すのです。2人で料理を作るなど、同じ目標に向かって共同作業をするとよいでしょう。きれいなレストランで食事をし、夫が妻にサプライズの手紙と花束を贈るもいいですよ。オキシトシンを増やすには努力が必要です。その代わり、オキシトシンの分泌を繰り返すと、分泌しやすい体質になります」



【すべての子どもに、居場所のある学校を。不登校ゼロの「みんなの学校」がめざす学びの姿】

学校に居場所がないなど、さまざまな生きづらさを抱える子どもたち。そうしたなか、一本のドキュメンタリー映画に共感の輪が広がっている。大阪市立大空小学校の日常を追った『みんなの学校』だ。大空小では、発達障がいの子も、知的障がいの子も、みんな同じ教室で学ぶ。しかも、不登校の子は誰もいない。それは「奇跡の学校」なのか。初代校長の木村泰子さんが伝え続ける、「みんなの学校」の真意とは。

■「サポーター」という存在
――映画『みんなの学校』のポスターやチラシには「出演 大空小学校のみんな」と書かれています。これは「子どもたち」ということですよね。

木村 子どもはもちろん、パブリック(公立)な学校は、地域住民みんなのものなんです。そこに「保護者」「近所の人」という区別はなく、大空では「保護者」ではなく「サポーター」と呼んでいます。「できるときに、できる人が、無理なく、楽しく」学校に関わることを目ざしています。
 物音にすごく敏感に反応する子がいまして、教室にあるすべての椅子に、半分に切ったテニスボールをはめようと考えたんです。そうしたら、サポーターさんがあちこちからテニスボールをかき集めてきて、学校の1階にあるコミュニティルームで、硬いボールをみんなで切ってくれました。それを見た子どもたちは、「ありがとう。あいつな、椅子の音を聞いたら、あかんねん」とか言って、切ったボールを教室に持ち帰ります。サポーターさんたちはそれを見て、「他にやることないかな」と考えます。学校に来て、子どもたちに教えられ、心が動いたんです。大人の学びです。学びのあるところに感動があり、感動があるから、愛が生まれる。

――学校には誰が来てもいいんですか。

木村 いつでも、誰でも、ウエルカムですよ。いろんな方がいらっしゃいます。休み時間に子どもの遊び相手になってくれる方、図書室で本の読み聞かせをしてくれる方、トイレ掃除を毎日してくれる方、学校の花壇を手入れしてくれる方、通学路で見守ってくれる方……。いずれも、学校から頼んだことではありません。
 授業参観日みたいに、とってつけたようなことはしません。授業は、いつでもオープンです。近所のおじいちゃんが来て、授業中に小さい声で「むずかしいなあ」とつぶやき、生徒のひとりが「教えたるわ!」。休み時間に、ふたりで算数の勉強してるんです。その子、算数がすごく苦手な子だったですよ。
――まさに「地域に開かれた学校」ですね。
木村 ただし、「子どもを教育したる」「自分の子しか関心がない」という方はお断りです。自分の子どもを育てたかったら、まわりの子どもをまず育てる。目の前の子どもを見て、自分に何ができるのかを考える。そうしたあうんの呼吸が、大空にはありますね。
 「わが子を守る」という気持ちから、「あの子は暴力をふるうから、いっしょに遊んだらダメ」「勉強できない子がクラスにいたら、授業が遅れて、うちの子が迷惑する」と言う親御さんもいると思います。私は、大間違いだと考えています。そんなことで、自分の子どもが育つことはありえない。そんな教育をしていたら、その子も他者を否定して、自分を守っていくすべを知る大人になってしまうと思います。

■ “ええ学校”ってなんですか?
――地域に開かれた学校には、地域の協力が不可欠です。開校時からそうでしたか。

木村 2006年にできた新しい学校ですが、いわゆる「ややこしい子」への白い目が、地域にありました。子どもは敏感ですから、大人たちの目線から直感で「味方か、敵か」「いっしょにいて安心か、そうじゃないか」を感じます。
 地域住民の気持ちを変えていくために、町会や地域の女性部といった組織とつながるのはやめようと考えました。地域の一人ひとりが自分の意思で学校に来て、日常に接して、やれることを探してもらう学校を目ざしたんです。
 大空に来ると、やることがいっぱいあるんですよ。「大変やわ。あんたも行ってや」と口コミで広がりますし、一度来たサポーターは、二度、三度とリピーターになります。「ややこしい」といわれる子への白い目も薄らいでいきます。
 私自身、校長として着任した当初は、白い目のようなものを抱いていました。レイジという教室からすぐ逃げ出す男の子がいて、「この子さえいなければ、“ええ学校”になるのに」と校長として感じたんです。みんなが落ち着いて勉強するのが“ええ学校”。授業中に逃げ出す子がいるのは“悪い学校”。それは間違いなんですよね。子どもがみんな“ええ学校”と思ったら、それが“ええ学校”。大人が、ましてや校長が、決めることではありません。

――そのお話をもう少しお聞かせください。

木村 レイジがいつものように、教室から逃げ出しました。担当である新人の女性教師が、追いかけました。すると、雨で濡れた廊下で彼女がスッテーンと転び、ドスンという音が校内に響きました。私も教室の子どもたちも、レイジがその隙に逃げきると思ったんです。
 ところが、すぐさまレイジは彼女のもとにかけより、お尻をさすったんです。「痛かったね、痛かったね」と。教室の子どもたちも、その場に居合わせた私も、ただただ見守るしかなくて。
 その後の全校朝会で、私は子どもたちに宣言しました。「校長先生が間違ってました。やり直しの第一号になります」と。何をやり直すのか。子どもに学べる大人になる、それだけです。子どもから学べない大人を、子どもは信用しません。やり直しする大人の姿を子どもに見せるのが、大人の役目。そのことを私は学んだんです。
――レイジ君は、どうなりましたか。
木村 教室から逃げ出すことがなくなりました。レイジへの視線、白い目と言ってもいい、それがなくなったからだと思います。「あいつ、ほんまはええ奴やねん」と。レイジから大人も学んだし、子どもたちも学んだ。学校って、そういう学びの場であるべきなんです。

■点と点がつながるとき
――2年前に退職され、現在は講演活動で全国をまわっておられますね。

木村 座親(ざおや)という新人教師が、受け持ちのクラスの男の子をえらい剣幕で叱責して、そのまま教室から出ていくシーンが映画にあります。「教室にほったらかされたあの子が、窓から飛び降りたらどうするんや!」と私は怒りました。
 校長を退職して、そんなに日が経っていないときの話ですが、ある町で開かれた映画上映会と講演会に呼ばれたんです。客席から「座親先生、元気ですか」と質問があり、「元気、元気。“ええ先生”にはなってませんが、がんばってます」と笑いを交えながら、近況をお話しました。
 講演が終わったあと、あるお母さんと大学生くらいの娘さんから、泣きながら話しかけられました。「うちの子、窓から飛び降りたんです」。
 息子さん、部活のキャプテンだったそうです。部室にたばこの吸い殻が落ちていて、生活指導の先生から「犯人を言え」と問い詰められ、教室から飛び降りた。そうお母さんから聞きました。ショックで、知らぬこととはいえ、本当に申し訳なくて……。考えてみてください。お弁当を持って、普通に出かけた我が子がですよ、その日のうちに学校から電話がかかってくるんです。「息子さん、亡くなりました」と。
 子どもが命を失う話を、講演先のあちこちで耳にします。大空にいたときは、大空のことしか見てなかったんですね。私にとっては、重すぎる学びです。そのお母さんからは、「うちの子のこと、全国で話してください」と言われました。「悲しい事件が起きないためにどうすればいいのか、一人ひとりで考えてほしい」と訴えて、全国をまわっているわけです。

――その想いは伝わっているとお感じですか。

木村 100%伝わることを信じて、話しています。若者だろうと、不登校の親御さんの会だろうと、「学校は学力向上の場」と頭がこりかたまっている教育委員会の研修だろうと、予定がなければ行きますし、私の言葉で話します。
 熊本市内の公立小学校から、呼ばれたことがありました。障がいのある子が不登校で、そのお母さんが校長先生に、大空のことを伝えたそうなんです。そのご縁でお邪魔して、上映会のあと、先生方とゆっくりお話をしました。
 しばらくして、「息子は毎日喜んで、学校に通うようになりました」と風の便りで知りました。この事実って、すごいじゃないですか。しかもその学校は、去年の熊本地震で大きな被害を受けた地域だったのに、熊本市内で最初に授業を再開したそうです。地域の人たちや避難する人たちが、自分たちで動いて、授業できるスペースをつくった話を校長先生から聞きました。校長先生、とても喜んでおられました。
 こういう話を聞くと、「よっしゃ、私もがんばろう!」と思えます。日本全国で考えたら、小さな点です。でも、その点と点がつながるとき、きっと何かが変わる。そう信じています。

■文句を意見に変えていく

――大空小の日常に共感が広がる一方、「私の地域ではムリできない」という声もあると思います。

木村 「できる」「できない」ではなく、あなたの地域に、みんなの学校が必要なのか、必要じゃないのか。そこなんですよね。近所の学校に、ひとりだけいる不登校の子を、自分は見過ごせるのかどうか。「見過ごせない」と感じるなら、それは必要ということです。必要なら、自分でできることを考えるしかないです。

――そういえばある自主上映会で映画を観た若い女性が「近所の小学校に、どんな子どもがいるのか自分で確かめたい」と言っていました。

木村 そういう声は、とてもうれしいです。難しく考えることはないんです。大人は透明人間のように、学校のなかで、ボーッと浮遊していたらいい。そうしたら見えてきます。困っている子、悩んでいる子のことが。その子の横に行って、「どうしたん?」と声をかける。「向こう行け」「くそババア」と言われたら、離れたらいいんです。
 それを何回か繰り返していたら、その子が本当に悩んで困ったとき、「おばちゃん、聞いてや」とくるんです。それが子どもです。「つらいねん」と言える大人がいつもそばにいれば、世の中オールOKですよ。しかもその子は将来、そういう大人になるはずです。

――「教育は親と学校の責任」との声もありそうです。

木村 そこで結論を出したら“次の議論”がないですよね。重度の知的障がいの子が、学校にいたとします。「他の子どもと言葉が通じないので、特別支援学級が必要です」で終わると、その子が生きていくためにどんなスキルが必要で、どういう学びの場をつくるべきなのかという“未来”につながりません。不登校の子がいる場合も「親の責任だ」「学校が解決すべき」「来ないのは本人の権利」といった言葉で片付けられ、その次の議論がありません。

――映画を通した大空小の日常を、それぞれがどう受け止めるかにも関係してきますね。

木村 大空では、サポーターからの“文句”を受け付けません。そのかわり、どんなに耳の痛い内容でも“意見”には耳をかたむけます。意見には「こうしたい」という主体性があり、未来につながります。文句には、それがありません。文句をどう、自分のなかで意見に変えるのか。ここに地域や社会を変える力があると思います。
 映画をご覧になる方は、皆さんそれぞれの立場で、価値観で、感じてほしいです。そして、すべての子どもが安心して学べ、子どもも大人もみんなが「いっしょがいいね」と思える地域の学校を、ご自分のできるところから、つくっていってほしいです。ちいさな一歩でいいんです。その一歩が点となり、つながり、学校を、地域を、社会を変えていくんです。

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