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地域医療の崩壊招く ―「2%半ば以上マイナス」改定案

 社会保障費の自然増分の大幅削減の方針に沿い、財務省が診療報酬「2%半ば以上マイナス」で議論をすすんでいるが・・・実態調査では、16年度の病院の損益差額の構成比率(1施設当たり)はマイナス4.2%と、「過去3番目に悪い数値」(厚労省)となっている。
 介護報酬の削減も「国民負担の軽減」を口実にしているが、地域から医療・介護の事業所がなくなり、利用できなくなれば、保険料だけ負担させるという最悪の「国民負担」に突き進むことになる。
【医療の現場無視 ―「2%半ば以上マイナス」18年改定 財務省が提案―保団連11/15】
【医療経済実態調査を受けた財政制度等審議会財政制度分科会における議論について 日医11/10 】

【医療の現場無視 ―「2%半ば以上マイナス」18年改定 財務省が提案―保団連11/15】

 社会保障費の自然増を大幅に削減する政府方針の下、2018年診療報酬改定はマイナス改定の動きが強まっている。10月25日の財政制度等審議会・財政制度分科会では財務省から、診療報酬本体も含めて2%半ば以上のマイナス改定が必要との方針が示された。医療現場の実態を無視して、マイナス改定ありきの議論を進めることは問題だ。

 財務省は、国民負担の抑制を診療報酬引き下げの理由としている。しかし診療報酬は医療機関経営の原資であり、患者に安全・安心の医療を提供するには、必要な人件費や設備関係費を確保できる技術料の評価が不可欠だ。診療報酬引き上げを国民負担と対立させるのは、国民と医師・歯科医師の分断を狙った意図的な政策誘導ともいえる。
 財務省は、1995年を100として診療報酬本体が「賃金や物価の水準と比べて、高い水準」となっていることから、マイナス改定が必要としている。しかしこの比較方法は、どの年度を起点とするかで内容が大きく異なる。 日本医師会の横倉義武会長は、アベノミクスが始まった2012年を起点とすれば16年度の診療報酬本体の水準は賃金や物価より低くなることを示し、データが「恣意的」と批判している。

◆政府の賃上げ要請と矛盾

 また、診療報酬本体引き下げは医療従事者の人件費引き下げにつながりかねず、年率3%の最低賃金引き上げを目指すとする政府の方針とも矛盾する。勤労者の賃金が伸び悩んでいる現状は、雇用の改善と賃金の引き上げで是正されるべきであり、マイナス改定の口実とすることは許されない。
 さらに財務省は、「2%半ば」の根拠を、医療費の伸びを「高齢化等」による増加の範囲にとどめ、医療の「高度化等」による分(年約1.2%)を抑えると説明している。しかし高額薬剤分を抑えれば、この伸びはもっと低くなり得るし、そもそも「高度化」分を抑制するのは、医療技術の発展を否定するものともいえる。

◆地域医療に打撃

 2002年から08年にかけて4回連続でマイナス改定が行われ、各地で医療崩壊といわれる事態を引き起こした。この事態を立て直す抜本的なプラス改定はないまま、14年は実質マイナス改定、16年は再びマイナス改定となった。
 8日に中医協に示された「第21回医療経済実態調査」では、16年度の病院の損益差額の構成比率(1施設当たり)はマイナス4.2%と、「過去3番目に悪い数値」(厚労省)となった。さらなるマイナス改定は地域医療提供体制に深刻な打撃を与え、地域医療の立て直しが困難になりかねない。

 全国保険医団体連合会は、技術料中心に10%以上の診療報酬引き上げを求めている。

【医療経済実態調査を受けた財政制度等審議会財政制度分科会における議論について 日医11/10 】

横倉会長の談話から
“「医療経済実態調査の結果について言及。「損益差額率を開設者別でみると、医療法人、国立、公立ともに、平成28年度は平成26年度よりも悪化傾向にあり、アベノミクスによる景気回復が進んでいるにも関わらず、特に平成28年度の医療法人の損益は過去3番目に悪い数字となっていること」については、「地域医療を支える医療機関は経営努力によって得られた薬価差を含めて運営している中で、薬価改定財源を充当せずに、2回続けてネットマイナス改定が行われた影響であり、医療費の自然増を過度に抑制したことによるものではないか」と懸念を表明。「2期連続で赤字決算となれば、一般的に資金調達は厳しい状態に置かれることになるため、新たな設備投資が難しくなり、その結果として国民は医療の技術革新の恩恵を受けられなくなる」とした。

 また、国公立・公的と医療法人とでは給与水準が大きく異なることを看護職員・医療技術員を例に挙げて説明。「1 人当たり平均給与費は国公立・公的では 500万円台であるのに対し、医療法人では 400万円台である。本来は民間医療機関の医療従事者の給与水準も、人事院勧告に準拠している国公立・公的病院に合わせて引き上げるべきであるが、それを抑制することにより、民間病院はかろうじて経営しており、その結果として賃金の改定率が低く、改善が遅れている」とした。

 更に、企業の内部留保が406兆円にものぼっていることにも触れ、「医療機関は医療法で剰余金の配当が禁止されていることから、再生産費用として必須の利益以外は人件費として還元している。それでも医療従事者の給与水準は他産業よりも低く、再生産費用もほとんど確保できないのが実態である」とその窮状を訴えた。

 最後に、横倉会長は、「平成30年度予算編成においては、医療機関の医療従事者に適切な手当てを確保しなくてはならない」と強調。「医療経済実態調査の結果を踏まえた診療報酬についての議論は、財政審ではなく、中医協でしっかりと議論すべきであり、今後は中医協において日医の考えを説明していきたい」とした。”


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